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中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉の
設置変更(2号炉増設)に係る安全性について


昭和48年5月12日
原子炉安全専門審査会
昭和48年5月12日
原子力委員会
  委員長 前田佳都男殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

 中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉の設置変更(2号炉増設)に係る安全性について当審査会は、昭和47年10月3日付け47原委第383号(昭和48年5月12日付け48原委第146号で一部訂正)で審査の結果を求められた標記の件について、結論を得たので報告します。

  Ⅰ 審査結果

 中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉の設置変更(2号炉の増設)に関し、同社が提出した「浜岡原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(2号炉増設」)(昭和47年9月29日付け申請、昭和48年5月4日付け一部訂正)に基づいて審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

  Ⅱ 審査方針

 当部会は、次のような考え方および方針のもとに審査をすすめた。

(1)審査に当っては、平常時は勿論、地震、機器の故障およびその他の異常時においても一般公衆および従事者に対して放射線障害を与えず、かつ、万が一の事故を想定した場合にも一般公衆の安全が確保されるべきであることを基本方針とした。

(2)審査を行なうに際しては、原子力委員会がこれによるべきであると指示した「原子炉立地審査指針」および「安全設計審査指針」への適合性を検討した。

 また、平常時の許容被ばく線量および放射性物質の放出管理については、「原子炉の設置、運転等に関する規則等の規定に基づき、許容被ばく線量等を定める件」(昭和35年科学技術庁告示第21号)に適合することのほか、国際放射線防護委員会の勧告に基づき実用可能な限り放射性物質の放出を低くすることを目標とすべきであることを方針とした。

(3)審査を行なうに際しては、中部電力株式会社浜岡原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(2号炉増設)および添付書類等に基づき、当該原子炉施設の設置許可段階における基本的計画が安全上から見て妥当であるかどうかを検討した。

 これらの審査の対象となった設置変更許可申請書およびその添付書類に記載されている基本的事項が今後の詳細設計、施工、検査および運転の段階においても堅持されることが法令上前提となっているものである。

  Ⅲ 審 査 内 容

 1 立 地 条 件

 本原子炉(以下「2号炉」という。)の設置に関する立地条件については、「原子炉立地審査指針」に適合しているものと認められる。

 敷地の気象、地盤、水理、地震および周辺の社会環境の状況は次のとおりである。

1.1 敷地および周辺環境

 (1) 敷地
 敷地は、静岡県御前崎町の西側、遠州灘に面した静岡県小笠郡浜岡町佐倉にあり、浜松市と静岡市からほぼ等距離にあって御前崎の西方約8kmに位置する。

 敷地の北部および東部は、標高30m前後の丘陵になっていて、西南部は平地で、南部の海岸には砂丘が発達している。

 敷地全体の面積は、約160万m2であり本敷地には、すでに1号原子炉(電気出力54方kW)を建設中である。

 2号炉は、1号炉の南側に隣接して設置される。2号炉の中心から敷地境界までの最短距離は、敷地西側を流れる新野川に接する敷地境界で西北西方約450mである。

 そのほか、2号炉から敷地境界までの距離は北方で約900m、東方および東南東方で約1,000mであり、海岸線までは約400mである。また、敷地の北側(2号炉から約600m)を国道150号線のバイパス道路が通っている。

 敷地境界から北北西方の約500m(2号炉から約1,000m)に町営の浜岡浄水場がある。

(2) 人口分布
 2号炉の中心から最寄の人家までの距離は約700mで、半径5km以内の人口は、約17,600人(昭和47年3月未現在、以下同じ。)、半径10km以内で約61,700人である。敷地周辺のややまとまった集落としては、東北東方約1.3kmに上の原(人口約400人),北東方約1.5kmに雨垂(人口 約440人)、北方約1.6kmに桜ヶ池(人口約500人)がある。

 2号炉が設置される浜岡町および周辺市町村(東遠地区)の人口は、全般的にみて過去10年間漸減の傾向にある。

 また、敷地に近い主な都市としては、浜松市(人口約45万人)、静岡市(人口約43万人)、焼津市(人口約9万人)、藤枝市(人口約8万人)等があるが、いずれもその中心部は敷地から30km以上離れている。

(3) 公共施設
 敷地付近の公共施設としては、約1.9kmの地点に、佐倉小学校(児童数約260人)佐倉幼稚園(園児 数約80人)およびねむの木学園(園児数約40人)があり、半径5km以内に幼稚園7、小学校6、中学校2、高等学校1、各種学校1および病院1 がある。

(4) 農産物および漁業
  浜岡町および隣接する相良町、御前崎町は総面積のうち約2分の1が山林原野であり、残りは耕地および宅地等である。敷地周辺の主要な農産物は、みかん、米、かんしょ、茶等であり、家畜としては、豚、牛等が多く飼われている。

 水産物としては、御前崎町および相良町に水揚げされるかつお、まぐろ、しらす等が主であるが、敷地前面海域では主としてしらすの漁業が行なわれている。

(5) 交通運輸
 敷地の近くを通る鉄道は、北方約20kmのところに国鉄東海道線および東海道新幹線がある。

 また、主要道路は、北方約15kmのところに東名高速道路があり、敷地北方約1.5kmを国道150号線が東西に走り、また、そのバイパス道路は敷地内を通過している。

 なお、このバイパス道路より以北の敷地は、発電所の周辺監視区域から除外される。

 最寄の港湾としては、東方約8kmに、5,000トン級の船舶の寄港が可能な御前崎港がある。御前崎港から敷地までの海岸沿いには建設用資材を運搬できる道路が作られている。

 なお、航空関係施設としては、敷地より北東方約25kmに静浜飛行場が、西北西方約44kmに浜松飛行場がある。

1.2 地盤

 敷地付近の地質は、第3紀中新世の相良層(層厚約700m)および、これを覆う沖積および洪積世の 河川、海浜堆積層(層厚3~5m)から構成されている。

 相良層は、砂岩と泥岩の互層であり、その性状は堅硬である。

 原子炉建家は、表層3~5mの沖積および洪積層を取りのぞき、相良層の泥岩上に直接設置される。

 この相良層には、原子炉施設の基礎として問題となるような規模の断層または破砕帯はなく、ボーリング・コア試験および試掘坑内で実施した載荷試験の結果から450T/m2の長期許容支持力を十分有していると認められる。

 2号炉の設置にあたっては、基盤への常時の荷重が約40T/m2となるよう設計される。

 なお、敷地周辺は、地形および地質構造上、山津波および地すべりによる被害の発生のおそれはない。

1.3 地震

 過去の地震に関する資料によれば、浜岡原子力発電所敷地付近は地震活動性は低くないが、遠江地方の地震被害の記録からみると発電所敷地のように岩石地盤で構成されたところでは、ほとんど被害らしいものは記録されていない。

 敷地を中心として半径約100km内外までに発生した地震を分類すると、遠州灘沖合に発生したマグニチュード8クラスで震央距離60~80kmのものと、大井川および安倍川流域で発生しているマグニチュード6クラスで震央距離20~60kmの中規模地震に大別される。

 前者に属するものとしては、永長の地震、明応の地震、安政の地震、東南海地震等がある。

 耐震設計で対象とすべき震地の設定にあたっては、現在気象庁で採用されている最大振幅と震央距離による地震規模の計算式、1926年以前の地震に対し東京天文台編理科年表で採用されている最大震度による地震規模計算式、津波の大きさからの地震規模の再評価値および現地における地震観測結果等を比較検討した。

