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昭和43年度原子力平和利用研究委託費
および研究費補助金の交付決定


昭和43年5月20日

 昭和43年度原子力平和利用研究委託費および同研究費補助金については、さる2月19日試験研究題目(または課題)および申請書の提出期間について官報に告示し、3月11日申請を締切った。

 その後書類審査、申請内容聴取、関係機関との意見交換、日本学術会議の推せんによる学識経験者の意見聴取、現地調査を行ない、5月13日科学技術庁議において次のおとり決定し、5月20日付で交付決定を行なった。

昭和43年度原子力平和利用研究委託費及び補助金総括表

1 委託費

2 補助金

昭和43年度原子力平和利用研究委託費交付一覧


昭和43年度原子力平和利用研究費補助金交付一覧



昭和43年度原子力平和利用研究委託費交付概要

1. 原子炉用ステンレス鋼肉盛りクラッドの欠陥防止に関する試験研究

((社)日本溶接協会)

 (研究の目的)
 本研究は原子炉用ステンレス鋼肉盛りクラッドに実用される適切な溶接法と溶接材料、溶接施工条件により肉盛りクラッド試験片を作製し、ステンレス鋼のオーステナイト中のフェライトや炭化物の挙動、炭素の移動およびシグマ相の析出などの冶金的現象と欠陥との関係を調べ、これらが使用性能におよぼす影響を検討するとともに溶接部れ防止対策および応力除去焼なましによるぜい化防止対策に資することを目的とする。

 (研究内容)
 本試験研究は、原子炉用ステンレス鋼肉盛りクラッドの欠陥防止に関する上記の目的を達成するため、以下のような試験研究を行なう。
1. 供試材試験
1.1 母材試験
 ステンレス鋼肉盛りクラッドの母材
 ASTM A533 GRADE B(旧名称ASTM-A302B)CLASS×1

1.2 溶接材料試験
 被覆アーク溶接、帯状電極自動溶接用各溶接材料
 被覆アーク溶接棒
 帯状電極ワイヤ

2. クラッド肉盛り試験片の作成
 3項目以下の試験研究に使用するクラッド肉盛り試験片を下記のように作成する。

 溶接金属のC含有量およびフェライト量の目標値
  被覆アーク溶接:
   フェライトの影響用試片
   炭素の影響用試片
   シグマ相の現象調査用試片
  帯状電極自動溶接:
   フェライトの影響用試片

3. 冶金的研究
3.1 施工確認試験
 被覆アーク溶接および自動溶接によって施工された試験板について、実際の原子炉の工事の施工で要求される施工確認試験を実施し、肉盛り部の冶金的一般性質を明らかにする。

3.2 施工詳細試験
 上記の試験片について、詳細に肉盛り部および境界部の組織および化学組成の変化の状態を調べ、その性質の変化を明らかにする。

3.3 特殊な冶金的研究
 肉盛り溶接金属の化学組成変化と熱処理によるシグマ相ぜい化と炭化物析出の状態および熱処理による境界部における炭素拡散の状態を調べるための冶金的研究を実施する。

3.4 溶接割れ試験
 クラッド肉盛り時の溶接割れ発生に対する安全性を各溶接方法および溶接材料について、溶接割れ試験によって調べる。

4. 性能試験
4.1 腐食試験
 高温高圧水中の腐食試験を行ない、応力腐食割れに及ぼす肉盛部フェライト量および表面状態の影響を調べる。

4.2 静的および動的機械試験
 クラッドの性能を確認し、圧力容器の成形および運転中におけるクラッド部の試験検査は、いかなる性能に注目して、実施すべきかを調べるため肉盛部の残留応力の測定、動的特性の検討、衝撃試験方法の確立および曲げ試験方法の確立を含めた静的および動的機械試験を行なう。

2. 原子炉一次冷却系配管の構造設計基準に関する試験研究

((社)日本溶接協会)

 (研究の目的)
 原子炉圧力容器を含む一次冷却系配管の弱点となる部分およびその近傍について考えうる破壊様式のうち、低サイクル疲労について検討を加え、低サイクル疲労破壊防止のための構造設計基準確立に必要な資料を得ることを目的とする。

 (研究内容)
1. 低サイクル疲労における累積被害法則に関する試験
(1)歪制御両振によるステップ・アップ法試験
(2)歪制御両振による3段多重々複法試験
2. 低サイクル疲労における各種制御法の相関性に関する研究
(1)下限歪-上限応力制御による定振幅試験
(2)変位制御両振による定振幅試験
(3)構造不連続模擬試験片の荷重制御試験
3. 歪制御低サイクル疲労履歴が切欠靭性低下に及ぼす影響に関する研究

4. 荷重制御低サイクル疲労強度に及ぼす切欠効果に関する研究
(1)切欠付中実丸棒母材試験片による試験
(2)切欠付中実丸棒溶接金属試験片による試験
(3)鋭切欠付平板試験片による試験
(4)鈍切欠付平板試験片による試験
5. 熱歪および機械歪によるラチエット効果に関する研究
(1)定常ねじり応力と軸方向機械的歪振幅との重畳試験
(2)定常トルクと軸方向熱サイクル振幅との重畳試験
6. 斜角ノズルの内圧低サイクル疲労強度に関する研究

7. 熱サイクル疲労過程における金属組織変化に関する研究

8. 総合評価
 上記の試験結果をとりまとめ、総合的な解析評価を行なう。

3. 原子炉施設の建物、機器および配管系の地震時における振動特性に関する試験研究

((社)日本電気協会)

 (研究の目的)
 原子力発電所の原子炉建家およびこの中に据付けられている機器、配管系は立地地盤の特性も加わり複雑な振動系を構成している。

 これらが地震を受けた場合に亀裂、破断などがおこり放射性物質が漏出拡散するおそれがあるため、耐震設計法を確立しておく必要がある。

 本研究は原子炉施設の実物を模擬した試験体を作り、これらの振動特性を推定するのに必要な資料を実験的に収集し、「地盤-建物-機器-配管」とした一連の系の相互関係を解析し原子力施設の動的耐震設計法を確立するのに必要な資料を得ることを目的とする。

 (研究内容)
 試験体の地震測定には、測定機会の多い松代郡発地震の利用を考え、長野市吉田小町中部電力吉田社宅構内を実験地点に選定する。

1. 各種試験体模型の製作、設置および計器取付
(1)基礎および建物試験体
 地盤のもつ固有の弾性的性質の相違による影響を調べるため比較的堅い地盤と軟い地盤を選定し、基礎試験体(コンクリート製)を両地盤それぞれに製作し、また、原子炉建家の弾性および剛性的性質が地震動の応答に影響するような建物(鉄筋コンクリート造3階建)の試験体は堅質地盤に設置、同一地盤条件の基礎試験体の相関々係より、地盤の相違による建物への影響を調べる。

(2)機器、配管系試験体
 機器系の振動特性を固有周期と減衰常数で表現し、建物試験体の振動モードの影響の多い場所に設置し、応答を測定する。

 配管系としては建物内の各層床を貫通する標準的な特定の配管を建物試験体の平面的に直交する無壁架構方向および有壁架構方向にそれぞれ配置し、支持方法を変更したり減衰要素を付加したりして応答を測定する。

 また、多入力系の試験体として2、3階床間に両端を固定した試験体を作成し、試験体には適当な固有周期および減衰常数を付与し、入力の応答を測定する。
2. 起振実験
 自然地震による応答観測に先立ち、起振器により地盤および模型に対し予備試験を行なう。(起振機101t)
(1)支持地盤のボーリング、弾性波速度および密度の測定

(2)強制振動試験
3. 自然地震の観測および解析
 自然地震によって励起される試験体の測定を行ない、実験データの集積を行なうとともに得られたデータについて逐次解析を行なう。

4. 地盤強制振動試験
 自然地震の観測および、地上で行なう強制振動試験のほかに、地中にマンホールを設け、この中に大形起振器(1040ton)程度を据付け、強制振動試験を行ない「地盤、建物、機器、配管」としての連成系および基礎模型に地中より外力を与えて、振動観測および理論解析を行なう。

5. 解析および評価
 理論的解析と実験観測資料の比較検討を行ない、両者間の妥当性を確めるための基礎資料をとりまとめる。

4. 医療用粒子加速器施設の設計基準に関する試験研究

大成建設(株)

 (研究の目的)
 医療用粒子加速器(ベータートロン、リニヤック)の利用は近年増大の傾向にある。

 これら医療用粒子加速器施設の設置にあたってはその計画の中に、遮蔽計画を中心に全体配置計画までを含み、その設計基準には種々の因子が入り、その取扱い方は慎重且つ合理的な方法を取らなければならない。

 本試験研究は医療用粒子加速器から発生する放射線に対する遮蔽材の遮蔽性能試験および既設施設の実態調査を実施し、複雑な因子で構成されるこれら施設の設計条件を整理し、医療用粒子加速器施設の設計基準の基礎資料を得ることを目的とする。

 (研究内容)
 対象加速器は医療用ベータートロン、リニヤックに限定する。

 特に医療用ベータートロンに主眼をおいて試験研究を行なう。

1. 実態調査
a)既設の医療用粒子加速器施設を対象に実態調査を実施する。

 実施の方法は当該加速器に関する使用許可申請書に基づく装置、遮蔽計画、利用計画、全体配置計画および建築設備計画を調査整理するものとする。

 更にアンケートにより利用の現況、実際運転の結果始めて明白になった問題点、建設費、および運転費の調査を実施する。

b)既設施設の実態調査を整理検討し、代表的施設(1ヶ所)を選び線量測定を実施する。
 実施の方法は、装置の照射方向、照射範囲を変化させ、室内外の線量率を電離槽形線量計、ガラス線量計およびラドコンで測定し、遮蔽性能の効果を調査する。

2. 実物大実験
 照射ヤードに実物大の照射室をコンクリートブロックにより組立て、ベータートロン装置をそのなかに設置して以下の検討を行なう。

 試験をする遮蔽材には鉛、鉄およびコンクリートを使用しコンクリートブロックの一面一部をこれら遮蔽材で置換え、ビームエネルギー、照射方向、照射範囲、遮蔽材の厚さを各々変化させて、遮蔽材外部(照射室側)内部(操作室側)の線量、線質の測定を行ない、直接ビーム、散乱線および漏洩線に対する遮蔽材の遮蔽性能をスペクトロメータ、電離槽形線量計、ガラス線量計およびラドコンで測定する。

 同時に発生する有害ガスの測定をエアモニターおよびガス検知器で行ない、有害ガス発生量、減衰率の測定を行なう。

3. 調査実験結果に基づく施設の最適設計に関する検討
a)施設全体計画の検討
 施設全体計画をまとめるに当っての遮蔽条件、遮蔽因子を検討し、これら因子の位置付けおよび遮蔽計画について問題点およびその解決方法を検討し、合理的な施設計画の進め方について考察する。

b)発生放射線、有害ガス量に関する検討
 上記実験結果に基づき施設内に発生するX線、電子線、有害ガス、散乱線および漏洩線量の推定を行ない、適切な遮蔽および排気設備を設置するために必要な検討を行なう。更に遮蔽に関しては遮蔽計算法を立案する。

c)施設設計上の問題点の検討
 施設設計上問題となる迷路、遮蔽扉、貫通孔、照射室の広さ、空調計画内装、壁、床等について上記の調査結果に基づき検討する。
5. 使用済核燃料輸送容器の落下衝撃に関する試験研究

(社)(日本機械学会)

 (研究の目的)
 原子力発電の具体化に伴ない、多量の使用済核燃料を輸送する機会が必然的に増大するので、輸送時の公衆の人命および財産の安全を確保する見地から、使用済核燃料輸送容器に関する事故および安全性の評価の確立は国内的にも国際的にも重要な課題となってきている。

 本研究は特に評価が困難な落下衝撃事故を対象とし、縮尺の異なる数種の模型による落下衝撃試験を行ない、試験条件と破損のパターンと縮尺間の破損の相似性を検討し、キャスク構造の安全性を評価する際の基礎資料を得ることを目的とする。

 (研究内容)
 今後実際に使用されると考えられるのは重量80t程度の大型キャスクであり、なるべく実物に近い試験が望ましく、最終的には約1/2縮尺(約10t)の試験を目標とするが、本試験研究としては落下装置およびターゲットに関する試験ならびに約1/8縮尺、1/16縮尺の2種キャスクの落下衝撃に関する基礎的試験を行なう。
(1)落下装置およびターゲットの設計、製作および試験
 1/2縮尺約10tのキャスクによる高さ9mまでの落下試験に必要な試験用鉄塔、巻上装置、着脱装置およびターゲットを設計、製作し、その機能を試験する。

 主要諸元は概略次のとおりである。

   試験用鉄塔:吊上高9m 吊上容量10t
   巻上装置:5t容量ホイスト 2台
   着脱装置:電気式
   ターゲット:コンクリートブロック IAEA
         規則による。被覆鋼板 厚さ12.5mm

