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昭和48年度原子力平和利用研究委託費の交付決定


 昭和48年度原子力平和利用研究委託費については、さる2月9日試験研究題目および申請書の提出期間について官報に告示し、3月6日申請を締切った。その後、書類審査、申請内容聴取、関係機関との意見交換、日本学術会議の推せんによる学識経験者の意見聴取、現地調査を行ない、5月15日付けで次のとおり交付決定を行なった。

昭和48年度原子力平和利用研究委託費総括表
昭和48年産原子力平和利用研究委託費交付一覧表

昭和48年度
原子力平和利用研究委託費交付概要


 1 「原子炉材料の疲労とクリープの相互効果を考慮した構造設計基準に関する試験研究」

(社)日本溶接協会

(研究目的)
 現在の原子炉構造設計基準においては、材料のクリープが問題となり始める温度以上の高温における強度設計は主として静的なクリープ強度に基づいており機械的および熱的荷重の繰り返しに起因するサイクリック・クリープ、熱応力ラチェットならびに疲労とクリープの相互効果による材料強度の激減現象については明確な基準が与えられていない。

 これらの問題は通常の軽水炉圧力容器用鋼材では300℃程度から構造設計上の重要な因子となるが、材料使用温度がさらに上昇するにつれてますます安全設計上重要な課題になる。

 本試験研究は、原子炉構造用鋼材であるSUS316材を供試材として、これらに関する疲労とクリープの相互効果、ラチェット機構を明らかにし、よって高温における合理的な原子力構造設計基準を作成するために必要な基礎資料を得ることを目的として研究を行なう。

(研究内容)

l. 疲労とクリープの相互効果の研究
(1)速度効果試験
 試験部の直径約10mmの小型中空円筒試験片を用い、所定の歪速度、歪保持時間、荷重保持時間および試験温度(250~450℃)を与えて歪制御および荷重制御により次の各試験を行なう。
i)歪速度効果試験
ii)歪保持効果試験
iii)荷重保持効果試験
ⅳ)リラグゼーション試験
v)クリープ試験
(2)材料確性試験および組織変化試験
   (1)で得られる試験結果の解析に基礎を与えるために室温、250℃~450℃の各温度
   における静引張試験、クリープ破断試験、組織変化試験を行なう。

2. ラチェット機構の研究
(1)棒モデル試験
 熱ラチェット変形の基本機構を解明するため、上下端を固定された並列の3本棒型式の試験片に一定の静引張荷重を与えた状態で3本棒のうち両側の2本の棒に繰返し加熱冷却を与えることにより熱ラチェット変形を発生させて試験を行なう。

(2)定内圧繰返し軸力試験
 ラチェット変形の機構を解明するため中空円筒(内径約40mm内厚約1mm)試験片に一定の内圧を静的に負荷した状態でこれに両振の繰返し引張り圧縮変形を与えラチェット変形を発生させ、その進行挙動を調べる。

3. 理論解析及び評価
 上記1、2項の試験結果に理論的根拠を与え、試験結果の一般化をはかるため、空間的には有限要素法を、時間的には差分法を用いた計算方法により理論解析を行なう。

2 「原子炉耐圧部の不安定破壊に対する安全基準に関する試験研究」

(社)日本溶接協会

(研究目的)
 現在原子炉耐圧部の不安定破壊に対する安全性に関しては、Pelliniの提唱する破壊解析線図に基づいて最低使用温度が定められており、米国原子力委員会(AEC)の旧一般設計基準およびわが国の原子力委員会の安全審査基準では一次系圧力バウンダリ弾性範囲ではNDT(Nil Duetility Transition Temperature)+33℃、FTE(Fracture Transition Elastie)以上、かなりの塑性領域を許す場合NDT+67℃、FTP(Fracture Transition p1astic)以上、格納容器バウンダリではNDT+17℃以上と定められている。

 この考え方はかなり以前からあるものであるが、最近の構造設計の進展にともない、格納容器バウンダリについて、塑性領域を許す場合の基準を確立するとともに、これらのNDTという温度のみを基点にした不安定破壊に対する基準に再検討を加え、新たな考え方による基準を作成するため溶接継手部を対象として基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1. 母材および溶接継手の基礎試験
 以下2-7項の各試験を行なうに先だち、使用母材および溶接継手の基礎的特性を把握するために丸棒引張試験、シャルピー試験および落重試験を実施する。供試鋼はASTM A 516 Grade 70(JIS SB49相当)とし溶接はサブマージアーク溶接および手溶接とする。

2. 三点曲げ試験
 疲労切欠付試験片と機械加工切欠付試験片により三点曲げ試験法により限界開口変位(COD)を計測し、切欠先端条件、板厚および温度がサブマージアーク溶接継手および手溶接継手の破壊靱性におよぼす影響を調べる。COD(Crack Opening Displacement)の計測はクリップゲージによる。

3. ディープノッチ試験
 サブマージ溶接継手および手溶接継手部の静的破壊靱性(KIC)と限界開口変位を把握し、三点曲げ試験によって得られる限界開口変位と比較検討するため、試験片を各試験温度で静的引張破壊させKICと限界開口変位の温度依存性を求める。CODの計測はクリップゲージによる。

4. ESSO試験
 脆性破壊伝播停止特性を把握するため試験片に降伏点以上の応力を負荷した温度勾配型のESSO試験(エッソ石油会社開発の試験)により、サブマージアーク溶接継手の脆性亀裂停止特性の温度依存性を求める。

5. DT試験(Dynamic Tear Test)
 NRL型(NRL:Naral Research Laboratory)DT試験によって得られるサブマージアーク溶接継手部のエネルギー遷移曲線と亀裂停止温度(CAT:Crack Arrest Temperature)曲線とを比較し、さらに荷重時間曲線から動的破壊靱性(KIC)も検討する。

6. DWTT試験(Drop Weight Tear Test)
 DWTT試験によって得られるサブマージアーク溶接継手部のエネルギー遷移曲線とCAT曲線との比較をする。DT試験とDWTT試験は亀裂条件がそれぞれチタン(Ti)ノッチとプレスノッチであるのでそれらの比較検討、さらにはESSO試験の亀裂伝播停止特性との対比を行なう。

7. WOL試験(Wedge Opening Load)
 WOL試験片により板厚全体の静的破壊靱性を求め、不安定破壊時の限界亀裂長さと限界応力値を検討し、さらにデープノッチおよび三点曲げ試験の結果とを比較検討する。

 試験片は各試験温度において静的引張り荷重を加え荷重開口変位亀裂進展を検出する。

8. 総合評価
 上記各項目の各試験結果を比較し、溶接継手部の不安定破壊に対する新しい考え方に基づく基準確立のための検討を行なう。

3 「原子力発電所における設計地震の策定に関する試験研究」

(社)日本電気協会

(研究目的)
 原子力発電所の重要施設は、動的解析をおこなって、地震に対する安全性を確保することになっている。

 従って、耐震解析の入力となる設計地震は、原子力発電所の耐震安全上の基本条件であり、その策定方法をより合理的かつ標準的なものとすることは、安全審査上きわめて有益である。

 本試験研究は、地震地体構造論(地震のおこる頻度と大きさは、その地域の地殻のなりたちと密接な関係があることを論じたもの)にもとづき、将来起るであろう地震のマグニチュードと震源を推定するとともに、震源域内の地震性状および活断層(変位の証拠が地形的に残されており、近い将来活動する可能性のある断層)と地震との関係について解明、整理し、原子力発電所立地可能地域における設計地震の策定方法を整備するための基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
 設計地震の策定方法の精度をあげ、広範な地域に適用できるよう、対象地域として全国各地から6地域を選定し、下記の調査、研究を行なう。

1. マグニチュード、震源の想定

 選定した地域について、関連する過去の地震記録を集収し、地震地体構造にもとづいて考慮すべき地震のマグニチュードおよび震源位置などについて検討する。

2. 断層調査

 選定地域に関連する断層または構造線の規模、活動度などを調査し、地震との関係について検討する。

3. 震源域の震動特性

 震源域に含まれる地域の震度および周期特性について調査検討する。

4. 地震動の特性想定

 上記の調査結果に地盤の性質等を加味して、選定地域の基盤における地震動の性状を想定する。

5. 設計地震波の作成

 各選定地域における設計地震波を作成し、その要当性を検討し、設計地震の策定方法の標準化のための基礎的資料を得る。

4 「地震時における原子力施設の限界設計に関する試験研究」

(社)日本電気協会

(研究目的)
 最近の原子力施設の大型化に伴い、耐震設計基準も限界設計を採り入れ、より合理化すべきであるとの要求から、実験等による設計余裕の検討を行ない、限界設計への目安を得、安全かつより合理的な耐震設計基準の作成が望まれているところである。