 その結果、耐震設計において対象とすべき地震として、遠州灘沖合の地震をとり、地震規模はマグ ニチュード8.2(気象庁方式の表示による。)震央距離は60kmとした。

 原子炉を固着支持させる敷地の基底岩盤におけるこの地震による最大加速度を285galと推定した。

1.4 気象

 敷地周辺の風については、敷地における昭和44年3月から昭和45年2月までの1年間の観測結果によれば、年間を通じて標高100mでは西風および標高15mでは西北西の風が卓越し、その出現頻度はそれぞれ約21%および約9%である。

 また、静穏状態の年間出現頻度は標高100mで約3%、標高15mでは約9%であり、静穏継続時間は静穏出現回数に対して標高100mで約80%、標高15mでは約75%が2時間以内である。

 大気の安定状態(英国気象局方式E、FおよびG 型)の出現頻度は年間約16%であり、このときの風 向は、標高100mでは、西風および標高15mでは北風が多くなっている。

 なお、その後の観測でも同様な結果となっている。

 標高100mまでの逆転層の出現頻度は年間約30%であるが、100m以上の逆転層の年間出現頻度は13%以下である。

 敷地周辺の気象極値は、御前崎測候所の記録によれば、日降水量最大293.2mm、最大瞬間風速44.4 m/秒、最低気温-5.4℃である。

1.5 海象

 海水温度は、敷地前面海域における昭和45年7月から昭和46年6月までの観測結果によると、最高値は27.4℃、月平均最高値は24.5℃、最低値は9.9℃、月平均最低値は11.8℃である。

 潮位は、御前崎検潮所(敷地の東南東約8km)における観測記録によれば、東京湾中等潮位に比較して最高1.98m、最低-2.18m(いずれも昭和45年5月24日、チリ地震時の津波によるもの)であり、朔 望平均干満差は1.66mである。

 津波による水位上昇については、過去の地震記録、浜岡沿岸の津波エネルギー100年期待値等から最大5mと推定している。

 東京湾中等潮位に対する朔望平均満潮位は+0.56mであり、満潮時と重なったとしても最大5.6m程度の水位上昇となり、また満潮時と台風による高潮が重なった場合には約1.3mの水位上昇にとどまる。

 一方原子炉建家は東京湾中等潮位に対し+6mの整地面に設置され、原子炉施設から汀線までは300m以上の距離があり、この間には+10~+15mの砂丘があるので、津波および高潮による影響は受けない。

 波高は、敷地前面海域における昭和45年6月から昭和46年9月までの波浪観測結果では沖合約700mおよび950mにおける最大波高6.6m、その周期は10秒である。

1.6 水利

 本原子炉施設で使用する淡水量は夏期において平均900m3/日、短時日間の最大約1,300m3/日であり、1号炉で使用する分と合せると本発電所で使用する淡水量は夏期において平均1,600m3/日、短時日間の最大約2,000m3/日であると見込まれている。

 この淡水使用量は、新野川流域の地下水を敷地北方約1kmの地点にある揚水施設から供給する計画である。また揚水した淡水は、敷地内の容量5,000m3の原水タンク2基に貯蔵される。

 復水器等の冷却には海水を用いる。この海水は発電所前面海域の沖合約600mに取水塔を設け、そこから海底の取水トンネルを通して取水し、敷地前面汀線付近の放水口から放水される。

 なお、取水塔は沖合約700mおよび約950mにおける波浪観測結果に基づき、最大波高8mで設計される。

 2 原子炉施設

 本原子炉は、以下のような種々の安全設計および安全対策が講じられており、かつ「安全設計審査指針」にも適合しているので、十分な安全性を有するものと認められる。

2.1 原子炉の概要


 本原子炉は、先行の東京電力(株)福島原子力発電所5号炉とほとんど同様の設計による熱出力約2,436MW(電気出力約840MW)の直接サイクル強制循環沸騰水形である。

 炉心部ま円筒形鋼製圧力容器に収められている。

 炉心は燃焼棒49本を7行×7例に組立てた集合体を1単位とし、この集合体約560個で構成される。

 燃焼棒には低濃縮二酸化ウラン焼結ペレットをジルカロイース製の被覆管に入れたもの、および低濃縮ウランにバーナブル・ポイズンとしてガドリニアを加えて焼結したペレットを同じくジルカロイース製被覆管に入れたものの2種類がある。

 燃料の装荷量は、総重量で約105トン、ウラン235で第1炉心約2.3トン、平衡炉心約2.8トンである。

 制御棒はボロン・カーバイドの粉末を充てんしたステンレス鋼管を十字形に配列したもので圧力容器の下方から水圧により駆動される。

 圧力容器内には、気水分離器およびスチーム・ドライヤーが炉心上方に取付けられ、強制循環用ジェット・ポンプが炉心を取りまいて設けられる。

 冷却系は、給水系、再循環系および主蒸気系からなっている。原子炉の制御は制御棒の操作および 原子炉再循環流量の調整によって行なわれる。

 圧力容器、再循環回路等原子炉の主要部分は鋼製格納容器に収められている。

 格納容器は、ドライウェルとサプレッション・チェンバを備えた圧力抑制形で、原子炉建家内に設 置される。

 そのほか、放射性廃棄物処理設備、放射線管理設備等が設けられる。

2.2 核熱設計および動特性

(1) 核熱設計
 本原子炉炉心の実効余剰増倍率は、第1炉心(燃料の平均濃縮度約2.2W/O)の初期において約0.12△Kであり、また、第1回燃料取替以降は平均濃縮度約2.7W/Oの燃料を装荷する計画であるが、その場合も約0.12△K以下に保つこととしている。

 炉心冷却水の圧力および温度は、原子炉出口において定格出力運転時にそれぞれ約70.7kg/cm2g および約286℃である。

 定格出力運転時における燃料の最高線出力密度は約0.61kw/cmであり、最高被覆表面温度および燃料最高温度はそれぞれ約300℃および約2,480℃である。ガドリニア入り燃料棒の最高線出力密度は約0.52kW/cmを越えないように設計される。

 また、定格出力運転時の最小限界熱流束比(MCHFR)は1.9を下回らない。

 本原子炉の燃料の設計基準は、過度状態でも燃料破損が生じないこととしており、そのめやすとして、最大熱流束は限界熱流束(CHF)を越えず、またジルカロイ被覆管の円周方向の平均の伸びは1%を越えないこととしている。

(2) 動特性
 本原子炉は、ドップラー効果、冷却材のボイド効果等により負の反応度出力係数をもち、制御棒の操作等に起因する反応度の外乱に対して自己制御性を有している。

 原子炉の出力制御は再循環流量を調整することにより、再循環流量100%に対応する出力の100%から75%の制御範囲を有している。

 また、キセノンに起因する中性子の空間振動については、炉心寿命未期においても出力係数が0.03(△k/k)/(△p/p)であるため強い減衰効果があり、制御上問題はない。

2.3 計測および制御系統施設

(1) 核計測系
 核計測については、検出器が炉心全域に配置され、中性子源領域から出力領域までの中性子束を 連続約に監視し、炉心内の局部的な中性子束上昇が検出できるように設計される。中性子モニターとしては、中性子源領域には可動形計数方式、中間領域には可動形キャンベル方式、および出力領域には固定形直流方式が用いられる。

(2) 安全保護系
 安全保護系は2系統からなり、両系統による異常検出の結果保護動作が行なわれる。

 さらに、各系統とも2つ以上の独立した小系統に分かれていて、いかなる単一故障によってもその安全保護機能が妨げられないように設計される。

 安全保護系の作動要素として、原子炉圧力、原子炉水位、中性子束等の重要な検出要素が選ばれ、また、系統全体としては電源喪失、回路の断線等に対してフェイル・セイフとなるように設計される。