(2)試験用キャスクの設計および製作
 試験用キャスクの形状は円筒横置型、構造は胴部、端部とも鋼板に鉛を挟んだものとし次の大きさ、個数を製作する。

   1/8 縮尺(約150kg) 5個
   1/16縮尺(約 20kg) 5個

 上記の外、特に落下衝撃時のキャスクの挙動に著しい影響を与える鉛自体の特性を研究するため重量約20kgの形状の異なる鉛単体模型的20個を製作する。

(3)落下衝撃試験
 2種の縮尺のキャスクにつき、落下高度を3mよりと6m、9m階段的に増加し、横置型水平状態の落下衝撃試験を行なう。

 キャスクには加速度計測に必要な変換器を装着し、落下時の衝撃状況を把握し、さらに落下後の変形を計測する。

 なお試験用キャスクの試験に立ち、鉛単体模型を用い、それの落下時の衝撃状況(加速度および落下後の変形)を計測し、試験用キャスクの試験に万全を期する。

(4)試験結果の評価
 上記試験結果を総合的に検討し、キャスクの構造的な安全性の評価に関する基礎的データをうるとともに落下装置の機能を確認する。
6. ジルコニウム-水反応および燃料被覆管の破損原因に関する試験研究

((財)原子力安全研究協会)

 (研究の目的)
 現在軽水炉の事故解析で必要なジルコニウム-水反応については既知のデータが乏しいため、種々の仮定を設けて精度の良い解析をすることは困難な現状である。

 ジルコニウム-水反応に関し今まで用いている仮定の中には実証によって精度を上げることの困難なものがあるが、実証可能なものについてわが国での実験データを集積し、安全審査上必要となる解析の信頼性を高めることを目的とする。

 更に燃料破損に対する諸因子中、最も重要なものの一つと考えられるジルカロイ被覆管の円周方向延性に対する水素化物の影響について検討し安全審査上必要な資料を得ることを目的とする。

 (研究内容)
1. ジルコニウム-水反応に関する試験研究
i)等温酸化実験
 蒸気供給量および管壁温度が時間と共にあまり大きく変化しない状態でジルコニウムと水との反応速度を求める。

 更に熱天秤等を用い1気圧下において最高1000℃までにおける反応量を板材を用いて調べる。

ii)管壁面が変化する状態における実験
 管壁面温度が1000℃を越えた状態になった時、壁温は場所的、時間的に大きく、変化すると考えられる。

 この様な状態における反応量を調べる。
2. 燃料被覆管の破損原因に関する試験研究
 実用可能なジルカロイ-2管の製造条件の異なるもの2種について下記の試験を行なう。
i)水素添加および軽水炉使用条件下での温度応力サイクル処理

 水素量は軽水炉の使用条件を考慮し、炉の起動停止を模擬した温度応力サイクルを加え、その影響を調べる。

ii)ジルカロイ管の円周方向延性に及ぼす水素化物の影響
 水素化物の方向性変化と管の機械的性質、とくに円周方向延性を調べ、また同時に円周方向延性の測定法に検討を加えるため、次の実験を行なう。

  ① 金属組織試験  ② 引張試験
  ③ 内圧破製試験  ④ フレーヤー試験
  ⑤ 偏平試験  ⑥ 中子拡管試験
  ⑦ 拡管試験
7. 気状体核分裂生成物の保健物理的挙動、形態別検出法ならびに安全処理に関する試験研究

((財)原子力安全研究協会)

 (研究の目的)
 原子炉の緊急時対策および再処理などの使用済燃料の処理の場合において発生する気体状核分裂生成物中、特に放射性ヨウ素の挙動・検出や85Krの処理の問題は、放射線障害防止の面からきわめて重要である。

 放射性ヨウ素については、その物理的・化学的挙動が複雑であり、とくに環境放出の場合には多くの複雑な因子が加わってきて、現在の放射性ヨウ素に関する捕集検出の技術は、これらの複雑な変化を考慮した場合には不十分である。

 また放射性希ガス、とくに85Krの処理処分に関しては、その排出量が1Ton/日の再処理工場で低濃縮ウラン燃料の場合1.1×104Ci/日、天然ウラン燃料の場合でも1.6×103Ci/日に達し、膨大であるばかりでなく、いったん放出した後は捕集すべき方法がないので問題である。

 このため放射性ヨウ素については、種々の物理的・化学的形態のヨウ素の形態別検出法を確立するとともに、大気中に放出された放射性ヨウ素が環境食品を通じての人体被曝の評価のため、土壌および植物への放射性ヨウ素の付着状況を定量的に把握し、また、事故時の処置対策として重要な環境物質の簡易迅速測定法を確立する。

 放射性希ガスについては、実用の可能性の高いと思われる吸着処理法の吸収処理法の2つの方法について研究をおこなう。

 (研究内容)
実験1 空気中放射性ヨウ素は、大きく分けてガス状(I2、CH3I、HI、NOI、その他)およびエアロゾル状で存在する。

 このため放射性ヨウ素の存在状態、および存在率の測定をおこなう。
(1)試料ガスについて、内外の文献、研究結果を調査し、標準化を検討するとともに標準試料ガスを調整しヨウ素化合物中の放射性ヨウ素の濃度を統一したものについて検討を行なう。

(2)放射性ヨウ素の種々の形態によって、各種形態分別法の捕集効率を求めるための予備実験をメイバック法、ディフュージョンチューブ法、連続モニタ法の各方法により行なう。

(3)市販のサンプラ用カートリッジおよびフィルターユニットについて実験検討を行なう。
実験2 環境天然物を指標とした放射性ヨウ素による大気汚染の検出法に関する試験研究
(1)放射性ヨウ素による大気汚染の指標となりうる土壌および植物などと放射性ヨウ素の大気中における挙動および化学的性質の関係を検討する。

 以上の結果を総合し、形態を異にした大気中の放射性ヨウ素による天然物各種の汚染程度の相関を明らかにし、大気汚染程度および食品の汚染程度を知るための指標物選定の資料を得る。

(2)葉面に放射性のI2、CH3Iを塗布等の手段で付着させ、茎、根などへの経目的移行を定量的に究明し、植物体の指標部位を求める。

(3)各種測定器の131Iに対する変換係数および検出感度の検討を次により行う。
1)GM管、サーベイメータ、電離箱式サーベイメータ、シンチレーション式サーベイメータや、放射性ヨウ素模倣線源および放射性ヨウ素を計測し、それぞれの測定器で得られた計数率から131Iの放射能の強さを知るための変換係数を求める。

2)野菜、牛乳、表土をそれぞれ適当な方法を用いて131Iで汚染させ、放射化学的処理をすることなく、131Iを実験1の測定器を用いて計測する。
 試料の採取方法、測定のジオメトリーについて検討し、実施しうる最適の方法を求めるとともに、測定に用いた各種測定器の検出感度および測定誤差を決定する。
実験3 放射性希ガスの安全処理
 再処理施設から放出された排出ガスを主な対象として、その中に含まれる85Krを除去するために次の研究を行なう。
(1)再処理工場から排出される放射性ガスの組成を基にして既有のカラム装置を使って研究を行なう。操作条件は1~150kg/cm2-G,常温~-20℃の範囲にとり、85Krの吸着平衡量が測定して、最適吸着条件を決定し、その条件の近傍での詳細な吸着試験に基づいて、必要層高およびKrの除去率を求め、Pressure-thermal swingの最適条件を決定する。

 また併せてKrの吸着平衡に及ばすXeの影響、吸着相のKrの放射線化学反応に基づく活性炭層内での窒素酸化物およびオゾンの生成についての知見をうる。

(2)既有の攪拌型オートクレーブにより上記(1)に述べたと同様の試料ガスについて圧力1~100kg/cm2-G、常温-80℃の範囲における四塩化炭素、ケロシン、フレオン-12および水に対するKr、N2、O2の吸収平衡値を求め、吸着法の結果と対比して、その優劣を検討する。

(3)分離濃縮された放射性希ガスの格納条件について検討する。
8. 軽水型動力炉における有機ヨウ素の生成機様に関する試験研究

(財)原子力安全研究協会

 (研究の目的)
 動力炉の安全解析を行なうには、核分裂生成物の放出率を精度よく推定することが必要であるが、核分裂生成物の挙動については未解明の問題が多いので、これについての研究はきわめて緊要である。

 その中で、前年度は特に有機ヨウ素の生成について実験研究を行なったが本年度も引きつづきこの問題を検討し、安全解析上の有用な資料を得ることを目的とする。

 (研究内容)
1. 有機物と核分裂生成ヨウ素の反応によるヨウ化メチルの生成条件に関する試験

 42年度において、ヨウ素の有機化合物が生成することを確認したので、さらに実際条件にちかい条件を模擬して検討する。

 ウラン化合物としてUO2およびUO2(NO32、炭素、水素を含む化合物として気体のCO2および液体の有機溶媒(ケトン類:ジメチルケトン、メチルエチルケトン等)を用い、TTR(東芝炉)の気送管または照射ラックで照射し反応をおこなわせる。

 照射時間は10分から4時間の数点について変化させておこなう。

 反応の結果生成した化学種、特にヨウ化メチルについて放射性ヨウ素の同位体存在比および、核燃料中で起るヨウ素の有機化合物の生成過程を検討するために、ガスクロマトグラフィーでヨウ化メチルを分離確認し、さらに、ガンマー線スペクトロメトリーで化学分離前後の試料の放射能を測定し比較することにより定量し同位体比を求める。

2. 格納容器内における有機ヨウ素の生成に関する試験

 既有耐圧オートクレーブを一定温度に保持するために、雰囲気を攪拌するスターラーを装着する等の改造をおこない、この中にペイントゴム、水素、炭酸ガス、水および放射性ヨウ素131Iと非放射性ヨウ素を入れ、150℃以下(125、100、80℃)圧力5kg/cm2G以下(各温度における飽和蒸気圧)で、一定時間経過ごとにオートクレーブ内の気相をサンプリングし、ヨウ化メタルが生成するか否かをラジオガスクロマトグラフィによって測定し検討する。

 さらに既有大容量コンテナー模擬容器(容量:約5000l)の内壁にペイントを塗布し、この中に非放射性ヨウ素を入れ、温度150℃、圧力5kg/cm2Gからの自然冷却過程におけるヨウ化メチルの生成をガスクロマトグラフィにより測定し検討する。

3. ヨウ化メチルの気液接触反応および分配に関する試験

 微量の有機物を含む高温高圧水(約285℃、約75kg/cm2)に照射ずみUO2を投入し、水中において生成するヨウ化メチルの水相および気相中における分配率を測定する。

9. 軽水型舶用炉用内装貫流式蒸気発生器の解析評価に関する試験研究

((社)日本造船研究協会)

 (研究の目的)
 現在、商船用として期待されている舶用炉は軽量小型で、かつ、高い自己制御性を特長とする内装型軽水炉が、またこれに使用する蒸気発生器としては貫流型(螺旋式)が最適と考えられる。

 本研究は42年度に引きつづき模型実験により、この型式の蒸気発生器の沸騰伝熱特性、水力学的特性等を解明し、前年度の研究成果と併せて内装型軽水舶用炉に関する評価および最適設計のための資料を求めることを目的する。

 (研究内容)
 上記の目的を達成するために、貫流型蒸気発生器(螺旋式)に関する下記問題点(2相流部分の管内熱伝達と圧力損失、多数並列管形式の場合の管内流動、過渡特性と制御特性)を模型実験により解明する。

 このうちの2相流部分の局所管内熱伝達特性および圧力損失におよぼす蒸気重量率、流量等の効果を42年度の実験により求めたが、本年度はこれに引きつづき前年度作製した実験装置に必要な改造を加え、下記の実験を行なう。
(1)蒸気発生器の総合的静特性に関する実験 1次側流量、2次側流量および圧力等が蒸気発生器の総合的な熱伝達および圧損等におよぼす効果を求めるため、2本の並列管で構成される試験部の管1本のみによる場合と、2本使用する場合の2項目にわけて実験を行ない、これらの結果より総合的静特性を検討する。

(2)蒸気発生器の温度特性および制御特性に関する実験
 舶用炉に特有な大きい負荷変動に対する最適の制御方法と運転に与えるべき制約を求めるための過渡特性および制御特性に関する実験である。

 制御方式としては次の3方式をとるが、必要があれば更に別の制御方式も考慮する。
・手動による弁操作により定常状態を作り、過渡状態においては一切弁操作を行なわない。
・出口蒸気圧力が常に一定となるような制御
・出口蒸気量と給水量が等しくなるような給水制御
10. 水蒸気冷却高速炉の解析評価に関する研究

((株)日立製作所)

 (研究の目的)
 水蒸気冷却高速増殖炉の炉心核特性および燃焼特性に関する基礎的な研究を行なう。

 特に本研究では原子炉の核的安全性の見地から重要と考えられる反応度係数(冷却材喪失時の反応度効果、ドップラー係数、フラッデイング効果)および燃料の燃焼度がこれらの反応度係数に及ぼす効果を研究する。

