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日本原子力研究所東海研究所の原子炉の
設置変更(JRR-3の燃料変更)について


45原委第320号
昭和45年10月8日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

 日本原子力研究所東海研究所の原子炉の
設置変更(JRR-3の燃料変更)について(答申)


 昭和45年7月16日付け45原第4725号(昭和45年9月21日付け45原第6139号で一部訂正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。

 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に掲げる許可の基準に、適合しているものと認める。
 なお、本設置変更に係る安全性に関する原子炉安全専門審査会の報告は別添の通りである。



日本原子力研究所東海研究所原子炉の設置変更
(JRR-3の燃料変更)に係る安全性について

昭和45年9月21日
原子炉安全専門審査会

原子力委員会
委員長 西田 信一殿

原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄


 日本原子力研究所東海研究所原子炉の設置変更
(JRR-3の燃料変更)に係る安全性について

 当審査会は昭和45年7月16日付け、45原委第205号(昭和45年9月21日付け45原委第316号をもって一部訂正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告します。



Ⅰ 審査結果

 日本原子力研究所東海研究所原子炉の設置変更に関し、同所が提出した「東海研究所原子炉設置変更許可申請書(JRR-3原子炉施設の変更)」(昭和45年7月18日付け、45原研05第20号をもって申請(昭和45年9月19日付け45原研05第25号をもって一部訂正)」に基づいて審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。




Ⅱ 変更事項

 本変更は東海研究所の原子炉施設(JRR-3)を変更しようとするもので、変更事項は次の通りである。

1 現在の燃料体は天然金属ウラン燃料であるが、これを順次天然二酸化ウランおよび低濃縮二酸化ウラン燃料と取り換え、最終燃料を天然二酸化ウランおよび低濃縮二酸化ウラン燃料のみとすること、なお、酸化ウランの燃料集合体は4本の燃料棒よりなり、低濃縮ウランの濃縮度は1.5w/oである。

2 現在の燃料集合体の最大装荷量は246本でU-234,45kgであるこれを243本でU-225,25kgとすること。

3 現在の最大過剰反応度は6%Δk/kであるが、これを14%Δk/kとすること。

4 制御棒として安全棒を3本新設すること。

5 制御棒のうち、粗調整棒は7本同時に駆動が可能であるが、これにインターロックを設け、2本以上同時に駆動できないようにすること。

6 異常時における制御棒孔軽水注入設備を廃止すること。




Ⅲ 審査内容

1 変更事項1について
 変更後の燃料体はジルカロイ-2被覆管に二酸化ウランペレットを封入した燃料棒を4本組み立てたものよりなり、その周囲はアルミニウム合金冷却管でかこまれている。本設計では過出力時においてもペレットの最高温度は二酸化ウランの溶融温度をはるかに下回っており、被覆管表面温度は重水の表面沸騰温度(115℃)以下となっている。二酸化ウラン燃料棒はJPDR-Ⅱ燃料棒の製作基準に従って製作されることとなっており、変更後の本炉の使用条件に照らして安全上支障はないと認められる。

2 変更事項2、3および4について
 本変更により過剰反応度は初期炉心の6%Δk/Kから最終炉心の14%Δk/kまで変化する。この過剰反応度の増加に伴い、炉停止時の余裕を大きくとる必要があるので、過剰反応度が約7Δk/kになった時点で安全棒を3本追加する。これにより安全棒を含めた全制御棒を挿入したときの実効増倍率が常に0.9以下に保たれるので、安全上支障はない。

3 変更事項5について
 本変更により炉内の平均中性子束が変更前に比べ高くなり、従って制御棒1本当りの反応度抑制効果が増加する。このため、現在、制御棒のうち、粗調整棒は7本に同時に駆動できるのを改め、粗調整棒を2本以上同時に駆動できないように変更することにより、制御棒操作時の最大反応度変化率を小さくしようとするものであり、安全上支障はない。

4 変更事項6について
 本変更により最終炉心の最大過剰反応度は、約14%Δk/kになるが、全制御棒の制御容量は27.9Δk/kあり、重水ダンプ設備の反応抑制効果4%Δk/kをあわせると異常時の反応度抑制効果は31.9%Δk/kとなるので、炉停止余裕は十分あり、制御棒孔軽水注入設備(3%Δk/k)を廃止しても安全性は十分保たれると認める。

