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関西電力株式会社美浜発電所の原子炉の設置変更
(3号炉増設)に係る安全性について



昭和47年3月6日
原子炉安全専門審査会

原子力委員会
委員長 木 内 四 郎 殿

原子炉安全専門審査会
会長 内 田 秀 雄

 関西電力株式会社美浜発電所の原子炉の設置変更(3号炉増設)に係る安全性について

 当審査会は昭和46年8月12日付け46原委第299号(昭和47年2月4日付47原委第36号をもって一部訂正)をもって審査の結果を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

Ⅰ 審 査 結 果

 関西電力株式会社美浜発電所の原子炉の設置変更(低濃縮ウラン、軽水減速、軽水冷却の加圧水型原子炉1基を増設)に関し、同社が提出した「美浜発電所原子炉設置変更許可申請書(3号炉増設)」(昭和46年7月12日付け申請、昭和47年1月25日付け一部訂正)に基づいて審査した結果、本原子炉施設の変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

Ⅱ 審 査 内 容

1 変更計画の概要


 本変更は先に設置許可を受けた美浜発電所に、新たに第3号原子炉を設置しようとするもので、立地条件および施設の概要は次のとおりである。

1.1立地条件
 本変更に伴ない増設される原子炉(以下3号炉という。)は現在建設中の2号原子炉の北西約250mの地点に設置されるもので、敷地については、敷地面積約60,000m2を買い増し、約560,000m2であるが、周辺環境の状況、敷地附近の地質、海象、気象および地震活動性からみた立地条件は本変更においても変ることはない。

 3号炉の支持地盤については、原子炉設置予定位置に試掘横坑を掘削し、また各種ボーリングを行なって精査した結果、十分な支持耐力を有するものであることが確認されている。

 また、1、2、3号炉を合わせた淡水所要量は、約4,500m3/日となるが、淡水取水源としている落合川の河川水、馬背川の河川水および流域の地下水から約5,000m3/日の取水ができるので、必要な用水は十分確保される。復水器冷印水取放水施設は、1、2号炉とは別個に設け丹生湾から取水し、外海側に放水される。

1.2 原子炉施設
 3号炉は、熱出力約2,440MW(電気出力約826MW)の加圧水型であり、その設計は現在建設中の高浜1.2号炉と同一である。

 炉心部は、円筒型鋼製原子炉容器に収められ、燃料としては、低濃縮二酸化ウランペレットをジルカロイ-4被覆管に詰めた有効長約3.7mの燃料要素を集合体に組みたてたものが使用される。この装荷量は、ウラン量約70トンである。

 制御棒クラスタは銀-インジウム-カドミウム合金をステンレス鋼被覆管に収めたもので、約20本をクラスタ状にして燃料集合体の中に挿入する。作動に際しては、原子炉の上から磁気ジャック式駆動装置により駆動され、緊急時には自然落下させる。出力分布調整用制御棒クラスタは、ローラ・ナット式駆動装置により駆動され、緊急時にも落下しない。

 さらに、一次冷却材中のほう素濃度を調製して反応度制御を行なう化学・体積制御設備が設けられる。

なお、この設備は、非常用制御設備としての役目も果たすようになっている。

 初装荷炉心における余剰反応度を抑制するためのバーナブル・ポイズンは、ほうけい酸ガラス管をステンレス鋼で被覆したもので、クラスタ状にして制御棒クラスタの入っていない燃料集合体の制御棒案内シンブルに挿入される。

 冷却系としては、原子炉から蒸気発生器への1次系3回路およびタービンへの2次系1回路が設けられる。

 原子炉格納施設としては、原子炉本体および1次冷却系を収容する鋼製格納容器が設けられるほか、その外周にコンクリート壁が設けられ、これらの間の下半部を二重格納構造のアニュラス部としている。

 そのほか、原子炉施設として必要な放射性廃棄物処理施設、放射線管理施設等が設けられる。

 2.安全設計および安全対策

 本変更にかかる原子炉施設は、以下のような種々の安全設計および安全対策が講じられることになっており、かつ「安全設計審査指針」にも適合しているので十分な安全性を有するものであると認める。

2.1核、熱設計および動特性
 加圧水型の原子炉は我が国においても1基が運転中であり、さらに5基が建設中である。また、諸外国においては、すでにいくつか建設され、運転経験も得られているので、実証的な資料および解析結果から、核、熱設計および動特性についての計画値は十分信頼し得るものと考える。

