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日本原子力研究所東海研究所の原子炉の設置変更
(JRR-2の変更)について



45原委453号 
昭和45年12月10日


  内閣総理大臣 殿


原子力委員会委員長


日本原子力研究所東海研究所の原子炉の設置変更
(JRR-2の変更)について(答申)


 昭和45年10月8日付け45原第6770号(昭和45年12月1日付け45原第7715号で一部訂正)で諮問のあった標記の件について下記のとおり答申する。



 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に掲げる許可の基準に適合しているものと認める。
 なお、本設置変更に係る安全性に関する原子炉安全専門審査会の報告は別添のとおりである。





日本原子力研究所東海研究所の原子炉の設置変更
(JRR-2の変更)に係る安全性について


昭和45年12月2日
原子炉安全専門審査会


 原子力委員会
   委員長 西田 信一 殿

原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄


日本原子力研究所東海研究所の原子炉の設置変更
(JRR-2の変更)に係る安全性について


 当審査会は、昭和45年10月8日付け45原委第346号(昭和45年12月1日付け45原委第449号をもって、一部訂正) をもって審査の結果を求められた標記の件について結論を得たので報告します。


 審査結果


 日本原子力研究所東海研究所の原子炉の設置変更(JRR-2の変更)に関し、同研究所が提出した「東海研究所原子炉設置変更許可申請書(JRR-2原子炉施設の変更)(昭和45年10月8日付け申請および昭和45年11月30日付け一部訂正)に基づいて審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保しうるものと認める。


 変更内容


 JRR-2にSIL(ナトリウムインパイルループ)を設置する。
 本装置は水平実験孔HT-15にとりつけられる照射プラグおよび炉外のナトリウム系より成る。ナトリウム系には電磁ポンプ、主ヒーター、主クーラー、体積変化を吸収するための膨脹タンク、ナトリウム貯蔵用のスレージタンクおよびシールドタンク等が設けられる。
 ナトリウムは、圧力2kg/cm2g以下、温度560℃以下の任意の条件に設定され、照射試料に直接接触して、冷却しつつ循環する。
 照射試料としてはウランを用い、最大使用量は10g(U-235量)である。


 審査内容


 本変更は、以下に述べるような安全設計および安全対策が講じられることになっており、十分な安全性を有するものであると認める。

イ 原子炉への核的、熱的影響

 本装置の照射プラグによる反応度効果は、0.05%△k/k以下であり、原子炉動特性に対する影響は安全上無視できる。
 また、本装置の照射プラグで発生するγ熱と照射試料の核分裂による発熱量(20W以下)の合計は200W以下であり、これは原子炉熱出力10.000kWに比して極めてわずかであり、原子炉への熱的影響は無視できる。

2 安全保護設備

 本装置には、照射プラグ系、ナトリウム系、カバーガス系、気密室系、電源および圧縮空気系の異常状態を検出して安全を確保するために、異常状態の程度に応じて、アラーム、ナトリウムドレインおよび炉スフラムの装置が設けられる。
 また、非常時操作として、手動によるドレインおよびスクラムができるようになっている。

3 ナトリウム、FPガスの漏洩および火災防止

 ナトリウム系の配管および機器はすべて二重構造とし、ナトリウムが内管から漏洩しても外管で保護される。
 とくに照射プラブは内筒部および外筒部からなり、全体として三重気密構造となっている。全系の必要な箇所にナトリウム漏洩検出器が設けられ、配管全体はドレインを完全にするために傾斜をつけてある。
 炉外ナトリウム系は全体を気密室内に格納し、炉室へのFPガスの漏洩を防止し、かつ、かりに二重管からのナトリウム漏洩により火災が発生しても密閉消火できるようになっている。

4 放射線管理

(1)放射線しゃへい
 照射プラグおよび機器類には必要なしゃへいが設けられるほか、気密室外側は鉛およびパラフィンでしゃへいされ、常時作業する者が立ち入る場所において線量率が2m rem/hr以下となるように設計される。

(2)廃棄物処理
 気密室は炉室より常時負圧に保たれており、気密室からでる空気冷却系の排気は通常は全く放射化されていないが、排風ダストモニタで監視しながらJRR-2既設の排気ダクトを通して排気筒から放出される。
 またカバーガスを排出する際には、FPガストラップを通してから上記の排風ダストモニタで監視しながら排気ダクトに送る。この場合ほば全量のFPが吸着されるので問題はない。
 使用済みの照射試料や放射化されたステンレス鋼部品などは十分ナトリウム洗浄を行なった後、輸送キャスクに入れて廃棄物処理場に運び処分される。

5 事故評価

 ナトリウムの二重配管内漏洩、ナトリウムの流量停止、空気冷却系の故障、電源喪失および圧縮空気庄低下の各事故について検討を行なったが、いずれも十分な対策がなされており、いずれの事故の場合においてもナトリウムの温度は560℃をこえず、また、かりにこの温度をこえることがあったとしても、ナトリウムはすべてドレインされる。なお、炉の運転中に照射試料部のナトリウムが喪失しても、試料発熱が少なく、放熱量が多いので問題はない。したがって、本原子炉の安全性は十分確保し得るものと認める。
 さらに、本装置の最大想定事故として、二重配管が破損し、同時に気密室内に配管内の全ナトリウム(10l)が洩れ、火災が発生した場合を検討した。その結果は次のとおりで、周辺の公衆に対して障害を与えることはないと認める。
 事故は、二重配管内漏洩検出器、主ナトリウム流量計、気密室内温度計、気密室内煙検出器、膨脹タンク液面計および排風ダストモニタにより検出され、気密室内温度および排風ダストモニタ信号により原子炉はスクラムする。漏洩ナトリウムは気密室内に密封し、密閉消火する。
 そこで、次の仮定を用いて気密室の外側での被ばく線量を計算する。

①気密室内からのガスの漏洩は正圧時(30分以内)だけであり、その漏洩率は20cc/sec(標準状態で)とする。

②気密室(約3.7m3)内の酸素量から考えて、燃焼するナトリウム量は約3.0kgである。その
うちの10%が煙状になるものとすると、その放射能は、約47mCiである。

③生成した核分裂生成物の5%(定常移行量の10倍を仮定)がナトリウム中に入り、洩れたナトリウムから気密室内ガス相への核分裂生成物の移行割合は、希ガスについては100%、よう素については10%とする。

④炉室の換気量は2×1010 cc/hpとする。

⑤よう素の壁面等への吸着およびフイルタによる除却効果は無視する。

⑥照射時間は1000時間とする。
 解析の結果、気密室から洩れたガス状核分裂生成物および煙状ナトリウムによる被ばく線量は、甲状線に対して約1×10-4rem、全身に対してγ線2.7×10-6rem(β線的8.5×10-6rem)であり、十分小さい。
 したがって従事者はもちろん敷地外の一般公衆に対して障害をもたらすことはない。

 審査経過

 本審査会は、昭和45年10月16日第84回審査会において、次の委員からなる第73部会を設置した。

 審査委員

高島 洋一(部会長) 東京工業大学
植田 辰洋 東京大学
江藤 秀雄 放射線医学総合研究所

 調査委員

西脇 一郎 宇都宮大学

 同部会は、昭和45年11月2日第1回会合を開き、審査方針を検討するとともに、審査を開始した。
 以後、部会および審査会において審査を行なってきたが、同年11月26日の部会において部会報告書を決定し、第87回審査会において本報告書を決定した。


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