前頁 |目次 |次頁

放射性同位元素等の取扱いに関する安全の確保について



 最近、放射性同位元素等の取扱に関して、不祥事が少なからず生じていることにかんがみ、約3,200の放射性同位元素等の取扱事業者(使用、販売及び廃棄の各許可事業者並びに使用の届出事業者)に対して、法令の履行状況を総点検し、その結果を報告するよう昭和49年5月20日付け49原第4704号にて下記の文書を送付した。

49年第4704号
昭和49年5月20日
科学技術庁長官 森山 欽司
放射性同位元素等の取扱いに関する安全の確保について

 放射性同位元素及び放射線発生装置の取扱いについては、貴事業所においても、かねてより、その安全の確保に十分配慮しておられることと存じます。
 しかしながら、最近、放射性同位元素の紛失、人体被ばくの発生等管理の不十分に起因する不祥事が少なからず生じており、また本年1月行政管理庁の行った「放射線障害の防止に関する行政監察結果に基づく勧告」によると、その調査対象事業所の実に80%にあたる事業所において、施設、使用方法、従事者の教育、健康管理などのいずれかの点で法律違反があったことが指摘されております。さらに、今般、一民間企業において、放射性同位元素による非破壊検査装置を法律で禁止されている18才未満の年少者に取り扱わせたばかりでなく、線源の入った本体を直接素手で使用させ、これらの少年に重い放射線障害を起させた疑いにより司直の追求をうけるという極めて遺憾な事態が発生するにいたりました。
 近年、放射性同位元素の利用は、急速に進み放射線科学、非破壊検査、品質工程管理、品種改良、農水産加工、食品照射、医学診断、治療等広範な分野にわたって盛んとなり、原子力平和利用の有力な分野として一層の発展が期待されております。
 このときに上述のような事態が発生したことは、作業従事者はもとより、一般国民の安全の確保の上から深く憂慮されるところであり、ひいては、放射線の利用の進展に対しても大きな障害となるおそれがあります。
 このような情勢にかんがみ、科学技術庁としては、今後は、放射性同位元素及び放射線発生装置の取扱いについて、立入検査の強化など指導監督を徹底し、その適正を図るとともに、法律違反に対しては、事柄の如何を問わず厳正に処置する方針であります。
 つきましては、貴事業所においても、この際、放射性同位元素等の取扱いに関し、別添の「総点検の実施及び報告書作成の要領」*により、法令の履行の状況を総点検され、その実情をよく把握し、改善すべき点は至急にこれを改めるとともに、これらの総点検の結果を来たる6月30日までに当庁原子力局長あて報告され、また、今後、再び不祥事が発生することがないよう法令の遵守に努め、管理の充実を図り、安全の確保に万全を期されるようお願いします。
 なお、この報告が行われない場合は関係省庁とも協力し、立入検査等適当な措置をとる所存でありますので、申し添えます。

   *別添は資料に載っています。

 

前頁 |目次 |次頁