 本試験研究は、配管模型について静的および動的な実験と解析を行ない、崩壊と対比した設計上の安全余裕度を調べ、原子力施設の地震時に対する妥当な許容応力値の設定に役立つ資料を得ることを目的とする。

(研究内容)

1. 配管要素の静的繰返し試験

 47年度までの試験結果から、配管要素の形状と載荷の種類によって、限界強度には差異のあることが判明した。すなわち、載荷の方向の正負や繰返しの効果を綿密に調べる必要があり、不銹鋼製溶接型分岐管(母管8B、枝管6B)を6個製作し、下記試験を行なう。

 周方向に応力が生じるような内圧を加え、さらに曲げ、振りモーメント荷重を単独および曲げ50%、捩り50%のモーメント荷重を組合せて作用せしめ、それぞれについて10回、100回程度までの静的両振繰返し試験を行なって崩壊させる。これらをもって加振方法の困難な分岐管要素の動的試験に代える。

2. 配管系の振動試験

 エルボ部で崩壊が予想されるような直管およびエルボ管の配管要素の組合せからなる配管系モデルを組立て、自由振動実験および共振振動実験を行なう。

 共振振動実験ではエルボ部に内圧および曲げ、捩りの組合せによる応力状態を発生させ崩壊にいたらしめ安全余裕度の検討を行なう。

5 「使用済核燃料輸送容器の耐火性に関する試験研究」

(社) 日本機械学会

(研究目的)
 原子力発電の実用化に伴い、使用済核燃料の輸送が現実の問題となっている。

 そのためにも、使用済核燃料輸送容器(以下キャスクという)の安全設計ならびにその評価は早急に解決されなければならない重要な課題となっている。

 IAEA規則等で規定されているキャスクの安全性の諸問題のうち、特に、火災事故時の安全性の評価あるいは耐火災設計については、わが国はもちろん諸外国においても、資料が乏しく、系統的に行なわれた試験研究もない。従って、妥当な評価方法、設計方法は確立されておらず、それらの早急な整備が強く望まれている。

 このような見地から、縮尺模型による火災試験を行ない、火災に対するキャスクの有効適切な試験方法および計測方法の確立をはかり、あわせて、火災事故に対する安全設計およびその評価のための技術資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
 実用規模として80t程度の横置円筒状キャスクを想定し、その1/4縮尺(約1.25t)のキャスクモデルについて火災試験を行なう。

1. キャスクモルデの設計および製作

 キャスクモデルは、円筒横直形で、胴部、端部ともに外側が構造用鋼板、内側がステンレス板で、間に鉛を鋳込んだ3層より成るものとする。キャスクモデルは測定結果の再現性チェックならびに予期できない試験条件の変化または現象のため2個製作し、試験を行なう。

2. 火災試験設備の計画および準備

 試験中の温度上昇を防ぐ水冷却設備を設けた約5m角の燃焼皿を設置し、その中心の予備実験で求め  た適当な高さの位置に供試キャスクモデルを設置できるよう架台を設ける。

 燃焼皿から、約50m離れた位置に燃料貯槽を設け、燃料皿とパイプで連結し、燃料皿の燃料の量を 調節し、燃燃時間を制御できるようにする。燃料には石油系燃料、“O”ソルベント(発熱量11,250kcal/kg蒸留の終点212℃、引火点65℃)を使用する。

 実験場の適当な位置に風向風速計を設け、実験条件の適否を判断し、実験開始日時期を決めるとともに、測定条件として記録できるようにする。

3. 火災実験

 本実験設備を用いて何回かの予備実験を行ない、火災の大きさと温度分布、燃焼時間と燃料消費量の関係を求め、キャスクモデルの実験位置および燃料の準備量を決定し、計測方法を検討する。

 本実験にはキャスクモデルに約40点の測定点を設け、熱電対を装着し、火災テストを行なう。

 多点温度記録計を用い、一定時間間隔で各部の温度変化を自動的に測定する。

 また、12点打点式の温度記録計を用い実験のモニターを行なう。

 試験後の供試キャスクモデルは、遮蔽体の熱膨脹の影響、溶解再凝固の状況、その他容器の変形等を調べるため切断観察を行なう。

4. 試験繚果の評価

 上記試験結果を総合的に検討し、耐火設計に必要なデーターを収集し、安全性評価のための有力な資料を得る。

6 「原子力施設からの放射性希ガスの回収方法に関する試験研究」

三菱重工業(株)

 (研究目的)
 今後ますます増大すると考えられる原子力発電所の開設に備え、原子力施設から廃出される放射性希ガスについては、実行可能な限り、極力回収する方向に向いつつあり、安全かつ効率のよい回収装置の開発が要望されている。

 昭和47年度の原子力平和利用研究委託費による試験研究の結果、多孔質隔膜を利用した原子力施設からの放射性希ガスの回収方法が、実用施設への適用に有望であるとの見通しが得られた。48年度はこの方式を更に進め、パイロットプラントモデルを設計試作試験し、実用回収装置の評価に必要な丸料を得ることを目的として試験研究を行なう。

 (研究内容)
 47年度に製作した4段カスケードに加えてさらに6段カスケード(3段×2ュニット)から構成されるクリプトン回収試験用装置(パイロットプラントモデル)の最適設計および製作を行い、クリプトンと窒素の混合ガスを用いて、回収試験を行う。試験結果は多角的に解析し実用回収装置の具体化に必要な資料を得る。

1. カスケードシステム解析

 実用回収装置の規模を仮定し、最適なカスケード方式循環流量などを得る。

2. 実験装置設計製作

 1項の結果に基づき6段カスケードから構成される回収試験装置の設計製作を行なう。

3. クリプトン回収試験

 2の試験装置を用いて窒素とクリプトン(非放射性)混合ガスの分離試験を次の条件下 で行なう。
    試験温度   常温
    試験圧力   約100~約2,000Torr
    カスケード段   数10段(新設6段+既設4段)

4. 解析

 以上の結果を解析し、実用回収装置の具体化に必要な次の項目について検討を行なう。
ⅰ)構成機器の工学的検討
ⅱ)信頼性
ⅲ)カスケードユニット制御システム
ⅳ)安全性
ⅴ)附帯設備
ⅵ)経済性

7 「隔膜によるガス状放射性廃棄物の分離性能の評価に関する試験研究」

東京芝浦電気(株)

(研究目的)
 環境保全の必要性から放射性廃棄物の放出低減化の技術の確立が望まれている。

 原子力施設の廃棄ガスから放射性希ガスを分離するためには種々の方法があるが、操作の容易さ、安全性などの観点から隔膜法が有望と考えられている。

 しかしながら、本方式では、隔膜の性質により分離装置の性能が決定され、処理するガスの濃度、量などによっては膜面積、カスケード段数が極めて大きくなるという欠点がある。

 本研究においては、ガス透過性能の異なる2種の膜を組みあわせることによる分離係数の向上、中空円筒状膜を用いることによる隔膜の占有面積の減少という着想を生かし、この欠点を克服しようとするものである。

 すなわち、ガス透過性能の異なる二種の中空円筒状膜を組合わせた隔膜を用いたクリプトン分離装置を設計、試作し、その試験装置の性能試験および評価を行ない、この装置を原子炉施設に適用する場合の基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)

1. 試験装置の設計

 ガス流量は原子炉施設からの排ガスの数十分の1(最大0.4Nm3/hr)、クリプトン濃度は排ガス中濃度の十数倍(最低0.5ppm)とし、カスケードおよびガス循環型試験装置を設計する。

 なお、クリプトンガス分離装置は二種の中空円筒状膜を組合わせた隔膜を有する分離セルの5段カスケード、各分離セルのガス流量計、圧力計、圧力調整弁、ガス循環ポンプ、ポンプ出入口のサージタンク、逆止弁、流量調整弁等により構成される。ガス濃度測定はガスクロマトグラフにて行なう。

2. 試験装置の製作

 主要機器を製作し、これらを試験装置に組み上げ各機器の調整を行なう。

3. 分離実験、分離効率の測定

 分離装置内の圧力および流れが定常状態であることを確認したのち、各分離セル出入口のガスをサンプリングし、サンプリングガス中のクリプトン濃度をガスクロマトグラフにて測定する。測定値より各分離セルおよび装置全体の分離効率をもとめる。