 また、核特性に及ぼす炉心の非均質効果および一般にナトリウム冷却高速炉に比して不利な点と考えられている増殖比についても定量的な検討を行なう。

 これらを通じて水蒸気冷却高速炉に関する基礎的な資料を得る。

 (研究内容)
 1,000MWeの水蒸気冷却高速増殖炉の核特性を下記の方法により解析する。

1. 多群核断面積セットの整備および計算コードの改良
 下記2および3の核特性の計算を行なうために、水素を含む多群核断面積セットの整備および既存のナトリウム冷却高速炉用計算コード(1、2次元計算および燃焼計算コード)の水蒸気冷却高速炉用への改良を行なう。

 また、軽水炉用に整備された多群核断面積セットの水蒸気冷却高速炉への適用の可否についても検討する。

2. 核特性サーベイ
a)蒸気条件(蒸気圧100~250kg/cm2)と核特性(増殖比、反応度係数)
b)炉心形状(炉心高さ100~150cm)の核特性に及ぼす効果
c)炉心組成(燃料体積率30~45%)の核特性に及ばす効果
d)Pu高次同位元素(3種類)の核特性に及ぼす効果
3. 非均質効果および燃焼度効果の検討
 イ. 反応度に及ぼす非均質効果の検討
a)冷却材喪失時の反応度効果
b)ドップラー係数
c)フラッデイング効果
 ロ. 核特性に及ぼす燃焼度の影響の検討
a)反応度係数の燃焼度依存性
b)出力分布の燃焼度依存性
11. ガス冷却高速増殖炉の解析評価に関する研究

(川崎重工業(株))

 (研究の目的)
 ガス冷却炉の場合はNa冷却に較べて、Naの強い化学的活性、誘導放射能、熱衝撃および反応度の正のボイド係数等の開発すべき問題が少ないといわれている。

 また、核特性としてはNa冷却炉よりも増殖比が高く、燃焼にともなう反応度の時間的変化を少なくしうるため制御し易いこと、Naのボイド係数を考慮しなくてもよいので、炉心の形状選択に自由度があることにより、核的に炉心のH/Dの最適点をとることが可能で、熱的に不利な条件を十分カバーすることができると考えられる。

 したがって本研究では他国で研究開発が進められているガス炉の有意性、問題点の摘出とその対策、炉心核熱設計方法の検討をすることを目的とする。

 (研究内容)
 1000MWeガス冷却高速炉の炉心部を主とした熱・核構造および安全性の解析と炉心部核熱綜合サーベイを行なう。

 燃料はU-Pu混合酸化物燃料を主とし、炭化物燃料についても検討する。

1. 熱特性解析
 炭酸ガスを対象として、ガス流速、入口ガス温度、ガス圧力の流動条件および流路面積、高さ、ロッド直径、ラフネス効果などの形状効果のパラメータ・サーベイおよび設計手順の方法および図表を作成する。

 なお、参考冷却材として蒸気冷却の検討を行なう。

2. 核特性解析
 炭酸ガス冷却炉を主として燃料、被覆材の違い、炉心の組成、形状、ブランケット厚燃料温度等が増殖比(BR)、Pu生成量に及ぼす効果の検討を行なう。

 また、燃焼計算を行ない反応度変化と内部増殖比(IBR)の関係を検討する。

3. 構造特性解析
 炭酸ガス冷却炉燃料棒の被覆材応力および曲りの検討を行ない、また、圧力容器について多重層構造を考慮して概略検討する。

4. 安全性解析
 炉心制御棒計算、ドップラー効果の計算、反応度事故の動特性計算を行なう。

 また、緊急冷却方法の検討を行ない、遮蔽計算を圧力容器との関連で実施する。

 ドップラー効果の検討として燃料平均温度を300°K~2000°Kにとって計算する。

5. 炉心部核熱サーベイ
 上記1~4の解析結果を検討して、インベントリーー定の条件で
(1)Pu生成量最高
(2)プラント熱効率(ηNET)最高
(3)増殖比(BR)最高
 の炉心を選ぶ。

 また、インベントリーを固定し、蒸気冷却方式の検討を行なって比較する。

6. 総合評価
 ガス、蒸気、ナトリウム冷却高速炉の性能(ナトリウム冷却の場合は文献値による)を比較し、ガス炉の有意性を検討する。

12. ウラン分離用隔膜に関する試験研究

((株)住友電気工業)

 (研究の目的)
 核燃料サイクルの確立と核燃料入手の多様化の意義を考慮したとき、わが国においてもウラン濃縮に対して十分な準備をしておく必要がある。

 このため本試験研究においては、気体拡散分離法を対象に、ウラン同位体分離用試作隔膜の性能を評価するための基礎的試験を行ない同法の技術的可能性に関する資料を得ることを目的とする。

 (研究内容)
 伊丹研究部で試作したウラン同位体分離用隔膜について下記の基礎的特性試験およびウラン同位体分離試験を行ない、隔膜の分離効果を検討する。

1. 隔膜の基礎的特性試験
 隔膜の平均孔径、孔径分布ならびに孔形のそれぞれをBET法による比表面積の測定および透過率測定、発泡および水銀圧入ならびに電子顕微鏡により測定算出し、隔膜の基礎的特性試験を行なう。

 また気体振動法により隔膜の疲労強度低下を測定し、隔膜の使用条件を検討する。

2. 定容法によるウラン同位体分離試験
 定容式ウラン同位体分離装置内に一定量の天然UF6ガスを入れ隔膜を通し、装置内圧力を規定の圧力に低下するまで排出させることにより、隔膜の透過率を、さらに透過率の時間的変化から耐蝕性を求める。

 また高性能質量分析計による測定値から隔膜の分離係数を求める。

13. 原子力発電の開発規模とその経済評価に関する研究

(日本エネルギー経済研究所)

 (研究の目的)
 原子力発電の規模が急速に拡大する見通しに対応して、予想される原子力発電の将来体系の形成を電力経済と関連させて追求し、そこに設定される原子力発電の規模と型式を水力、火力と原子力との競合関係および各炉型間の成合関係を考慮に入れて予想するための計量的手法を開発し、原子力発電計画の立案に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 計算手法およびインプットデータの検討
 電力需要量が与えられ、これに対応する負荷曲線が想定される場合の水力、火力および原子力の各発電方式よりなる発電設備の最適な電源構成を求めるために、各種の手法を収集、検討する。

 また、各発電方式において許容される負荷率の変動幅および各発電コストの見通し等、次の計算に必要な技術的・経済的データを収集、検討し、インプットデータを作成する。

2. 最適な原子力発電規模の算出
 水力、火力および原子力よりなる発電設備について、運転特性を加味した競合モデルとして、総発電コストが最小になるような電源構成を求める計算式を作成し、これをコード化する。

 このコードに1で作成したインプットデータを適用して計算を行ない、総発電コストが最小である電源構成における原子力発電の規模を求める。

3. 原子力発電の炉型別構成の算出
 2で得られた原子力発電の規模について、在来型炉、新型転換炉、高速炉の占める比率をプルトニウムバランスによる制限を導入して2と同じ概念に基づいて作成した計算式によって算出し、原子力発電の炉型別構成を求める。

4. 計算結果の検討と計算式の拡充
 3で得られた原子力発電の炉型別構成を2で作成した計算式に組み入れ、再計算を行なう。

 また、増分発電コストの概念を導入して、原子力発電の最適炉型別構成を求める手法を発展させる。

14. 原子力発電計画における炉型と燃料サイクルに関する研究

(株)(住友原子力工業)

 (株研究の目的)
 わが国の原子力発電体系のなかにおける動力炉の型式の組合せとくに新型転換炉、ウラン装荷高速炉の評価について主として燃料サイクルの面から検討し、これらの炉型式の組合せによる動力炉の運転に必要なウラン需要量および生成されるプルトニウム量などを求め、わが国における原子力発電計画の立案に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. インプットの検討
 わが国の原子力発電計画を想定し、この発電系を構成する原子炉として熱中性子炉、新型転換炉、ウラン装荷高速炉および高速増殖炉を考え、これらの炉特性を調査検討する。

 また、原子炉の発電負荷率、燃料サーィクル期間および歩留り、高速炉導入時期等以下の計算に必要なインプットについて調査検討する。

2. 計算式および計算コードの作成
 次の(1)、(2)の場合について、1で調査検討したインプットを考慮し、発電設置容量、ウラン関係諸量、プルトニウム関係諸量を求める計算式および計算コードを作成する。
(1)発電系に新型転換炉が導入される時期以降は新型転換炉のみを建設し、高速増殖炉が導入されたのち、プルトニウムバランスを考慮して、高速増殖炉以外の設備容量を減少させるときは、熱中性子炉からその設備容量を減少させる。

(2)発電系に高速炉が導入される時期以降は、高速増殖炉のみを建設し、高速炉導入初期の段階において生ずるプルトニウムの不足に対しては、濃縮ウランを装荷するウラン装荷高速炉として運転する。

 プルトニウム生成量が大きくなり、高速増殖炉以外の設備容量を減少させるときは熱中性子炉からその設備容量を減少させる。
3. 計算および評価
 2.の計算コードにより次の炉型の組合せについて計算を行ない燃料サイクルの面からみた炉型の組合せについて評価する。
(1)熱中性子炉と高速増殖炉
(2)熱中性子炉、新型転換炉と高速増殖炉
(3)熱中性子炉、ウラン装荷高速炉と高速増殖炉
15. 微量指標核種の簡易迅速分析法に関する試験研究

((財)日本分析化学研究所)

 (研究の目的)
 放射性物質による環境汚染の評価の基礎となる分析測定技術は早期に確立しておく必要がある。

 放射性物質の廃棄物は最終的には海域に入り、海水から海産物を経て人間に影響を与えるが、海水中の放射性物質の濃度は極めて低濃度を問題とするため(現在のところ海水中の60Coおよび65Znはいづれも0.1pCi/l以下である)分析には長時間を要する。

 従って本研究は海水、海産生物、海底土について更に簡易迅速な核種分析法を開発し、汚染評価に対処するための準備資料を得ることを目的とする。

 (研究内容)
1. 指標核種および対象試料の選定
 目的核種は原子炉の冷却水等に含まれている60Coおよび65Znを主として検討する。

 試料は港湾海水、海底土および海産生物を用い、海水については一回に1000l以上、海底土については3kg以上、海産物については、主に我国において食用に供される魚、貝、海藻類を同一種類のものを5kg以上、種別で10種類程度選択する。

2. 指標核種の簡易迅速分離濃縮法に関する検討
イ. 60Coの縮濃法
 60Coの錯化を下記方法により検討する。
Ⅰ)60Coを含む海水に酢酸ナトリウムを加え、種々のpHに調節し、これにニトロソR塩を加えて60Co錯塩を生成させる。

Ⅱ)60Coを含む海水にクエン酸アンモニウムを加え、アンモニア水で弱アルカリ性に調節し、これにα-ニトロソ βナフトールを加えて
60Co錯塩を生成させる。

Ⅲ)60Coを含む海水を弱酸性から弱アルカリ性に調節しこれにジェテルジチオカルバミン酸(DDTC)を加えて60Co錯塩を生成させる。

Ⅳ)その他の有機試薬により60Co錯塩を生成させる。

 以上の検討により生成した60Co錯塩を陰イオン交換樹脂、高分子アミンおよび無機イオン交換体に吸着させるための条件を各組合せについて検討する。
ロ. 65Znの濃縮法
 65Znの錯化を下記方法により検討する。
Ⅰ)65Znを含む海水をアルカリ性にし、ジチゾンと反応させ他の金属イオンと共に65Zn錯塩を生成させる。

Ⅱ)65Znを含む海水にアルカリ性ジェチルカルバミン酸塩を加えて65Zn錯塩を生成させる。

Ⅲ)65Znを含む海水を塩酸酸性とし、メチルジオクテルアミンを加えて錯塩を生成させる。

Ⅳ)その他の有機試薬により65Zn錯塩を生成させる。
 以上の検討により生成した65Zn錯塩を陰イオン交換樹脂、高分子アミンおよび無機イオン交換体に吸着させるための条件を各組合せについて検討する。

3. 指標核種の精製法に関する検討
 分離濃縮した核種について化学的に分離精製し後の測定操作に有利な化合物にする必要があるので、最も安定した形としてCoについてはCo3O4、ZnについてはZnOとして収量する方法を検討する。

 精製は再沈殿法とイオン交換法とをおこない収率および純度等について比較検討する。

4. 指標核種の放射能測定に関する検討
 放射能測定装置は200チャンネル波高分析器とガンマー線測定用NaI(Tl)シンチレーション検出器と組合せて使用する。

 測定条件として測定試料の厚み、形状等による計数効率および有効測定時間等について検討する。

 又、測定試料の計数に対する補正として化学収率を求める必要があるので海水、海底土、および海産生物中に存在する天然の安定なCo、Znの量を定量分析により求める。

16. 原子力関係施設における作業者の内部被曝線量の管理法に関する試験研究

((学)早稲田大学)

