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日本原子力研究所大洗研究所の原子炉
(JMTR)の設置変更について



 原子力委員会は、昭和43年8月19日付けをもって日本原子力研究所から申請のあった日本原子力研究所大洗研究所原子炉(JMTR)の設置変更に関する原子炉等規制法に定める設置変更許可の基準の適合について、内閣総理大臣から昭和43年8月22日付けで諮問を受けた。
 以来、変更に係る安全性について、原子炉安全専門審査会に審査を行なうよう指示し、昭和43年12月23日付けで同審査会会長から安全性は確保しうる旨の報告があり、さらに委員会において審査を行なった結果、基準に適合すると認められたので昭和44年1月23日付けで内閣総理大臣あて答申した。
 変更の内容および答申は次のとおりである。

〔変更の内容〕
 本変更は、JMTRにOWL-2ループ照射装置(大洗水ループ2号)を設置するものである。


日本原子力研究所大洗研究所原子炉(JMTR)の設置変更について(答申)

44原委第11号  
昭和44年1月23日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

日本原子力研究所大洗研究所原子炉(JMTR)の設置変更について(答申)

 昭和43年8月22日付け43原第4351号(昭和43年10月30日付け43原第5438号をもって一部訂正)をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 日本原子力研究所理事長宗像英二から昭和43年8月19日付けで提出のあった原子炉の設置に係る変更の許可申請書は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に規定する基準に適合しているものと認める。
 なお、同条同項第4号の基準の適合に関する原子炉安全専門審査会の審査結果は次のとおりである。




日本原子力研究所大洗研究所の原子炉の設置変更
(JMTRの変更)に係る安全性について

昭和43年12月23日  
原子炉安全専門審査会

昭和43年12月23日

原子力委員会
委員長 木内 四郎殿

原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

日本原子力研究所大洗研究所の原子炉の設置変更(JMTRの変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和43年8月22日付け43原委第200号(昭和43年10月31日付け43原委282号をもって一部訂正)をもって審査を求められた標記の件について、結論を得たので報告します。


Ⅰ 審査結果

 日本原子力研究所大洗研究所の原子炉の設置変更(JMTRの変更)に係る安全性について、同研究所が提出した「原子炉の設置に係る変更の許可申請書」(昭和43年8月19日付け申請および昭和43年10月24日付け一部訂正)に基づき、審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。


Ⅱ 変更事項

 大洗研究所JMTRに、OWL-2ループ照射装置(大洗水ループ2号)を設置する。


Ⅲ 審査内容

1 装置の概要
 本装置は、JMTRの反射体領域に設置される水冷却型インパイルループである。
 炉内部分は、貫通型の二重管構造で、内側耐圧管と外側外とう管の間には断熱層が設けられており、炉本体圧力容器上蓋を貫通して炉心格子位置KL-3・4を通り、圧力容器下鏡を貫通する。照射試料は、耐圧管上蓋を通して耐圧管内の炉心燃料部分相当位置に挿入され、有効長750mm、外径12.23mmのものは、37本挿入可能である。冷却材は入口枝管を経て耐圧管下部に入り、上に流れて試料を除熱し、出口枝管を経て炉外の循環系へ戻る。
 炉外部分は、1次冷却系、2次冷却系、給水系、補助系などからなり、1次冷却系には、主循環ポンプ、主冷却器、コンデンサー、サージタンクなどを備えており、冷却材としては、軽水を用い、最高使用圧力150kg/cm2g、最高使用温度320℃であり、沸騰水状態または、加圧水状態で運転することができる。
 照射試料は主として核燃料物質(ウラン)で最大装荷量は熱出力1.25MWに相当する量である。また、装置を安全に運転するため、アラームループクールダウン、炉セットバック、炉スロースクラムなどの保護安全回路が設けられる。

