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関西電力(株)高浜発電所の原子炉
(1号炉)の設置変更について


45原委第420号
昭和45年11月19日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

関西電力株式会社高浜発電所の原子炉
(1号炉)の設置変更について(答申)

 昭和45年11月12日付け45原第7496号で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。

 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に掲げる許可の基準に、適合しているものと認める。
 なお、本設置変更に係る安全性に関する原子炉安全専門審査会の報告は別添のとおりである。




関西電力株式会社高浜発電所の原子炉
(1号炉)の設置変更に係る安全性について

昭和45年11月16日
原子炉安全専門審査会

原子力委員会
委員長 西田 信一殿

原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄


 関西電力株式会社高浜発電所の原子炉
(1号炉)の設置変更に係る安全性について

 当審査会は、昭和45年11月12日付け45原委第408号をもって審査の結果を求められた標記の件について結論を得たので報告します。



Ⅰ 審査結果

 関西電力株式会社高浜発電所の原子炉の設置変更に関し、同社が提出した「高浜発電所原子炉設置変更許可申請書(1号原子炉施設記載事項の変更)」(昭和45年11月11日付け、関原発第29号をもって申請)に基づいて審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。



Ⅱ 変更事項

 主蒸気安全弁および逃し弁の漏れ率を1蒸気発生器あたり5m3/日(設定圧力相当、飽和蒸気で)以下とすること。



Ⅲ 審査内容

 本変更は主蒸気安全弁および逃し弁の性能に関するものであり、この弁の性能が関係する蒸気発生器細管破損事故について「原子炉立地審査指針」(以下立地指針という)に基づく重大事故および仮想事故を想定して行なった災害評価は次のとおりである。
本解析に用いた仮定は妥当であり、その結果は立地指針に十分適合しているものと認める。


1 重大事故
 蒸気発生器細管の1本が破断し、1次冷却材が2次側へ流出して、その中に含まれる核分裂生成物が主蒸気逃し弁を経て排気管から放出される事故を仮定する。
 事故発生後、1次系圧力の低下により原子炉は スクラムされ、1次系の圧力が2次系の設計圧力まで下った後蒸気隔離弁を閉鎖する。それまでに約30分を要するが、1次冷却材の2次側への流出量は全保有水量の約1/5である。
 そこで、次の仮定を用いて被ばく線量を計算する。

① 運転中の1次冷却材中の全よう素濃度約13μci/cc希ガス濃度約280μci/cc(被覆に欠陥のある燃料が全数の5%である状態で定格出力運転を行なっているときの平衡濃度に相当)とする。

② 炉内圧が大気圧に低下するまでに破損燃料から追加放出される核分裂生成物の量は、全よう素約50,000ci(I-131換算、以下同様)希ガス約250,000ci(γ線エネルギー0.5MeV相当、以下同様)である。

③ 2次側へ流出した1次冷却材中に含まれる核分裂生成物のうち希ガスの全部とよう素の一部が主蒸気逃し弁から排気管を通って放出されるものとする。

④ よう素のうち90%は無機状のもの、10%は有機状のものとする。無機状のものの液相-気相間の分配係数を100、有機状のものの低減率を1/10とする。

⑤ 破損した蒸気発生器を蒸気隔離弁で隔離した後における逃し弁、安全弁からの漏洩量は蒸気圧力の平方根に比例するものとする。

⑥ 大気中の拡散に用いる気象条件は、現地の気象データをもとに気象手引を参考にして地上放散、大気安定度F型、拡散幅20°有効拡散風速1m/sec(1時間放出として算出)とする。

 解析の結果、大気中に放出される放射性物質の量は全よう素が約56ci、希ガス約25,400ciである。
 敷地外で被ばく線量が最大となるのは敷地境界(原子炉中心から約800m)であって、その地点における被ばく線量は、甲状腺(小児)に対して約31rem、全身に対してγ線約0.24rem(β線約1.5rem)である。
 上記重大事故時の被ばく線量は立地指針にめやす線量として示されている甲状腺(小児)150rem、全身25remより十分小さい。


2 仮想事故
 重大事故と同じ事故について、破損燃料内の自由空間に存在する核分裂生成物がすべて1次冷却材中に放出され、かつ、健全な蒸気発生器による減圧効果がなく10m3/日の蒸気の漏洩が無限時間続くと仮定する。また大気中への拡散条件は弁の閉鎖までに放出される冷却材については重大事故と同じものを用い閉鎖後の漏洩による影響については現地の気象データをもとに気象手引を参考にして地上放散、大気安定度F型、拡散幅30°有効拡散風速1.5m/sec(2時間放出として算出)とする。また、国民遺伝線量については風速1.5m/secとする。
 解析の結果大気中に放出される放射能は、全よう素が約313ci、希ガス約64,600ciである。
 敷地外で被ばく線量が最大となるのは、敷地境界(原子炉中心から約800m)であって、その地点における被ばく線量は甲状腺(成人)に対して約35rem、全身に対してγ線約0.6rem(β線約3.9rem)である。
 また、全身被ばく線量の積算値は、1.3万人remである。
 上記仮想事故時の被ばく線量は、立地指針にめやす線量として示されている甲状腺(成人)300remおよび全身25remより十分小さい。また、全身被ばく線量の積算値は、国民遺伝線量の見地から示されているめやす線量の200万人remより十分小さい。



Ⅳ 審査経過

 本審査会は、昭和45年11月13日および16日に開かれた第85回および第86回審査会において審査し、第86回審査会で本報告書を決定した。




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