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原子力船「むつ」出力上昇試験の経緯



 原子力船「むつ」は、8月26日定係港青森県大湊港を出航し、尻屋沖東方約800㎞の試験海域にて臨海出力試験を実施していたが、9月1日午後5時17分、原子炉室上部上甲板の放射線エリア・モニタが警報を発し(原子炉の出力約1.4%、モニタの指示値02mR/hr)、放射線漏れという不測の事態が生じた。
 このため、科学技術庁及び運輸省は、9月3日、合同で「むつ放射線しゃへい」技術検討委員会を設置し、第1回会合を開くとともに放射線漏れの状況を調査するため現地に専門家グループを派遣するよう日本原子力船開発事業団に指示した。
 一方、「むつ」の定係港入港について青森県漁業関係者等地元了解が得られなかったので、政府は、9月16日~17日、9月26日~28日の2度にわたり現地に政府代表団を派遣する等地元関係者との折衝を続けたが進展がみられず、このため、9月30日鈴木総務会長を現地に派遣することとした。
 鈴木総務会長は、10月1日に青森県へ向け出発し、現地において地元関係者の要望を聴くとともに、10月6日、現地で「むつ」入港に伴う安全性について専門家会議を開催する等鋭意地元説得を進めた結果、10月14日、鈴木総務会長、青森県知事、むつ市長及び青森県漁業協同組合連合会長の間で、「むつ」の定係港入港につき、「原子力船「むつ」の定係港入港及び定係港の撤去に関する合意協定書」が了承された。同日、政府は、本合意協定書における「2年半を目途に定係港を撤去すること」等了解事項について了承する旨決定した。
 その結果、翌15日に「むつ」は定係港に入港し、以後そのまま岸壁に係留されている状態であるが、政府及び事業団は、現在、上記合意協定書に沿って作業を進めている段階である。
 なお、政府は、11月5日、「むつ放射線しゃへい」技術検討委員会遮蔽小委員会を開催し、現地に派遣された専門家グループの報告に基づく「むつ」の放射線漏れに関する調査結果について中間報告を得た。

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