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環境・安全専門部会報告書(総合分科会)


昭和49年10月
環境・安全専門部会

第1章 まえがき

1 原子力委員会の「環境・安全専門部会」総合分科会においては、

(1)安全審査体制のあり方

(2)地元住民の理解と協力を得る方策のあり方
の検討を進めてきた。このうち、「安全審査体制のあり方」については、安全審査体制検討会を設け検討を委嘱した。同検討会は昭和48年6月28日に第1回の検討会を行なって以来6回の検討会を行ない、当面の改善策等につき報告をとりまとめたので当分科会は昭和49年5月及び9月の分科会において検討を行ない結論を得た。
 当分科会における検討に際しては機構改革あるいは各省庁にまたがる法体系の改正等の大幅な現状変更はその実現性及び実現時期において疑問があるので、当面、実質的な成果を期待して、必要最少限の改善を提案することとしたものである。今後、機会があれば,原子炉の安全審査体制のみならず原子力発電に関連する安全の確保についての国の体制について抜本的な検討が行なわれることが望まれる。
 また「地元住民の理解と協力を得る方策のあり方」については、当分科会において数回にわたり審議を行なってきたが、問題が広範多岐にわたるため、報告書のとりまとめまでに至らなかった。今後原子力委員会において適切な場を設け検討されることを要望する。
 なお、当分科会及び安全審査体制検討会の構成ならびに開催日は次のとおりである。

(1)総合分科会

イ 委員名簿(50音順)

伊藤俊夫
内田秀雄
鎌田勲
小林節夫
向坂正男
田島弥太郎
長岡昌
能勢幸雄
伏見康治
藤波恒雄
牧野昇
三島良績
御園生圭輔
山崎文男
渡辺博信
小幡八郎
松下友成
井上力
生田豊朗
関西電力(株)副社長
東京大学教授
日本経済新聞論説委員
朝日新聞論説委員
日本エネルギー経済研究所長
国立遺伝学研究所形質遺伝部長
NHK解説委員
東京大学教授
日本学術会議副会長
前科学技術事務次官
三菱総合研究所常務取締役
東京大学教授
放射線医学総合研究所長
日本原子力研究所理事
放射線医学総合研究所環境衛生研究部長
環境庁長官官房審議官
水産庁次長
資源エネルギー庁官房審議官
科学技術庁原子力局長

口 開催日
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
第8回
第9回
第10回
第11回
第12回
第13回
第14回
昭和47年3月9日
昭和47年10月31日
昭和47年12月1日
昭和47年12月18日
昭和48年1月25日
昭和48年2月22日
昭和48年3月26日
昭和48年4月23日
昭和48年5月14日
昭和48年6月8日
昭和48年7月6日
昭和48年7月30日
昭和49年5月22日
昭和49年9月11日

(2)安全審査体制検討会

イ 委員名簿(50音順)
*板倉哲郎
内田秀雄
*佐藤美津雄
*村主進
伏見康治
藤波恒雄
三島良績
*向坊隆
日本原子力発電株式会社技術部次長
東京大学工学部教授
日本海事協会理事
日本原子力研究所安全工学部長
日本学術会議副会長
電力中央研究所理事
東京大学工学部教授
東京大学工学部教授
(*:総合分科会委員以外のワーキング・グループ構成員)

ロ 開催日
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
昭和48年6月28日(木)
昭和48年7月19日(木)
昭和48年8月7日(火)
昭和48年9月11日(火)
昭和48年11月5日(月)
昭和48年11月28日(水)


第2章 安全審査体制強化要請

 新しいエネルギー源としての原子力発電に対する期待は大きく、その開発が積極的に進められている。しかし、原子力発電の推進にあたってはその潜在的な放射能による危険性の点から、安全の確保がはかられることが前提とされる。今後、増大する原子力発電所の安全を確保するとともに原子力発電に対する不安を取り除いて円滑に原子力発電の開発を推進していくには、国の安全確保体制の一層の強化が必要とされる。
安全審査の業務についても原子炉の設置許可申請及び変更許可申請の増加等に伴なう業務量の増大が予想されるとともに国民の原子力発電に対する不安の除去の面からの業務量も大幅に増大する状勢にある。このような状勢においては、原子炉安全専門審査会(以下「審査会」という。)の非常勤委員に依存する現在の安全審査体制では委員の負担を徒らに増大させるのみならず、こうした要請に十分応えていくことが難かしく、その改善、強化が強く望まれる。