2 JMTRへの核的、熱的影響
 炉内部分および照射試料の挿入による反応度効果は非常に小さく、また、照射実験による最大放出熱量約2MWは、実験装置専用の冷却系で除去されるので炉本体への核的、熱的影響は無視できると認める。

3 安全設計および安全対策
 本変更に関しては、次のような安全設計および安全対策が講じられることになっており、十分な安全性を有するものであると認める。

(1)耐震
 本装置は、JMTRおよびOWL-1の設計基準に準じた設計震度をとって設計製作されることになっており、また、地震、水流力などにより、著しい相対変位や共振をおこして破損することのない構造としている。

(2)遮蔽
 1次系は、厚さ約1mのコンクリート壁に囲まれたループキュービクル内に設置される。このコンクリート壁は、生体遮蔽体であるとともに、高温高圧の機器に対する防護壁も兼ねており、外側表面での線量率が10mrem/hrをこえないように設計される。照射済み試料は、十分な遮蔽をほどこした試料取出し容器に入れてホットラボに移送することにしている。
 本装置では、通常の燃料照射実験のほか、核分裂生成物の放出を伴なう実験も行なうこととしているが、この場合には、あらかじめ実験内容を検討し、周辺公衆に対してはもちろん従事者に対しても放射線被曝が許容値を十分下回るような範囲内で行なうこととしている。
 なお、線量率が前記遮蔽設計値より一時的に高くなる場所が生じる時は、立入制限区域を設け、管理を十分に行なうこととしている。

(3)廃棄物の処分
 固体は廃棄物処理場において処分される。液体は排水タンクに貯留後、JMTR第2排水系タンクに移される。気体はJMTR第2排気系を通して高さ80mの排気筒から放出される。

4 事故評価
 JMTR設置時に行なわれた安全解析の際の各種事故のうち、本装置に影響を及ぼすと考えられるのは、定格運転時の制御棒引抜き事故であるが、この事故を考えた時、最悪の場合でも本装置に大きな損傷を起すことはない。また、本装置に発生すると想定される事故としては、照射試料破損、冷却材停止、冷却材喪失などが考えられるが、これらについて検討した結果、それぞれ適当な対策が講じられており、十分安全性を確保しうるものと認める。
 重大事故としては、上記各種事故のうち、核分裂生成物の外部放散が最大になる可能性のあるものとして冷却材喪失事故をとりあげ、照射中の試料燃料棒37本のすべてが破損した場合を想定して、次の仮定を用いて被曝線量を計算している。

(1)事故発生の時の試料燃料棒は、平均熱中性子束3.7×1013n/cm2secで200日間、照射した直後とする。
(2)蓄積されていた気体状核分裂生成物の30%が放出されるものとする。
(3)ループキュービクル内に放出された核分裂生成物は、チャコールフィルタを通り、高さ80mの排気筒を通じて大気中に放出される。
(4)放射性沃素に対するヂャコールフィルタの捕集効率は90%とする。
(5)大気中への拡散は、英国気象局方式を用い、安定度A型、風速1.5m/secとする。

 また、仮想事故としては、冷却材喪失事故の際に蓄積されていた気体状核分裂生成物が100%放出されるとしたほかは、重大事故の場合と同じ仮定を用いて被曝線量を計算している。この結果、敷地外で線量が最大となる排気筒から約400mの地点における甲状腺被曝線量は、重大事故で57.8rem(小児)、仮想事故で、42.6rem(成人)であり、また、外部 被曝線量はそれぞれ0.18rem、および0.66remであり、めやす線量より十分小さい。

5 技術的能力
 本装置を設置,運転する日本原子力研究所は、インパイルループ照射装置についてはJRR-2JRR-3などの研究炉におけるTLW-1、TLG-1、FPガス拡散ループなどのループの設計、運転の経験を有し、さらに本装置と類似のループOWL-0およびOWL-1において設計、建設、運転の経験を経ており技術的能力は十分であると認める。


Ⅳ 審査経過


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