 本原子炉は、反応度制御にほう素濃度調整方式を併用しているので、制御棒だけで制御する原子炉にくらべて減速材温度係数(負)の絶対値は小さくなるが、燃料のドップラ効果に基づく負の反応度出力係数を持つので、反応度外乱に対して自己制御性を有する。

 また、本原子炉は、バーナブル・ポイズンを採用しており、炉心寿命の初期においても運転温度における減速材温度係教は負となり、制御上の問題はない。

 炉内でのキセノンによる出力分布の空間振動の可能性は予測されるが、解析の結果、周期が長く出力分布調整用制御棒クラスタにより抑制でき、発散性の振動を起さずに十分安全に対処し得る。

 1次冷却材の圧力および出口温度は、定格出力運転時おいて、それぞれ約157kg/cm2gおよび約322℃であり、燃料の最高被覆温度および最高中心温度は、それぞれ約347℃および2,270℃である。仮に設計過出力(112%)の場合でも、燃料の最高中心温度は約2,470℃で、溶融点よりかなり低く保たれ、DNB比は1.3以上である。

2.2 燃   料
 本原子炉の燃料としては、外径約11mm、厚さ約0.6mmのジルカロイ-4被覆管に二酸化ウランペレットを封入した燃料要素を制御棒案内管および計測管とともに15×15に組み立てた無側板型の集合体が使用される。燃料要素は支持格子によって横方向に支持され、軸方向には自由に膨張を許し変形および振動を防止するような設計となっている。

 被覆管には、表面温度がかなり高いこと、冷却水中に水素が多くなることを考え、水素吸収率の小さいジルカロイ-4が使用される。

 管内のプレナム体積は、燃料要素の最高燃焼度の設計値約48,000MWD/Tに応じ得るように配慮されている。

 しかし、線出力密度および燃料中心温度がかなり大きいので類似の先行原子炉における使用実績を参考にするとともに使用中の破損燃料の検出も十分配慮することになっている。

 なお、最高線出力密度は49.5kw/mを越えないことを十分確認することになっている。

 2.3 計測および制御系

(1)核計測系
 中性子束は、原子炉容器外周に設置された検出装置により測定され、また炉内に置かれた可動小型中性子束検出器により、必要に応じて中性子束分布が測定される。

(2)安全保護系
 安全保護系は、多重チャンネル構成で中性子束、原子炉圧力等重要な検出要素に対して、“2outof3”方式などの論理回路を形成し、信頼度を高め、さらに、電源喪失、回路の断線等に対してフェイルセイフの機能を持たせて安全性を高めるよう配慮されている。

(3)反応度制御系


① 反応度制御の方法

 反応度制御系は、制御棒クラスタおよび化学・体積制御設備よりなる。前者はその位置調整により、原子炉の出力変化および高温停止に必要な反応度制御を行なうとともに、スクラム操作にも使用される。

 後者は、1次冷却材中のほう素濃度調整により、燃料の燃焼にともなって発生する核分裂生成物の毒作用による比較的緩慢な反応度変化に対する補償および低温停止時における過剰反応度の吸収に使用されるほか、非常用制御設備の機能も有する。

 初装荷炉心の実効余剰増倍率は0.20(△K)以下で、最も反応度効果の大きい制御棒クラスタ1本が炉心に挿入できない場合でも、制御系の反応度抑制効果は、実効増倍率の変化にして0.21(△K)以上であり常に炉心の実効増倍率を0.99(△K)以下に抑えるだけの停止余裕があるように設計されている。

  さらに、運転中常に必要な停止余裕を確保するため、制御棒クラスタが挿入位置限界値に近づいたとき、停止余裕監視装置により、警報を発するよう設計される。


② 制御棒クラスタ

 制御棒クラスタの位置調整は、磁気ジャック式駆動装置により上方から駆動されるが、スクラム動作は、制御棒クラスタが自重で炉心内に落下することにより行なわれる。


③ 化学・体積制御設備

 ほう素濃度調整は、化学・体積制御設備により、1次冷却材の注入、抽出およびイオン交換によって行なうが、いずれの場合も、濃度の変化に基づく原子炉の反応度変化は、緩慢で、原子炉の運転制御に支障を与えることはない。

(4)出力制御系
 原子炉の出力は、蒸気発生器入口および出口における1次冷却材温度の平均値が負荷に応じた値をとるように制御棒クラスタの位置を調整することにより自動制御される。