第3章 原子炉安全確保の要請に対する現行体制の問題点

1 原子炉の安全性については、具体的かつ実証的な方法で国民の理解を得ていくことが必要とされており、安全審査についての不信を表明している人々の問題点指摘には安全審査が独自の解析にもとづいてなされていない、独自の情報データによっていない、データに実証性がない、審査経過が不明でどれだけ検討されているか判らない、等々の批判がある。このような批判は、現在の安全審査についての理解の不足によるところもあるが、反面広報活動その他国民の信頼をかち得るための国の方策においても欠けるところがあったことも認められる。従って、今後このような批判に応えて国民の信頼をかち得ていくことが原子炉安全行政を進めていくうえには必要たことである。このためには、資料の整備、解析計算、広報活動等を行なう審査会の補佐機能である行政機能及び調査研究機能の拡充が必要とされ、行政機関及び調査研究機関の充実、整備が検討されるべきである。

2 既に、現状において非常勤の審査会の委員には過度の負担がかかっている状態であり、今後、増加する原子力発電所の建設に対する設置許可及び設置変更許可並びに既設の発電所の改造等に対する設置許可等審査を要するものの増加に伴なう業務量の増大とともに、公聴会その他の理解を得るための行政上の業務に伴なう安全審査上の業務量の増大が予想され、現在の体制のままでは到底このような増大する業務に対処し得ない。

3 安全審査その他の安全規制のうえでの問題点の一つは、審査の基準、設備の維持基準等の客観的な基準の整備がおくれている点である。
 日進月歩で技術開発が進められている原子力の世界では、ケース・バイ・ケースで審査することも多くならざるを得ないが、既に多数の原子炉の建設運転の経験を経ていることであり、それらの経験をもとに基準化できる部分が多く、これらは早急に基準化を図り安全審査その他の安全規制の上のチェックを効果的に進めることが必要である。また審査における判断基準を公けにすることは国民の原子力の安全に対する理解を深めることに資することにもなる。
 現在これらの基準化については科学技術庁原子局の機能に余力がなく、工事認可の基準について通産省において検討が進められているに過ぎない。

4 さらに運転中の原子炉に生じた予期せざるトラブル、実験等による新しい知見が得られたことに対する対応が、現在の体制では迅速にとり得ない状況である。また、安全に関する新しいフィロソフィの確立が必要とされる問題も今後多くなるものとみられる。
 従って、こうした問題の処理について高度な判断を迅速になし得る体制の確立が必要とされるところである。

5 発電用原子炉施設の安全規制は科学技術庁原子力局及び通商産業省資源エネルギー庁によって行なわれている。すなわち、原子炉設置許可段階は科学技術庁が、詳細設計及び工事方法についての認可段階の審査、使用前検査、定期検査等は通商産業省が行なっている。
 このため、行政上の責任が分割され、さらに設置許可段階においても環境審査は通商産業大臣の所掌となっているため、環境保全を含むた広義の原子炉安全行政が分割されているのが現状であり、一般の人々の認識に混乱が生じている面がある。また行政上の責任が分割されているため、問題の処理を円滑に進めるためには、従来よりまして各省庁間の緊密な連繋が必要とされる。
 原子力行政の民主化のために設定された原子力委員会は、各省庁にまたがる原子力行政全てに関与し得るものであり、また、各省庁間の問題の調整機能を有し、諮問機関とはいえ、国務大臣を長とするものであって、事実上行政機関として機能を果すことも可能である。従って、原子力委員会の活動を強化することによって行政機関の緊密な連繋を今後一層強め、一元的た安全行政を推進していくことが可能と考えられる。
 最近のように、原子力発電所の安全性の重要性及びそれに関する業務量が増大していることに対応して適確かつ迅速な行政上の処理が必要とされる状況においては、このような体制について再検討する必要がある。