 (研究の目的)
 作業者自身もしくは、作業者の近傍に設置した大容量個人用ダストサンプラ一によって、作業者呼吸器周辺のα放射体を濾紙上に集め、その種類と量を有効に測定する方法を研究・開発し、もって核原料物質や核燃料物質を取扱う作業者の内部被曝量を評価するために必要な放射性粉塵の量を測定・管理する技術の確立に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. α放射体の定量法の開発
 集塵した濾紙上のα放射体の種類と量を測定するため次の二つの方法について研究する。
a.半導体検出器によるα放射体の定量
 濾紙上に集められたα放射体からのα粒子を効率良く検出するため、7個のシリコン半導体検出器(SSD)がリング状に配列された検出部を製作し、そのおのおののSSDの出力信号パルスをそれぞれ、温度や電圧の変動があってもそれと無関係な出力波高が得られるcharge sensitive前置増幅器、パルス信号拡大のための電圧増幅器、雑音信号消去のための差動増幅器により増幅や処理をした上混合し、さらにこれ等に、各々のSSDの出力信号パルスの高さが広いエネルギー範囲にわたって合致するような調整装置を付加した半導体検出器用増幅器を設計、製作する。

 この検出部を減圧容器内に設置し、検出器用増幅装置出力を多重チャネル波高分析器で波高分析し、濾紙上のα放射体のα線スペクトロメトリーを行なう。

 この結果から、この検出装置の有効な調整法、エネルギー-出力パルス関係、安定性、エネルギー分解能・分解時間等の特性を測定すると共に、コリメーターの必要性・測定効率、このような測定法に適した濾紙の種類、採取法ならびに前処理法等について検討する。

b.グリッド入り電離函によるα放射体の定量
 グリッド入り電離函ならびにその増幅系に関し、最適の電極電圧の設定法、増幅系の帯域幅の適正化、雑音の抑圧方法等について検討を行ない、エネルギー分解能や安定性の改良をはかったうえ、炭素蒸着等の測定濾紙の事前処理法、充填気体の圧力、測定するエネルギー範囲や測定時間等の測定条件と測定に適した濾紙の種類、採取方法・採取後測定までの保存時間や保存方法等の採取・保存条件について実験的に検討する。

 また、測定されたα線スペクトラムによる定量法やその効率についての検討を行なう。
2. 実地試験
 核燃料物質、核原料物質等を取扱っている作業箇所の大気中のα放射体を大容量個人用ダスト・サンプラーにより採取し、1a.1b.の方法で測定し、α放射体の濃度を推定すると共に両測定法について定量の難易、定量の限界、濾紙上のα放射体による検出部の汚染の程度等の実用的な性能を比軟して、両測定法の特長を明らかにし、あわせてその適用法を検討する。

 以上の検討の後、作業者周辺のα放射体の濃度測定を試験的に実施し、作業者の体内摂取量の推定を行なって、この方法による内部被曝量の推定の可能性や限界等についての資料を得る。

17. 各種個人被ばく線量測定法の適正範囲の比較検討ならびに算定基準に関する試験研究

((社)日本放射性同位元素協会)

 (研究の目的)
 被ばく線量の測定・算出は、体外から受ける放射線と体内に摂取されたRIより放出される放射線とについて行なう必要がある。

 本研究では、体外から受けるX線およびγ線の被ばくに関し、将来の国内の被ばく線量評価の統一のために、各種の個人被ばく線量測定用具による測定値の不統一性を整理し、適当な個人被ばく管理が実施されうるような指導の基礎となる資料を作成することを目的とする。

 (研究内容)
 フィルムバッジ、ガラス線量計、ポケット線量計の各種個人被ばく線量測定用具について、以下の試験研究を行なう。

1. 研究文献調査および試験研究条件設定
 上記各種測定用具に関する既存の研究文献を調査・検討し、放射線のエネルギー、照射時から測定時までの時間、放射線源の種類などについて、以下の実験の最適試験条件を設定する。

2. バラツキおよび感応度の試験研究
 上記各種測定用具に、X線および60Co,137Cs,226Raのγ線を10mRから600mR程度までの線量範囲でおのおのおよそ100サンプルの放射線照射を行ない、通常行なわれている空間での測定用具校正方法と、ファントム(人体等価模形)にあたかも放射線作業者が装着しているかのように装着した場合とについて比較し、おのおののバラツキの補正方法および、各種測定用具相互間の感応度の違いに対する補正方法を実験により求める。

3. 誤差・精度および再現性の試験研究
 各種測定用具について測定に係る誤差の要因、すなわちフィルムバッジでは現像の影響、螢光ガラス線量計では洗浄効果、ポケット線量計では読みとり角度による誤差などを究明し、測定精度および再現性に関して試験する。

 さらにポケット線量計については、実際に起りうる振動や衝撃により生ずる誤差についても試験する。

4. 測定値の補正方法に関する試験研究
 測定用具の装着場所や放射線源の状態(点状とかいくつかに分散した溶液状とかの状態)相対的位置関係、角度関係などによる、被ばく線量の状態の変化をファントムを使用して試験し、実際に則した測定値の補正方法を検討する。

5. 試験結果の検討ならびに統括
 以上の試験の結果を統括して、各種個人被ばく線量測定用具による測定値の不統一性を整理し、放射線被でく線量の評価の統一のための資料を作成する。

18. 食品照射における照射効果に関する基礎的試験研究

((社)日本放射性同位元素協会)

 (研究の目的)
 原鈴薯、玉葱の発芽抑制および米の殺虫、殺菌を目的とする放射線照射に関しては、すでに行われた試験研究により多大の成果が得られている。

 しかし実用化の観点からは、馬鈴薯、玉葱については、照射前後の処理条件の相違による照射効果の変動に関して、また、米については、照射にともなう品質と微生物に関してさらに適確な資料が必要である。

 さらに水産食品への照射研究の開始に備え、その微生物学的安全性にとって重要なボツリヌスE型菌に関する基本的資料も予め用意する必要がある。

 本試験研究は上記の点について総合的な検討を行ない、食品の放射線照射を実現するための基礎資料を得ることにより、原子力委員会の開発基本計画に基く食品照射計画に寄与することを目的とする。

 (研究内容)
 各省庁関係の食品照射年次計画を勘案して、本年度においては、下記の各試験を行なう。

1. 馬鈴薯、玉葱の発芽要因に関する一般試験研究
 馬鈴薯は品質「男爵」を、玉葱は「泉州黄」を使用し、収穫直後および3ヵ月保存したのち、馬鈴薯については10および20krad、玉葱については7および15kradのガンマ線照射を行なう。

 照射試料は室温および15℃に貯蔵し発芽状態、呼吸の測定を行なって照射効果を検討する。

2. 馬鈴薯、玉葱の発芽要因に関する特殊試験研究
 上記1の一般試験と同一条件下において、ポリフェノールオキシダーゼアミラーゼおよび香味成分分解酵素の活性、ならびにビタミンおよび香気成分の含量の変動測定を行なうとともに、腐敗細菌の感染性測定を行なう。

3. 米の品質におよぼす照射効果に関する試験研究
水稲粳に20および40kradの照射を行ない脂質、アミノ酸および粘弾性の変動を測定するとともに、放射線抵抗性微生物の変化を測定する。

4. ボツリヌスE型菌に関する試験研究
 北海道産のタラ、ニシン、カレイおよびハタハタの市販および魚獲直後の試料にそれぞれ100および300Kradの照射を行ない10℃で2週間および20℃で3日間保存したのち、ボツリヌスE型菌毒素の検出頻度をしらべる。

19. ガス冷却型動力炉中における核燃料物質量の推定方法に関する試験研究

(古河電気工業(株))

 (研究の目的)
 ガス冷却型動力炉中における核燃料物質組成の変化を原子炉運転データに基く計算および化学分析の両面から検討し、動力炉中の核燃料物質量の推定方法の改善を図ることにより動力炉に対する合理的査察技術の開発に関することを目的とする。

 (研究内容)
1. 核燃料物質量の推定計算
 日本原子力発電(株)東海炉の特定な1チャンネルの燃料要素を選び、これから最高約2,000MWD/tまで約500MWD/t間隔で4水準の燃焼度を有する試料2個づつ計8個を対象に考え、各試料中に含有されるウラン235,236,プルトニウム239,240,241の量を次の方法により計算する。
(1)中性子分布、炉出力、グラファイト温度およびガス流量等から計算し推定する。

(2)下記2で得られたセシウム137の分析値から求められる燃焼度を用い、また照射温度、燃焼度の微小変動による影響をも考慮した精度の高い計算を行ない推定する。
2. 照射済燃料の分析
 上記1で対象とした8試料を実際に採取し、酸溶解してイオン交換樹脂法でウラン、プルトニウムおよび核分裂生成物を分離する。

 分離したウラン、プルトニウムについては質量分析器で同位体比を測定し、核分裂生成物のうちセシウム137については定量分析を行なう。

3. 結果の解析および評価
 ウラン235,236およびプルトニウム239,240,241の推定存在量について、1-(1)および1-(2)で得られた結果を比較検討し、またこれらの計算から求めた核燃料物質の同位体比と実際に測定した同位体比とを比較検討して、これらの相関関係、推定結果に及ぼす各因子の影響、推定計算の精度を解析する。

20. 高濃縮板状燃料製造の工程管理に関する試験研究

(住友電気工業(株))

 (研究の目的)
 核燃料物質の査察に関し高濃縮ウラン取扱量の増加と共にその受入れ、払出しを正確にする必要があり、又濃縮度の異るロットの混用にも対処する必要が生ずる。

 このため本試験研究は、高濃縮板状燃料について、製品の非破壊によるU-235絶対量の測定を行なう技術的方法を開発し、工程管理を有効に行なうことにより、高濃縮板状燃料の査察に容易に対処できるようにすることを目的とする。

 (研究内容)
1. 標準薄膜ウラン試料の作成
(1)自己吸収の少ないウラン薄膜の作成
 約85~90%の濃縮ウランを使用して、メッキ法、真空蒸着法、粉末法により、約20μないし約30μの厚さの膜を製作し、この中に含まれるU-235量を化学分析により正確に求める。

(2)検量線の作成

 上記により製造した標準試料について、U-235量とU-235よりのエネルギー別γ線強度の検量線を作成する。

2. ウラン-アルミ合金中の自己吸収量の測定
 標準薄膜ウラン試料から放出されるγ線を基準として、ウラン-アルミ合金について、そのウラン含有量、厚さによるγ線の内部自己吸収について、γ線エネルギーレベル別に定量的に計測することにより、ウラン-アルミ合金中のU-235量の測定に最も適したγ線エネルギーを決定し、かつ幾何学的測定条件および測定試料の偏析による影響を求める。

3. 非破壊測定法の評価
 実際の製品について、上記により得た非破壊測定方法と従来の化学分析、比重法とを比較検討校正することにより、板状燃料中のU-235量を非破壊で測定する方法を評価する。

21. 二酸化ウランペット燃料加工工程における管理システムに関する試験研究

(三菱原子力工業(株))

 (研究の目的)
 核燃料加工施設の査察に対応し、常時、加工施設内の核燃料物質量を正確に把握しておく ことが必要となってきた。

 このため本試験研究においては、電子計算コードによって行なう計量管理システムを開発し、さらにこの計算コードへのインプットデータに要求される精度を検討し、核燃料加工施設の査察に効果的に対応する方法を開発することを目的とする。

 (研究内容)
1. 二酸化ウラン燃料加工施設内の計量管理システム
 コードの開発二酸化ウラン燃料加工施設内の加工工程を分析し、各工程の滞留時間、ロス率、スクラップ率を検討し、加工施設内のマテリアルバランスのモデルを作成する。

 このモデルに従ってプログラミング、コーディングを行ない、二酸化ウラン燃料加工施設内の核燃料物質の計量管理システムのコードを開発する。

2. 二酸化ウラン燃料加工施設内の滞留核燃料物質量の計算及び解析
 上記1で開発したコードを用いて各種のロス率、スクラップ率受入量、払出量の種々の組合せについて約100例の計算を行ない得られた滞留核燃料物質量の推定誤差範囲と各インプットデータとの関連性ならびに滞留核燃料物質の推定誤差範囲を縮める方法について検討する。

昭和43年度原子力平和利用研究費補助金交付概要

1. 燃料被覆材用耐スエリング性ベリリウム合金の製造および炉内評価に関する試験研究

(日本碍子(株))

 (研究の目的)
 ガス冷却炉の燃料被覆材として、有望視されるベリリウムは、機械的性質における異方性のほかに高速中性子照射下におけるスエリングが問題となる。

 このため、本試験研究は、耐スエリング性賦与に最も適した微細分散相を有するベリリウム合金系の製造法を検討し、その炉内評価を行なうことにより、ベリリウム被覆管の開発に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 微細分散相を有するベリリウム合金製造の研究
(1)固溶、析出条件の探索による析出相の微細分散法の検討
 ベリリウムに約0.5W/oまでV,Ti,Cr,Nb,Mo等を添加した二元合金を、固溶化処理および析出処理し、光学顕微鏡および電子顕微鏡による組織観察により固溶、析出現象を観察することにより、微細な析出物を得る固溶、析出条件を検討する。

(2)共晶化合物の微細分散法の検討
 ベリリウムとV,Ti,Cr,Nb,Mo等との二元合金について添加量と合金組織の関係を調査し、共晶組成を決定する。

 共晶組成の合金について共晶化合物の分散状態に及ぼす鋳造方法、加工方法の効果を検討し、共晶化合物の微細化の条件を検討する。

 共晶化合物の分布、大きさ、形状は光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察する。
2. 分散相の熱的安定性の研究
(1)分散相の高温安定性の検討
 1で検討した二元合金を高温で長時間保持し、各合金系の分散相の形状および分散状態の変化を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察することにより、各合金系の分散相の熱的安定性を検討する。