 以上の測定をガス圧力(10.5kg/cm2G)、流量(0.4、0.2Nm3/hr)をパラメータとして行なう。

4. 評価

 試験装置のデータをもとに、二種の中空円筒状膜を用いた分離セルをカスケードに組んだクリプトンガス分離装置の原子炉施設への適応性について検討試価する。

8 ニ酸化ウランペレットの熱変形に及ぼすペレット寸法の影響に関する試験研究

(財)原子力安全研究協会

(研究目的)
 原子炉運転中の燃料からの核分裂生成物(FP)の放出を極力少なくすることが原子炉安全性確保の一つの主限である。

 このために燃料の設計、製造および炉の運転に際してはFP放出の原因となる燃料被覆を貫通するような燃料破損を生じないように配慮しているが、燃料の健全性保持をさらに確実にするためにはこのような被覆破損の発生原因の究明についてなお一層努力する必要がある。

 燃料破損を大別すると、力学的なもの、化学的なもの、熱的なものがあるが、これらの中で特に力学的な破損については、熱変形と割れ、スウェリング、焼きしまり等が考えられ、ペレットは製造時とは異なる形状となる。

 一方、被覆管の熱膨脹は上記ペレットの変形より少なく、また冷却水圧によってクリープし直径が細まる傾向がある。

 そのために、変形したペレットと被覆管が接触し、これらの間に力学的相互作用を生じる。

 本試験研究では、上記ペレット被覆管との力学的相互作用に影響を及ぼすと考えられるもののうち、ペレットの直径及び直径対長さ比に注目し、これら二つのパラメータがペレットの熱変形と割れとこれらを原因とする相互作用の実態を把握する基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1. ニ酸化ウランペレットの熱変形に及ぼすペレット寸法の影響に関する照射試験

(1)照射試料
 濃縮度約8%の二酸化ウラン粉末を冷間圧縮一焼結により高密度の二酸化ウランペレットとし、これを薄肉ジルカロイ被覆管に封入して燃料棒とする。

 さらにこの燃料棒をステンレス鋼製外筒内に熱媒体としてNakと共に封入して照射用カプセルを作製する。

 この際挿入する二酸化ウランペレットの直径ならびに、長さ対直径比を種々に変える。各カプセルには熱電対3本と中性子束測定素子3本を計装し、照射用カプセルとして4体製作する。

 なお、このうち1体については、人工割れを有するペレットおよび密度を変えたペレットを一部挿入する。

(2)照射試験
 上記(1)で製作した照射用カプセル4体をJMTRで照射期間1原子炉サイクルの間、設計最大線出力密度600W/cmを目標とし、設計カプセル内Nak温度約300℃で照射する。

(3)ペレットの中心加熱に関する炉外試験
 完全ペレット及び人工割れを有するペレットを用いて中心加熱を行ない、ペレットの温度とペレット端面における半径方向の変形量の関係を精密に測定する。

2. 薄肉ジルカロイ被覆管に封入した二酸化ウランペレットの変形に関する照射後試験


 昭和47年度にJMTRで照射時間1原子炉サイクルの間、最大線出力密度約600W/cmで照射したカプセル1体の照射後試験を行なう。

9 「超音波探傷法による原子炉圧力容器、下鏡部の検査法に関する試験研究」

(株)日立製作所

 
 (研究目的)
 原子炉圧力容器の安全性を確保するために、運転開始後の非破壊検査法(供用期間中検査法)の確立が最近特に強く望まれている。

 本研究は、空間的制限および高放射能レベルの問題により手動検査が不可能に近い場所である。

 軽水型原子炉圧力容器のスカート内部の下鏡溶接部の健全性を調べるため、断面表示式自動超音波検査装置を試作開発し、これを供用期間中検査に適用するための基礎技術を確立することを目的として行なう。

 (研究内容)


1. 試験装置設計・製作
 可変角式超音波探触子を装着して数値制御によって位置決めされつつガイドに沿って被検部を自動走行する探触子自動走行装置を設計、製作する。

 また、その走行を制御する走行制御部、起音波深傷装置、探傷信号を断面映像として表示するための断面表示用信号処理装置、走査変換部および信号メモリ、映像表示部、探傷データを表示するためのデータ記録部によって構成される試験装置を製作する。

2. 個別試験

(1)探傷予備実験
 人工欠陥試験片を用いて上記試験装頭により、被検部の断面エコー像が表示されるよう各機器を調整の後、欠陥検出性能に関する試験を行なう。

(2)自動走行試験
 走行制御部の遠隔操作により探触子自動走行装置をテストブロックに沿って走行させ、その走行機能および位置表示機能に関する確認試験を行なう。

3. 総合評価試験

 探触子自動走行装置の走行動作ならびに起音波探傷動作を同時に行なわせ、テストブロック被検部より得られる超音波エコー信号による断面像を表示し、欠陥検出ならび識別性能に関する検討、評価を行なう。

10 「電気抵抗法による原子炉圧力容器表面検査法の信号処理・判断機能に関する試験研究」

三菱重工業(株)

(研究目的)
 原子炉圧力容器内面のクラックは大事故につながることが予想され、欠陥を早期に発見し、事故を未然に防止することが必要である。

 しかしながら、圧力容器周辺は強い放射能のため、検査時の接近が許されず、しかも広範囲の検査対象箇所があるため、遠隔操作により自動的に探傷を行なう必要がある。同時に膨大な検査情報は連続適確に処理することも必要である。

 現在、表面クラックの定量検出は電気抵抗法が最適と考えられ、47年度原子力平和利用研究委託費による「電気抵抗法による原子炉圧力容器表面検査法自動化に関する研究」において、各部分機能の確認、実用化の為の資料を得ることを目的として試験研究を行なっている。

 本検査法は多量のデーターがON-LINEで得られるが、これを整理し、欠陥の大きさ、深さ、などを明らかにするには多くの時間が必要であり、48年度はこれを自動化し、検査と同時に結果が判明するような信号処理技術に関する研究を行ない、本方式の実用化のための資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
 接触子から得られた信号を表示装置に送り、またこの表示装置は探傷面を部分的に分割し平面的な欠陥表示を行なうものとし、次のような研究を実施する。

1. 信号処理判断装置に関する研究

 本装置は接触子から得られた信号を探傷位置と対応して信号のバラツキが真の信号か否かを判断するものである。この装置は判断機能をミニコンピュータあるいは、単能化した電子装置のいずれが適当であるかを比較検討し、単純化した電子装置については、部分的に機能確認実験を行なう、判断の一例として接触子から得られた信号がバラツキの範囲を越えたものだけについて、その程度、位置及び深さが出力として得られるよう検討する。

2. 平面表示装置に関する研究

 遠隔操作装置で順次圧力容器内表面を探傷し、これを記録上に被検査面を分割展開して表示する。記録紙上には深傷した形を連続記録し、マップを作成する。

 なお、欠陥部分の正確な位置及び深さは信号処理判断装置の出力を参照するものとする。

3. 総合評価

 47年度の成果をあわせ、電気抵抗法による表面検査法について、供用期間中検査法としての実用化 にあたっての総合評価を行なう。

11 「船舶用一体型加圧水炉の概念設計に関する試験研究」

(社)日本造船研究協会

(研究目的)
 現在、舶用としての実用化がもっとも進んでいる一体型加圧水炉について、46、47年度に引つづいて概念設計を実施し、その構造、配置・性能等の概要をまとめ、今後解明すべき技術的、経済面問題点およびその舶用としての適応性、経済性の評価のための資料を求め、舶用炉開発計画の確立に資することを目的とする。

(研究内容)
 2,000個積、30ノット、120,000軸馬力のコンテナー船に塔載する熱出力300MW、軽水冷却、低濃縮ウランおよび可燃性ポイズン使用、螺旋式貫流型蒸気発生器を内装する一体型舶用炉を対象として下記各項目の設計、計算、その他を実施し、46、47年度の結果と合せて本概念設計をまとめる。

1. 2次系統概念設計

 蒸気発生器を炉心の側面に置くことによる2次系水の放射化を考慮して、次の各設備の概要をまとめる。
  (1)主蒸気系統
  (2)給水、復水系統
  (3)浄化系統
  (4)2次系統遮蔽