6 現在、行政機関における原子炉の安全規制は、課段階以下で専念して行なわれているのみであり、独立した局あるいは部の段階の組織機構において行なわれていない。さらにこの安全規制は原子力発電の推進業務と共存する状態で行なわれてきた。その業務の重要性が増大してきていること及び国民の間に規制業務が推進業務と混在した中で行なわれていることから原子力行政に対する疑念が生じていることを考慮すれば、安全規制及び安全問題に専念する行政体制の強化を図る必要がある。
 また、原子力委員会においても、合議性の建前から安全問題に専念している委員はいない。この点についても検討を要すべきものと考える。

第4章 対応策

 以上のような問題を踏まえつつ、かつ大幅な機構改革あるいは各省庁にまたがる法体系の変更等の大幅な現状変更はその実現性及び実現の時期において疑問があるので、当面実質的な成果を期待して必要最少限の改善を提案することとして具体的方策を検討した結果は、以下の通りである。

1 審査会の安全審査体制の強化

 審査会の安全審査体制の強化には委員の増員あるいは一部委員の常勤化という現在の委員中心の体制強化案と審査会の補佐機能の強化案とが考えられる。安全審査に対する要請には豊富な資料整備、解析計算業務等委員の増員によってカバーしきれないものが多く、かつ、非常勤委員を徒らに増員することは、最高のチェック機関としての機能が低下することも考えられる。委員の常勤化の必要性は、現在、審査会が通常の諮問機関として機能をこえ行政機関的機能を果すことを要請され、そのため業務量が多く、かつ、重い責任が課せられていることにある。通常の例の如く行政機関自体の機能が強力なものとなれば審査会は非常勤委員からなる本来の諮問機関としての役割を果せることになる。審査会委員の常勤化については行政機関と独立した諮問機関としての機能を果すうえでの問題や、一部委員への責任の偏在をもたらすおそれがあること等の点をも考慮し、行政機関自身の機能の拡大充実との関連において検討されることが必要であろう。
 委員の常勤化についての結論を別としては、業務量の増大する傾向において、審査会が小数精鋭主義による最高チェック機関としての機能を果していくためには、行政機関の機能を拡大充実して行政機関自らが行なう業務範囲の拡大を図っていく必要がある。また、資料の整備、計算解析業務等の業務を拡大していくためにも行政機関及び調査研究機関における安全審査のための機能を大幅に拡充していかねばならない。

2 行政機関における安全審査機能の強化

 行政機関における安全審査機能については、個別審査業務の範囲拡充のみならず、安全問題に対する1行政の即応性を確保するうえから、資料の整備、審査基準の確立、解析機能の強化等の面において抜本的な拡充が必要とされる。
 これらの機能拡充については、定員機構の拡大はもとより、その職員については高度な専門的識見を有する人材の確保が必要とされることはいうまでもない。
 定員機構の拡大については、諸外国の例からも、大幅な拡充が必要とされるところであり、当面少くとも、数十人を下らない専任職員を確保するとともに、他の部門とは独立した高位の管理者を配する組織機構を設けるべきである。
 また、複雑、多岐、難解な原子炉の安全審査業務に従事する行政官は原子炉の安全問題について深い専門的知識と経験が必要とされるものであり、一般の行政官のような幅のひろい識見よりむしろ専門的な深みが必要とされるところである。そのため、処遇上格別の措置が必要とされるところである。また、安全審査業務を行なう行政機関と大学、研究機関との交流もし得るような体制を確立すべきである。

イ 処遇上の問題点としては専門的に長期間にわたって従事することが要求される点から、専門職として上位等級へ昇進できる道を開くことが必要とされる。

ロ 大学、研究機関との交流については研究者が大学、研究機関からはなれ行政事務に従事する場合、行政経験が研究者の業績として評価されないこと、復帰後のポストの確保が困難であること等の問題がある。
 これらの問題については制度化という面で解決することは難しいとしても、個別的に解決を図っていくことが不可能なことではない。むしろ、積極的に専門職の上位等級ポストを確保して受入れ体制を整えることが先決であろう。

