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日米原子力協力協定改訂について


原 子 力 局

 現行日米原子力協力協定は、原子力の平和利用において広範な日米協力を可能ならしめるため昭和43年に締結されたものであり、わが国は本協定に基づき、米国から、情報、濃縮ウラン等の核燃料、原子炉等を入手している。

 その後、原子力の実用化が進展し、濃縮ウラン等の核燃料供給に関して日米両国間で新しい情勢に対応した協力関係を発展させる必要が生じてきた。

 このため、本協定を改正する議定書の締結について昨年8月以来米側と交渉を行なってきたが、このほどその内容について合意をみるに至ったので、本年3月28日ワシントンで(現地時間午後2時15分、日本時間29日午前4時15分)日本側牛場駐米大使と米側グリーン国務次官補およびレイ原子力委員会委員長との間でこの議定書の署名が行なわれた。

Ⅰ 本議定書は、本文7ケ条からなり、これによる主な改正点は次のとおりである。

1 濃縮ウラン等の供給枠の拡大等について

(1)わが国は、現行協定により、米国から1973年未までに着工される原子力発電炉(総設備容量約20・000Mwe)に必要な濃縮ウランを入手することができる(現行協定第9条A)ことになっているが、わが国の原子力発電計画の進展によりこれを拡大する必要が生じたため、1978年未までに着工が予想される原子力発電炉等(総設備容量60,000Mwe)に必要な濃縮ウランの入手が可能となることに改めること。

(議定書第3条、新第9条A)

(2)また、わが国の研究のためまたは第三国向けとしてわが国で転換加工するためにわが国に移転される濃縮ウランの量については、協定中枠を設けないことおよび米国民間からわが国に移転されるプルトニウムの量についても、同様に、協定中枠を設けないこと。

(議定書第3条・新第9条Aおよび新第9条B)

2 濃縮ウランの供給契約について

 米国からわが国に移転される濃縮ウランに関し、現行協定では、附表により特定された原子炉に対する供給保証(現行協定第7条A)、供給形式を売却でなく役務提供に限定する権利(現行協定第7条B、第7条C)、料金は米国内の者と同一とすること(現行協定第8条A(2))等の規定があるが、原子力の実用化の進展に対応してこれらの供給条件等については協定中とくに規定することなく当事者間の契約に委ねること。

(議定書第1条・新第7条A、議定書第2条)

 なお、1973年未までに着工される原子力発電炉に必要な濃縮ウランについては、現行協定でその供給が保証されているので、今回の議定書に伴う交換公文により今後とも供給保証が確認される。

 また、濃縮役務等の料金についても、現行協定では、米国内の者に適用される料金と同一とする旨規定されているので、議定書の発効までに締結される濃縮役務等の契約については、同様に交換公文により、今後ともその料金は米国内の者に適用される料金と同一とすることが確認される。

3 米国から移転をうけた濃縮ウランから生産されたプルトニウムの国外移転について

 現行協定では、米国政府の同意がない限り米国から移転をうけた濃縮ウランから生産されたプルトニウムの国外移転が禁止されている(現行協定第8条H)が、これを改め、当該プルトニウムは、米国と協定を締結している国または移転されるプルトニウムに日米両国が受けいれることのできる保障措置が適用される国に移転することができること。

(議定書 第2条・新第8条E)

4 保障措置について

(1)米国政府は国際原子力機関の保障措置に代置される範囲を除き移転される資材等に対する保障措置の権利を有する旨の規定を改め、国際原子力機関の保障措置の適用を第1とし、その適用がされないこととなった場合にのみ、米国政府の保障措置が適用されること。

(議定書第4条)

(2)わが国がNPTを締結した場合、その保障措置が適用されている間、三者間協定に基づく保障措置の適用を停止すること。

(議定書第5条・新第12条B)

(1)米国政府は国際原子力機関の保障措置に代置される範囲を除き移転される資材等に対する保障措置の権利を有する旨の規定を改め、国際原子力機関の保障措置の適用を第1とし、その適用がされないこととなった場合にのみ、米国政府の保障措置が適用されること。

(議定書第4条)

(2)わが国がNPTを締結した場合、その保障措置が適用されている間、三者間協定に基づく保障措置の適用を停止すること。

(議定書第5条・新第12条B)

5 現行協定締結以来5年経過してしいることに伴い、新たに締結される契約期間を現行協定通り30年とすることができるよう5年間有効期間を延長すること。

(議定書第6条)

6 この議定書は、それぞれの政府が他方の政府から必要な国内手続きを終了した旨の通告を受領した日に効力を生じ、協力協定の効力の存続期間中効力を有すること。

(議定書第7条)

 今回の改正により、わが国において1974年以降1978年未までに着工が予想される原子力発電炉の燃料をわが国は入手することが可能となり、また、濃縮ウランの供給条件等について、協定で規定することなく、契約ベースにゆだねることとするなど今後の原子力の実用化の進展に対処することができるようになっている。
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