(5)1次冷却材圧力制御系
 1次冷却材の圧力制御は加圧器によって行なわれ±5%/分のランプ状および±10%のステップ状負荷変化に対しても1次冷却材圧力を許容範囲内に制御する機能を有する。

  また、加圧器上部には、安全弁および逃し弁を設けて1次冷却系の異常圧力上昇を制限する。

(6)中央制御室
 中央制御室は、原子炉施設の運転に重要なすべての計測制御装置が設備されており、事故時においても運転員が安全に所要の措置をとり得るように、遮蔽、換気等の放射線防護上の配慮がなされている。


2.4 原子炉容器および原子炉冷却系

(1)原子炉容器および1次冷却系配管
 原子炉容器および配管は、わが国の法令を満足するように設計、製作される。また材料の疲労および応力集中などについて解析を行ない、これらに十分耐えることを確認することになっている。

  さらに原子炉容器は、圧力を受けている間容器の温度をNDT+33degc以上に保つようになっている。なお、中性子照射によるNDT温度の上昇については、原子炉容器内に照射試料を挿入し、定期的に監視することになっている。

(2)安全注入設備等
 安全注入設備は、蓄圧注入、高圧注入および低圧注入の三つの系統からなり、1次冷却材喪失事故時にほう酸水を原子炉容器に注入し、燃料温度の過度の上昇を防止して、燃料の損傷、溶融、燃料被覆管のジルコニウム水反応を防止する機能を有する。

 ポンプおよび配管は多重性を持たせた設計とし、ポンプの電力は非常用電源設備からも供給される。

  また、余熱除去設備により原子炉停止後の崩壊熱除去を行なうほか、2次冷却系には蒸気ダンプ設備を設けている。

2.5 燃料取扱系

 燃料取替は、原子炉上部のキャビティにほう酸水を水張りし、水中で燃料取扱設備を用いて行なわれる。燃料取替中は、原子炉を未臨界に保てるようほう素濃度が調整される。
 使用済燃料貯蔵水槽は、原子炉補助建家内に設けられ、約4/3炉心相当分の貯蔵容量を有し、使用済燃料を鉛直に保持して水中貯蔵するようになっている。

2.6 廃棄物処理系

(1)気体廃棄物
 本原子炉から発生する気体廃棄物の大部分は1次冷却材中のほう素濃度を変更する際の排水とともに出てくるもので、ガス減衰タンク4基に貯蔵され、放射能レベルのサンプリング測定後、排気筒モニタで連続測定しつつ、原子炉格納容器端の排気筒(頂部標高約89m)から放出される。

(2)液体廃棄物
 液体廃棄物は、液体廃棄物処理施設で処理され、ごく低レベルのものを除き放出されない。
 ごく低レベルのものは、復水器冷却水で希釈して放出される。その濃度は、わが国の法令に定める許容値以下にすることとしている。

(3)固体廃棄物
 雑固体廃棄物および蒸発濃縮器濃縮液のうち1次冷却系で再使用しないものは、いずれもドラム缶語にして固体廃棄物置場に貯蔵保管される。使用済樹脂については当面廃樹脂タンクに貯蔵される。これらを海洋投棄する場合は、関係官庁の承認を受けることとしている。

2.7 放射線管理

(1)放射線遮蔽等
 遮蔽については、従業員の作業を考慮してその被ばく線量が法令に規定された許容量を十分下まわるように設計される。

 換気系は、主要な場所ごとに別系統となっており、事故時における放射能汚染の拡大防止等についても十分に配慮されている。
 なお、本変更に伴なう工事を実施するに当っては、1、2号炉からの放射線による被ばくについても十分対策が講じられることになっている。

(2)放射線監視
 発電所敷地内における放射線監視は、固定モニタ(原子炉格納施設モニタ、排気筒モニタ、排水モニタ等)による中央制御室での連続監視、サンプリング測定等によって行なわれ、また、気体廃棄物の放出管理のため風向、風速の連続監視が行なわれる。その他、個人の被ばく管理に必要な機器も備えられる。

 敷地外の放射線監視については、敷地境界付近および周辺の適当な場所に設置したモニタリングポストでの空間線量率等の測定のほか放射線観測車による測定および指標となる環境試料の採取測定による監視が行なわれる。