3 調査研究機関における安全審査補佐機能の強化

(1)調査研究機関における安全審査補佐機能の強化ということは原子炉安全に関し、独自の情報を集め、独自の解析を行ない、実証性のあるデータに基づきより説得性のある安全審査を進めるうえで是非必要な機能である。諸国の例をみても米国原子力委員会はもとより、西独国における原子炉安全研究協会の活用を始め、各国において調査研究機関の活用等がはかられており、安全審査業務と調査研究部門との結びつきが強い。わが国においても日本原子力研究所の安全工学部門及び保健物理部門並びに放射線医学総合研究所の専門家が安全審査に参加する等協力がなされているが制度上組織として安全審査の補佐を行なう機関はない。
 従って、制度上このような補佐機能の役目を果す調査研究機関の整備を図ることが必要である。
この機関を国立研究機関という形にすることも考えられるが、問題に対する即応性その他弾力的活動を確保するためにはむしろ特殊法人、民間法人という形にすることが適当である。また、この調査研究機関が持つべき機能としては、

イ 安全解析に関する内外の情報の収集と提供

ロ 安全解析コードの開発と実際の安全審査における解析計算業務

ハ 安全解析の実証試験業務

二 上記の業務の基礎を培うための調査研究

が挙げられる。
 当調査研究機関の財源はその中立的性格が要求されることから国の補助が必要とされる。

(2)これらの他、補佐機能の強化としてはコンサルタントの活用を図るべきである。すなわち、原子炉の安全審査にあたり判断の基礎となる資料のうち、専門的で調査に過大な役務を要する問題について専門家に委託することにより、委員の負担を軽くするとともに、広く各界の専門家を活用する方途を積極的に講ずることが良い結果を与えることになろう。

4 安全審査基準の整備及び新施策の推進

 原子炉安全に関する基準及び指針の作成は今後大いに力を注いでいかなければならない問題の一つである。また、既存の、又はこれから作成される基準及び指針については新しい知見、考え方等時宜に応じ機動的に適用し改訂していく必要がある。動力炉の審査基準の整備のため、現在でも原子力委員会に動力炉安全基準専門部会(以下「基準部会」という。)が設けられているが、事務局に余力がないため基準化が進展していない。この現状にかんがみ、今後基準化を推進するためには前述の如く、安全審査業務の一環として大幅な増員が必要とされるところである。
 さらに現在の基準部会は原子力委員会の諮問を受け、これについて報告する形で運営されるため、その活動を積極的にかつ機動的に行なえないうらみがある。この面を改善し、常時基準をフォローできる体制とすべきである。
 さらに新しい知見及び基本的考え方のうえでの問題などが生じた場合に対して処理できる審議体制が整っており、その処理結果が常時行政に反映されていくことが必要である。またこのような問題は、原子力委員会自らが判断すべき内容も多いことに鑑み、原子力委員が直接この審議に加わることが必要とされるものも少なくないものと考えられる。
 このような点から、現在の基準部会を改組し新たに原子炉安全技術専門部会(仮称)(以下「技術部会」という。)の設置を提案する。
 技術部会は、原子力委員の中から特に原子炉の安全技術に関係する委員が部会長となり10名以内程度の委員から構成され、参謀本部的機能をもって運営されるものとし、実際の細目的業務は、小委員会を設けてここで行なわせることとする。小委員会については基準に関するものを常置化するほかは、随時問題発生毎に設けることとする。これらの小委員会の設置あるいは技術部会での審議事項等は原子力委員会の指示によるほか技術部会の自主的運営に委ねることとする。

5 原子炉安全行政の一貫性の強化

 わが国の発電用原子炉施設の安全行政については前述のとおり科学技術庁及び通商産業省に権限が、分れているが、設置許可段階の審査と工事計画認可段階の審査についても、設置許可段階の審査の際に審査会の部会に通商産業省の原子力発電技術顧問会が参加して合同で審査しており、工事計画認可段階では審査会委員と殆んど同一の委員で構成されている原子力発電技術顧問会が通産大臣の諮問をうけて、その審議に参画しているので審査会での考え方が工事計画認可段階の審査にひきつがれその間の一貫性が保たれてきた。
 しかし、今後の原子力発電行政における業務量の増大と業務の重要性の増大に対処していくためには前述のとおり現行体制を強化する必要があり、その面から、再検討されるべきである。
 この点から、次のような提案を行なう。
 原子力委員会の総合調整権限を背景とし、かつ、原子力委員会が全ての原子炉安全問題に関与すべきことを考慮し、原子力委員会を中心とする機動性のある連絡調整体制の確立を図ることとする。
 このため原子力安全担当の原子力委員を議長とする原子炉安全連絡調整会議(仮称)(以下「調整会議」
という。)を設け、この会議には行政機関(科学技術庁原子力局及び通商産業省資源エネルギー庁)の安全問題担当の長及び審査会、技術部会並びに原子力発電技術顧問会の代表者が参加するものとし、相互に関連事項の業務調査を行なうほか、情報交換を行ない、相互の緊密な連絡協調体制を確立することとする。