 なお、これらの安全保護系の動作試験は、各系統ごとに原子炉の運転中にも行なえる設計となっている。

(3) 反応度制御系
 制御棒の反応度抑制効果は、合計で実効増倍率の変化にして約0.17△Kである。

 また,最大反応度抑制効果を有する制御棒1本が完全に引抜かれ、その他のすべての制御棒が挿入された状態で実効増倍率が0.99以下となるように設計され、制御棒のどの1本が引抜かれた状態でも他のすべての制御棒によって原子炉を臨界未満に保つことができる。

 制御棒は、水圧式駆動機構により下方から挿入される。

 スクラム動作は制御棒ごとに設けられたアキュムレータの水圧によって行なわれるが、その圧力が低下した場合には炉内圧力によって行なわれる。

 スクラム動作に関係する弁は空気系によって操作され、空気圧の低下に対してフェイル・セイフな設計となっている。

 この方式については、これまでの使用実績によって信頼性が確かめられている。

 このほか、後備停止装置として手動によるほう酸注入系があり、全制御棒が作動しなくなった場合でも単独で原子炉を冷態停止させる能力をもっている。

 以上のような設計上の配慮がなされるので、いかなる場合でも原子炉の停止は確実に行なわれる。

 また、制御棒には誤って炉心内から脱落した場合の落下速度を制限するために速度リミッタが設けられる。

 原子炉容器の下側には、制御棒駆動機構のフランジあるいはハウジングが破損しても制御棒が逸出しないようハウング支持機構が設けられる。

(4) 出力制御系
 本原子炉の出力制御は、手動による制御棒位置調整および自動または手動による原子炉再循環流量調整によって行なわれる。

 原子炉圧力は、圧力調整装置により、タービン制御弁の開度を調節することにより、予め定めら れた値に保たれる。

 また、圧力が上昇すると同じ圧力調整系により約25%容量のタービン・バイパス弁が開くよう設計される。

 原子炉再循環流量は、再循環ポンプの速度調整によって行なわれる。流量による出力制御範囲は、原子炉の安定性を考慮して定められる。

(5) 制御棒操作
 制御棒の操作は、運転員が所定の手順に従って行ない、操作手順は安全上制御棒1本あたりの効  果が過大とならないように定められる。

 運転員の誤操作に対しては、制御棒価値ミニマイザーおよび制御棒引抜監視装置が設けられていて、自動的に阻止される。

 制御棒価値ミニマイザーは、制御棒1本の最大価値が0.025△Kを越えないように制御棒パターンを規制する。

 また、制御棒引抜監視装置の動きによって局所的に高出力となって燃料損傷をきたすような制御棒の連続引抜も阻止される。

(6) 中央制御室
 中央制御室には、原子炉施設の通常運転および事故対策操作に必要なすべての計測制御装置が設備されている。

 また、中央制御室は事故時においても運転員が安全に所要の措置をとりうるように遮蔽、換気等の放射線防護上の配慮がなされる。

2.4 燃料

 燃料棒は、二酸化ウラン焼結ペレットまたは少量のガドリニアを二酸化ウランと混合した焼結ペレットを長さ約4mのジルカロイー2製の被覆管(肉厚 約0.9mm)に入れたものである。

 燃料被覆管は、ペレットによる内部からの支持がなくても外圧によってつぶれることのない自立形の設計であり、また燃料棒上部に設けられたプレナム体積は燃料集合体最高燃焼度約35,000MWD/Tに応じた核分裂生成ガス等の蓄積によっても過大な内圧上昇をもたらさないよう十分大きくとってある。

 燃料集合体は、7行×7列の燃料棒の正方形配列で構成され、上下の燃料支持板を結びつける8本の 燃料棒(タイロッド)によって保持され、スペーサーは1本のスペーサー支持燃料棒によって保持される。

 また、燃料棒はすべて軸方向の自由膨張ができる構造としている。

2.5 燃料取扱施設


 燃料取替は、炉心上に水を張り、燃料交換機のプラット・ホームに取り付けられた燃料つかみ機を用いて行なわれる。

 このつかみ機は、作動空気喪失時においても燃料集合体を取り落さない構造に設計される。

 また、破損燃料を検出する装置により取出した燃料の検査を行ない、破損の著しい燃料は特に用意した容器に収納することとしている。

 燃料取替中は、臨界防止のため制御棒を引抜くことができないインターロックが施される。

 燃料プールは、原子炉建家内に設けられ、炉心装荷量および1回の取替量以上の燃料ならびに使用済制御棒等を貯蔵する能力を有するよう設計され、かつ、冷却、浄化、臨界防止等について十分配慮して設計される。

2.6 原子炉容器および原子炉冷却系統施設


(1) 原子炉容器、配管等
 原子炉容器の円筒部内径は約5.6m、容器の全長は約22mであり、胴円筒部には主蒸気出口、給水人口、再循環水出入口等のノズルが、また、下部鏡板部には制御棒駆動機構用、炉内計測管用等のノズルが多数設けられる。主蒸気管および再循環管の外形は、それぞれ約610mmおよび約710mmである。

 原子炉容器は、炉心、気水分離器、スチーム、ドライヤー、ジェット・ポンプ等を内蔵している。

 原子炉容器の下端は円筒状スカートで支持され、容器の頂部は横振れ防止機構により支持され、炉容器は軸方向および半径方向への膨張収縮が出来るようになっている。

 また、構造強度について詳細な解析を行ない、これらに十分耐えることを確認することとしている。

 さらに、原子炉容器の最低使用温度をNDT+38degC以上に保つようにし、必要があるときは加熱できるように設計される。

 なお、中性子照射による材料の機械的性質の変化を監視するため、原子炉容器内に照射試料を挿入する計画である。

 原子炉容器、配管等の耐圧部分およびこれらの支持構造物は、定期的な供用期間中検査を実施し、その健全性を確認することとしている。

(2) 安全弁、逃がし安全弁、タービン・バイパス系等
 格納容器内の主蒸気管には、13個の逃がし安 全弁が設けられ、バネ式安全弁の機能をもつとともに、このうち9個は窒素庄で作動する逃がし弁の機能をも兼ねている。

 この逃がし安全弁により主蒸気止め弁閉鎖時等に原子炉系に生ずる異状な圧力上昇を抑えるようになっている。

 また、主蒸気管には、定格蒸気流量の約25%をバイパスして復水器に導くタービン・バイパス系が設けられ、原子炉起動時および停止時の主蒸気 圧力の調整を行なうことができる。

 発電機負荷しゃ断時には、タービン蒸気加減弁急速閉の信号を受けて13個の逃がし安全弁が作動し、80%容量の蒸気をサプレッション・チェンバに逃がすとともに、タービン・バイパス系の併用によって原子炉の不必要なスクラムを避けるようになっている。

(3) 原子炉隔離時冷却系
 原子炉隔離時冷却系は、原子炉への給水が停止し、かつ、原子炉が主復水器から隔離された場合に、蒸気の一部を利用してタービン駆動ポンプにより、復水貯蔵タンク水または原子炉停止時冷却系熱交換器で冷却された一次冷却材を炉内に補給する系統で、これにより炉心水位を維持する。

 また、この系統は、サプレッション・チェンバのプール水も炉内に補給できる。この系統は、外部電源を必要としない。

 そのほか、原子炉停止後の炉心崩壊熱を除去する原子炉停止時冷却系等がある。

2.7 放射性廃棄物処理系

(1) 気体廃棄物処理系
 気体廃棄物処理系は、再結合器、減衰管、活性炭式希ガス・ホールド・アップ装置、排気筒等からなる。

 再結合器は、触媒を使用して排気ガス中の水素を減少させる。減衰管は、通常運転時の排ガス流量30Nm3/時に対して保留時間約30分の容量を有する。

 活性炭式希ガス・ホールド・アップ装置は活性炭による希ガスの物理的吸着現象を利用するもので排ガス流量30Nm/時に対してキセノンを約30日間、クリプトンを約40時間保留することができる。通常運転時には、この装置の前後に設けられる放射能検出器によりその性能が維持されていることが確認される。