2. 計測制御系統概念設計

 次の各設備について概念設計を実施し、計画制御系統をまとめる。
  (1)炉自動制御設備
  (2)プロセス計装設備
  (3)制御棒駆動設備
  (4)制御盤

3. 配置の検討

 主要機器、補機器、諸設備の性能、寸法等を考慮して、次の諸室の配置をまとめる。
  (1)原子炉室配置
  (2)機関室配置

4. 事故解析

 次の4項目の事故解析と安全評価を行なう。
  (1)蒸気需要過大事故
  (2)蒸気発生器細管破断事故
  (3)燃料取扱事故
  (4)船体事故
  (5)安全評価

5. 要目等の整理、検討

 46年度以降概念設計した一体型舶用炉プラントの主要要目、各機器、設備その他の重量を整理し、 とりまとめる。また、燃料交換計画を検討する。
  (1)要目等の整理
  (2)燃料交換計画

6. サーベイ計算

 炉心および運転条件に関する次の3項目のサーベイ計算を行なう。
  (1)炉心サーベイ計算(核計算)
  (2)炉心サーベイ計算(熱計算)
  (3)運転条件サーベイ計算

7. 問題点の整理、検討

 46年度以降の概念設計の各項目について問題点を摘出、整理し、あるいは設計内容、方法等を再検討して、より適切な設計とするための問題点を求め、これらの問題点の解明方法を検討する。
  (1)設計条件その他
  (2)全体系統簡素化
  (3)炉 心 構 造
  (4)炉心支持構造
  (5)主冷却系統構成法
  (6)主冷却系統構造
  (7)加 圧 方 式
  (8)格 納 方 式
  (9)廃棄物処理方式
  (10)補助推進方式
  (11)最 適 炉 心

8. 舶用炉プラント製作費の推定


 46年度以降、本試験研究によりその概要をまとめた研究対象炉について、1次系、炉補助系その他各設備等の価格を見積り、これらを総合してこの舶用炉プラントの製作費を推定し、経済性評価のための資料を得る。

9. 総合評価

12 「食品照射における照射効果に関する試験研究」

(社) 日本アイソトープ協会

(研究目的)
 食品照射研究開発基本計画にもとづいて照射効果に関する研究が進められている食品のうち、馬鈴薯の発芽抑制はすでに実用化の段階に入り、玉ねぎ、米、小麦およびウインナ・ソーセージも安全性試験を終了あるいは実施中である。

 しかし、電子線によるみかんの表面処理および水産ねり製品のうち板付かまぼこについで生産量の大きいケーシング詰かまぼこについては、いまだ照射効果に関する充分な資料がない。

 本試験研究は、引きつづき各省庁の食品照射研究を補完しつつ、電子線によるみかん表面処理効果に関し、また貯蔵期間の延長を目的とするケーシングかまぼこに対するガンマー線照射効果に関して有用な知見を蓄積し、食品照射の実用化に貢献することを目的とする。

(研究内容)

1. みかんの表面照射に関する試験研究

 みかんの熟成度と褐変発生の関連を明かにするため、温州晩生種みかんの完熟および未熟な試料を4℃で半カ月および1カ月保存したのち100~150krad電子線処理を行ない貯蔵中における表皮褐変を調べ、かつ果皮の分析および微生物検査を行なう。

2. ケーシング詰かまぼこに対する照射効果に関する試験研究

 ケーシング詰かまぼこに300kradの線量でガンマー線照射を行ない10℃および30℃に保存して貯蔵中における弾性、色調、官能変化、微生物菌数、蛋白質、アミノ酸、揮発成分などの測定、分析を行ない、照射効果を明かにするとともに保存期間延長の可能性を検討する。

13 「核融合炉の構造材料評価に関する試験研究」

三菱原子力工業(株)

(研究目的)
 核融合炉実用化のための炉工学技術の研究開発の一環として、その最も基本的課題と考えられる構造材料の開発研究に焦点を置いて、炉体構造各部の核熱状態を解析することにより、特に適合性において期待される材料を選択評価すると同時に、その開発計画を検討する。

 さらに材料工学的見地から、主として真空壁およびブランケット部に対する概念設計のための設計基準を考察し、核融合炉実用化のための開発研究の基礎構築に資する。

(研究内容)

1. 炉体構造のモデリング


 核融合炉の真空壁、ブランケット領域、減速材領域、核熱遮蔽部等における構成材料並びに構造材料の核的及び熱的条件の把握を容易にするために一般化した炉体モデルを設定する。

2. 核熱状態の解析

 設定モデルについて各部の構成材料及び構造材料を選択し、中性子輸送計算、発熱計算、除熱計算を行ないその核熱条件を解析する。

3. 経年変化の検討

 核熱条件の解析に際して核種の変換、誓導放射能崩壊熱および放射線損傷の経年変化に関する検討を加える。

4. 材料選定基準に対する検討

 本試験研究において得られた諸解析結果と既に入手整理した各種物性データを照合しつつ、より精度の高い材料選定基準設定のための調整を行なう。

 こうして得られた成果を使って、一方では、核融合炉概念設計の検討にあたって基本的かつ重要な課題であるところの壁面負荷の許容限界設定に関する考察をもあわせて行なう。

5. 材料評価方法並びに材料開発計画の見直し

 昭和47年度試験研究は材料評価に対する一次作業として精度の荒いものであったので、本年度の諸検討結果と対比し、47年度に得られた材料評価方法並びに材料開発計画の見直しを行なう。

14 「核融合を目的としたプラズマ加熱用高出力高圧炭酸ガスレーザーの開発に関する試験研究」

日本電子(株)

(研究目的)
 レーザーを用いて核融合反応を実現しようとする試みは、在来の低べ一夕・プラズマ閉込め方式、高ベータ・プラズマ閉込め方式等と並んで最近きわめて強い関心が払われるようになった。

 レーザーを用いた核融合反応を実現するための入出力エネルギー均衡点(ブレイク・イーブン・ポイント)は約10KJと推定されているが、これに必要な大出カレーザーの開発には解決すべき多くの問題が存在している。

 本試験研究はパルス幅ナノ/秒程度、出力エネルギー1KJ程度の炭酸ガスレーザー最終段増幅器の実現に必要な電子ビーム透過膜機構-放電機構の開発等を実施し、レーザーを利用した核融合反応実現に必要な基礎技術を得ることを目的とするものである。

(研究内容)

1. 電子ビーム透過膜機構の開発に関する試験研究

 電子ビーム透過膜に要求される性能は100~300keVの電子ビームに対して充分な透過性を有し、かつ、数気圧の圧力差に耐え気密を保持しうることである。

 このため、膜材として有望と思われる素材を2、3種選定し、その物性について調査研究を行なうと ともに、気密保持機構の試作研究を行ない、高圧炭酸ガスレーザー増幅器用電子ビーム透過膜機構設計に必要な基礎資料を得る。

 なお上記の膜材の調査研究に際して、必要に応じて各膜材の膜厚の変化に対する電子ビーム透過特性の測定を行なう。

2. 均一放電機構の開発に関する試験研究

 被励起気体の一様な励起は、得られるレーザー光の一様性、被励起ガスの絶縁破壊防止に大きな影響を有する。

 このため、高圧力下で一様な放電励起を実現するため必要な電極構造についての検討、この結果に基づく放電機構の試作、これを用いた5~15気圧の範囲での放電特性の測定等を行ない、高圧炭酸ガスレーザー、増幅器用均一放電機構設計に必要な基礎資料を得る。

3. 総合検討

 上記1、2項の結果を用いて高圧炭酸ガスレーザー増幅器を試作し、これに炭酸ガス、窒素、ヘリウムの混合気体を装入し、逆転分布密度の測定を行なう。

 測定条件は総圧力5~15気圧、ガス混合比の種類数種とする。

 この測定をもとに電子計算機を用いてシミュレーションを行ない、パルス幅の変化に対する出力の変化等を計算し、高圧炭酸ガスレーザー増幅器設計に必要な基礎資料を得る。

 また、混合気体の絶縁破壊のしきい値を5~15気圧の圧力範囲で測定し、今後の設計の資料とする。

15 「沖合立地方式による原子力発電所の総合評価に関する研究」

(株)野村総合研究所

(研究目的)
 近年、急速に大きくなってきている原子力発電所の立地問題を解決するための1つの方策として、新立地方式への関心が高まってきている。

 しかし、新立地方式の開発を具体化させるためには、技術的、経済的な検討は、もとより、開発の規模や性格から考えて、自然環境、社会環境への影響をも含めた総合的な評価体系のもとで、事前こ十分な検討がなされなければならない。

