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中国電力株式会社島根原子力発電所の原子炉の
設置変更(原子炉施設の変更)に係る
安全性について


昭和48年12月5日
原子炉安全専門審査会
昭和48年12月5日
原子力委員会
 委員長 森山 欽司殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

中国電力株式会社島根原子力発電所の
原子炉の設置変更に係る安全性について

 当審査会は、昭和48年6月12日付48原委第210号(昭和48年12月4日付け48原委第741号をもって一部訂正)をもって審査の結果をもとめられた標記の件について結論を得たので報告します。

  Ⅰ 審査結果

 中国電力株式会社島根原子力発電所の原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)に関し、同社が提出した「島根原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(原子炉施設の変更)」(昭和48年6月6日付け申請、昭和48年11月29日付け一部訂正)に基づいて審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

  Ⅱ 変更内容

 本変更は、気体廃棄物の廃棄設備の構造および処理能力の一部を変更しようとするもので、変更内容は次のとおりである。

1 従来、低圧タービンの軸封は、高圧タービンの軸封に使用された原子炉蒸気を使用していたが、新たにタービン軸封蒸気発生器を設置し、復水貯蔵タンク水を蒸発させ、この蒸気を低圧タービン軸封用蒸気として使用する。

2 復水器、空気抽出器系排ガスの処理方法については、ガス減衰タンクによる圧縮貯蔵方式から活性炭式希ガスホールドアップ装置を使用する方式に変更する。

  Ⅲ 審査内容

 本変更は、いずれも放射性気体廃棄物を減少させるためのものであり、この変更によって、原子炉の安全性が損われることはない。

 1 低圧タービンの軸封について

 タービン軸封蒸気発生器で生じた蒸気を低圧タービンの軸封に使用するが、蒸気発生器への給水は、放射能の少ない復水貯蔵タンク水を使用するので、軸封蒸気排気ガス中の放射能は滅少する。

 また、蒸気発生器の熱源は、タービス第1抽気の蒸気を使用し、蒸気発生器で熱交換したあと、低圧給水加熱器を経て、タービン主復水器に入る。

 蒸気発生器の1次側(加熱蒸気側)の圧力は、約7kg/cm2gで、2次側(軸封蒸気発生例)の圧力は、約3kg/cm2gである。

 万一、蒸気発生器に不具合が生じた場合には、所内補助ボイラの清浄蒸気に切り替えて運転することになっている。

 2 気体廃棄物の放出管理

 気体廃棄物の主要なものとしては、復水器空気抽出器系排ガス、タービン軸封蒸気排ガス、起動時に発生する復水器真空ポンプ系排ガス、原子炉建物、タービン建物等の換気系空気があり、これらはいずれも単独あるいは系統別に常時モニタにより監視されて放出される。

 これらの系統から放出される希ガスの量は、燃料破損の程度により異なるが、制限値である650mci/秒(30分減衰換算値)の場合には、以下のとおりである。

(1)主排気箇からの連続放出
 原子炉の平常運転時に主排気筒から連続放出される希ガスの放出率は約1.5mci/秒で、その内訳は下記のとおりである。

① 復水器空気抽出器系排ガスは、活性炭式希ガスホールドアップ装置でキセノンを約30日間、クリプトンを約40時間保持し、ろ過処理後、主排気筒から放出される。

 この系の希ガスの放出率は約0.8mci/秒である。

② タービン軸封蒸系排気ガスは、減衰管およびダクトを通り、ろ過処理後、主排気筒から放出される。

 この系の希ガスの放出率は、約0.6mci/秒である。

 なお、排ガスが減衰管およびダクトを通過するに要する時間は5分間として、放射能の減衰の計算を行なっている。

③ 原子炉建物、廃棄物処理建物等の換気系空気は、一部ろ過処理後、主排気筒から放出される。この系の希ガス放出率は、約0.06mci/秒である。
(2)タービン建物からの連続放出
 タービン建物の換気系空気は、主排気筒とは別の同建物の排気筒から放出される。