(2)再結晶現象に及ぼす合金元素の影響の検討
 1で検討した二元合金に加工歪を与えたものを再結晶温度以上に加熱し、結晶粒の成長状態を光学顕微鏡または電子顕微鏡により観察し、ベリリウムの再結晶挙動に対する合金元素の影響を検討する。

3. 中性子照射の影響の研究
(1)分散相とヘリウムの相互作用の検討
 1および2の検討から有望とかんがえられる二元合金箔に高速中性子約1019nvtを照射し、電子顕微鏡観察を行ない合金中の分散相とヘリウムの相互作用、即ち、ヘリウム気泡の形成核として分散相の作用およびヘリウム気泡の移動に対するアンカー作用ならびに相互作用に及ぼす分散相の形状、合金元素の種類の影響について検討する。

 また、ヘリウムと転位との相互作用について電子顕微鏡により観察する。

(2)分散相の熱的安定性に及ぼす中性子照射の影響の検討
 3(1)と同様の照射試料を約900~1,000℃に長時間加熱し、各合金系の分散相の形状および分散状態の変化、ならびに粒界移動に対する分散相の種類および形状、または合金元素の影響を電子顕微鏡により観察し、2(1)の結果と比較検討することにより、分散相の熱的安定性に及ぼす中性子照射影響を検討する。
2. アミン抽出法によるジルコニウムとハフニウムの分離法に関する試験研究

(日本鉱業(株))

 (研究の目的)
 原子炉用ジルコニウム中のハフニウムの含有量は、0.01%以下であることが要求されるのに対し、原料中には2~2.5%のハフニウムが含まれているため、ハフニウムを99.7%程度分離する必要がある。

 しかし、従来のへキソン抽出法は、装置の腐食をともなう塩酸を使用する等の欠点を有している。

 このため本試験研究は、腐食の問題の少ない等の利点を有するアミンを抽出剤として、遠心抽出機を用いる分離技術を開発し、ジルコニウムの工業的製造技術の確立に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. ジルコニウム抽出試験
 ジルコン精鉱を分解して得られた硫酸ジルコニウムと硫酸ハフニウムの混合水溶液とアミンを含有するケロシンを遠心抽出機を用いて向流接触させ、ジルコニウムを抽出分離する。

 この場合におけるジルコニウム水溶液とアミン・ケロシン溶液の流量、流量比および温度とジルコニウムとハフニウムの分離効率等との関係をもとめ、最適分離条件を検討する。

2. ハフニウムの逆抽出試験
 1.で得られたケロシン中のジルコニウムはハフニウムを約0.1~0.2%含むためさらに稀硫酸を加え、遠心抽出機を用いて向流接触させハフニウムを稀硫酸中に逆抽出し、ジルコニウム中のハフニウムを0.01%以下にする。

 この場合における二相の流量、流量比および温度とジルコニウムとハフニウムの分離効率等との関係を求め、また、装置の腐食状況を観察し最適分離条件を検討する。

3. ジルコニウムの回収およびアミンの再生試験
 逆抽出で得たハフニウム含有量0.01%以下のジルコニウムを含むケロシン溶液を、炭酸ソーダ水溶液と接触させて中和反応を行ない、ジルコニウムを水溶液中に回収し、アミンを再生する。

 この場合の炭酸ソーダ溶液の濃度等、中和条件およびジルコニウム、アミンの収率等を検討する。

4. ジルコニウムのオキサイド化のための加熱分解試験
 3.で得たジコルニウムを含む水溶液を加熱分解装置を用いて連続的に分解させ酸化ジルコニウムとする。

 この場合の反応率、酸化ジルコニウムの純度および熱収支について検討する。

3. 高速炉用金属バナジウムの製錬法およびその合金の製造法に関する試験研究

(日本碍子(株))

 (研究の目的)
 将来の高速炉用燃料被覆材として有望視されているバナジウムについて、前年度2つの製錬法により酸化バナジウムから金属バナジウムを製造する試験研究を行なった。

 本年度はこの2つの製錬法により製造した金属バナジウムの比較検討を行ない、原子炉用材料のための金属バナジウム製錬法の確立に資するほか、燃料被覆材として有望視されているバナジウム・チタニウム合金の溶製と特性解析を行ない、その開発に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 製錬法の異なるバナジウムの特性解析
(1)加工性試験
 溶融塩電解法および金属還元法の2種の製錬法によってえた金属バナジウムを電子ビーム炉、アーク溶解炉で溶解し、そのインゴットを熱間または冷間にて圧延し、それらの不純物含有量と製錬法との関係および加工性の良否と地金の不純物含有量との関係を検討する

(2)機械的性質の測定
 (1)でえられた金属バナジウムの加工材の硬さ、引張強度および伸びを測定し、不純物含有量との関係を比較検討する。
2. バナジウム・チタニウム合金の溶製およびその特性解析
(1)合金の溶製試験
 電子ビーム溶解した金属バナジウムと金属チタニウムポンジをアーク溶解し、目的組成(チタニウム5%、10%、20%、30%)の偏析の少ないバナジウムチタニウム合金インゴットの溶製条件を検討する。

(2)合金の加工性試験
 上記方法によって得られたバナジウム・チタニウム合金について熱間または冷間にて圧延を行ないそれらの加工性の良否と合金組成との関係を比較検討する。

(3)合金の機械的性質の測定
 上記方法にて得られたバナジウム・チタニウム合金の加工材に関して、その硬さ、引張強度および伸びを測定し、合金組成とそれらの機械的性質との関係を検討する。
4. 高速炉燃料被覆材用ニッケル基およびバナジウム基合金のナトリウム耐食性に関する試験研究

(三菱金属鉱業(株))

 (研究の目的)
 国のプロジェクトとして建設が進められている高速実験炉の被覆材としては、316ステンレス鋼が採用されることとなっている。

 しかし、316系ステンレス鋼では、冷却材ナトリウム温度を600℃以上にすることに問題がある。

 このため本試験研究はさらに高温で使用可能と考えられるニッケル基およびバナジウム基合金について、主としてナトリウム耐食性を検討し、将来の高速炉の改良に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 試料の特性解析
 下記の試験片の寸法、重量、組成、組織を化学分析、顕微鏡、X線マイクロアナライザー等により確認し、また、硬度、引張り強度およびクリープ強度等の機械的性質を測定する。

 試験片
(1)インコロイ800、ハステロイX、インコネル600およびインコネル718の加工板材ならびにその焼鈍材。
(2)インコロイ800の管材。
(3)V-20W/o Ti、V-15W/o Ti-7.5W/o Cr、V-5W/o Cr、V-5W/o Ti-20W/o Nb《固溶体強化型合金》およびV-6.4W/o Fe-5.3W/oNb-1.3W/o Zr-0.05W/o C《分散強化型合金》の5種のバナジウム基合金の板材。
2. ナトリウム耐食試験
 1.の試験片をナトリウム耐食試験用ポットにより静的耐食試験を行なう。

 試験条件はナトリウム純度、温度および時間を組合せたものとする。

 さらにインコロイ800については日本原子力研究所ナトリウム特研の既存のナトリウム質量移行試験ループにより、動的耐食試験を行なう。

3. 耐食試験後の試料検査および機械試験
 ナトリウム耐食試験後腐食程度を寸法および重量変化で測定し、また組成、組織変化を顕微鏡、X線マイクロアナライザーにより追求し腐食の進行状況を観察する。

 また、腐食が著しい試験片をのぞいて硬度、引張り強度およびクリープ強度等の機械的性質を測定し、耐食試験前後の測定値を比較検討し、各種金属合金のナトリウム耐食性を検討する。

5. スぺ-サーパッドのジルカロイ薄肉被覆管への溶接法に関する試験研究

(古河電気工業(株))

 (研究の目的)
 密集型燃料集合体については、フレッテイング損傷、流動抵抗等の面から被覆管に直接パッドを取付けるパッドスペーサー法が有望と考えられる。

 このため本試験研究は、スペーサーパッドのジルカロイ薄肉被覆管への溶接法を開発し、密集型燃料集合体組立方式について検討し、新型燃料集合体の実用化に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 電子ビーム溶接による被覆管へのパッドの取付試験
 ジルカロイ-2被覆管の表面に、ジルカロイ-2パッドを電子ビーム溶接法により、被覆管を損傷することなく取付けるため、電子加速電圧、電子ピーム電流および溶接速度等の最適溶接条件、溶接性を考慮したパッドの形状およびパッドを被覆管表面に精度良く取付けるための治具の設計を検討する。

2. パッド溶接部の評価試験
 1.の試験結果から、最適条件で被覆管にパッドを取付け、以下の検討を行なう。
(1)内圧破壊試験:パッドを取付けた管および素管の内圧破壊試験を行ない、溶接の強度に及ぼす影響を検討する。

(2)腐食試験:オートクレーブにより水蒸気中で長時間腐食試験を行ない、パッド溶接部および熱影響部の外観検査および腐食増量を測定して、耐食性を検討する。

(3)金相試験:パッド溶接部の断面の顕微鏡観察による金相試験を行なう。

 また、(1)および(2)の試験結果との対応性を検討する。
3. 模擬燃料集合体の試作試験
 約1m長のジルカロイ-2被覆管に、軸方向には約300mm間隔に、径方向には28本クラスター製作に必要な所定の組立位置に、1.および2.の試験結果から得られた最適条件でパッドを取付けた後、集合体におけるパッドの位置ずれ防止構造等を検討するため、上下アダプターおよびバンドで組立て、燃料集合体1体分を試作する。

6. 加圧水炉用蒸気発生器の管と管板の接合技術に関する試験研究

(三菱重工業(株))

 (研究の目的)
 加圧水炉では50万kw級で2基の蒸気発生器を必要とし、それぞれにおける管と管板の継手箇所は約10,000にのぼるため、その工作方法の高能率化が重要な問題となる。

 しかし、従来のローラ拡管およびTIG溶接の併用による方法では工数が多いこと等の問題がある。

 このため、本試験研究は、全く新しい独自の観点から放電成形を利周した拡管と摩擦圧接を利用した洩れ止め溶接技術を開発し、加圧水炉用蒸気発生器の国産化に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 放電成形の拡管への適用試験
 供試材料としてインコネル伝熱管外径約19mm、肉厚約1.42mmおよび外径約22.2mm、肉厚約1.27mmならびに炭素鋼管板厚さ約50mmおよび約200mmを用いて次の試験を行なう。
(1)適用方法の検討
 金属細線放電電極の材質をアルミ、銅等、形状を直線、コイル状等とし、また、圧力媒体を水素媒体容器をゴム栓、ゴム膜等とし、拡管試験を行ない拡管部の状況を観察することにより有望な拡管条件を検討する。

(2)放電エネルギーと拡管効果の検討
 (1)で有望と考えられる条件により放電エネルギーを変えて、約50~200mmの約3種の拡管長について拡管試験を行ない、管の肉厚減少、拡管長さ、拡管の均一度等から有望な放電エネルギーを検討する。

(3)拡管部性能試験
 (1)および(2)で拡管を行なった試験片につき、拡管部の水密性と保持力および拡管部の材質試験を行ない最適拡管条件を検討する。
2. 摩擦圧接装置の試作試験
(1)摩擦圧接装置の試作
 前処理(真円度調整拡管、開先加工)、摩擦圧接(回転リングチャッキング、摩擦圧接)および後処理(回転リング切断、仕上加工)の3工程が行なえるヘッド切替えの可能なシール溶接用摩擦圧接機を試作する。

(2)開先継手形状の検討
 (1)摩擦圧接装置により1.と同様なインコネル管をインコネルを肉盛りした炭素鋼管にインコネルリングを用いて平面、凸面、凹面の約3種の開先継手形状で摩擦圧接し、有望な条件を検討する。

(3)継手性能試験
 (2)で有望と考えられる試験片について継手の水密性と強度および継手部の材質の検討を行ない最適摩擦圧接条件を検討する。
7. ガス冷却炉用蒸気発生器の管群の振動に関する試験研究

(川崎重工業(株))

 (研究の目的)
 わが国の発電専用第1号機として建設された日本原子力発電(株)東海発電所の蒸気発生器の蒸発管の振動による破損事故あるいは、フランスのEDF-3の同種の事故はいづれも設計データの不足によるものと考えられる。

 このため本試験研究は風洞実験により蒸気発生器の蒸発管の振動解析を行ないこの問題の解明に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 単独管による試験
(1)弾性支持単独管
 大型風洞内に普通鋼の模型管を流れに直角に振動できるようにバネで支持し、バネと並列に粘性ダンパーを装備して、その減衰を調節することにより質量比を変えるようにする。