 このため本研究では、新立地方式として、昭和47年度原子力平和利用研究委託費による研究成果から実現の可能性が高いと考えられる沖合立地方式(沖合浮揚式および沖合着底式の2方式)を取り上げ、この立地方式による原子力発電所の実際の建設、運営において、生ずる社会および自然環境への影響、およびその対策について、技術的、経済的側面を含めた総合的な評価体系のもとで予測評価を行ない、沖合立地方式の開発の推進に関する問題点を整理し、今後の立地政策の立案に対して適切な資料を提供することを目的とする。

(研究内容)
 沖合立地方式(沖合浮揚式および沖合着底式)による原子力発電所について、その具体的プランを想定し、以下の研究項目にしたがって、環境への影響の検討を中心とした総合評価を行なう。

 なお、現在、米国で計画されている沖合立地原子力発電所について調査を行ない、本研究の参考とする。

1. 沖合立地原子力発電所の具体的プランの作成
 地形、地質、海流などの地理的条件・周辺人口・海面利用形態などの社会的条件の想定を行ない、2~3ケ所のモデル立地点を設定し、各立地点での原子力発電所(軽水型炉)のモデルプラント図を作成するとともに、建設計画の検討を行なう。

2. 沖合立地原子力発電所の経済性および直接的利益の検討

 1項で設定された沖合立地原子力発電所の建設、運営費を試算するとともに、沖合立地方式を採用することによる、立地点の拡大などの直接的な利益の検討を行なう。

3. 環境評価のための評価項目および評価システムの整備

 沖合立地原子力発電所の環境への影響を評価 するために、評価項目の分類、各項目間の関連性、評価の手順、個別項目での評価結果の集積方法などの検討を行ない、評価項目および評価システムを整備、確立させる。

4. 環境への影響の予測と対応策、代替策の検討


 3項で整備された評価システムに則って、1項で 設定された具体的な沖合立地原子力発電所の建設、運営計画についての環境への影響を予測する。

 特に重大な負の影響が予想されるものについては、その影響を軽減させるための対応策あるいは代替策を求め、それらの効果の技術的、経済的側面からの検討を行なう。

5. 環境への影響の評価基準の設定とそれに基づく評価

 電力あるいはエネルギーの利用に対する社会的な要請(ソーシャル・ニーズ)を求め、これに基づいて各環境評価項目の重みづけ、あるいは優先順位づけを行ない、これを評価基準として、4項で求められた環境への影響の評価を行なう。ソーシャル・ニーズの把握は、各界に対するアンケートをもとに行なうものとする。

6. 総合評価

 沖合立地原子力発電所の利点および不利益点を、その具体的な建設・運営計画についての経済性・直接的利益・環境への影響および影響を減ずるための対策の検討をもとに、コスト対ベネフィットの概念に基づいて評価・検討を行なう。

16 原子力発電所の地下立地の安全性評価に関する研究

(社)土木学会

(研究目的)
 原子力発電所の立地に対しての社会環境上の制約を、地域の自然環境の保全及び安全性に対する信頼度の向上の面から、工学的に解決する研究が急務となっている。

 地上における貴重な自然環境を積極的に保存し、かつ、国土の有効な利用をはかるための方策として、原子力発電所の地下立地が注目されている。

 地下立地による原子力発電所の具体化を検討するにあたっては、最も基本的な問題点である安全性が明らかにされる必要がある。

 本研究は、このため原子力発電所の地下立地について技術的側面から研究し、安全性評価に関する基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1. 大規模な地下空洞の安全性評価

 とくに海岸の地下に立地する場合の地下空洞の安全性について土木工学上の問題を数値解析し、地質条件に応じた空洞の安全な規模を明らかにする。

2. 地下室洞周辺での核分裂生成物(FP)地下水の岩盤や土壌への吸着、透水に関する現象の数値シミュレーション手法の検討

 地質条件に応じたFPのコンティンメント性能を比較検討するための基本的な安全評価手法を開発する。

17 「大気中気体状および粒子状硫黄の放射線利用による同時分析に関する試験研究」

大阪府

(研究目的)
 現在大気中亜硫酸ガスの測定は、主として化学的な方法によって行なっているが、正確度において疑問点があり、測定時間についても問題があるため高感度で物理的な直接測定法が望まれている。

 また、近時、大気浮遊粒子に吸着されている硫黄酸化物、特に硫酸ミストの疫学的重要性が強調されはじめ、これの適確な測定法が強く要望されるようになっている。

 すなわち、大気中の亜硫酸ガス濃度および大気浮遊粒子に含まれる硫黄の濃度の適確な同時測定の技術が必要である。

 本試験研究所は、放射性同位元素を励起線源として利用するエネルギー分散型螢光Ⅹ線分析を適用して、上記の要望に応える測定法を開発するための基礎資料を得ることを目的とするものである。

(研究内容)
 大気浮遊粒子の捕集は通常のフィルターにより、また、亜硫酸ガスの捕集は、特殊な化学処理を施したフィルターによって行ない、得られた試料について、硫黄の分析を行なうが、本試験研究においては、この際問題となる次のような諸項目について研究を行なう。

1. 螢光Ⅹ線分析法による硫黄分析上の問題点の解決

 硫黄の特性Ⅹ線はエネルギーが小さいため、試料の自己吸収効果などがきわめて大きいので特殊な注意が必要である。大気浮遊粒子捕集フィルターと亜硫酸ガス捕集フィルターの両者について、この点を中心として検討を行ない、正確な定量方法を確立する。

 この際、比較のため炎光光度計(Flame photo-metric Detector)による硫黄分析を行なう。

 また、感度に対する見積り、シングルチャネル波高分析器利用による測定の簡易化の検討を行なう。

2. 亜硫酸ガス捕集用フィルターの作製と捕集効率の測定

 化学濾紙にカリウムあるいはナトリウム炭酸塩又は水酸化物等を含浸させて作製した亜硫酸ガス捕集用フィルターについて捕集効率を測定し、フィルター作製法について検討する。

 捕集効率の測定は標準亜硫酸ガス発生器で発生した亜硫酸ガスを濾紙に捕集し、これを分析することによって行なう。この際とくに湿度の捕集効率に及ぼす影響に着目して調べる。

3. 大気中亜硫酸ガスと浮遊粒子に含まれる硫黄の同時分析に関する研究

 大気浮遊粒子捕集用フィルターを前段に、亜硫酸ガス捕集用フィルターを後段に配置して大気を吸引した後、それぞれのフィルター上に存在する硫黄を螢光Ⅹ線分析法および炎光光度計法によって測定比較することにより、この方法による測定可能濃度範囲について検討を行なう。

 また、将来本方式によって自動的連続測定を行なう際の問題点を明らかにする。

18 「放射化分析による環境試料中の微量元素の簡易迅速分析法の基準化に関する試験研究」

(財)日本分析化学研究所

(研究目的)
 一般に、環境汚染調査を行なう場合、有害元素の定量は微量分析を要求されることが多く、高度の技術と日時を要するが、最近、有力な手段として放射化分析法がさかんに活用されるようになってきた。

 なかでも分析可能元素数の面で大きな利点を有する非破壊分析法が注目され、その簡便かつ迅速な方式の基準化が強く望まれている。

 本試験研究ではγ-γ同時.逆同時計測による非破壊分析法を複雑な組成をもつ環境試料に適用した場合の再現性、分析精度などについて検討を行ない本分析法の基準化をはかるための基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
 検出感度、核種の選択能力等の性能を高め、環境試料中の多元素非破壊放射化分析を精度よく、比較的簡単に行なえる方式を確立するため、以下の研究を行なう。

1. 分析精度の検討

 原子炉を用いて試料を照射して放射化し、その放射能をGe(Li)半導体検出器を用いて測定する。この際NaI(Tl)検出器を組合せ、γ-γ同時.逆同時計測法をとり入れた場合とゲートをかけない場合の分析精度の比較を行なう。

2. 非破壊放射化分析法基準化のための検討

 土壌、海底堆積物および生体試料を試料とし、試料中に含まれる多数の元素をγ-γ同時逆同時計測による放射化分析法で定量し、とくに極微量元素について再現性および分析精度などについて検討し、化学分析の可能な元素について原子吸光法、吸光光度法等と比較検討することにより、非破壊放射化分析法の基準化を図るための基礎資料を得る。