 これらにより、周辺一般公衆の被ばく線量が法令に定める許容値を越えないことを常に確認することになっている。なお、これらの放射線監視上必要なものについては1、2号炉と共通でおこなわれる。

 2.8 放射性物質の放出防止

 事故時においても周辺環境に大量の放射性物質が放散されないように、次のような配慮がなされている。

(1)原子炉格納施設
 原子炉格納施設は、鋼製格納容器およびその外周コンクリート壁からなり、両者の間は密閉格納構造のアニュラス部を構成し、原子炉施設の主要部分はこの原子炉格納容器内に収容される。

 また、格納容器を文通する配管および配線はアニュラス部に集められる。

(2)アニュラス空気再循環設備
 アュユラス空気再循環設備は、フィルタ装置および排風機からなり、この設備により原子炉格納容器内に放射性物質が放出されるような事故時には、アニュラス部の空気をフィルタでろ過し循環するとともにアニュラス部を負圧にする。

 負圧にするための排気は、フィルタ装置を通して排気筒から放出される。

(3)隔  離  弁
 原子炉格納容器を貫通する重要な配管には隔離弁を設け、事故時に放射性物質が外部に漏洩しないよう設計されている。

(4)原子炉格納容器スプレイ設備
 原子炉格納容器内部にはスプレイ設備を設け1次冷却材喪失事故時に、原子炉格納容器内圧の減少をはかるとともに、浮遊する核分裂生成物(とくによう素)の除去を行なうようになっている。

2.9 安全防護設備の機能確保

(1)非常用電源
 本原子炉施設に必要な電力は、主発電機または215KV母線から供給されるが、予備電源として、77KV送電線からも受電できる。これらの電源がすべて喪失しても、原子炉施設の安全確保に必要な電力は、ディーゼル発電機および所内蓄電池系から供給できるようになっている。

(2)保 守 点 検
 原子炉安全保護回路、安全注入設備、原子炉格納容器スプレイ設備および原子炉格納容器の気密を保持するに必要な隔離弁等は、原子炉施設の耐用期間を通じて、その機能を確認するため、運転中あるいは停止中に点検または試験ができるようになっている。

 また、原子炉格納器の漏洩率は定期的に測定されることになっており、かつ、配管配線貫通部は漏洩検出のための試験ができるようになっている。

2.10 耐震上の考慮

 原子炉施設は、原則として剛構造とし重要な建物、構築物は直接岩盤に支持される。すべての施設は、安全上の重要度に従って、A、BおよびCの3種のクラスに分類され、それぞれに応じて耐震設計が行なわれる。

 原子炉、原子炉格納施設等のように、その機能喪失が原子炉事故をひきおこすおそれのある施設および周辺公衆の災害を防止するために緊要な施設は、Aクラスとする。

 Aクラスの建物、構築物の耐震設計は、建屋基礎底面における最大加速度が少なくとも270galの地震波により動的解析を行なって求められる水平方向地震力ならびに建築基準法に示された水平震度(この場合、地域による低減は行なわない)の3倍を下回らない値から求められる水平方向地震力によって行なわれる。

 垂直震度は、建物構築物の高さ方向に一定とし、それらの基礎底面における建築基準法に示された水平震度の1.5倍を下回らない値とする。

 この場合、水平および垂直方向の地震力は、同時に作用するものとする。Aクラスの機器、配管類については、運転時の応力と地震力による応力を加え合わせた場合について、応力集中および材料の弾性、そ性等を考慮した解析により、耐震設計が行なわれる。

 この場合の水平方向地震力は、前記の地震波に対する動的解析によって求められる値とし、かつ据付位置における支持構築物に関し、建築基準法に示された水平震度の3.6倍を下回らない値から求められる水平方向地震力を用いることにより解析する。垂直震度は、建物、構築物に対する値の1.2倍を下回らない値とし、水平および垂直方向の地震力は同時に作用するものとする。また、機器配管類の振動によって生ずる変位、変形は機能の保持に支障のないものとする。

 さらに、原子炉格納容器、原子炉停止装置、ほう素制御系等のように安全対策上特に緊要な施設については、Aクラスの扱いのほかに、その機能が保持されることを確認するため、建屋基礎底面における最大加速度が少なくとも405galの地震波による動的解析を行なう。特に、原子炉格納容器については、設計用地震時応力と事故時の内圧との組合わせに対してもその機能を保持することが確認される。

