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日本原子力研究所東海研究所の原子炉の設置変更
(高速炉臨界実験装置施設の変更)
に係る安全性について


昭和48年9月26日
原子炉安全専門審査会
昭和48年9月26日
原子力委員会
委員長 前田佳都男殿
           
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

日本原子力研究所東海研究所の原子炉の設置変更
(高速炉臨界実験装置施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和48年8月28日付け48原委第618号(昭和48年8月31日付け48原委第626号をもって一部訂正)をもって審査の結果を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

  Ⅰ 審査結果

 日本原子力研究所東海研究所の原子炉の設置変更(高速炉臨界実験装置施設の変更)に関し、同研究所が提出した東海研究所原子炉設置変更許可申請書(高速炉臨界実験装置施設の変更)(昭和48年7月12日付け申請、昭和48年8月28日付け一部訂正)に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

  Ⅱ 変更内容

1 炉心を構成する格子管を51行×51列(従来は35行×35列)に拡張し、各々の1/2格子集合体の中心格子管(3行×3列)の一部(長さ約450mm)を引き抜くことができる構造とする。

2 制御材の個数を制御安全棒8~20本(従来8~10本)安全棒16本以下(従来8本以下)に変更し、同時に2本そろえて引き抜くことも可能にする。

3 起動インターロック回路のうち「制御棒の挿入」についての制限条件を同時には1組(1本または1対にされた2本)のみの挿入とする。(従来は一時に1本のみ)

   Ⅲ 審査内容

 1 炉心構成の拡大および中心格子管の拡大

 本臨界実験装置は、高速実験炉の工学的モックアップ試験を行ってきたが、今後さらに大型炉心の径方向のモックアップ試験を精度よく行なうために51行×51列に拡張するものである。

 51行×51列の格子管集合体を拡大することについての炉心の強度、耐震性等機械的安全性については、既に本臨界実験装置の建設当初から、51行×51列の全装荷状態での検討が行なわれており、また、その後1/2集合体当り50トンの荷重試験でテーブルの耐荷重およびテーブル駆動機構の駆動力も余裕あることが確認されているので問題はない。

 炉心の拡張を行なう場合でも、燃料体1本の燃料の量を従来より減少させ、実験装置全体としての燃料の最大挿入量は変えない。また、核的制限値(最大過剰反応度、反応度制御能力等)は変更しないので核的安全性には変更による問題はない。

 また、中心格子管を引き抜くことができるように変更しても、中心格子管の引き抜き作業は、各々の1/2格子管集合体が2m分離した著るしい未臨界度の状態でのみ行なわれるので問題はない。

 2 制御安全棒および安全棒の個数の変更ならびにニ連引き抜き方式への変更
 本臨界実験装置は、燃料移動型の制御棒および安全棒を用いているが、大型の希釈炉心の構成の際にこれらの反応度価値を規制値内に保つためには、制御安全棒または安全棒の一本当りの燃料の量を多くするか、制御安全棒または安全棒の本数を増加させる必要がある。

 しかし前者の方式は炉心部の組成の相異により実験解析が困難となるので、後者の方式を採用し、駆動装置にコネクターをつけることによって、同時に最大2個の制御安全棒または安全棒の引き出しを可能とすることにより、制御用反応度価値を規制値内に保たせようとするものである。

 同時に2本の制御安全棒または安全棒を1つの駆動装置で引き抜く場合、1本の重量は20kg以下となる。

 駆動装置の機能確保については、駆動装置に40kgの装填重量の荷重をかけた実験をすでに行なっており、その結果、スクラム速度は制限値の範囲内に十分入ることが確認されているので問題はない。

 3 起動インターロック回路の変更について
 この制限条件の変更は、核的な制限条件に変更を行なわないので従来のインターロック条件と本質的に変わりはない。

 4 事故、解析について
 今回の変更によっても、燃料最大挿入量および種々の制限値に変更がないため、各種事故ならびに災害評価の前提条件は変らないので問題はない。

  Ⅳ 審査経過

 本審査会は、昭和48年9月3日第117回および9月26日第118回原子炉安全専門審査会において審査を行ない本報告書を決定した。
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