19 「γ線スペクトロメトリーによる水試料中の短半減期有害微量元素の定量技術に関する試験研究」

東京都

(研究目的)
 高分解能Ge(Li)検出器、多重波高分析器さらには電算機などの普及により、放射化分析法による環境試料中の微量元素の定量は各方面で利用されるようになってきている。

 しかし水試料についてはそのほとんどが長、中、半滅期核種についての分析で、短半減期核種についての利用は少ない。

 これは水試料中に存在する多量のナトリウム、塩素などによる妨害などの問題点が多いためであるが雨水をはじめとする環境水試料中のこれらの元素の定量は、従来法では感度も悪く、分析操作もはん雑なため感度のよい放射化分析法の確立が必要である。

 本試験研究では環境水試料中の微量有害元素のうちとくに短半減期核種を生成する元素の最適分析技術を確立し、その実用化検討をすることを目的とする。

(研究内容)
 本試験研究は下記の項目にわけて行なう。

1. 前処理による目的元素の濃縮法に関する研究

 バナジウム・セレンをはじめとする短半減期核種に属する元素の捕集法として,ⅰ)共沈法による 濃縮ⅱ)吸着部による濃縮などを検討し、その一部について、放射性アイソトープをトレーサとして用いて、その収率を検討する。

 また、濃縮試料中の短半減期核種に属する元素の存在比が変化した場合の目的核種の定量におよぼす影響について検討する。

 なお、濃縮試料は原子炉照射によって放射化し、目的元素が短半減期であるため、照射後ただちに、可搬型多重波高分析装置により、分析を行なうものとする。

2. 環境水試料の分析試験および実用化の検討

 前項において検討された最適な方法により、東京都をはじめそれに影響をおよぼす周辺各地区および全国各地(6地点)における地域別の環境水試料について短半減期生成核種の定量を行ない本方式の実用化の検討を行なう。

20 「トリチウム廃棄物の安全取扱技術の開発に関する試験研究」

(社)日本アイソトープ協会

(研究目的)
 原子力平和利用の発展に伴い、その使用量が著しく増加してきたトリチウムについては、その廃棄物処理についての安全取扱技術が確立していないため、広範な用途があるにもかかわらず、その利用が最近停滞しつつある。

 本試験研究は各種トリチウム廃棄物の処理を検討し、安全かつ容易で、しかも経済的なトリチウム廃棄物の取扱技術を確立するに資する基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
 本試験研究はトリチウム液体廃棄物およびトリチウム汚染動物の処理法について検討するとともに、これら処理されたトリチウム廃棄物の一般環境に対する汚染監視に必要な低レベル液体トリチウムの測定技術について、以下の試験研究を実施する。

1. トリチウム液体廃棄物の処理法に関する試験研究

 引火性の溶媒を含むトリチウム液体廃棄物を ⅰ)ゲル化剤によりゲル化させ難燃性の固形物とする。ⅱ)液体廃棄物およびゲル化して固形物としたものを焼却する場合の各種技術的条件について検討する。

2. トリチウム汚染動物の処理法に関する試験研究

 トリチウム汚染動物をⅰ)凍結、保存、輸送および焼却する。ⅱ)ゲル化させる方法とゲル化した動物を保存、輸送および焼却する場合の各種技術的条件について検討する。

3. 低レベル液体トリチウムの測定技術に関する試験研究

 科学技術庁告示の水中許容濃度以下のトリチウムを高精度で、しかも、多数試料を自動的に測定し得る技術について検討する。

21 「各種放射線の混在場における被曝管理用熱螢光線量計に関する試験研究」

松下電気産業(株)

(研究目的)
 近年原子力設備ならびに放射線発生装置を有する施設が各地に設置され、その従事者に対する、正確、迅速な個人被曝管理が要望されている。これに加えて、これら施設における各種放射線の混在場での放射線の識別とその線質の評価ならびに多人数の管理を行なうための迅速なデータ処理技術の開発が望まれている。

 本試験研究は、速中性子線用素子ならびにこの素子を加えた複合素子の開発と測定値から管理データ作表までの機構方式の開発を行い、各種放射線混在場における放射線の線種、および線量の評価を正確にして、しかも迅速に行いうる個人被曝管理用熱螢光線量計の開発を目的とする。

(研究内容)

1. 速中性子用熱螢光素子の検討


 熱螢光材料により速中性子線を検出するには、軽質量の反跳原子核による熱螢光材料の励起を用いる方式と、人体その他の物質で減速された熱中性子用素子で検出する方式が考えられ、この両者について検討を加える。

(1)反跳原子核による方式
 熱螢光材料としてCaSO4を用い、軽質量の原子を含む物質、たとえばアルコール等を混合した素子について検討する。

(2)減速させる方式
 熱螢光素子としてCaSO4を主体とした熱中性子線用素子を用い、人体による速中性子の減速によって生じた熱中性子線を他の線種と区別して測定することの可否を検討する。

 以上の二つの方式で、実際の被曝管理に向くと考えられるものを複合素子エレメントとして採用し、Ⅹ、γ、β、熱中性子線、速中性子線の分離測定が可能な複合素子を試作する。

2. 測定値から管理データ作表までの機構・方式の開発

 複合素子の連続測定部は昭和47年度試験研究で得られた結果を使用し、これにミニコンピュータを組合せて、個々の単素子の測定から管理データの作表までを一貫して行うに必要な基礎技術を開発するため、下記の項目について試験研究を行う。

(1)連続自動測定部とミニコンピュータとを接続するインターフェイス部分を試作し、信号受渡しの実験を行う。

(2)個々の測定値を個人番号と対応させて被曝線量、被曝線種、所属区分などにより分類、集計、作表を行い、個人被曝管理用熱螢光線量計設計の基礎資料を得る。

3. 特性試験及び評価

 上記の複合素子と測定装置を使用して各種の放射線に対する特性試験及び測定値の分類集計などを行う。

 それぞれの複合素子に速中性子線及び他の放射線を照射し、速中性子線の線量特性、速中性子線と他の放射線の分離能などの試験を行う。

 さらに個々の測定値を被曝線量、被曝線種などによる分類、作表を行って、総合システムとしての処理能力とデータの信頼性について評価する。

22 「密封された放射性同位元素の検査基準に関する試験研究」

(社)日本アイソトープ協会

(研究目的)
 近年、RI利用の発展に伴い、密封線源の使用数量が著しく増加するとともに、多種類の線源が開発、利用され、その使用形態、使用環境もまたきわめて多様化してきた。

 このような状況に対処し、密封線源の安全性を確保するためには、とくに下記の技術的基準の確立が早急に必要である。

 各種密封線源について、安全性確保の面から、それぞれに要求される耐用性試験と最適な漏洩、汚染検査法に関する技術的基準の確立、ならびにそれぞれの密封性が障害防止法に適合する使用条件、使用環量に関する技術的基準の確立に資する基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
 昭和46年度および昭和47年度に引き続いて、現在汎用され、あるいは近く汎用が見込まれている密封線源16種について、以下の試験所究を実施する。

1. 耐用性に関する試験研究

 各密封線源を対象として、圧力試験、振動試験、衝撃試験、パンク試験、温度試験、せん断試験、耐零囲気等の試験を実施し、これら外的条件によるカプセルの変化と放射性物質の漏洩、汚染の程度を調べる。

2. 複合条件下における耐用性に関する研究

 各密封線源を対象として、複合した外的条件、すなわち加熱したあとの線源について、他の各種条件(圧力、衝撃、パンク、せん断)との関連における耐用性試験を実施し、これら複合した外的条件によるカプセルの変化と放射性物質の漏洩汚染の程度を調べる。

23 「ラジオアイソトープ電池を用いた心臓ペースメーカーの安全評価に関する試験研究」

(財)日本心臓血圧研究振興会

(研究目的)
 これまで用いられてきた心臓ペースメーカーは水銀電池をその電源としており、このためにその寿命は2~3年であった。

 このことは、2~3年ごとの心臓ペースメーカーの交換を意味し、これによる患者への精神的、肉体的、経済的負担は計りしれない。

 そこで、短寿命である水銀電池に代って長寿命、高信頼性であるラジオアイソトープ電池を適用するための研究開発が進められている。

 しかしながら、この電池には、ラジオアイソトープが用いられているために、実用化に先だって、安全性に関して十分な検討がなされなければならない。

 本試験研究は半減期(86・4年)、線種(α)等によりその優位が説かれているプルトニウム238を用いたラジオアイトソトープ電池式心臓ペースメーカーの実用化に際し、最も基本的な問題である安全評価に関する試験研究を行なう。