 この模型管について風速、質量比を変化させ、単独管での励握力係数を求める。

(2)クランク加振単独管
 普通鋼の剛性の大きい模型管をクランクで加振しうるようにする。

 この模型管について風速、加振動数、加振振巾をかえて管表面の変動静圧を測定し、励振力を求め、励振機構を解析する。
2. 管群による試験
(1)ダクトの共鳴
 普通鋼管の両端および中央を固定し、管径・ピッチ比を変えて、ダクト内に設置する。

 この管群について流速を0から除々に上げ共鳴の発生する流速範囲で細かく変えて各管径・ピッチ比につき流速に対する音圧をしらべ、その最大音圧の流速の共鳴サイクル数とから管群としての無次元共鳴振動数を解析する。

(2)管の振動
 2.(1)で用いた管群のスパン中央の支持を外して管の剛性を下げる。

 この管群について、風速を除々に上げ、管に振動を生じる流速の範囲で細かく流速をかえて管振巾を測定し最大振巾となる点の流速を求め、これと管の振動数とから無次元振動数を求める。

 また、管の自由減衰振動から減衰率を測定しこれと上記の振巾実測値から励振力係数を求める。
3. 管群の振動の検討
 1.および2.の研究結果をもとに、AGRで採用されている管の寸法、ガス条件により
(1)ダクト内に高圧共鳴の発生の危険性の有無
(2)管群に流れにより振動がおこる危険性の有無
(3)危険性ありと判断されればその防振対策を検討する。
8. 原子炉の危急圧力逃し装置としての密封型先駆弁付安全弁の試作に関する試験研究

(東亜バルブ(株))

 (研究の目的)
 原子力発電所の安全性確保の1つとして圧力容器に安全弁が設けられている。

 しかし、これの実設備による作動試験を行なうことは事実上幾多の問題があって施行できない。

 この問題を解決しようとするのが先駆弁付安全弁である。

 これは先駆弁の性能を製作工場のテストボイラーによって試験し、次に本体弁との結合を確認することによって実缶試験を省略しようとするものである。

 このようなことから本試験研究は即応性の高い動作の安定した外気に対して完全密封の先駆弁付安全弁を試作し、その信頼性の実証を行なうことによってその国産化に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 密封型先駆弁付安全弁の設計、製作
(1)主弁本体形状の研究
 流体抵抗が少なく、鋳造性が良好で、吹出時の反動力が合理的に処理できると考えられる形状の実形に近い主弁本体模型3個を設計、製作し、流水試験を行ない、最適形状を検討する。

(2)先駆弁用ベローズの材質および形状の研究
 ステンレス鋼系を中心に3~4種の材料を選定して、これら材質について機械加工と火造りを組合せて極力メタル・ファイバーを残すようにベローズに加工する。

 加工したベローズについて水圧試験、圧縮試験、繰返し疲労試験、スプリング性試験および光弾性試験を行ない、かつ、圧縮撓み、弾性状態等の検討を行ない、ベローズとしての最適の材質、加工法および形状を検討する。

(3)先駆弁の設計、製作
 (2)の試験結果から得られた最適条件でベローズを設計し、これを用いてベローズ密封型先駆弁を設計、製作する。

(4)安全弁の設計、製作
 (1)の試験結果から得られた最適条件で主弁本体を設計し、これを用いて主弁を設計、製作し、(3)で試作した先駆弁と一体にして密封型先駆弁付安全弁を設計、製作する。
2. 水圧試験
 試作した密封型先駆弁付安全弁に約100kg/cm2の水圧をかけて漏洩検査を行なう。

3. 総合試験
 試作した密封型先駆弁付安全弁に約70kg/cm2の蒸気を通じて吹出試験を行ない、吹出圧力のバラツキ、先駆弁に対する主弁の応答時間、総合蒸気リーケージ、主弁リフト、安定性、ブローダウンを検討する。

9. 電子計算機による動力炉の自動化に関する基礎的試験研究

((株)東京芝浦電気)

 (研究の目的)
 動力炉が大形化、高性能化するにともない、その運転制御における計算機制御の役割はますます重大になり、現在では動力炉にとっては、プロセス計算機は不可欠な部分になりつつある。

 しかし、その信頼性に対する不安が原因となって、計算機の能力を充分に発揮させるようなシステムはまだ開発されていない。

 このため、本試験研究は、電子計算機の信頼性の向上と、計算機以外の故障に対応しうる信頼性の高い電子計算機のシステム構成法について研究し、将来における動力炉の自動化に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 計算システムの設計、製作
 計算システムの構成は最新型工業用計算機TOSBAC-7000に16K語の記憶装置および入出力装置を組合せたものとし、その計算機能上重要な部分について回路の短絡、切断、部品の取り外し等の故障状態を作成するのに便利な構造として製作する。

2. 計算機の故障発見プログラムの作成
 計算機の運転中に約2秒間隔で計算機自体の故障を発見するプログラムを作成する。

 また、記憶回路のように二重化可能な部分については、故障した場合に、他の回路を使用して計算を継続できるようなプログラムとする。

 また、このプログラムは、タイプライタおよび動力炉計装系の故障にもとづく異常信号が入った場合に、これを異常信号として判断し、されに原子炉の運転を継続できるようなものとする。

3. 実動試験
 2.で検討したプログラムを計算機システムにかけて動作させ、回路の断線、短絡、部品の取り外し等の故障状態を作り出し、プログラムの故障発見能力、計算機の運転継続能力を検討する。

 また、外部からの異常信号は入出力タイプライタで模擬し、外部の故障状態に対する作動を確認する。

10. 原子炉計測用耐放射線性低雑音同軸ケーブルの製造に関する試験研究

((株)住友電気工業)

 (研究の目的)
 原子炉の出力制御を行なうための信号伝送用ケーブルの重要性は大きい。

 しかし、炉心において発生する中性子、γ線の影響で従来のケーブルは劣化して寿命が短かく、取替えの頻度が高いための作業ロスの増大、それに伴なう人体に及ぼす悪影響の難点がある。

 このため、本試験研究は、耐放射線性絶縁材料を開発し、低雑音同軸ケーブルを開発することにより、原子炉計測用同軸ケーブルの国産化に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 絶縁物の放射線に対する耐性の研究
(1)ポリエチレン等を基盤とする材料の研究
 高周波特性の良好なポリエチレン等に放射線劣化防止剤を添加した新配合物質に、電子線を照射し、そののび率の変化量より耐放射線特性を求め、有望な耐放射線性絶縁材料を開発する。

(2)加工性の研究
 (1)で開発した耐放射線性の良好な材料の同軸ケーブル絶縁物としての加工性を検討し、必要性があれば加工性の改善法について検討する。
2. 低雑音同軸ケーブルの製造研究
(1)銅メッキ装置の設計製作
 同軸ケーブル用絶縁物の表面に銅メッキをするための、エッチング感度賦与、活性化処理、無電 解メッキ、電気メッキの各槽よりなり、洗滌槽を介在させた銅メッキ装置を設計製作する。

(2)無電解メッキの研究
 1.で有望と考えられる絶縁物に電子線を照射し、これを活性化等のため前処理し、無電解メッキを行なう。

 この試験片について剥離試験を行ない照射量、処理液の濃度、処理時間、沈澱条件、銅の変色防止法などの最適条件を検討する。

(3)電気メッキの研究
 (2)の試験結果から有望と考えられる条件で、無電解メッキを行ない、生成した金属面に電気メッキによって金属層の肥厚を行なう。

 この場合、電極の形状、型式、液の濃度、処理時間などの最適条件を検討する。

(4)可撓性同軸ケーブルコアの研究
 可撓性低減防止用のコルゲート状の波をケーブルコアに成形するための装置を設計製作する。

 この装置により成型した試験片について可撓性の試験を行ない、最適成型法を検討する。

(5)同軸ケーブルの雑音性能の測定
a.低周波雑音の測定
 機械的振動および熱サイクルによる雑音量の変化を測定するため、実用上与えられる可能性のある振動および熱サイクルを加えて最適同軸ケーブルを得るための資料を得る。

b.コロナ雑音の測定
 電圧1.5kV附近のコロナに対するコロナ消減および発生電圧の測定を行ない、コロナ雑音に対するメッキのシールド効果を検討する。
3. 中性子吸収断面積の小さい防止剤の研究
(1)で有望と考えられる劣化防止剤を添加した素材を中性子照射し、被照射物について残留放射能を測定し、最適劣化防止剤を選定する。
4. 実用試験
 試作ケーブルまたは素材料の実用試験を行なうため中性子照射を行ない、耐放射線特性、電気特性等についてその実用性の検討を行なう。

11. 遠心分離機による冷却材ナトリウム中の不純物除去に関する試験研究

((株)東京芝浦電気)

 (研究の目的)
 高速炉の冷却材ナトリウム中の不純物は、炉構造材、燃料被覆管、機器などの腐食に影響する。

 不純物を除去する装置としては、コールド・トラップやホット・トラップなどの化学的除去装置が実用化されているが、これらの装置はトラップされる有効容積が幾何学的容積の数%から10数%と低く、装置が大型化し、トラップした不純物を連続的に精製回路外に排出できない。

 このため本試験研究は遠心分離機による不純物の除去法について研究し、不純物の連続除去の技術の確立に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 試験研究装置の設計、製作
(1)遠心分離機の設計、製作
 液体金属ナトリウム中の不純物粒子の分離が可能な遠心分離機を設計、試作する。

 とくにナトリウムの出口および回転軸受のシールはメカニカル・シールとし、カバー・ガスにアルゴンを用いシール部が直接ナトリウムと接触しない構造とする。

(2)試験回路の製作
 既存のループからバイパス系を設け、これに試作した遠心分離器を組込み、再生熱交換器、冷却器等を直列に入れて遠心分離機に入る温度を可変できるようにする。

 また、運転中に不純物濃度の変化および試料の採取が可能のような気密構造の不純物注入装置および資料採取装置をそれぞれ遠心分離機の前後に組込み、さらにループに酸素検出器および水素検出用分析計をつける。
2. 遠心分離機の性能試験
(1)予備試験
 不純物注入装置より不純物を逐次添加していき、酸素検出器および水素検出用分析計の応答を調べるとともに、試料採取装置から採取した試料を分析して、酸素検出器および水素検出用分析計との相関関係を求める。

(2)不純物を添加して、ナトリウム中の不純物濃度が平衡に達した後、遠心分離機を運転し、回転数、温度、不純物を変えて除去効率との関係を求める。

 また、不純物間の相互効果を知るため2種類の不純物が同時に存在する場合についても試験を行なう。

 これらの試験結果から各不純物あるいはその混合状態について試作した遠心分離機の最適運転条件を検討する。

(3)以上の試験結果を検討して、遠心分離機による液体金属ナトリウム中の不純物の除去法を評価するとともに、コールド・トラップ等の化学的除去法と比較検討する。
12. ナトリウム冷却型高速炉用計測器の試作に関する試験研究

((株)富士電機製造)

 (研究の目的)
 ナトリウム冷却型高速炉用計測器は高温、高放射能という使用条件に加えて、ナトリウムの活性が非常に高いことに基づく特有の問題が多く残されている。

 このため、本試験研究は、新らしい方式の液面計、不純物計、燃料計、装用流量計の試作研究を行なうことにより将来の高速炉の実用化に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 計測器の設計、製作
(1)液面計
 2次誘起電圧が、ナトリウムの過電流効果のため、ナトリウムのレベルによって変化することを利用して連続式の電磁式液面計を設計、製作する。

 この場合、非磁性のステンレス鋼の円筒上の巻枠上に1次コイルと2次コイルを巻いて空心トランスとし、コイルおよび巻枠は直接ナトリウムに接触しないようにステンレン鋼製の案内管の中に収納する。

(2)不純物計
 酸素を不純物として含むナトリウムと比較電極とを酸素空隙を有する固体電解質を介して接触させると、ナトリウム中の酸素飽和溶解度と実際の溶解酸素量との比の関数として起電力が生じることを利用して電気化学的不純物計を設計、製作する。

(3)燃料計装用流量計
 ナトリウムが流れる管を囲んでリング状に永久磁石を配置することにより、流量に応じて流れと直角方向に起電力が発生することを利用した電磁式の燃料計装用流量計を設計、製作する。
2. 試作計測器の性能試験
(1)液面計
 1.で試作した液面計を既存のナトリウム機構部品試験装置の試験容器に取付け、液面レベル、ナトリウム温度および電源周波数を変えて感度が最大となるような組合せを求める。

 また、ノイズの影響、案内管と巻枠との隙間の影響、液面レベル変化に対する出力変化の線型性についても検討する。

(2)不純物計
 1.で試作した不純物計を不純物較正装置に取付けて、ナトリウム試料調製精製装置で精製した高純度ナトリウムを用いて、酸素濃度および温度を変化させて試験を行ない不純物計の特性を求める。

(3)燃料計装用流量計
 1.で試作した流量計を日本原子力研究所の流量計較正装置を使用して較正し、これを既存のナトリウム機構部品試験装置に新設した試験部に取付け、温度および流量を変えて試験を行ない、感度、高温での特性の安定性等を検討する。
13. 高速炉用中間熱交換器の管板と管の洩れ止め溶接法に関する試験研究

((株)日立製作所)