 また、原子炉補助建家、廃棄物処理系統のように高放射性物質に関する施設はBクラス、その他の施設は、Cクラスとし、それぞれ建築基準法に定められた震度の1.5倍および1倍の値によって耐震設計が行なわれることになっている。
 なお、地震の際には、原子炉を自動的に停止することができるようになっている。

3.平常運転時の被ばく評価

 平常運転時における被ばく評価は、次のとおりであり、敷地周辺の公衆に対する放射線障害の防止上支障がないものと認める。
 
3.1気体廃棄物

 平常運転時の年間放出限度は、ガス減衰タンクからの放出ガス、格納容器換気系および補助建屋換気系からの換気空気を考慮して、1号炉約7,500Ci(γ線エネルギー約0.05Mev相当、以下同様)2号炉約10,500Ci、3号炉約19,410Ciとしている。これは1次冷却材中の希ガス濃度約365μCi/cc(γ線エネルギー0.05Mev相当)で1年間運転したと仮定し、廃棄物処理系で発生する気体廃棄物はガス減衰タンクで、45日間減衰後放出するとした場合の値である。

 これらによる年間の被ばく線量を、年間の気象データから着目地点への風向出現頻度ならびに放出形態を考慮して計算すると、敷地外で被ばく線量が最大となるのは、3号炉位置より南南東約2,600mの地点であって、その地点における被ばく線量は1、2、3号炉合算でγ線約0.43mrem/年、β線約1.9mrem/年となる。また、3号炉位置より東約1,000mの地点においては、γ線約0.31mrem/年、β線約1.1mrem/牛となる。

 これらは、周辺監視区域外の許容被ばく線量(500mrem/年に比較して十分下回っており、更に実際の運転時にはこれより下回ることが予想される。
 なお、整地内外に放射線監視設備を設け十分な監視を行なうこととしている。

3.2 液体および固体廃棄物

 安全設計および安全対策の項で述べたように、液体廃棄物および固体廃棄物の廃棄について十分な安全対策を講ずることになっている。
 なお、液体廃棄物については、環境試料等の測定結果からの被ばくを評価し安全を確認することにしている。

4.各種事故の検討

 3号炉において発生する可能性のある反応度事故および機械的事故について検討した結果、それぞれ次のような対策が講じられており、3号炉は十分安全性を確保し得るものであると認める。
 
4.1反応度事故

(1)制御棒クラスタ引抜事故
 運転員の誤操作または機器の誤作動により最大反応度効果を有する制御棒クラスタ1本を最大速度で連続的に引き抜いても核的逸走は負の出力係数でおさえられ、かつ、中性子束高スクラムにより原子炉は停止するので、燃料被覆が破損することはない。

(2)ほう素希釈事故
 運転員の誤操作または化学・体積制御系機器の誤作動による炉心内のほう素濃度の減少に基づく反応度付加率は、制御棒クラスタの連続引抜きによる反応度付加率より小さい。

(3)制御棒クラスタ落下事故
 運転中に最大反応度効果を有する制御棒クラスタ1本が落下し出力が減少すると、自動制御により出力は直ちにもとへもどされるが、この場合、最大出力運転時であってもDNB比は1.3を十分上まわり、原子炉の安全は損なわれない。

 さらに中央制御室に警報が発せられ、制御棒位置はすみやかに正常にもどされ安全に原子炉の運転を継続できる。

(4)制御棒クラスタ逸出事故
 制御棒クラスタ駆動機構の圧力ハウジングが破損し、制御棒クラスタ1本が瞬時に抜け出しても、運転中は制御棒クラスタがほぼ引き抜かれた状態にあるため、それによる反応度付加量は小さく、他の制御棒クラスタにより、原子炉は停止できる。

(5)燃料取替事故
 燃料取替中、運転員の誤操作もしくは機器の誤作動により、燃料集合体が炉心に落下しても、水中のほう素濃度が高いので臨界に達することはない。
 
4.2 機械的事故

(1)1次冷却材流量喪失事故
 原子炉運転中、1次冷却材ポンプが機械的故障、電源喪失あるいは、運転員の誤操作により3台同時に停止しても、1次冷却材喪失スクラムにより原子炉は停止し、また、系の慣性のため1次冷却材流量は急速に失なわれることはなく熱除去能力は急激に減少しないので燃料被覆が破損することはない。

