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住友原子力工業株式会社原子炉施設の
設置変更について(答申)


原子力委員会
昭和43年2月8日

43原委第40号
昭和43年2月8日

 内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

住友原子力工業株式会社の原子炉施設の設置変更について(答申)

 昭和42年11月30日付け42原第5551号(昭和43年2月7日付け43原第377号をもって一部訂正)をもって諮問のあった標記については、下記のとおり答申する。

 住友原子力工業株式会社取締役社長平塚正俊から昭和42年11月27日付けで提出のあった原子炉施設設置変更許可申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に規定する基準に適合しているものと認める。

 なお、同条同項第4号の基準の適合に関する原子炉安全専門審査会の審査結果は別添のとおりである。

住友原子力工業株式会社原子炉施設の変更に係る安全性について

原子炉専門審査会報告書
昭和43年2月7日

 原子力委員会
  委員長 鍋島 直紹殿

原子炉安全専門審査会
会長 向坊  隆

住友原子力工業株式会社原子炉施設の変更に係る安全性について

 当審査会は、昭和42年11月30日付け42原委第286号(昭和43年2月7日付け42原委第35号をもって訂正)をもって審査の結果を求められた標記の件について、結論を得たので報告します。

 1 審査結果
 住友原子力工業株式会社原子炉施設の変更に係る安全性に関し、同社が提出した「原子炉(臨界実験装置)設置変更許可申請書」(昭和42年11月27日付け申請及び昭和43年1月25日付け一部訂正)に基づき審査した結果、本原子炉施設の変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

 2 変更事項
(1)原子炉の型式及び熱出力
 低濃縮ウラン軽水減速非均質単領域又は重水−軽水減速非均質2領域タンク型(従来、低濃縮ウラン軽水減速タンク型)に型式を変更し、熱出力を2領域実験装置において最大200W(従来、最大100W)とする。

(2)原子炉施設の位置構造及び設備
イ 炉心構造
 炉心タンクの中央部に内辺67cm又は75cmのアルミニウム合金製重水炉心タンクが設けられ、内部に重水及びクラスタ燃料を入れ、重水クラスタ領域とし、外側の軽水ドライバ領域と合せて2領域炉心が構成される。

ロ 燃料棒
 クラスタ燃料としては、15mmφ×20mm濃縮度1.5%のuo2ペレットをアルミニウム合金管内に封入した燃料要素19〜37本が外径約10〜15cm高さ約1.5mのクラスタに構成される。

 ドライバ燃料としては、従来の濃縮度1.5%のuo2ペレットをアルミニウム合金管に封入したもののほか、濃縮度3.0%もしくは、3.2%のものが用いられ、最大挿入量はuo2約3,000kgである。

ハ 安全板の新設
 重水炉心タンクの側面に2組の安全板が設けられる。

ニ ダンプ弁の作動系の2重化
 ダンプ弁の緊急開放用空気弁が2重化される。

ホ 安全保護回路
 2領域実験装置においては、次の警報又はスクラムが設けられる。
    重水系統加圧窒素ガス圧力上昇………警報
                     下降……… 〃
    重水炉心タンク液面低下………………スクラム

ヘ 重水系統
 重水クラスタ領域の減速材、反射材として用いられる重水の系統として、重水サージタンク(容量約2m3)、重水循環ポンプ(流量0.1m3/min)、重水浄化設備及び重水加圧窒素ガス系統が設けられる。
 3 審査内容

(1)安全対策
 本原子炉施設は、施設の変更に伴い以下のような安全対策が講ぜられることになっており、十分安全性を有するものであると認める。
イ 安全板の新設
 2領域実験装置の場合、制御棒は挿入位置が中性子束の高い場所とならないので制御能力が減少するが安全板を設けることによって反応度制御能力は単領域実験装置の場合と同じく下記の制限値を十分満足させる。

 反応度制御能力4%△K/K以上(過剰反応度最大2%△K/K)
 反応度制御能力2%△K/K以上(過剰反応度最大1%△K/K)

ロ 微調整棒の反応度添加率の変更
 2領域実験装置の場合1×10-4△K/K/sec(従来3×10-4△K/K/sec)に変更される。

ハ 実験用反応度の変更
 2領域実験装置の場合、実験用反応度は下記のとおりとされ、必らず過剰反応度以内で行なわれる。

 また、ボイド等は、固定ボイド以外を同時に2種類以上使用しないことになっている。
 固定ボイド:最大1.5%△K/K(従来最大2%△K/K)
 動ボイド:使用しない(従来最大2%△K/K)
 静ボイド:最大0.2%△K/K(従来最大0.2%△K/K)
 水位(反射体):使用しない(従来最大0.2%△K/K)
 急激な反応度変化のあるもの:最大0.2%△K/K(従来最大0.2%△K/K)

ニ 安全保護回路の追加
 本施設は重水炉心タンク液面低下でスクラムされることになっており、重水炉心タンクの重水液面低下の状態では運転できないように、インターロックが組まれる。

ホ ダンプ弁の作動系の2重化
 緊急開放用空気弁が2重化されるため、緊急時におけるダンプ弁の作動の信頼性が高められている。

ヘ 燃料棒の判別管理
 濃縮度の異なる燃料が用いられるので、色別等により判別管理が十分に行なわれる。
(2)平常時の被曝評価
 実験計画によれば、実験用燃料の取扱い、実験試料の取替え等の実験に際し、従事者が被曝することが考えられる。

 その全被曝推定値は年間約4remであるが、作業は4人以上交替で行なうため1人当りの年間被曝量は1rem以下となる。

 なお、評価の仮定が安全側にあること及び従事者の被曝管理が十分に行なわれることを勘案して容認されるものと認められる。

 また、年間予定運転出力時間は10kWhrであり、敷地外の一般公衆の受ける被曝線量は、許容被曝線量より十分小さい。

(3)事故評価
 今回の変更に係る2領域実験装置において階段状反応度外乱を与えるものとしては、模擬ボイドの脱落及び急激に反応度変化を起す可能性のある実験が考えられる。

 模擬ボイドには脱落のおそれのない固定式のものとそのおそれのある可動式のものとがあるが、前者は固定ボイド、後者は静ボイドと呼ばれ、後者によるものは最大0.2%△K/Kであり、その他急激に反応度変化を起す可能性のある実験によるものも最大0.2%△K/Kである。

 しかし、静ボイド実験とその他急激に反応度変化を起す可能性のある実験とは、同時には行なわないことになっている。

 従って、2領域実験装置において、0.2%△K/Kの階段状反応度が加えられたとき、すべてのスクラムが作動せず、異常発生後15秒を経て手動によりダンプバルブのみが作動したと仮定して解析した。

 その結果は、放出エネルギーが約12kWsecで問題にならない。

 次に、ランプ状に反応度が加えられる場合としては、制御棒の連続引抜き、炉心タンクの水温低下等が考えられる。

 粗調整棒1組と微調整棒の同時引抜きによる反応度添加率は、2×10-4△K/K/secであり、炉心タンク水温の低下によるものはこれより小さい。

 従って、2領域実験装置において2×10-4△K/K/secの反応度添加率で反応度が加えられたとき、すべてのスクラムが作動せず、ペリオドスクラムの設定点通過(異常発生後13.7秒)から15秒を経て手動によりダンプ弁のみが作動した場合を最大想定事故として解析した。

 この結果、放出エネルギーは約90MWsecであり、燃料及び燃料被覆材の溶融、破損には至らず、臨界実験装置室外での被曝線量は最大0.2rem程度であり、従事者は勿論、敷地外の一般公衆に対しても安全と認められる。

 4. 審査経過

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