(研究内容)
1. 心臓ペースメーカー用プルトニウム238電池の安全設計に関する基礎的検討

 プルトニウム238熱源およびこれを用いたアイソトープ電池を輸入し、その諸特性の測定を行なうとともに熱電モジュールを試作し、その諸特性の測定を行ない、心臓ペースメーカー用プルトニウム238電池の安全設計に必要な基礎資料を得る。

2. プルトニウム238電池式心臓ペースメーカーの生体に及ぼす影響に関する基礎的検討

 プルトニウム238電池式ペースメーカーのもれ放射線のエネルギースペクトルおよび空間線量分布の測定と、理論的解析を行ない、もれ放射線の生物学的影響評価に必要な基礎資料を得る。

3. 集団、社会および環境を考慮したプルトニウム238電池式心臓ペースメーカーの安全性に関する基礎的検討

 心臓ペースメーカーの線源カプセル、電池カプセル用の素材として適当なものを調査、選定し、選ばれた素材について耐熱性、耐水性、耐食性、の試験を実施し、集団、社会および環境を考慮した安全 性の検討に必要な基礎資料を得る。

24 「放射性発がんの誘発機構の解明および放射線障害の検出技術の確立に関する試験研究

(財)原子力安全研究協会

(研究目的)
 わが国における放射線の影響に関する研究は主として高線量域における急性障害に関して行なわれ、かなりの知見が集積されている。

 一方、原子力の開発利用の進展に伴って重要な低線量の人体障害に関する研究についても、放射線医学総合研究所を中心として、マウスを用いた放射線発がん、霊長類の細胞遺伝学的研究、および内部被曝についての大規模なプロジェクト研究の実施が考慮されている。

 しかしながら、本目的の達成のためには、これと一体となった体系的、総合的データが必要であり、とくに、放射線発がんの誘発機構の解明および放射線障害の検出技術の確立が必要である。

 このため、本研究はとくに長期的視野に立ち、放射線障害の機構の解明とこれに必要な実験技術の確立を図るため、下記の項目についての基礎資料を得ることを目的とする。

1. 発がんの研究に関しては、ウィールス、化学物質等宿主内外の発がんに関与する因子の効果を明らかにし、放射線と環境因子の発がんへの相対的寄与の程度についての定量的情報をうる。

2.低線量の放射線障害の検出のため、子宮被曝による大脳未分化細胞について、低線量の影響、軟骨形成能の分化機構を明らかにするとともに、最低有意線量を求める。

3. 放射線による染色体異常の低線量効果の検出技術を確立するため、技術の能率化、標準化の資料と、正常日本人集団の染色体異常の頻度を求め、また霊長類についても技術の確立を図る。

4. 放射線による遺伝子突然変異の検出技術の確立のため、培養細胞を用い、使用系統、マーカー遺伝子の選択等の手法の開発を行なう。

(研究内容)
1. 低線量放射線の白血病発生への寄与の研究


(1)マウス、ラットに放射線照射単独処理、化学物質の単独投与を行なって、白血病発 生率の測定を行なう。また、これら両者の同時投与によってえられた発がん率と比較 し、共同効果の有無について検討する。

(2)生理機能の異なる各年令の実験動物(マウス、ラット)を一定線量で照射し、白血病発生率を比較検討する。

2. 低線量放射線の子宮内被曝の影響の研究

(1)低線量Ⅹ線の照射をうけた妊娠マウスに3Hチミジンを注射し、その後24時間にわたって経時的に胎仔大脳のオートラジオグラフをつくり、ラベルされた細胞の比率より分化細胞群の細胞周期を算出する。

(2)早期、中期、後期のニワトリ胎児より軟骨細胞をとり出し、放射線照射を行ない、シャーレ内で集落をつくらせ、その中で軟骨形成能をもっている集落の率を測定し、分化機能発現への放射線障害を調べる。

3. 人類、霊長類の染色体異常の検出技術の開発研究


 染色体異常を検知するため、正常日本人の末梢リンパ球を材料として、写真撮影法および肉眼による観察法により染色体異状の検出法の能率化について検討する。

 また、霊長類についてはカニクイザル、リスザルを飼育して、これについての末梢リンパ球の染色体異常の検出技術について検討を行なう。

4. 培養細胞における突然変異の検出に関する研究

 チャイニーズハムスターの細胞を用い、レプリカ法によってアミノ酸の栄養要求株、薬剤抵抗性株を分離し、それぞれについてⅩ線による復帰突然変異率を測定し、最も高感度のマーカー遺伝子の選択について検討する。

25 「核物質不明量の統計分析による国内保障措置検証システムに関する研究」

(財)核物質管理センター

(研究目的)
 わが国の保障措置の円滑な運営を図るためには、わが国の国内物質管理の実情に適応した適正な保障措置検証システムを確立する必要がある。

 本研究の目的は、これに必要な国内核物質の保証措置検証システムを核物質不明量の統計分析の観点から設計し評価することにある。

(研究内容)
 核物質不明量(以下MUFという)の統計分析のために、1、施設者側データと査察側データを比較検討する統計手法の開発、2、誤差伝播モデルの開発、3、設計情報によるMUF分散値(σMUF)と運転データによるMUF分散値(SMUF)を比較検討する統計手法の開発、(4)MUFの統計検定プログラムの開発を次のような方法で行なう。

1. 施設者側データと査察側データを比較する統計手法の開発

 施設者側データの信頼性を知るためには、査察側データを採って、これと比較することが必要である。このためにはD-統計を用いる。

 D統計とは

   D=(施設者側データ)-(査察側データ)

で定義したDデータ量が、いかなる統計集団となるか、その平均値と分散を調べ、統計分析上必要とするデータの質と量が満足されているか否かを検定する。

2. 誤差伝播モデルの開発

 ノルマル・オペレーション・ロスを知るためには、正常時における測定値のランダム誤差(偶然誤差)シスマテック誤差(系統誤差)バイアス(偏り)を知らねばならない。

 これらの誤差は統計上特有な分布を形成し、総合された分布がある測定点で得られれば、その分布を統計数理分析することにより知りうる。たとえば、バイアスは平均値の変動によって知りうるが、これは分散値の変動として伝播しない。偶然誤差は、同一試料についてn回測し、で分散が定まる。

 システマチック誤差はで分散が伝播しない。

 したがって、誤差解析を行なうために誤差伝播の数学モデルの解析を行なうとともに、ノルマル、オペレーション・ロスをどの程度に許すべきかの基準(α値)の評価を行なう。

3. 設計構報によるMUF分散値(σMUF)と運転データによるMUF分散値(SMUF)を比較検討する統計手法の開発

 まず拡散を検知しうる確率基準(1-β)の評価を 行なう。(1-β)は90%以上が要求されるものと仮定し、2項で作られた誤差伝播モデルとα値とによってMUFの統計分布の積分値が(1-β)値といかなる関係があるかを解析し、α、1-β、核分質拡散量(M)、σMUFを統計評価基準とした場合のσMUFとSMUFを統計的に比較検討する。

4. MUFの統計検定プログラムの開発

 1~3項によって得られた解析の結果を利用し、さらに核物質拡散量(Puについて1~8kg、235Uについて1~25kg)を実在庫棚下し頻度の関数について警報を出すプログラムを作成する。

 これによって、ノルマル・オペレーション・ロスとの対比による警報発生までをプログラム化し、施設者側の記録および報告データによるMUFの検討を可能とするシステムの確立に必要な基礎資料をうる。

26 「独立検証のためのサンプリング手法の研究およびこれを含めた各種原子力施設における保障措置適用システムに関する研究」

(財)核物質管理センター

(研究目的)
 独立検証のためのサンプリング手法の研究およびこれを含めた各種原子力施設における保障措置適用技術の研究を行ない、わが国の保障措置システムの確立に資することを目的とする。

(研究内容)

1. 独立検証のためのサンプリング手法の評価検討

 核燃料加工施設の実際に流れている加工工程の各主要測定点において、測定・分析データを採取しまた、試料の採取・分析を行なって、それらを解析評価し、施設者の核物質管理データを検証するために国が行なうべきサンプリング手法(サンプリング数、手続きなど)を検討する。