6 原子力の安全確保のための上級機構の整備

 安全審査機能の強化、検査その他運転管理機能の強化、公開資料の整備その他国民との対話のための機能の強化等行政機関の安全問題担当部局の機能の大幅な拡充強化を図る必要があり、そのためには機構的にも相当な権限と責任を有する者が原子力の安全問題に専念できる体制を確立すべきである。
 このため、前述の如く科学技術庁における審査会の事務局機能を大幅に拡充強化し独立した組織とするとともに、科学技術庁及び通商産業省資源エネルギ庁に原子力の安全問題に専念できる局長ないしそれに準ずるクラスの責任者を配置するよう機構、組織の改善を図るべきである。
また、原子力委員会は現行体制の下でも各省庁にまたがる原子力行政を一元的に把握しこれらを調整し得るものであり、かつ一般国民からの期待もあるので、原子力委員会における原子力の安全問題に対する取り組み方の強化が強く要請されるところである。現在原子力委員会は合議制をとっているため、あらゆる問題について委員の責任の分散が図られている。しかし、原子力の安全問題は、他の原子力委員会の業務が、多くの場合大所高所からの政策判断で足りるのと異なり、多分に技術的問題であるとともに、かなり細部にわたる問題の把握が必要とされる。このため、常勤の原子力委員のうち少なくとも一人を原子力の安全問題の専任とし、原子力委員会として受動的でなく能動的な活動を推進していくことが望まれる。

第5章 まとめ

 当分科会は、安全審査体制の強化策につき、当面実行可能とみられる範囲での対策につき審議してきた結果として次のことを提案する。

1 審査会の審査機能の強化については、行政機関及び調査研究機関における審査会の補佐機能の充実を図るとともに、一部委員の常勤化についても行政機関における安全審査機能の拡充との関連において考慮されるべきである。

2 行政機関の安全審査機能については、審査会の補佐機能としての充実を図るためばかりでなく、安全問題に対し迅速に行政が対応し国民の不安を解消していくためにも、現状の大幅な改善がなさるべきである。そのため、審査基準の整備、資料の整備等を含め、安全審査関連業務に従事する職員の大幅な増員と高度な識見を有する専任の責任者のもとに有能な人材の確保を可能とするよう組識機構等の改善を図るべきである。

3 豊富な実証データによる審査を可能とするため、解析計算、実証試験等を行なうとともに実証データの収集、整備を行なう機関を安全審査のための補佐機能として整備すべきである。

4 安全審査基準の整備及び新知見に対する即応体制を強化するため、現在原子力委員会に設けられている基準部会を改組し、新たに技術部会を設置する。
同部会は安全問題専任の原子力委員が主宰するものとする。

5 その他、原子力安全行政における安全審査の周辺の問題として次の点を改善すべきである。

(1)原子力安全行政の一貫性の強化として、原子力委員会及び行政機関等の緊密な連絡と機動的な調整が行なわれるように、関係機関等の責任者から構成される調整会議を設置する。同会議の議長は安全問題専任の原子力委員がつとめる。

(2)原子力の安全確保のための上級機構として、

(イ)安全問題の専任の原子力委員の設置
(ロ)安全問題専任の局長級ポストの設置を行なう。

 なお、現在起っている原子力安全論争の根底には、原子力にまつわる「安全」についての国民的合意がないところにあり、これは安全審査以前の問題であり、その点についての政府、原子力委員会の努力が安全審査機能の拡充とともに必要とされるところである。


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