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東京電力(株)福島原子力発電所の原子炉の
設置変更(2号原子炉施設の変更)について


45原委410号
昭和45年11月19日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長


 東京電力株式会社福島原子力発電所の原子炉の
設置変更(2号原子炉施設の変更)について(答申)


 昭和45年8月27日付け45原第5801号(昭和45年11月6日付け45原第7423号で一部訂正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。

 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に掲げる許可の基準に適合しているものと認める。
 なお、本設置変更に係る安全性に関する原子炉安全専門審査会の報告は別添のとおりである。



東京電力株式会社福島原子力発電所の原子炉の
設置変更(2号原子炉施設の変更)に係る安全性について

昭和45年11月13日
原子炉安全専門審査会

原子力委員会
委員長 西田 信一 殿

原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄


 東京電力株式会社福島原子力発電所の原子炉の
設置変更(2号原子炉施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は昭和45年8月27日付け、45原委第263号(昭和45年11月12日付け45原委第404号をもって一部訂正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告します。



Ⅰ 審査結果

 東京電力株式会社福島原子力発電所の原子炉の設置変更(2号原子炉施設の変更)に関し、同社が提出した「福島原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(2号原子炉施設の変更)」(昭和45年8月24日付け申請、昭和45年11月6日付け一部訂正)に基づいて審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保しうるものと認める。



Ⅱ 変更事項

 本変更は、福島原子力発電所の2号原子炉の施設を変更しようとするもので、主な変更事項は次のとおりである。


1 炉心および燃料体

(1)燃焼特性を改善させるため、ポイズンカーテンを廃止し、かわりに燃料物質中に可燃性毒物であるガドリニア(Gd2O3)を含む燃料棒(以下「ガドリニア入り燃料棒」という)を使用する。

(2)第1炉心用燃料として平均濃縮度約2.2W/Oの1種類の燃料集合体を使用する計画をあらため、タイプⅠ燃料(平均濃縮度約1.1W/O)およびタイプⅡ燃料(平均濃縮度約2.5W/O、ガドリニア入り燃料棒を含む)の2種類の燃料集合体を使用する。ただし、炉心全体の平均濃縮度は変更しない。


2 安全保護回路
 制御棒引抜阻止インターロックから「2つのスクラム・アキュムレータの圧力低又は水位高」の条件を除く。


3 固体廃棄物の廃棄設備

(1)原子炉浄化系フィルタ樹脂を独立してフェイズセパレータ(樹脂沈降タンク)に2.5年間貯蔵する。

(2)原子炉浄化系以外の使用済み樹脂および廃棄スラッジの貯蔵能力を従来の2.5年分から1バッチ分として次のように変更する。

  使用済樹脂貯蔵タンク 発生する廃棄物の約0.5月分
  廃棄スラッジ貯蔵タンク 発生する廃棄物の約1日分

(3)地下使用済樹脂貯蔵タンクおよび地下廃棄スラッジ貯蔵タンクを設け、1、2号機から発生する使用済樹脂、廃棄スラッジを更に5年間貯蔵減衰させる。



Ⅲ 審査内容

 本変更に係る原子炉施設は、次のような安全設計及び安全対策が講じられており、十分な安全性を有するものであると認める。


1 炉心および燃料体

(1)ガドリニア入り燃料棒
 ガドリニア入り燃料棒は、UO2中に少量のガドリニアが固溶体の形で均一に分布したペレットを使用するもので、燃料集合体の周辺部を除く領域に数本人れられる。うち1本は、軸方向出力分布調整用としてカドリニアを燃料棒軸方向の一部にのみ含んだものが用いられる。燃料棒及び燃料集合体の機械的構造は従来と変わらなく、さらにガドリニアの混入による熱伝導度及び融点の低下を考慮しても、燃料中心溶融に対する余裕が、普通のUO2燃料の場合に比べて下まわることはないように設計される。
 また、カドリニア入り燃料棒は、若干燃焼度が低くなること、カドリニウム自身は他元素に変換せず、かつ気体元素を生じないことから考えて、内圧やスウェリングに対する問題はないものと認められる。

(2)核熱設計
 燃料集合体は2種類あり、局部ピーキング係数を小さな値にするため、タイプⅠは2種類の、タイプⅡは4種類の濃縮度の燃料棒を使い、カドリニア入り燃料棒はタイプⅡに使われる。タイプⅠとタイプⅡの炉心配置は、制御棒まわりの反応度の平均化と局所出力分布の観点から12本のタイプⅡ燃料が4本のタイプⅠ燃料をとりかこむ形に配列する。
 本原子炉の熱的制限値は、定格出力運転時において最大線出力密度0.61kw/cm以下、MCHFR1.9以上と、従来と同じであるが、上記のような燃料配置について検討した結果、二種類の燃料集合体を使用する本炉心においては、集合体間の出力ミスマッチが若干大きくなり、このため、チャンネル流量が減少し、MCHFRの制限の方が最大線出力密度の制限より若干きびしくなると予想される。しかし、それらの値は制限値を越えないので安全上なんら支障ない。


2 安全保護回路(制御棒引抜阻止インターロックの廃止)
 このインターロックは隣接した制御棒のアキュムレータが故障した場合、スクラム能力がおちる可能性を考慮して設けられたもので、どのアキュムレータでも2個以上故障すればインターロックされるようになっていた。
 しかし、インターロックの有無に関係なく、アキュムレータが故障した場合、スクラムは、原子炉圧力が定格になっていればその原子炉圧力によりスクラムすることができ、また定格に達していない場合は制御棒駆動用ポンプでスクラムすることができる。隣接した制御棒のアキュムレータが故障した場合には、中央制御室の表示灯から位置を識別し、いずれか一方の制御棒を手動で全挿入し、挿入、引抜き弁を閉止する等適切な処置をとれるので、特にインターロックを設ける必要はない。


3 固体廃棄物の廃棄施設
 本変更により、廃棄物の貯蔵能力は増大し、また、原子炉浄化系からの放射能の高い廃棄物を区別して取り扱うことになるので安全上支障はないものと認める。



Ⅳ 審査経過

 本審査会は、昭和45年9月2日に開かれた第82回審査会において、次の委員からなる第70部会を設置した。

(審査委員)
高島 洋一(部会長) 東京工業大学
左合 正雄 東京都立大学
村主 進 日本原子力研究所
都甲 泰正 東京大学
三島 良績 東京大学
(調査委員)
武谷 清昭 日本原子力研究所
 同部会は、通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行ない、昭和45年11月6日の部会において部会報告書を決定し、昭和45年11月13日第85回審査会において本報告書を決定した。


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