(2) 液体廃棄物処理系
 液体廃棄物処理系は、床ドレン処理系、化学廃液処理系、機器ドレン処理系およびランドリ・ドレン処理系からなる。

 処理装置としては、ろ過装置2基、脱塩装置2基、蒸発濃縮装置2基が設置される。

 各系の液体廃棄物は、タンク類に収集されその放射能濃度、純度等に応じて処理される。

 タンク類の貯留容量および処理装置の処理容量は、発生廃液量を十分処理しうるように定められる。

(3) 固体廃棄物処理系
 固体廃棄物処理系の処理設備として、脱水機1基、プレス1基(1、2号炉共用)、固化装置1基が設置される。

 原子炉施設で発生する雑固体廃棄物は、プレスによって圧縮減容されドラム缶に詰められる。

 これらの固体廃棄物の置場は、当面固体廃棄物を詰めたドラム缶の約1年分(1、2号炉とも)貯蔵する容量のものが設けられるが、今後必要に応じて敷地内に増設することが可能である。

 使用済樹脂貯蔵タンクは発生量の約4年分を貯蔵できる容量のものを設備する。

2.8 工学的安全施設

 冷却材喪失事故あるいは、主蒸気管破断事故を想定した場合に燃料被覆材の大破損や放射性物質の飛 散を防止もしくは抑制するために、次のような工学的安全施設が設けられる。

(1) 非常用炉心冷却系
 非常用炉心冷却系は、非常用電源まで含めて動的機器の単一故障が生じた場合でも長時間冷却を含め十分な機能を発揮できるように多重性を有するよう設計される。

  ① 炉心スプレイ系
 炉心スプレイ系は、再循環回路の破断のような冷却材喪失事故によって炉心が露出した場合に、サプレッション・チェンバ内のプール水を炉心上に取付けられたノズルから燃料集合体にスプレイすることにより炉心を冷却し、燃料被覆材の大破損を防止するための系統であり、独立な2系統からなっている。この系統は、非常用電源にも接続される。
  ② 低圧注入系
 低圧注入系は、再循環回路の完全破断のような大破断に対して単独で、また中破断に対しては高圧注入系または自動減圧系と連携して炉心を冷却し燃料被覆材の大破損を防止するための系統であり、サプレッション・チェンバ内のプール水を破断していない方の再循環管を通して原子炉容器内に注入する。

 この系統は、2系統からなっており、非常用電源にも接続される。
  ③ 高圧注入系
 高圧注入系は、原子炉1次配置の小破断に対しては単独で、中破断に対しては炉心スプレイ系または低圧注入系と連携して燃料の大破損を防止する系統であり、タービン駆動ポンプにより復水タンク水またはサプレッション・チェンバ内のプール水を給水配管を通して炉心に注入する。

 なお、このタービンは原子炉からの蒸気によって駆動されるので、この系は外部電源を必要としない。
  ④ 自動液圧系
 自動減圧系は、6個の逃がし安全弁からなり、このうち5個が作動すれば、中小破断の冷却材喪失事故時に原子炉蒸気をサプレッション・チェンバに逃がし、原子炉圧力を低下させて炉心スプレイ系あるいは低圧注入系による炉心冷却を可能にする。
(2) 原子炉格納施設
 原子炉容器、再循環回路等を完全に取囲む格納容器が設けられる。

 格納容務は、ドライウェルおよびそれにつながるサプレッション・チェンバからなる圧力抑制形であり、再循環回路破断等の事故によって炉心に蓄積された放射性物質が原子炉建家へ漏洩するのを抑制する。

 運転中は、格納容器には窒素ガスが充てんされ、事故に伴うジルコニウムー水反応によって発生する水素の燃焼を防止するようになっている。

 また、格納容器の温度はNDT+17degc以上に保つように設計される。

(3) 格納容器冷却系
 サプレッション・チェンバ内のプール水をドライウェル内にスプレイできる格納容器冷却系が設けられ、格納容器内の温度および圧力を低減し、格納容器内に浮遊している放射性物質の漏洩を抑制するようになっている。

 なお、この系は独立な2系統からなり、非常用電源にも接続される。

(4) 隔離弁等
 格納容器貫通する主蒸気管などの主要な配管にはそれぞれドライウェルの内外に2個の隔離弁が設けられ、事故時に周辺環境に放出される放射性物質を抑制するようになっている。

 なお、主蒸気隔離弁は十分短い時間(3~5秒)で閉鎖できるように設計されるが、さらに主蒸気管には流量制限器が設けられ、主蒸気管破断事故時の蒸気の放出量を制限するようになっている。

(5) 非常用ガス処理系
 原子炉建家は気密構造であり、事故などの場合に原子炉建家の放射能レベルが高くなると自動的に常用換気系から非常用ガス処理系に切り替り、原子炉建家は負圧に保たれる。

 格納容器から漏洩してくる放射性物質は、この非常用ガス処理系によりろ過したのち排気筒から放出され、原子炉建家から直接周辺環境に放散されるのを防止するようになっている。

 非常用ガス処理系は、ファン、湿分除去装置、粒子用高効率フィルタおよびヨウ素用チャコール・フィルタからなり、定期的にその性能を確認できるように設計される。

 なお、この系は独立な2系統からなり、非常用電源にも接続される。

2.9 安全防護施設の機能確保


(1) 非常用電源設備
 本発電所に必要な非常用電源としては、ディーゼル発電機(5,500kwx2台)が設置され、このディーゼル発電機は275kv送電線が停電した場合に各々の非常用母線に電力を供給し、1台で原子炉事故時にも発電所を安全に停止するために必要な補機を運転するに十分な容量を有するように設計される。

 発電所の安全のため常に確実な電源を必要とするものに対しては1蓄電池および無停電交流電源装置を設置することとしている。

(2) 保守点検
 計測および制御系、ほう酸注入系、炉心スプレイ系、低圧注入系、高圧注入系、格納容器冷却系、非常用ガス処理系および各種弁類は、原子炉施設の耐用期間を通じて運転中あるいは停止中に点検または試験することにより、その機能を確認することができるように設計される。

2.10 耐震設計
 原子炉施設は、地震によって、公衆および従事者に対して放射線障害を与えないこと等を目標として耐震設計が行なわれる。

 このため、本原子炉施設は原則として剛構造とし、原子炉建家のような重要な建物、構築物は直接岩盤に支持される。

 すべての建家、構築物、機器および配管系は、安全上の重要度に応じてA,BおよびCの3クラスに分類され、それらに応じた耐震設計が行なわれる。

 原子炉、原子炉建家等のように、その機能喪失が原子炉事故をひきおこすおそれのある施設および周辺公衆の災害を防止するために緊要な施設は、Aクラスとする。

 Aクラスの建家、構築物の耐震設計は、基盤における最大加速度が300galの地震源により動的解析を行ない、これから求められる水平地震力、ならびに建築基準法に示された水平震度(この場合、地域による低減は行なわない。)の3倍から定まる水平地震力を下回らない値によって行なわれる。

 垂直震度は、建物、構築物の高さ方向に一定とし、建築基準法に示された水平震度の1.5倍を下回らない値とする。

 この場合、水平および垂直方向の地震力は、同時かつ不利な方向に作用するものとしている。

 Aクラスの機器、配管類については、運転時の応力と地震力による応力を加え合せた場合について、応力集中等を考慮した弾性解析により耐震設計が行なわれる。

 この場合の水平地震力は、前記の地震波(300gaI)に対する動的解析によって求められる値とし、かつ、据付位置における支持構築物の水平震度の1.2倍から定まる地震力を下回らない値としている。