 (研究の目的)
 ナトリウム冷却型高速炉の中間熱交換器においては、ナトリウムの温度拡散率が大きいことによる熱衝撃が問題となる。

 とくに、管板は厚肉であるため、温度変化に対して追従性が悪く、管板と薄肉の伝熱管との溶接部に大きな過渡熱応力が発生する。

 さらに、管板と伝熱管との間にナトリウムが浸入し、停滞して汚れると両者の溶接部が腐食する。

 このため、本試験研究は、管板と伝熱管の溶接部に繰返し熱衝撃を与え、熱歪による疲労およびナトリウムによる腐食を調べ、最適溶接法を検討し、中間熱交換器の製造技術の確立に資することを目的とする。
 (研究内容)
1. 試験装置の製作
 熱衝撃試験回路を新設し、さらに、既設のポンプ試験回路を改造し、両者を接続して試験装置とする。

 テストセクションは、ステンレス鋼伝熱管約50本をステンレス鋼管板に溶接し、これを容器に収容した模擬多管式熱交換器とする。

 管板と伝熱管との溶接は、TIG溶接とし、管板と伝熱管との間隙を2種類、溶接部の形状を3~4種類、伝熱管の材質を2~3種類とする。

2. 熱応力の時間的変化の解析
 テストセクションにナトリウムによって熱衝撃を加え、管板の上下の表面数ヵ所の温度、伝熱管外表面の温度を測定し、それぞれ過渡熱伝導および過渡熱応力を解析する。

 ナトリウムの流速、温度落差、加熱速度または冷却速度をパラメータとする。

3. 熱衝撃試験および材料検査
(1)熱衝撃試験
 積算して約500回以上(最高約1,000回を目標とする.)の熱衝撃試験を行なう。

 試験の条件は前記のパラメータのなかから、安全性および再現性を考慮して、最も厳しいものを選ぶ。

 ただし、熱衝撃試験中に、管板と伝熱管との溶接部にクラックが入り、大量のナトリウムが漏洩したことが検知され、熱衝撃試験の続行が不可能となったときは(2)の材料検査を行なうが、衝撃回数が約500回末満の場合には破損部を検査した後、漏洩を止めさらに熱衝撃試験を続行する。

(2)材料検査
 熱衝撃試験後、テストセクションを試験装置から取りはずし、分解洗浄して、管板と伝熱管との溶接部に対して漏洩試験、染色探傷試験を行なう。

 また、管板と熱伝管との溶接部を切断して、熱疲労によるクラックの発生およびナトリウムによる腐食の状況を顕微鏡で検査する。

 これらの検査結果から最適洩れ止め溶接条件を検討する。
14. 高速炉用蒸気発生器の安全防護機器に関する試験研究

(三菱原子力工業(株))

 (研究の目的)
 ナトリウム冷却型高速炉用蒸気発生器は、ナトリウム-水反応の問題があり、極度の信頼性を要求されるので、高速炉の実用化において、とくに蒸気発生器については解すべき問題が多く残されている。

 このため本試験研究は、多数の測定検出部を取付けた蒸気発生器と安全防護機器を組合せた装置を開発試作し、非定常時の熱特性及び模擬試験にいるナトリウム-水反応事故に対する安全防護機器の作動性を検討し、さらに伝熱管財の損傷状況も検討して、蒸気発生器およびその系統の設計製造技術の確立に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 既設ナトリウムループの改造および2次ナトリウムループの製作
 既設のナトリウムループを1次ループとし、そのナトリウム-ナトリウム熱交換器の2次側に2次ナトリウムループを新設して接続する。

 2次ループに蒸気発生器を取付け、それにナトリウム-水反応処理用の安全防護機器を設ける。

2. 蒸気発生器の設計および製作
 シェルアンドチューブ型蒸気発生器を設計製作する。

 水/蒸気を通す伝熱管は1本管で蒸気発生器シェル内に設けた取はずし可能な案内胴に巻付けたものとする。

 シェル側は自由液面を持つナトリウムが入り、自由空間はアルゴンガスで満たす。

 シェルにはラプチュアディスクを設け、ナトリウム-水反応時の過圧力を放出し、安全防護機器に逃すようにする。

3. 性能試験
(1)始動、停止等非定常時の特性試験
 定常運転状態への始動時およびその状態からの停止時における、蒸気発生器の熱貫流率、ナトリウム側の温度分布、圧力損失を測定し、非定常時の蒸気発生器の特性を求める。

(2)ナトリウム-水反応に対する安全防護機器の作動試験
 ナトリウムのカバーガスの圧力上昇および水素検出器からの信号により、ナトリウム-水反応を模擬し、ナトリウムのストレージタンクの液位の変動を測定することにより緊急ドレン系の作動性を検討するほか、水/蒸気の放出弁の作動性も検討する。

(3)伝熱管外表面状況の検査
 約200時間蒸気発生器を運転した後、伝熱管を取り出し、そのナトリウム側表面状況を調べ、伝熱管材料の耐食性を検討する。
15. 二酸化ウランペレットの連続焼結法に関する試験研究

(古河電工業(株))

 (研究の目的)
 二酸化ウランペレットは動力炉燃料として近い将来大きな需要が予想される。

 しかし、従来の二酸化ウランペレットの製造規模は極めて小さく実験室規模を超えるものではない。

 このため本試験研究は、二酸化ウランペレットの量産化工程において最も基本的な問題の一つであるペレットの連続焼結技術に関する基礎的研究を行ない、量産技術の確立に資することを目的とする。

 (研究内容)
 連続焼結炉による二酸化ウランの連続焼結法について、下記によりその技術的問題点を検討し、最適操業条件を求める。

1. 予備焼結条件の検討 二酸化ウラン粉末に有機バインダーとしてカーポワックス-4000およびポリビニールアルコールを添加し、グリーンペレットを製造する。

 ついで連続炉の予備焼結段を通過する速度および予備焼結温度について検討し、バインダーガス減圧法を含めた最適予備焼結条件を求める。

2. 焼結条件の検討
 1.により得られた、最適予備焼結条件で製造した予備焼結済みのグリーンペレットにより、連続炉の焼結段を通過する速度および焼結温度について検討し、最も経済的な焼結条件を決定する。

 この場合、焼結雰囲気、トレイ間、トレイ内部の位置の変動およびトレイを2段以上にしたときのペレットの性能についても検討する。

3. 連続焼結炉の操業条件の検討
 1.及び2.で得られた、最適予備焼結条件および最適焼結条件の両者を合わせ評価することにより、連続焼結炉として要求される最も安定かつ経済的な操業条件を求める。

 このようにして求めた操業条件により、焼結ペレットを試作し、ペレットの外観検査および焼結密度の測定を行ない、最適操業条件について検討する。

16. 炭化物燃料棒における炭素の被覆管への移行の評価に関する試験研究

((株)古河電気工業)

 (研究の目的)
 炭化物燃料は熱的、核的持性が優れているため、高速炉用燃料として有望視されているが、高燃焼時のスエリングが問題である。

 このため、燃料体と被覆管とのギャップを大きくし、スエリングによる両者の接触を防ぐと共に熱伝達を高めるため、このギャップに金属ナトリウムを充填したいわゆるナトリウムボンド燃料が有望視されている。

 このため、本試験研究は、ナトリウムボンドの状態での炭化物燃料から被覆管への炭素の移行を評価することにより、炭化物燃料製造の基礎的技術を確立することを目的とする。

 (研究内容)
1. ナトリウムボンド燃料棒の製造
 アーク溶融、粉砕、真空焼結により炭化ウランペレット(ハイポ、ハイパーのものを含む)をあらかじめ片端を溶接した316および347ステンレス鋼被覆管に装入し、次いでナトリウムを充填し、他端を溶接してナトリウムボンド燃料棒を製造する。

2. 評価試験
 上記により製造したナトリウムボンド炭化物燃料棒を約700℃において約500~1,500時間保持し、炭化ウランおよび被覆管の組織試験ならびに炭化ウランおよび被覆管中の炭素分析を行なう。

 また、炭素の被覆管への移行が著しい試料については被覆管中の炭化物のX線マイクロアナライザーによる試験および被覆管の脆化を調べるための機械的特性の試験をあわせて行なう。

 これらの試験結果から、ナトリウムボンドの状態における炭素の被覆管への移行を検討する。

17. 炭化ウラン燃料体の製造ならびにナトリウムボンドおよび被覆材との共存性に関する試験研究

((株)三菱原子力工業)

 (研究目的)
 炭化物燃料は熱的、核的特性が優れているため、高速炉用燃料として有望親されている。

 しかし、高温でのスエリングを防止するための酸素含有量の低減および熱伝達特性の向上ならびに高燃焼時のスエリングの問題を解決するためのナトリウムボンドの使用に関連して開発すべき問題が多く残されている。

 このため、本試験研究は、炭化ウラン中の酸素を低減する方法について検討すると共に、ナトリウムボンドと燃料および被覆材の3者間の共存性を検討し高速炉用炭化ウラン燃料体の製造技術の確立に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 低酸素炭化ウランおよび安定化炭化ウラン燃料体の製造試験
 二酸化ウランおよび黒鉛混合体から真空中高温炭化還元法により過化学量論的組成を有するUC粉末を製造し、これを調整加工または微量の安定化元素を添加して調整加工し、TaおよびMo製薄肉管に充填し、高周波加熱装置により高真空の状態で約1,200℃以上に加熱密封し、低酸素高密度燃料体を製造し、その評価を行なう。

2. 炭化ウラン燃料体とナトリウムボンドおよびステンレス鋼被覆管との共存性試験
 上記により製造したUC燃料体をステンレス鋼被覆管に入れ、ナトリウムボンドとしたのち溶封し下活性ガス雰囲気オートクレーブ中で約600℃以上の温度で加熱し、UC燃料体とナトリウムおよびステンレス鋼との共存性を炭素の移行量等を測定することにより検討する。

3. 中心加熱による高温挙動試験 UC燃料の中心孔にタングステン捧を挿入しナトリウム中で通電加熱して、中心温度を約1,500℃とし、原子炉中での状態と類似した温度勾配を作り、ナトリウムのUC燃料体への滲透状況および滲透した場合のNaと燃料との高温共存性および有効熱伝導率について評価検討を行なう。

18. 「ウラン・セリウム混合炭窒化物燃料の高温挙動に関する試験研究」

((株)三菱金属鉱業)

 (研究の目的)
 プルトニウム・ウラン混合炭窒化物は、将来の高出力密度、高温稼動の高速炉用燃料として、その熱伝導性、化学的安定性、組成制御の容易さ、熱的安定性等から有望視されているが、その高温挙動については、まだ不明な点が多い。

 このため、本試験研究は、プルトニウムに似た性状を有するセリウムを用い、ウラン・セリウム混合炭窒化物について、高温挙動の炉外試験、とくにスエリングの問題に重点をおいて検討し、混合炭窒化物燃料の製造技術の確立に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 製造試験
 金属ウラン、黒鉛粉末および金属セリウムにより、セリウム約20%含有のウラン・セリウム混合炭窒化物を製造するための混合、成型および焼結等の適正条件を求める。

2. 高温挙動試験
 1.により製造した炭窒化物について、高温時の結晶格子の変化の観察およびガス放出の測定を行ない、スエリングの原因について検討する。

 また、スエリングの原因となるような異常が認められた試料については、組織観察により、スエリングに及ぼす組成、温度等の影響を検討する。

 また、上記の試験結果を考慮して、代表的試料について約500℃からスエリングの原因となるような異常発生の温度まで、熱サイクルを加え、形状変化および光学的観察により、熱サイクルの炭窒化物燃料に及ぼす影響を検討する。

19. ウラン・セリウム混合炭化物燃料の製造に関する試験研究

((株)住友電気工業)

 (研究の目的)
 プルトニウムウラン混合炭化物燃料は、将来の高出力密度、高温稼動の高速炉用燃料として有望視されているが、取扱いの困難さのために、まだ研究すべき問題が多く残されている。

 このため本試験研究は、プルトニウムに近い性状を有するセリウムを用い、ウラン・セリウム混合炭化物燃料について製造法に関する基礎的研究を行ない、混合災化物燃料の製造技術の確立に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 二酸化ウランよりの混合炭化物の製造試験
 セリウム酸化物および二酸化ウラン粉末を用いてセリウム約10~30%含有のウラン・セリウム混合炭化物粉末を下記2方法により製造する。
(1)セリウム酸化物および二酸化ウラン粉末にそれぞれ別個に炭素粉末を混合成型し、真空中約1,000~1,800℃にて反応させてそれぞれ炭化物を作りこれより、混合炭化物粉末を製造する。

(2)セリウム酸化物粉末、二酸化ウラン粉末および炭素粉末を混合成型し(1)と同様に真空加熱により混合炭化物粉末を製造する。
2. 金属ウランよりの混合炭化物の製造試験
 セリウム酸化物および金属ウランを用いてセリウム約10%~30%含有のウラン・セリウム混合炭化物を製造する方法に関し、セリウム炭化物は前記1.(1)と同様の方法により製造し、また炭化ウラン金属ウラン粉末を炭化水素と反応させて製造し、両
炭化物を混合して浪合炭化物粉末を製造する。