2. 各種原子力施設における保障措置適用技術の評価検討

 核燃料加工施設・再処理施設などの各種原子力施設の代表例について、記録報告システム(パッチの具体的定義、ソースデータの具体的定義、受払間差異の帳簿上の処理方法、報告書の記載要項等)、計量システム(施設者が準備すべき計量システム、査察時に国が実施すべき計量項目、計量方法等)の評価検討を行ない、保障措置適用マニュアルを作成するために必要な基礎資料をうる。

27 「濃縮施設に対する査察方式の最適化に関する研究」

(財)工業開発研究所

(研究目的)
 わが国の保障措置システムは、従来原子炉施設、加工施設および再処理施設をその対象としてきた。

 近年ウラン濃縮をめぐる研究開発が進展し、濃縮施設建設計画が具体化しつつあること、さらに、濃縮施設は他の施設にはみられない特異な性格をもっており、保障措置システムに重大な影響を及ぼすこと等から、わが国においても濃縮施設を無視した保障措置システムを考えることは近い将来において不可能になると予想される。

 本研究は、これらの情勢に対処するために濃縮施設に対する査察方式の最適化を試みることにより、国内査察システムの確立に寄与することを目的とする。

(研究内容)
1. 濃縮施設のミクロ・モデルの作成に関する研究

(1)ガス拡散プラントおよび遠心分散プラントについて、本研究でとりあげるべき模擬プラン トの規模、構造を決定する。

(2)国外におけるこれら2種のプラントの運転実績データを調査し、模擬プラントの運転データの基礎とする。

(3)(1)、(2)をもとにして国内の軽水炉燃料を作る場合の模擬プラントの年間運転スケジ ュールを含めた対照データを作成し、ミクロ・モデルの原型を設定する。

(4)色々な操作条件をあたえることにより、種々の変動をともなった模擬プラントの運転データが出力されるようなミクロ・モデルを作成し、データ・ジェネレータとしての試験計算を使ない、修正、再計算を行なって、ミクロ・モデルを完成させる。

2. 濃縮施設に対する査察方式の最適化に関する研究

(1)模擬プラントの濃縮工程における濃縮度の変化にともなう有効質量およびクリティカル・タイムの変化を算出し、これを他の施設、すなわち加工施設、動力炉施設、再処理施設と比較検討する。

 この結果、各施設に共通の査察強度を算出する定義式を導き、この定義による査察強度にもとづき、査察頻度の最適配分を計算する。

(2)模擬プラントにおける査察上の物質収支区域(MBA)、主要測定点(KMP)を設定し、各KMPへのサンプリング方法すなわちサンプリング頻度とその場所的時間的配分を定式化する。

 次いで、各種の統計的検定理論によって、上記のサンプリング方法で算出される各データを検定し、その結果を比較検討する。

(3)最後に、サンプリングに要する費用と、そのときの検定結果としての効果を計算し、費用対効果解析にもとづくサンプリング方法の最適化を行なう。

28 「加工施設の操業のシミュレーションによる国内査察に関する研究」

三菱金属鉱業(株)

(研究目的)
 加工施設の操業を模擬するシステムを開発し、加工施設内の核物質の流れの状況を把握することにより、施設の受払間誤差(SRD)、帳簿在庫、実在庫、不明損失量(別MJF)の合理的な期待値を求め、各施設の計量管理上の実際の記録を正当に評価することのできるシステムを開発する。

(研究内容)

1. 加工施設の操業プロセスの解析

 物質収支区域(MBA)および主要測定点(KMP) を設定し、加工施設の操業プロセスを検量工程を含めて解析し、SRD、MUFの発生要因を解析する。

2. 計量管理情報を得るための模擬システムの開発と情報の統計的評価

 1項において解析した操業プロセスを統計的に模擬できる数学モデルを開発する。

 すなわち、核物質の流れに応じて、真値をあらかじめ設定しておき、乱数を発生させることにより各KMPでの検量操作 を模擬し、加工工程については、加工時間、スクラップ発生状況等を特性値としてインプットし、加工ロス、スクラップの発生状況をも併せて模擬する。

 以上により想定したMBA,KMPの設定方法およびKMPの検量方法に対応する計量管理情報を得て、MUFを統計的な検定方法により評価する。

3. 例題計算

 MBA、KMPの設定、検量方法および精度等の異なるいくつかの加工施設を想定して、2項で求めたシステムの例題計算を行なう。

29 「保障措置のための検証を目的とした核物質測定法に関する研究」

(財)核物質管理センター

(研究目的)
 核物質の計量管理こ用いられる各種測定法について、誤差発生原因の解析、実用性の検討等を行ない、わが国の保障措置の効果的な実施に資することを目的とする。

(研究内容)
 各種原子力施設の主要測定点において、国が実施すべきウランおよびプルトニウムの測定法のうち。①放射線利用測定法(ガンマ線スペクトル法〔パッシブ.ガンマ.アッセイ〕およびRI中性子源利用〔アクティブ. ニュートロン.イントロゲーションの一部〕)②破壊検査法(化学分析法および質量分析法)の2種類の方法について、次のような方法で誤差の解析を行ない、かつ測定精度および実用性の見地から総合評価を行なう。

1. 各種測定法の比較検討

 各種測定法の測定手順、標準試料、所要時間、経費などの観点から実用可能と思われる測定方法を選び出す。

2. 測定精度の検討

 1項で選び出された測定法につき、測定手順、機器較正法、測定データ処理法などを検討し、さらに分取誤差、個人誤差、較正誤差などの測定誤差の解析を行なう。

3. 総合評価

 1、2項の検討結果を、測定精度、実用性の観点から総合評価を行なう。

30 「自発放射線を利用した核燃料物質の非破壊分析法に関する試験研究」

(学)近 畿 大 学

(研究目的)
 再処理施設等における核燃料物質中にはウラン235およびプルトニウム239以外のウラン、プルトニウム同位体が相当量存在する。

 最近の研究により、核燃料物質の光核分裂反応を利用した非破壊分析を行なう際、被分析物中に含まれるウランおよびプルトニウム同位体の存在が、測定精度にかなりの影響を及ぼすことが明らかになってきた。

 このため、光核分裂反応を利用する核燃料物質の非破壊分析技術の実用化にはこれらのウランおよびプルトニウム同位体の計測が必須である。

 本試験研究は、これらのウランおよびプルトニウム同位体が放出する自然放射線を利用して、試料中のウランおよびプルトニウム同位体の存在比を非破壊的に求める技術を検討し、前記の光核分裂反応を利用した核燃料物質の非破壊分析技術の実用化に必要な基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)

1. ウラン同位体およびプルトニウム同位体の自発γ線スペクトル測定に関する試験研究

 ウランおよびプルトニウム同位体の存在比が既知であり、かつ、自己吸収が無視しうる程度の少量の試料につき、Ge(Li)半導体検出器および多重波高分析器を用い、自発γ線のスペクトルを測定し、これらの同位体の放出する自発γ線のエネルギー、それぞれの相対強度を決定する。

 なお、上記同位体存在量既知試料としては次のものを使用する。

 ウラン試料ウラン235重量比、93、90、20、10、5、3、1.5、0.22%プルトニウム試料 プルトニウム239重量比、99%、および原子炉級プルトニウム(全核分裂性物質量、91、83、80、77、50%)

2. ウラン同位体およびプルトニウム同位体の自発γ線の試料中における自己吸収の解析に関する試験研究

 核燃料物質試料中における自発γ線の自己吸収に関する基礎的資料を求めるため、次に示す酸化ウラン・ペレットおよび燃料ピンについて、133Ba、137Cs、241Amから発生するγ線の透過率を測定する。

  酸化ウラン・ペレット  10mmφおよび14mφの低濃縮(1.5~4%)ウラン
  燃料ピン  11mmφおよび14mφの5%濃縮および天然ウラン

3. ウラン同位体およびプルトニウム同位体の自発γ線による非破壊分析に関する試験研究
 1および2項の試験研究の成果をもとに、ウランおよびプルトニウムの各同位体の非破壊分析を行なう上で最も有利であり、かつ、他の同位体の自発γ線からの妨害を受けることの少ない自発γ線エネルギーを選定する。

 次に選定した各γ線エネルギーについて、Ge(Li)半導体検出器およびシングルチャンネル波高分析器を用いて測定すると同時に、外部線源からのγ線の試料、透過量を測定する。

 これら測定結果をもとに、自己吸収補正によるウランおよびプルトニウムの同位体の存在比の測定を行ない、同法の精度について検討を行なう。
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