 垂直震度は、建家、構築物に対する値をとり、水平および垂直方向の地震力は同時に、かつ不利な方向に作用するものとしている。

 また、これらの地震力によって生ずる変位および変形が機能保持に支障をもたらすことのないように設計される。

 Aクラスのうち原子炉格納容器、制御棒駆動機構等のように安全対策上特に緊要な施設については、基盤における最大加速度が300ga1の1.5倍の地震源に対しても全体としての機能が保持されることを確認することとしている。

 また、タービン系、廃棄物処理系等のように高放射性物質に関する施設はBクラスとし、これらの建家、構築物の設計水平地震力は、建築基準法に定める震度から求められる値の1.5倍とし、垂直地震力は考慮しないこととしている。

 Bクラスの機器および配管系の設計水平地震力は、据付位置における支持構築物の設計水平震度の1.2倍から求められる値を下回らないものとしている。

 また、その他の施設はCクラスとし、これらの建家および構築物の設計水平震度は、建築基準法に定める震度から求められる値とする。

 Cクラスの機器および配管系の耐震設計は、必要なものについてのみ行ない、設計水平震力は建築基準法に定める震度から求められる値の1.2倍を下回らないものとしている。

 また、強い地震の際に原子炉を非常停止させるため、地震加速度検出器を設け自動的に原子炉を停止させるようになっている。

3 放射線管理および平常時被ばく評価

 平常運転時における放射線管理および被ばく評価は、次のとおりであり、発電所の従事者および敷地周辺の公衆に対する放射線障害を十分防止しうるものと認められる。

3.1 放射線管理の基本方針

(1)放射線管理は、原子炉等規制法に基づきいかなる場合においても発電所の従事者および敷地周辺の公衆に対し、放射線障害をもたらさず実用可能な限り放射線被ばくを低くする方針により行なわれる。

(2)本原力炉の放射線管理ま大部分が1号炉と共通で行なわれる。また、周辺監視区域の放射線管理、発電所外の放射線監視および環境試料の定期サンプリングは、浜岡原子力発電所全体で共通して行なわれることになっている。

3.2 放射性廃棄物管理

(1)気体廃棄物
① 通常運転時に発生する可能性のある気体廃棄物は、原子炉冷却水中の水素、酸素および冷却水中に溶けている空気が放射化されて生ずる非凝縮性排ガス、ならびに破損燃料から原子炉冷却水に漏洩してくる核分裂生成物である。

 これらは、蒸気タービンを通過した後、復水器空気抽出器から抽出され、減衰管、活性炭式希ガス・ホールド・アップ装置を通して排気筒から放出される。

 気体廃棄物のうち、酸素および窒素などの非凝縮性排ガスは、半減期が極めて短く排気筒から放出されるまでに無視されるほどに減衰するので、排気筒から放出される気体廃棄物は、主として燃料が破損した場合に生ずるクリプトン、キセノン等の希ガスである。

② 希ガスの発生率は、燃料破損の程度により異なるが、最悪の場合でも30分減衰換算値で約1,000mCi/秒と推定されておりこのとき活性炭式希ガス・ホールド・アップ装置通過後の排気筒からの放射能放出率は0.08mCi-MeV/秒となるが、次項の真空ポンプ排ガスからの放出放射能とあわせ年平均放出率を0.30mCi-MeV/秒以下にすることを目標に管理することとしている。

③ 通常、タービン主復水器は、真空状態で運転されていて、原子炉およびタービンが停止した場合真空が破壊されることがある。

 その際停止後比較的短時間で原子炉およびタービンを再起動させるときは、主復水器を真空にする必要があり、この場合主復水器に内蔵する放射性物質が真空ポンプの運転により排出される。

 起動時における真空ポンプの運転中に排気筒から放出される放射能は、年間5,000ci-Mevを越えないことを目標に管理することとしている。
(2) 液体廃棄物
 液体廃棄物は、機器ドレン、建家の床ドレン、復水脱塩系および廃棄物処理系樹脂の再生廃液、機器の除染廃液および衣服等の洗たく廃液である。

 洗たく廃液以外の廃液は、廃棄物処理設備において処理され、処理済液は原則として廃棄せず再使用される。

 液体廃棄物処理設備によって処理された一部の低放射能の廃液と洗たく廃液の放出にあたっては、サンプル・タンクにおいて放射能濃度を測定し、復水器冷却水路出口における放射性物質濃度が原子炉等規制法で定める許容濃度以下であることを確認し、さらに、魚、貝、海藻等による放射性物質の濃縮および蓄積の効果も考慮して管理することとしている。

(3) 固体廃棄物
 ドラム缶詰された固体廃棄物は、固体廃棄物置場に貯蔵保管され、使用済樹脂は当面使用済樹脂貯蔵タンクに貯蔵することとしている。

 なお、これらを最終的に処分する場合は、関係官庁の承認を受けることとしている。

3.3 敷地内の放射線管理

(1) 管理区域内の管理
 原子炉施設、原子炉付属施設、タービン施設等のうち空間放射線線量率、放射性物質の水中あるいは空気中の濃度または表面汚染密度が、原子炉等規制法に定められた値をこえまたはこえるおそれのある区域をすべて管理区域とするが、管理上の便宜を考慮して原子炉施設、原子炉付属施設、タービン施設等の大部分を管理区域として設定する計画である。

 管理区域内は、エリア・モニタ、ダスト・モニタ等の設備によって原子炉の運転に伴う空間線量率および空気中放射性物質の濃度を連続監視するほか、移動モニタによる定期監視、サンプリング測定等を行なうことにより常にその放射線レベル等を把握し、安全の確認を行なうこととしている。

 管理区域に立入る従事者の放射線被ばく管理については、法令に定める許容値をこえないよう常に監視するため、フィルム・バッジ等の個人被ばく線量計により被ばく線量を測定評価するほか、管理区域の出入、作業方法、作業時間等の管理、放射線測定器具の携帯、防護具着用などの放射線防護対策を講ずることとしている。

(2) 放射線遮蔽等
 放射線遮蔽は、従事者の作業時間に応じ、その被ばく線量が現行法令に定められた許容量を十分下回るよう設計される。

 換気系は、主要な場所ごとに別系統とし、事故時における放射能汚染の拡大防止等に十分配慮することとしている。

(3) 周辺監視区域の管理
  原子炉等規制法によって定められた線量をこえる区域およびこえるおそれのある区域に加え管理上の便宜を考慮して、原子炉の西側は新野川河岸まで、北側は国道150号線のバイパス道路に接して、また、東側は原子炉から約1,000mまでを周辺監視区域とする計画である。

 周辺監視区域境界付近には、モニタリング・ポスト等を配置して、外部放射線線量を連続監視するほか、さく等によりみだりに人が立入らないよう管理することとしている。

3.4 発電所外の放射線監視

 気体廃棄物の排気については、排気筒に設けた排気筒モニタにより、また、液体廃棄物の排水については、放出口付近に設けた排水モニタにより放用放射能を監視する。

 発電所周辺の放射線監視としては、常時サンプル可能なダスト・サンプラーを設備したモニタリング・ステーションを設け、空間放射線線量率および大気中放射能濃度を測定設録し、また、モニタリング・ポスト、モニタリング・ポイント等の放射線監視設備も設置する。

 このほか、放射能観測車等により発電所を中心とする半径数kmの範囲内において空間線量率を定期的に測定するほか、井戸水、海水、農産物、海産物等を定期的にサンプリングすることにより放射能の監視をすることとしている。