3. 模擬混合炭化物焼結体の製造試験
 1.および2.の方法により製造した混合炭化物粉末を、約1400~1800℃真空中で焼結し、焼結体についてその焼結密度、結晶組織、気孔度、硬度等を測定し、混合粉末の最適製造条件および焼結体の最適焼結条件を検討する。

20. シンチカメラ用ヨウ化ナトリウム単結晶検出系の試作に関する試験研究

((株)堀場製作所)

 (研究の目的)
 最近、核医学分野の研究において体内放射能分布の測定装置としてシンチカメラの利用が増加している。

 シンチカメラには1つの大きなヨウ化ナトリラム単結晶を用いるアンガー型と多数の小さな単結晶を配列したモザイク型の2型式がある。

 しかし、わが国においては大きなヨウ化ナトリウム単結晶の製造技術およびその加工技術ならびに検出系の光学的構造に関する研究が遅れており、この種の診断装置はまだ国産化されていない。

 このため本試験研究は上記2型式の検出系の試作研究を行ないその国産化に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 大型ヨウ化ナトリウム単結晶の試作研究
 Bridgiman-Stockbarger法により、大きさ約31cmφ×20cm(H)の大型ヨウ化ナトリウム単結晶を製造する場合の諸条件を検討する。
(1)単結晶製造装置は基礎となる研究から得た資料を基にして、炉内温度、炉内温度分布および結晶引き下げ速度等を検討し、大型ヨウ化ナトリウム単結晶を製造し得る装置を設計製作する。

(2)結晶の大型化に伴なう単結晶化および活性剤(Tl)の均一化に必要な最適炉内温度分布および炉内温度の許容制御範囲を検討する。

(3)結晶の大型化とその結晶化熱および外部からの加熱、外部への放熱の平衡に支配される結晶成長速度(結晶引き下げ速度)を検討する。

(4)結晶の大型化に伴なう内部残留歪を除去するため焼鈍、温度および時間を検討する。
2. シンチカメラ用検出系の試作研究
 大型ヨウ化ナトリウム単結晶から、アンガー型およびモザイク形シンチカメラ用結晶、大きさそれぞれ31cmφ×20cm(H)および約20cm×15cm×2.5cm(H)(294分画)を得るための加工方法ならびに検出系に使用する光学反射材料、接着剤材料、窓材料、ライトパイプの材質の選定を行ない、シンチカメラ用検出系とするための加工、製作条件について検討する。

3. シンチカメラ用検出系としての特性の研究
 設計、試作したシンチカメラ用検出器の分解能および検出効率を測定し、これらと結晶成長条件および加工方法との関係を検討する。

21. 速中性子吸収線量の測定に関する試験研究

(近畿大学)

 (研究の目的)
 原子炉周辺のごとく中性子線とγ線が混在した場においては、生物学的効果および遮蔽に対する考慮等から、各々の吸収エネルギーを分離して測定する事が必要である。

 このため本試験研究は、検出器としてエネルギー依存性が生体組織に類似しているプラスチックシンチレーターを使用し、速中性子のシンチレーションが遅く減衰することを利用して、これをγ線などから識別し、速中性子の吸収線量の値を直接指示しうる線量計を開発し、放射線監視技術の向上に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 波形識別回路の試作研究
 シンチレーターとしてプラスチック、アントラセンおよびスチルベンを用い、中性子線およびγ線の混在する放射線を検出し、速中性子(約0.5Mev以上)のシンチレーションをその他の放射線のそれから波形識別回路を用いて識別し、識別性能について検討する。

2. 吸収線量測定回路の試作研究
 波形識別回路で得た分離信号(速中性子をその他の放射線から識別する信号)とフォトマルチプライヤーからのリニア信号とをコインシデンスし、速中性子のリニア信号を選別し、そのパルス波高とパルス数との積(すなわち吸収線量)に比例した指示値を得る様な電子回路を試作する。

 この場合、パルス波高をエネルギーに比例した電荷に変換するため、パルス波高を時間に変換し、この時間だけ定電流回路から、定電流を指示計に流し込み指示させるような回路を用いる。

3. エネルギー係数補正の研究
 吸収線量に生物学的効果を加味した補正回路(吸収線量をレム値に変換する係数を乗ずる回路)として、パルスを速中性子のエネルギーに比例した波高に、数段階に選別し、それぞれの区分に応じた係数値を前記の吸収線量の値に乗ずるような補正回路を検討する。

4. 特性試験
 プラスチック・プローブ、波形識別回路、ゲート回路、波高分析回路およびエネルギー係数を補正する回路を組み合せて、種々の速中性子源、中性子線とγ線の混在した放射線および疑似パルスを使用して、各回路の総合調整および較正を行ない、速中性子線の測定法を検討する。

22. 電子線照射線量の実用的測定法に関する試験研究

(大阪府立放射線中央研究所)

 (研究の目的)
 電子線の照射利用は次第に増加しており、今後急速に盛んになると考えられる。

 しかし、現状では照射する線量の精度は十分とはいえない。

 このため、本試験研究は、吸収電子線量の正確な測定技術と、照射中に連続的に線量分布を監視するモニターを開発し、電子線照射量の精度向上に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 吸収線量の高精度測定法の研究
 2個のカロリメーターの一方に、測定試料をのせ、読みの差から試料の吸収線量(約0.2~100Mrad:電子線量にして約2~10MeV、納10μA~1mAに相当する)を測定できる横型の補償型カロリメータを設計、製作する。

 これにより、試料の種類(木材、ゴム等)と厚さに対する測定値の依存性を求めるほか、後方散乱電子の影響および吸熱体の温度変化が測定精度に与える影響および電子ビームの強さが左右非対称の場合の測定法を求める。

 これらの諸因子を検討して、さらに精度よく測定できるカロリメータの検出部を設計、製作する。

 この検出部について性能を確認する。

 さらに照射による吸熱体の温度平衡以前に、その温度上昇曲線の立上りの傾斜で吸収線量を推定するなどの、より簡単な測定法について検討する。

2. 吸収線量の運転中モニターの試作研究

 電子ビームの散乱線を、スキャンナーに沿って分布させた多数の検出部で検出して、照射電子線強度および分布をモニターする。

 検出にはアルミ等の箔(2次電子が放出することを利用する。)および半導体検出器を用いる。

 また検出器の出力の配置場所、試料およびコンベアーパレットからの反射などの影響について検討する。

 さらに検出部からの信号を積分し、X-Yレコーダーまたはオシロスコープに読み出すための回路を設計、製作する。

23. 放射線テロメリゼーションによるケイ素化合物の合成に関する試験研究

(大阪府立放射線中央研究所)

 (研究の目的)
 ケイ素化合物は耐熱性、揆水性を有し、電気材料、防水剤、消泡剤、耐熱耐寒ゴムなど広く利用面を有している。

 しかし、一般にケイ素化合物は炭素化合物に比較して高価であるため、さらに需要を高めるためには安価で容易に生産できることが必要である。

 これに対して放射線によるケイ素化合物のテロメル化反応は一般に収率よく純品が得られ、かつ操作も容易である。

 このため、本試験研究は簡単なケイ素化合物とビニルアセテートを原料とする放射線テロメリゼーションについて研究し、高級なケイ素化合物の開発に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 線量および線量率の生成物の収率に対する影響の研究
 三塩化ケイ素(テロゲン)と酢酸ビニル(タクソーゲン)を真空凍結法により脱気して4:1の割合で混合し、常温で60Co-γ線を照射し、テロメル化反応を起させる。

 この場合照射条件は線量率を約104~5×105r/hrの数点、稔線量を約105~107rの数点として各条件下において生成する生成物を蒸溜法およびガスクロマトグラフにより分離し、各生成物の分布および収率を測定し、1:1附加物を得るための最適線量および線量率の組合毎を検討する。

2. 混合割合の収率に対する影響の研究
 1で得られた1:1附加物の最高収率の線量および線量率を用いて三塩化ケイ素と酢酸ビニルの混合割合を変えて反応を行ない、その際の生成物の分布および収率を測定し、1:1附加物の最高収率を得るための線量率、線量および混合割合の3要因の最適条件を検討する。

 また、三塩化ケイ素-酢酸ビニル系の放射線テロメリゼーションの反応機構を解析する。

3. ビニルシランモノマーの製造
 以上の方法で得られた2-アセトオキシエチルトリクロロシランをアルコール類と反応させて、2-アセトオキシエチルトリアルコキシシランに導き、これを熱分解することにより脱酢酸し、ラジカル重合しうるビニルトリアルコキシランとする方法について検討する。

24. 感潮汚濁河川の公害調査法への放射線利用に関する試験研究

(東京都立アイソトープ総合研究所)

 (研究の目的)
 清浄河川の流速、流量等の測定のための放射性トレーサおよびアクチバブルトレーサの利用は広く行なわれ、その基礎的技術は確立されている。

 しかし汚濁河川、とくに感潮汚濁河川の公害調査への放射線利用技術については、開発されなければならない技術的問題点が多く残されている。
 このため、本試験研究は、基礎実験ならびに野外実験により、感潮汚濁河川の調査に適した新たなトレーサを開発するとともに、中性子線源による感潮河川における塩分濃度の測定法を開発し、感潮汚濁河川の実態解明への放射線利用技術の確立に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 新たなアクチバブルトレーサの研究
(1)アクチバブルトレーサの損失量の研究
 環流式カラム実験設備により感潮汚濁河川の河泥、浮遊物への希土類トレーサの吸着量を測定し、それぞれのトレーサの実用条件下での損失量を推定し、トレーサとしての有用性について検討する。

(2)河川水の放射化分析の研究
 感潮汚濁河川水中の希土類元素の濃度を放射化分析法により測定し、トレーサとして使用する場合の投入量を検討する。

 放射化分析に際しては、放射化した場合、Na,Br,Mn,Cu等が希土類元素の検出を防害すると考えられるので、その影響を半導体検出器を用いて検討する。

(3)放射性トレーサの水中検出感度の研究
 前記希土類元素と同じ化学形の放射性トレーサの水中検出限界を水中シンテレーション測定器によりタンクを使用して測定し、河川にアクチバブルトレーサの到達時の目やすとして使用する場合について、すでに倹討したトレーサと比較検討する。

(4)現場実験
 (1)、(2)および(3)の研究結果から有効なトレーサを求め、これにより東京都内の感潮汚濁河川で実用試験を行ない、トレーサとしての有用性を検討する。
2. 中性子線源測定器による塩分濃度測定法の研究
(1)基礎実験
 100mCiAm-Be塩分計の塩分濃度の検出限界を水槽を利用して測定する。

 また、この場合、水中での中性子の作用球の問題について検討し、令後、実際に塩分濃度を測定する場合の検量線を求めるための資料を得る。

(2)現場実験
 東京都内の感潮汚濁河川において中性子塩分計により、塩分濃度の測定を行ない、感潮汚濁河川の塩水流入状況を測定し、中性子線源塩分計の有用性を検討する。
25. 疾患に及ぼす塵埃の影響解明のための放射線利用に関する試験研究

((財)結核予防会)

 (研究の目的)
 これまでに塵肺中に沈着した塵埃の放射線利用による元素分析法について研究し、大気汚染の肺に及ぼす実態を観察した。

 しかし、対象とした肺はいづれも健康肺であったので、今年度は原発癌罹患肺および結核肺の元素分析を行ない。

 肺内沈着粒子の面から大気汚染と肺疾患、とくに肺癌との関係および動物実験により大気汚染と発癌との関係を解明する。

 このため、本試験研究は、3Hおよび14Cで二重標識した発癌剤を動物体内に投与し、その分解過程を新たに考案した高感度液体シンテレーションカウンターで測定する方法を開発し、体内臓器の塵埃沈着状態解明のための放射線利用技術の確立に資することを目的とする。

 (研究内容)
1. 肺内沈着粒子の分析
 原発性肺癌罹患肺および結核肺を選び、肺内沈着粒子を分離採集し、Mass spectrometerで元素分析する一方、Mass spectrometerで分析困難な元素の定性定量を放射化分析法により行ない、健康部位の塵埃と比較検討する。

2. 発癌剤DABの二重標識とそれを用いての生体とくに喰細胞との反応の観察14C標識メチールアルコールと3H標識アニリンを原材料とし、二重標識、Dimethylaminoajobanjene(DAB)を合成精製する。

 健康ラットと担癌ラットにこの二重標識DABを投与し、シートシンチレーションカウンタにより、主として肝における分解過程を、また、ミクロオートラジオグラフィーにより局在部位を観察する。

 また、マウスおよびモルモットを用い腹腔内に喰細胞を游出させ、二重標識DABを注入して、細胞内にとりこませた後、細胞を採集し、これを物理的に分画し、その比放射能より細胞構成成分とDABの代謝との関係を観察する。

 つぎに、喰細胞を培養し、これにDABと標識核酸前駆物質を加えた後、細胞の核酸を抽出し、ラジオ液体クロマトグラフにより、DNA、SRNA、mRNA、RRNAを分画し、その比放射能をごく微量の試料でしかも軟べ一夕線放射性物質をも感度よく検出できる新たな液体シンチレーションカウンターにより測定することにより、DABの核酸合成に与える影響を観察する。
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