(2)1次冷却材喪失事故
 1次冷却系配管が破断し、充てんポンプによる加圧器水位の維持が困難となれば、原子炉圧力の低下により蓄圧タンクが作動し、また加圧器水位低と原子炉圧力低の同時信号により、高圧および低圧安全注入系が作動するとともに、スクラムにより原子炉は停止し、燃料の過熱が抑えられる。

 この事故により燃料被覆の一部が破損しても、燃料から放出される少量の核分裂生成物は、原子炉格納容器内に保留され、そのうちのよう素はアルカリ性スプレイにより除去される。
 希ガス等原子炉格納容器から漏洩したものは、アニュラス空気再循環設備をへて排気筒へ導かれる。

(3)蒸気発生器細管破損事故(外部電源のある時)
 蒸気発生器の細管破損により1次冷却材が2次系に流出しても、蒸気発生器のブローダウン配管と復水器エゼクタの2箇所に設けられた放射線モニタにより運転員が事故を検出し、原子炉は停止されるとともに、復水器への蒸気ダンプ弁が開放され、1次冷却系の冷却が行なわれる。

 1次系圧力が2次系の設計圧力以下にまでなった段階で破損を起した蒸気発生器を蒸気隔離弁により分離することになっている。
 なお、外部電源喪失の場合は重大事故および仮想事故として解析する。

(4)主蒸気管破断事故
 出力運転時に主蒸気管が破断すると蒸気発生器での熱交換量が急増し、原子炉出力が異常に増加するが中性子束高スクラムにより原子炉は停止する。このときの限界熱流束比は制限値を十分下回る。

 高温待機時に主蒸気管が破断し、かつ、最大の反応度効果を有する制御棒1本が挿入不能の場合には、原子炉はスクラム後一時的に再臨界に達するが、安全注入設備の作動で高濃度ほう酸水が注入される結果原子炉はすぐに未臨界になり、燃料および被覆材の溶融は起らない。

(5)燃料取扱事故
 燃料取扱中、使用済燃料が装置の故障で落下し、一部が破損しても、操作はすべて原子炉格納容器内または、原子炉補助建家内の水中で実施されるので、水中から放出される核分裂生成物の量はわずかであり、さらに換気設備によりろ過した後排気筒から放出される。

(6)気体廃棄物処理設備の破損事故
 気体廃棄物処理設備の配管やタンク等が破損しても、放射性気体は、換気設備によりろ過されたのち、排気筒を経て放出される。この場合、敷地周辺の公衆に対する被ばく線量は低いので支障がない。

(7)その他の事故
  制御棒クラスタ駆動装置、主要弁類、蒸気発生器、2次側給水設備等の故障または誤作動、復水器真空度の低下、電源の喪失等があっても、いずれも十分な対策がなされている。
 
5.災害評価

 3号炉はすでにのべたように、種々の安全対策が講じられることになっており、かつ、各種事故に対しても検討の結果安全を確保し得るものと認めるが、さらに「原子炉立地審査指針」(以下立地指針という)に基づいて重大事故および仮想事故を想定して行なった災害評価は次のとおりで、解析に用いた仮定は妥当なものであり、その結果は立地指針に十分適合しているものと認める。
 
5.1重大事故

 重大事故として1次冷却材喪失事故および蒸気発生器細管破損事故の二つの場合を想定する。

(1)1次冷却材喪失事故
 原子炉容器に接続している最大口径の配管である1次冷却系配管(内径約700mm)1本が原子炉入口ノズル付近で瞬時に破断し、破断口両端から1次冷却材が放出される事故を仮定する。

 解析の結果では、二酸化ウランの溶融温度に達することはなく、燃料被覆がジルカロイの溶融温度に達することもない。

 また、燃料被覆管の最高温度は約1,180℃であり、その健全性が大きくそこなわれることもなく、ジルコニウム-水反応もきわめてわずかしか起らない。
 原子炉格納容器内の圧力は、1次冷却材の放出により急上昇するが、原子炉格納容器スプレイ設備により冷却され、内圧は容器の許容最高圧力をこえることなく、すみやかに大気圧近くまで減少する。
  そこで核分裂生成物の放散過程に従って、次の仮定を用いて計算する。

 ① 燃料ペレットは溶融温度に達することはないが全部の燃料棒の被覆に破損が生じたとし、全炉心に内蔵されている核分裂生成物のうち、希ガス2%、よう素1%、固体分裂生成物0.02%相当分の放出があるものとする。

