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原子力損害賠償制度の改正について



昭和46年2月4日
原子力委員会


 原子力委員会は、原子力損害賠償制度検討専門部会を設置し、現行原子力損害賠償制度につき改善を要する諸点および改善方策についての検討を依頼していたが、昭和45年11月30日付けで同専門部会の答申を得た。
 委員会は、この答申の内容を尊重し、下記のとおり現行原子力損害賠償制度を改正する必要があるとの結論に達した。



1.適用期限の延長

 原子力損害賠償補償契約の締結および国の援助に関する規定を昭和56年12月31日までに運転を開始する原子炉等に係る原子力損害について適用することとする。

2.原子力船に係る原子力損害賠償制度の整備

(1)わが国の原子力船が外国の水域に立ち入る場合には、

(イ)両国政府間の国際約束で、原子力事業者がその責めに任ずべき損害賠償責任を一定の額までとするとともに、その額までの損害賠償措置を講じさせることとする。

(ロ) その場合の損害賠償措置としては、民間の原子力損害賠償責任保険契約等で填補されない原子力損害について、原子力損害賠償補償契約で填補できるよう国の補償契約制度を拡大することとする。

(2)外国原子力船が本邦の水域に立ち入る場合には、

(イ)その運航者に原子力損害の賠償に関する法律上の義務を課することとする。

(ロ)わが国の原子力船が外国の水域に立ち入る場合と同様、両国政府間の国際約束で、原子力事業者がその責めに任ずべき損害賠償責任を一定の額(一原子力事故当たり360億円を下らない額)までとするとともに、その額までの損害賠償措置を講じさせることとする。
 また、万一国際約束で定められた額をこえる原子力損害が発生した場合には、被災者の救助および被害の拡大の防止のため、必要な措置を政府が講ずるようにすることとする。

3.その他

(1)賠償措置額の引上げ
 賠償措置額の50億円を60億円に引き上げることとする。

(2)求償権の制限および核燃料物質運搬中の責任
 特約がある場合を除き、原子力事業者の求償権の行使を第三者に故意がある場合に限るとともに、核燃料物質等の運搬中の損害賠償責任は、受取人でなく発送人にあることとする。

(3)その他、原子力損害賠償制度検討専門部会の答申に沿って、現行の原子力損害賠償制度を改正する。


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