3.5 平常運転時の被ばく評価

(1)気体廃棄物
① 平常運転時の空気抽出器等から放出される放射能の寄与については

a 平常運転時の活性炭式希ガス・ホールド・アップ装置を経由して連続放出する場合の放射能放出率を0.08mCi-MeV/秒とする。
b 風速は、年間有効拡散風速を用いる。

② プラント起動時の真空ポンプの運転に伴って放出される放射能の寄与については、

a 運転1回当り1,000Ci-MeVの放出があるとする。
b 真空ポンプ運転の年間想定回数を5回とする。
c 着目地点への影響回数は、風向出現頻度、年間放出回数とから二項確率分布で評価する。
d 風速は、着目方位への逆数平均風速を用いる。
 計算の結果、周辺監視区域外において被ばく線量が最大となるのは、2号炉より東方、約850mの周辺監視区域境界であってその被ばく線量は、2号炉でγ線約1.2ミリレム/年(β線約0.2ミリレム/年)であり、1,2号炉合せてγ線約2.8ミリレム/年(β線約1.2ミリレム/年)である。

 この値は、法令に定める許容被ばく線量を十分下回るものと認められる。

(2) 液体廃棄物

 液体廃棄物による被ばく評価は、次の条件を用いて行なった。
a 放出放射能の量については、先行炉等の実績をもとに1Ci/年(トリチウムを除く。)とした。

b 放出核種および組成は、先行炉の実績に基づき決定した。

c 液体廃棄物は、復水器冷却水によってのみ希釈されるものとし、放出後の海水による混合希釈は考えない。

d 魚類、海藻などによる濃縮係数は現在報告されているもののうち厳しい値を採用した。

e 住民の魚類、海藻の摂取量は、「放射性廃液の海洋放出調査特別委員会5ヶ年研究成果報告書」(原子力安全研究協会昭和47年6月)等により、それぞれ200g/日、40g/日とし、その量を連続的に摂取するものとした。
 計算の結果は、全身被ばくで約0.19ミリレム/年である。

 なお、トリチウムの放出量は約14Ci/年であって、これによる全身被ばく線量は、上記の値に比べて極めて低く無視できる程度である。

 4 各種事故の検討

 本原子炉において発生する可能性のある事故として、運転時における単一機器の故障あるいは運転員の単一誤操作により引き起される過渡変化と、機器の破損等によって引き起される事故とに分けて検討した結果、これらの事故について、それぞれ次のような対策が講じられており、安全性は十分確保しうるものであると認める。

4.1 機器の故障等

(1) 再循環系の故障
a 再循環ポンプの故障
 原子炉運転中に再循環ポンプ2台の駆動電源が同時に喪失した場合は、炉心流量は減少するがポンプ系の慣性のため減少は緩やかであり、また、流量底下に伴う出力低下があるため燃料被覆管の破損には至らない。

 また、運転中に1台の循環ポンプの軸が何らかの原因で固着して瞬時に停止する場合を考えても、回転体の停止によって大きな水力抵抗が発生し再循環流量は急速に低下するが、これに伴って原子炉出力が低下するので、燃料被覆管の破損には至らない。

b 再循環流量制御系の誤動作
 再循環流量制御系の主制御器に誤動作が起っても、再循環流量の最大変化率は制御系内の制限器により自動的に制限されるので、熱出力の変化率は小さく、燃料被覆管の破損には至らない。

c 再循環冷水ループの誤起動
 原子炉を再循環系1系統で部分負荷運転中、停止している再循環回路の冷水が誤起動により炉心に流入しても中性子束の上昇はわずかであるため原子炉はスクラムすることなく、また、燃料被覆管の破損にも至らない。
(2) 給水系の故障
a 給水制御器の故障
 給水制御器の故障により給水がその最大変化率で増加しても、原子炉の水位上昇によるタービン・トリップで原子炉はスクラムされるので、燃料被覆管の破損には至らない。

b 給水加熱喪失
 給水加熱器の加熱源の喪失または給水流量がバイパス管を通って給水加熱器を通過しない場合には、給水温度が下がり、このため原子炉には正の反応度が入ることとなるが、再循環流量制御系により炉心流量が減少して負の反応度を加えることとなり出力上昇は抑えられるので、原子炉はスクラムには至らない。

 また、燃料被覆管の破損も生じない。

c 全給水流量の喪失
 定格運転時に全給水流量が喪失すると、原子炉水位は急速に低下するが、原子炉水位低により原子炉はスクラムされるので、燃料被覆管の破損には至らない。
(3) 主蒸気系の故障
a 発電機負荷喪失
 定格出力運転中に発電機負荷喪失が生じると、タービンの蒸気加減弁急速閉鎖によりタービン・バイパス弁および逃がし安全弁が作動し、蒸気はそれぞれ復水器、サプレッション・チェンバに放出される。さらに、一部の制御棒が急速に挿入され、また再循環流量も急速に減少するので、原子炉出力は、定格の15~25%になる。

 初期の出力上昇および圧力上昇はわずかでありスクラムには至らず、また、燃料被覆管の破損も生じない。

 なお、何らかの理由でタービン・バイパス弁が作動しないときは、原子炉はスクラムする。

b タービン・トリップ(タービン主蒸気止め弁急速閉鎖)
 定格出力運転時にタービン・トリップが生ずると、復水器の真空度が維持されているか否かによりタービン・バイパス弁が作動するか否かの相異はあるが、いずれの場合にも原子炉は、タービン主蒸気止め弁の閉鎖信号によりスクラムされるので、燃料被覆管の破損には至らず、また、圧力上昇に対しては逃がし弁が作動するので原子炉圧力バウンダリの健全性は損われない。

 また、定格出力の30%以下の低出力運転時にタービン・トリップが生じても、主蒸気止め弁の閉鎖信号によるスクラムはバイパスされるが、圧力高スクラムにより原子炉は停止され、燃料被覆管の破損は生じない。

c 主蒸気隔離弁の閉鎖
 全隔離弁が最高閉鎖速度3秒で閉鎖しても、隔離弁閉鎖の信号により原子炉はスクラムし、圧力上昇に対しては逃がし安全弁が作動するので原子炉圧力バウンダリの健全性は損われず、また、燃料被覆管の破損には至らない。

d 圧力制御装置の故障
 圧力制御装置が故障すると、タービン蒸気加減弁およびバイパス弁が開くか、または閉じることになるが、この場合の過渡変化はタービン・トリップ時でバイパス弁不作動の場合よりもゆるやかであるので、原子炉圧力バウンダリの健全性は扱われず、また、燃料被覆管の破損には至らない。

 さらに、タービン加減弁およびバイパス弁が同時に開くような圧力制御装置の故障が生じた場合でも、タービンの流量制限器によって加減弁とバイパス弁の最大開度の合計が制限されるので、多量の蒸気がタービンへ流れることはない。

e 逃がし安全弁の開放
 逃がし安全弁1個が故障により開放しても、圧力制御装置が原子炉圧力を維持するよう加減弁を絞るので、原子炉の圧力低下はわずかにとどまる。
(4) 制御棒駆動系の故障
a 未臨界状態からの制御棒引抜き
 原子炉の起動時に未臨界の状態から制御棒価値ミニマイザで許容される最大反応度価値を有する制御棒を連続的に引抜いても、核的逸走はドップラ効果で抑えられ、かつ中性子束高スクラムにより原子炉は停止し、燃料被覆管の破損は生じない。

b 出力運転中の制御棒引抜き
 定格出力運転中に誤って制御棒1本を連続的に引抜く場合を仮定しても、制御棒引抜き監視装置により制御棒の連続引抜きが阻止される。

 この事故の際にも最小限界熱流束比は、1.2にとどまり、燃料被覆管の破損は生じない。
(5) 補助電源の喪失
 常用所内電源がすべて喪失した場合には、安全保護系も停電するので原子炉はスクラムされ、スクラム後の原子炉は原子炉隔離時冷却系によって冷却される。