5 平常運転時の被ばく評価
 本変更により、アルゴン-41の放出量が僅かに増加するが、現在の放出管理基準を大きく下回っており、敷地周辺の公衆に対する放射線障害の防止上支障はないと認める。

6 各種事故の検討
 金属ウランと二酸化ウランの混合炉心および二酸化ウラン炉心の各種事故について検討した結果、安全性が現在の金属ウラン炉より低下することはない。従って、本原子炉は十分安全性を確保し得ると認める。


7 災害評価
 本原子炉は平常時はもちろん、各種事故に対しても検討の結果安全を確保し得るものと認めるが、さらに「原子炉立地審査指針」に基づいて重大事故および仮想事故を想定して行なった災害評価は次の通りで解析に用いた仮定は妥当であり、その結果は立地審査指針に十分適合しているものと認める。

7-1 混合炉心
 混合炉心について解析すると金属ウラン燃料が破損する割合と、二酸化ウラン燃料が破損する割合は前者の方が大きく、また、破損燃料の1本当りの核分裂生成物の放出量は、金属ウラン燃料の方が多い。従って全燃料が金属ウラン燃料のときの燃料破損を考えれば、混合炉心のあらゆる場合よりも核分裂生成物の放出量は多くなる。全燃料が金属ウランの場合の解析は変更前に行なっており、混合炉心の災害評価はこれを下回るものである。

7-2 二酸化ウラン炉心
 二酸化ウラン炉心についての解析は次のとおりである。

(1)重大事故
 何らかの理由で燃料が破損した状態で一次冷却系機器、配管等の故障により、系外に重水が全装荷量の約1/10(3m3)が漏洩する事故を想定し、次の仮定を用いて被ばく線量を計算する。
 なお、重水漏洩は重水漏洩検出器等により確認され原子炉は直ちにスクラムされる。

① 以前の燃料破損によって全重水中に存在しているウランは10gとする。

② 炉心内全装荷燃料の1%に破損が生じ、プレナム部に蓄積されている核分裂生成物が放出されると仮定する。

③ 核分裂生成物およびトリチウムは無限時間全出力運転後の生成量を考え、重水中に均一に分散しているものとする。

④ 漏洩した重水中に内蔵されている核分裂生成物およびトリチウムが炉室空気中に放出される割合は希ガスおよびトリチウム100%、よう素50%とする。

⑤ 炉室空気中に放出された核分裂生成物およびトリチウムは希ガスおよびトリチウム100%、よう素50%が高性能フィルターを通して地上高さ40mの排気筒から大気中に放出される。

⑥ 大気中での拡散に用いる気象条件は敷地の気象データ等をもとに、「原子炉安全解析のための気象手引」を参考にして、大気安定度B型、風速2m/sec、拡散幅30°とする。

 以上の仮定および条件に基づき解析した結果、敷地外で被ばく線量が最大となるのは敷地境界(原子炉中心から風下約300m地点)であって甲状腺(小児)に対して約0.09rem全身に対して0.05remとなる。この重大事故時の被ばく線量は「原子炉立地審査指針」にめやす線量として示されている甲状線(小児)150rem、全身25remより十分小さい。

(2)仮想事故
 仮想事故としては、重大事故と同じ事故について重水が全量(25m3)漏洩すると想定し、重大事故と同様の仮定に基づいて解析する。解析の結果、敷地外で被ばく線量が最大となるのは敷地境界(原子炉中心から風下300m地点)であって、甲状腺(成人)に対して約0.19rem全身に対して約0.36remとなる。
 この仮想事故時の被ばく線量は、立地審査指針にめやす線量として示されている甲状腺(成人)300rem、および全身25remより十分小さい。
 また、全身被ばく線量の積算値は約400人remで国民遺伝線量の見地から示されているめやす線量の200万人remより十分小さい。




Ⅳ 審査経過

 本審査会は、昭和45年7月22日に開かれた第81回審査会において次の委員からなる第69部会を設置した。

三島 良績(部会長) 東京大学
江藤 秀雄 放射線医学総合研究所
竹越 尹 動力炉・核燃料開発事業団
都甲 泰正 東京大学
浜田 達二 理化学研究所
 同部会は昭和45年9月21日の部会において部会報告書を決定し、昭和45年9月21日第83回審査会において本報告書を決定した。
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