 なお、格納容器内に放出されたよう素のうち、10%は有機よう素であり、また残りの無機よう素の50%は格納容器壁面等に吸着されるものとする。

 ② 原子炉格納容器内に浮遊するよう素はアルカリ性スプレイにより、大部分が除去されるが、その除去効率は無機よう素に対して等価半減期100秒とする。

 ③ 原子炉格納容器からの漏洩率は事故後24時間まで0.3%/日、その後3日間は0.135%/日とする。

 ④ 原子炉格納容器からの漏洩は、97%がアニュラス部に生じ、3%は原子炉格納容器のドーム部で生ずるものとする。

 なお、アニュラス部に漏洩したものはアニュラス空気再循環系を経て再循環し、その一部はアニュラス部の負圧維持のため排気筒から放出される。このアニュラス空気再循環系に設置されるよう素フィルタの除去効率は90%とする。

 なお、事故後アニュラス部の負圧の達成までに10分間を要し、この間はアニュラス空気再循環設備のフィルタは有効でなく格納容器からアニュラス部に漏洩してきた気体は、そのままアニュラス上部より放出されるものとする。

 ⑤ 大気中への拡散に用いる気象条件は、排気筒の高さ(地上約80m)、現地の気象データをもとに「原子炉安全解析のための気象の手引」(以下気象手引という)を参考にして、高さ80m以下均一分布、水平方向拡散幅30°有効拡散風速2m/secとする。

 解析の結果、大気中に放出される放射性物質は全よう素が約28Ci(Ⅰ-131換算。以下同様)希ガス約3,440Ci(γ線エネルギー0.5MeV相当、以下同様)である。

 敷地の外で被ばく線量が最大となるのは、敷地境界(原子炉中心から約750m)であって、その地点における被ばく線量は甲状腺(小児)に対して約1.1rem、全身に対して約0.14rem(β線約0.017rem)である。

(2)蒸気発生器細管破損事故
 蒸気発生器細管の1本が破断し、1次冷却材が2次側へ流出して、その中に含まれる核分裂生成物が主蒸気逃し弁を経て排気管から放出される事故を仮定する。

 事故発生後、1次系圧力の低下により原子炉はスクラムされ、1次系の圧力が2次系の設計圧力まで下った後蒸気隔離弁を閉止する。それまでに約30分を要するが、1次冷却材の2次側への流出は全保存量の約1/5である。

 そこで、次の仮定を用いて線量を計算する。

 ①1次冷却材中のよう素濃度約13μCi/cc.(Ⅰ-131換算)、希ガス濃度を約183μCi/cc(γ線エネルギー0.5MeV相当)とする。

 ② 炉内圧が大気圧に低下するまでに破損燃料から1次冷却材中へ追加放出される核分裂生成物の量を、全よう素約50,000Ci、希ガス約220,000Ciとする。

 ③ 2次側へ流出した1次冷却材中に含まれる核分裂生成物のうち希ガスの全部とよう素の一部が主蒸気逃し弁から排気管を通って放出されるものとする。

 ④ よう素のうち90%は無機状のもの、10%は有機状のものとする。無機状のものの液相、気相間の分配係数を100、有機状のものの低減率を1/10とする。

 ⑤ 破損した蒸気発生器を蒸気隔離弁で隔離した後においても逃し弁、安全弁から蒸気の漏洩があるとし、その漏洩量は蒸気圧力の平方根に比例するものとする。

 ⑥ 大気中の拡散に用いる気象条件は、現地の気象データをもとに気象手引を参考にして地上放散、大気安定度F型、水平方向拡散幅20°有効拡散風速2m/secとする。
 解析の結果、大気中に放出される放射能は全よう素約56Ci、希ガス約19100Ciである。

 敷地外で線量が最大となるのは敷地境界(原子炉中心から約750m)であって、その地点における被ばく線量は、甲状腺(小児)に対して約17rem、全身に対して、約0.10rem(β線約0.68rem)である。
 上記各重大事故時の被ばく線量は立地指針にめやす線量として示されている甲状腺(小児)150rem、全身25remより十分小さい。

5.2 仮想事故
 仮想事故としても、重大事故と同様二つの事故の場合を想定する。

(1)1次冷却材喪失事故
 仮想事故としては、重大事故と同じ事故について安全注入設備の炉心の冷却効果を無視して炉心内の全燃料が溶融したと考えた場合に相当する核分裂生成物の放出があると仮想する。