 安全上重要な機器の電源としては、非常用ディーゼル発電機および所内蓄電池系があるので、常用所内電源および外部電源がすべて喪失したと仮定しても、発電所の安全性は損われない。

4.2 機器の破損等による事故

(1) 制御棒落下事故
 駆動軸から分離して炉心内にとどまっていた制御棒が臨界状態の炉心から脱落しても、制御棒の反応度効果はその引抜き手順により実効増倍率の変化にして0.025(△K)以下に抑えられ、かつ、落下速度は速度リミッタで制限される。

 この場合、核的逸走はドップラ効果で抑えられ、かつ、中性子束高スクラムにより原子炉は停止する。

 この事故による発生エネルギーによって、燃料の被覆管の一部は破損することも予想されるが、蒸気管の放射能高により主蒸気隔離弁が自動閉鎖するので核分裂生成物は1次冷却系内に保留され、発電所外にはほとんど放出されない。

(2) 制御棒逸出事故
 原子炉運転中に制御棒駆動機構のフランジあるいはハウジングが完全に破損してドライウェル内に蒸気の流出があると仮定した場合には、ドライウエルの温度および圧力上昇などによって漏洩を直ちに検出し、原子炉を停止させる。しかも制御棒駆動機構ハウジングの下側に支持構造物を設けて制御棒の移動距離を少なくすることができるので、原子炉に大きな反応度が加わることはない。

(3) 燃料取扱事故
 燃料取替は中水で行なわれるが、燃料取扱系の故障によって使用済燃料の集合体1個が落下し、そのすべての燃料棒が破損する場合を仮定しても、放出される核分裂生成物は原子炉停止後にかなりの崩壊をしてわずかとなっていて、さらに非常用ガス処理系によって除去されたのち排気筒から放出される。

(4) タービン破損事故
 タービン破損事故については、ターニング・ギヤ・カップリングが飛散した場合等の解析を行ない、原子炉建家および中央制御室への直接的影響のないことを確認した。

 また、何らかの原因により、タービン・ケーシング等が破損しても、主蒸気止め弁が閉鎖するので、タービン内の一次蒸気とともに大気中に放散される核分裂生成物の量はわずかである。

 なお、主蒸気止め弁が閉鎖しない場合には、主蒸気管破断事故の場合と同じである。

(5) 冷却材喪失事故
 何らかの原因により、冷却材の漏出ないしは喪失があって炉心の冷却が十分でない場合にも、次のような対策が講じられている。

 すなわち、中小破断の場合を仮定すると、原子炉水位低あるいはドライウェル圧力高の信号により高圧注入系が作動して炉心への注水が行なわれる。

 なお、高圧注入系のバックアップとして、自動減圧系があり、この系は蒸気をサプレッション・チェンバへ放出することにより炉心圧力を低下させ、炉心スプレイ系および低圧注入系の作動を早めるものである。

 大破断を仮定した場合には、原子炉の水位の低下および原子炉圧力の減少の信号により炉心スプレイ系または低圧注入系によって炉心への注水が行なわれる。

 いずれの場合にもドライウェル圧力高または原子炉水位低の信号で原子炉はスクラムされ停止する。

 最も苛酷な例として、再循環回路配管1本が完全に破断した場合を仮定しても、炉心スプレイ系および低圧注入系の作動によって燃料被覆管の破損は一部に抑えられ、燃料の溶融には至らない。

 この事故によって放出される核分裂生成物は、圧力抑制型の格納容器に保留され、さらに原子炉建家内に漏洩したものは非常用ガス処理系で除去されたのち排気筒から放出される。

(6) 主蒸気管破断事故
 主蒸気管がドライウェル外の個所で破断する場合を仮定しても、破断口からの放出流量は流量制限器により制限され、かつ、流量制限器における圧力損失増加信号によって主熱気隔離弁が急速に閉鎖するので、冷却材の放出は短時間で止る。

 また、主熱気隔離弁閉の信号でスクラムし、原子炉も停止する。

 なお、冷却材中の放射能濃度はきわめて低く抑えられるので、冷却材とともに大気中へ放散される核分裂生成物の量はごくわずかである。

 5 災害評価

 本原子炉は、すでに述べたように種々の安全対策が講じられており、かつ、各種事故に対しても検討の結果、安全を確保しうるものと認めるが、さらに「原子炉立地審査指針」に基づいて重大事故および仮想事故を想定して行なった災害評価は次のとおりで、解析に用いた仮定は妥当であり、その結果は同指針に十分適合しているものと認める。

5.1 重大事故
 重大事故として、冷却材喪失事故および主蒸気管破断事故の二つの場合を想定する。

(1)冷却材喪失事故

 原子炉容器に接続している最大口径の配管である再循環回路配管(外径約710mm)2本のうち1本が瞬時に完全破断し冷却材が放出される事故を仮定する。

 解析の条件として、もっともきびしい動的機器の単一故障を考え、低圧注入系の注入弁が作動しないものとする。

 解析の結果では、炉心スプレイ系2系統が作動してその冷却効果により二酸化ウランの溶融温度に達することはなく、また、燃料被覆管が溶融温度に達することもないが、燃料棒本数の約20%は被覆管が破損する。

 また、燃料被覆管の酸化はかなり少く最高温度は約1,200℃であり、炉心内のジルコニウム-水反応は約0.25%であって、燃料被覆管は事故期間中その健全性が大きく損なわれることはなく、非常用炉心冷却系冷却効果は維持される。

 また、事故後のドライウェル圧力は、設計圧力に比べ十分低く抑えられ、約44日後には大気圧にもどる。

 なお、被ばく線量の計算には核分裂生成物の放散過程に従い、次の仮定を用いる。
① 全部の燃料棒の被覆に破損があったとし定格出力で1年間連続運転後の炉心に蓄積されている核分裂生成物のうち希ガスの2%、ヨウ素の1%がドゥイウェルに放出される。

 この場合、無機ヨウ量については壁面等に吸着される割合を50%、液相一気相間の分配係数を100とする。

 ただし、ヨウ素のうち10%は有機状のものとしてこれらによる低減を期待しない。

② ドライウェルから44日間にわたって0.5%/日の漏洩がある。

③ ドライウェルから漏洩した核分裂生成物は、原子炉建家に入りそこから換気率100%/日で非常用ガス処理系を通り排気筒から放出される。

④ 非常用ガス処理系では、チャコール・フィルタでろ過する。ヨウ素に対するろ過効率は90%とする。

⑤ 大気中への拡散に用いる気象条件は、排気筒の高さ、現地の気象データ等をもとに「原子炉安全解析のための気象の手引」(以下、「気象の手引」という。)を参考にして最初2日間は高さ100m以下均一分布、拡散幅30°、有効拡散風速6m/秒とし、3日目以後42日間は英国気象局方式大気安定度A型、拡散幅30°、有効拡散風速6m/秒とする。
 以上に述べた条件による解析の結果、大気中に放出される放射性物質は、全ヨウ素が約360Ci(131換算、以下同様、希ガスが約9,900Ci(γ線エネルギー0.5MeV相当、以下同様)である。

 敷地外において被ばく線量が最大となるのは、敷地境界(原子炉から西方約450m)であって、その地点における被ばく線量は、甲状腺(小児)に対して約3.2レムおよび全身に対してγ線約0.007レム、(β線約0.019レム)となる。

(2) 主蒸気管破断事故

 ドライウェルの外で主蒸気管(外経約610mm)4本のうち1本が瞬時に完全破断し、冷却材の気水混合物が大気中に放出される事故を仮定する。

 隔離弁の閉鎖時間は5.5秒、放出流量は流量制限策によって定格流量の200%に制限されるものとして冷却材の放出量を計算すると、蒸気約8.9トンおよび水約9.8トンが放出されることになるが炉心は露出しない。