 この系の希ガスの放出率は、約0.004mci/秒である。

(3)主排気筒からの間けつ放出
 原子炉およびタービン起動時における復水器真空ポンプ系の排ガスは、原子炉およびタービンを停止したあと比較的短時間に再起動する場合に放出され、減衰管およびダクトを通り、ろ過処理後、主排気筒から放出される。

 この系の希ガスの放出量は、年間8,750ciである。

 気体廃棄物の放出は、これらの値を目標に管理することになっている。

 3 平常運転時の被ばく評価

 平常運転時における被ばく評価は、次のとおりであり、敷地周辺の公衆に対する放射線障害の防止上支障がないものと認められる。

a 気体廃棄物中の希ガスによる被ばく評価
  平常運転時に環境に放出される希ガスによる被ばく評価は、次の条件を用いて行なった。

 (1)連続放出の場合
① 復水器空気抽出器系排ガス、タービン軸封蒸気系排ガスおよび原子炉建物、廃棄物処理建物等の換気系空気については、主排気筒から連続して放出されるものとし、その希ガスの放出率を0.52mci-MeV/秒とする。

② タービン建物摸気系空気は、同建物排気筒から連続して放出されるものとし、その希ガスの放出率を0.003mci-MeV/秒とする。

③ 主排気筒(地上高120m)の実効高さについては、吹上げ高さおよび方向別の地形の影響を考慮して流線計算から求められた値を用いる。

④ タービン建物排気筒(地上高55m)からの放出は地上放散とする。

⑤ 気象条件は、敷地における1年間の気象観測の毎時の実測値を用いる。

⑥ 原子炉の年間稼動率を80%とする。
 (2)間けつ放出の場合
① 復水器真空ポンプ使用時1回あたりに放出される希ガスの量は、350ci-MeVとし、放出回数は年間5回あるものと想定する。

② 排気筒事効高さの求め方は、(1)の③と同じとする。

③ 着目地点への影響回数は、風向出現頻度、年間放出回数とから二項確率分布で註価する。

④ 風速は、着目方位の逆数平均風速を使用し、大気安定度はD型とする。
 以上の各条件を用いて計算した結果、敷地境界外でガンマ線による全身被ばく線量が最大となる地点は、主排気筒から東方約940mの敷地境界であり、その線量は杓1.4ミリレム/年である。

b 気体廃棄物中のよう素による被ばく評価
 平常運転時に環境に放出されるよう素による被ばく評価は、次の条件を用いて行なった。
① よう素の放出率は、先行炉の実測値を参考として、年平均0.02μci/秒(Ⅰ-131等価)とする。

② 主排気筒の実効高さについては、吹上げ高さおよび方向別の地形の影響を考慮して、流線計算から求められた値を用いる。

③ 気象条件は、敷地における1年間の気象観測の毎時の実測値を用いる。

④ 被ばく評価には、最高濃度地点における呼吸による摂取ならびにその地点で生産される葉菜および牛乳の摂取を考慮する。

⑤ 原子炉の年間稼動率を80%とする。
 以上の条件を用いて計算した結果、敷地境界外で、よう素の濃度が最大となる地点は、主排気筒から南方約900mの敷地境界である。

 その地点における甲状腺被ばく線量は、牛乳を飲む乳児が最大で、4.7ミリレム/年である。

  Ⅳ 審査経過

 本審査会は、昭和48年6月19日、第115回審査会において、次の委員からなる第101部 会を設置した。

 審査委員渡辺博信(部会長)放射線医学総合研究所竹越 尹動力炉、核燃料開発事業団調査委員伊藤直次日本原子力研究所同部会は、通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行なうこととし、昭和48年6月28日第1回会合を開き審査方針を検討するとともに審査を開始した。

 以後部会において審査を行なってきたが、昭和48年12月1日の第6回会合において部会報告書を決定し、同年12月5日の第120回審査会において、本報告書を決定した。
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