 また、原子炉格納容器の効果について重大事故と同じとし、次の点について重大事故の場合と異なる仮定をして被ばく線量を計算する。

 ① 全炉心に内蔵されている核分裂生成物のうち、希ガス100%、全よう素50%、固体核分裂生成物1%相当分が原子炉格納容器内に放出される。

 ② 国民遺伝線量の評価における大気中での拡散に用いる気象条件は、気象手引を参考にして大気安定度F型、水平方向拡散幅30°一定、風速1.5m/secとする。

  解析の結果、大気中に放出される放射性物質は、全よう素が約1,370Ci、希ガス約172,000Ciとなる。
 敷地外で被ばく線量が最大となるのは、敷地境界(原子炉中心から約750m)であって、その地点における被ばく線量は、甲状腺(成人)に対して約13rem、全身に対して約6.3rem(β線約0.88rem)である。また、全身被ばく線量の積算値は3.6万人-remである。

(2)蒸気発生器細管破損事故
 重大事故と同じ事故について、事故時に新たに燃料から放出される核分裂生成物は事故直後に全量が1次冷却材中に放出されるものとし、かつ、健全な蒸気発生器による減圧効果がなく、10m3/日の蒸気の漏洩が無限時間続くと仮想する。

 また大気中への拡散条件は弁の閉鎖までに放出される冷却材については重大事故と同じものを用い閉鎖後の漏洩による影響については現地の気象データをもとに気象手引を参考にして地上放散、大気安定度F型、水平方向拡散幅30°、有効拡散風速2m/secとする。

 なお、国民遺伝線量については風速1.5m/secとする。
 解析の結果大気中に放出される放射能は、全よう素が約313Ci、希ガス約53,600Ciである。

  敷地外で被ばく線量が最大となるのは、敷地境界(原子炉中心から約750m)であって、その地点における被ばく線量は甲状腺(成人)に対して約21rem、全身に対して約0.27rem(β線約1.4rem)である。
 また、全身被ばく線量の積算値は1.5万人-remある。

 上記各仮想事故時の被ばく線量は、立地指針にめやす線量として示されている甲状腺(成人)300rem、および全身25remより十分小さい。また、全身被ばく線量の積算値は、国民遺伝線量の見地から示されているめやす線量の200万人-remより小さい。

 6.技術的能力

 申請者は長年にわたり、原子力発電に関する調査を実施しており、すでに現在美浜発電所1号炉の建設を完了し、運転を行なっている。さらに、同発電所2号炉および高浜1、2号炉の建設を行なっている。

 本発電所の運転開始予定年度(昭和51年度)には本発電所の建設および運転に必要な約160名を含めて、申請者全体で約700名の原子力関係技術者が必要であるとされている。

 これらの技術者については、現在美浜発電所1、2号炉および高浜発電所1、2号炉の建設および運転に従事している者に加えて、さらに国内の諸機関を活用して養成訓練を行なうほか、海外の原子力関係諸施設への派遣などによってその確保をはかる計画である。

 また、本発電所の運転要員については試運転開始時までに、美浜、高浜両発電所における教育訓棟に加え、福井県に設置される予定のPWR型原子炉運転訓練用シミュレーターも活用して関係者全員の教育訓練を実施するように計画している。

 これらの点から、本発電所を設置するために必要な技術的能力および運転を適確に遂行するに足りる技術的能力を有するものと認める。
 

Ⅲ 審 査 経 過

 本審査会は、昭和46年8月17日に開かれた第94回審査会において次の委員からなる第80部会を設置した。

        審査委員
       高島 洋一 (部会長)  東京工業大学
       大崎 順彦             東京大学
       木村 耕三             気象庁
       左合 正雄             東京都立大学
       吹田 徳雄             大阪大学
       竹越   尹             動力炉・核燃料開発事業団
       武谷 清昭             日本原子力研究所
       渡辺 博信             放射線医学総合研究所

        調査委員
       石田 泰一             動力炉・核燃料開発事業団
       伊藤 直次             日本原子力研究所
       藤村 理人                    〃    
       森島 淳好                    〃    

 同部会は通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査し、昭和46年8月20日に第1回会議を開き、審査方針を検討するとともに、Aグループ(炉、装置、プラント関係)およびBグループ(環境関係)を設置して審査を開始した。

 以後、部会および審査会においても審査を実施してきたが、昭和47年2月25日の部会において部会報告書を決定し、同年3月6日第100回審査会において本報告書を決定した。
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