 なお、被ばく線量の計算には核分裂生成物の放散過程に従い、次の仮定を用いる。
① 事故前の1次冷却材中の放射性ハロゲンの濃度は、原子炉運転中の最高濃度である42μci/cm3とする。

② 主蒸気隔離弁は事故後5.5秒で閉鎖するが、8個のうち1個が閉鎖しないものとし、その結果全体として原子炉容器の蒸気相に対し120%/日の割合で漏洩するものと仮定する。この際、炉圧力と温度の低減によって漏洩量は漸時減少していく。

③ 事故発生後炉内圧力の減少に伴ない、核分裂生成物が破損燃料から冷却材中に放出されるが、その量は全ヨウ素が約3.8×104ci(うち131Ⅰ約2.0×104ci)、ヨウ素以外のハロゲン約4.1×104ci(γ線エネルギー0.5MeU相当、以下同様)、希ガス4.67×105ciとする。

 なお、隔離弁閉鎖までに冷却材中に放出される核分裂生成の1%が破断口から放出されるものとする。

④ 原子炉圧力は隔離弁閉鎖後24時間で大気圧まで一定割合で減圧されるものとする。

⑤ 燃料から炉水中に放出されたヨウ素のうち90%は無機ヨウ素、10%は有機ヨウ素とする。

 10%の有機ヨウ素については加水分解等により、蒸気相に移行するものは10分の1に減少するものとする。無機ヨウ素およびヨウ素以外のハロゲンは液相-気相間に分配係数100で分配されるものとする。

⑥ 主蒸気隔離弁閉鎖前に放出された核分裂生成物を含む冷却材は、大気中で完全蒸発して半径約90mの半球状の放射性雲を形成し1m/秒の速度で風下方向へ移動するものとする。

⑦ 主蒸気隔離弁閉鎖後漏洩する放射性物質は地上放散され大気中に拡散されるが、拡散の気象条件としては英国気象局方式大気安定度F型拡散幅30°、有効拡散風速3m/秒とする。

 以上に述べた条件による解析の結果、大気中に放出される放射性物質は、内部被ばくに関するものとして全ヨウ素約173ci、外部被ばくに関するものとしてハロゲン約3,080ci、希ガス約1,390ciである。

 敷地外において被ばく線量が最大となるのは、敷地境界(原子炉から西方約450m)であって、その地点における被ばく線量は、甲状腺(小児)に対し約58レムおよび全身に対してγ線約0.019レム(β線約0.049レム)となる。

 上記各重大事故時の被ばく線量は、「原子炉立地審査指針」にめやす線量として示されている甲状腺(小児)150レム、全身25レムより十分小さい。
5.2 仮想事故

  仮想事故として、冷却材喪失事故と主蒸気管破断事故の2つの場合を想定する。

(1) 冷却材喪失事故
 重大事故の場合と同じ事故について、非常用炉心冷却系の冷却効果を無視し、炉心内の全燃料が溶融したと考えた場合に相当する核分裂生成物の放出があるものと仮定する。

 この場合、事故後のドライウェルの最高圧力は設計圧力より低いが、原子炉建家への核分裂生成物の漏洩は無限時間続くものとする。

 なお、以下の各項をのぞき、線量の計算には重大事故の場合と同じ仮定を用いる。
① 炉心に蓄積されている、核分裂生成物中のヨウ素の50%、希ガスの100%がドライウェル内に放出される。

② ドライウェルから原子炉建家への漏洩は無限に続く。

③ 全身被ばく線量の積算値の評価における大気中での拡散に用いる気象条件は、「気象の手引」を参考にして大気安定度F型、拡散幅30°、風速1.5m/秒とする。

 以上に述べた条件による解析の結果、大気中に放出される放射性物質は全ヨウ素1.8×104ci、希ガス5.0×105ciである。

 敷地外において被ばく線量が最大となるのは敷地境界(原子炉から西方約450m)であって、その地点における被ばく線量は、甲状腺(成人)に対して約41レム、全身に対し、γ線約0.4レム(β線約1.1レム)である。また全身被ばく線量の積算値は約13万人・レムである。
(2) 主蒸気管破断事故
 重大事故の場合と同じ事故について、冷却系の効果を無視し、主蒸気隔離弁閉鎖後も原子炉容器からの核分裂生成物の漏洩が長時間続く場合を想定する。

 なお、以下の各項をのぞき線量の計算には重大事故の場合と同じ仮定を用いる。
① 破損燃料から冷却材中に放出される核分裂生成物は、隔離弁閉鎖後燃料プレナムに残存していた分が瞬時に放出されるものとする。

② 原子炉圧力は逃し弁作動圧力範囲に長時間保たれ、隔離弁からの漏洩は120%/日の割合で無限時間続くものとする。

 以上に述べた条件による解析の結果、大気中に放出される放射性物質は、内部被ばくに関するものとして全ヨウ素が約416ci、外部被ばくに関するものとしてハロゲン約4,890ci、希ガスは約2,040ciである。

 敷地外において被ばく線量が最大となるのは敷地境界(原子炉から約450m)であって、その地点における被ばく線量は、甲状腺(成人)に対して約45レムおよび全身に対してγ線約0.026レム(β線約0.091レム)となる。

 また、全身被ばく線量の積算値は、冷却材喪失事故の場合の値に比べて十分小さい。

 上記各仮想事故時の被ばく線量は、「原子炉立地審査指針」にめやす線量として示されている甲状腺(成人)300レムおよび全身25レムより十分小さい。

 また、全身被ばく線量の積算値は、国民遺伝線量の見地から定めためやす線量の200万人・レムより十分小さい。
 6 技術的能力

 申請者は、長年にわたり原子力発電に関する調査および原子力発電所の建設準備を行ない、すでに浜岡1号炉の建設を行なっている。

 本発電所の運転には2号炉の運転開始時約120名の技術者を予定していて、これらの技術者については、現在1号炉の建設に従事している者に加えて、今後さらに国内の諸機関を活用して養成訓練を行なうほか、海外の原子力関係諸機関へ派遣するなど技術的能力の確保を図っている。

 本原子炉の建設および運転に際しては、今日まで培ってきた原子力発電に関する技術的能力を活用するとともに、内外の関係研究機関および機器製造者との技術的協力を密にして、建設・運転および保守に万全を期すこととしている。

 以上のように、本申請者は本原子炉を設置するために必要な技術的能力および運転を適確に遂行するに足る技術的能力を備えているものと認められる。

  Ⅳ 審査経過


 本審査会は、昭和47年10月11日の第106回審査会において、次の委員からなる第93部会を設置した。
審査委員
 安 藤 良 夫(部会長)    東京大学
 金 井   清 日本大学
 木 村 耕 三 気象庁
 吹 田 徳 雄 大阪大学
 竹 越  尹 動力炉・核燃料開発事業団
 三 島 良 績 東京大学
 宮 永 一 郎 日本原子力研究所
 渡 辺 博 信 放射線医学総合研究所
調査委員
 伊 藤 直 次 日本原子力研究所
 高 領 泰 夫
 藤 村 理 人
 松 田 時 彦 東京大学
 森 島 淳 好 日本原子力研究所

 同部会は、通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行なうこととし、昭和47年10月20日第1回会合を開き審査方針を検討するとともに、主として施設を担当するAグループと、主として環境を担当するBグループを設け審査を開始した。

 以後、部会および審査会において審査を行なってきたが、昭和48年5月4日の部会において部会報告書を決定し、同年5月12日第114回審査会において本報告書を決定した。
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