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原子力第1船の定係港について



1. むつ市選定の経緯
 日本原子力船開発事業団は当初原子力第1船の定係港の建設について、横浜市金沢区の埋立地を候補地とし、42年5月23日横浜市にその払下げを申請した。

 これに対して横浜市長は主として定係港のもつ経済効果に不満があるとして、7月21日文書をもって拒否の回答を行なってきた。

 事業団では同地区が原子力第1船の建造を円滑に進めるうえから、また将来の利用度の面から最適であるとの観点から、7月24日再度同地区の払下げを横浜市に申し入れたが、9月に至るも横浜市長の同意を得るに至らなかった。

 原子力第1船の46年度後期完成を目途としている事業団では何時までも横浜市長の同意取りつけを待てないため、改めて他の地点について検討した結果、天然の良港をもち、定係港建設に適する土地のあるむつ市を候補地とすることとし、その旨を9月5日原子力関係者(原子力委員、運輸省、科学技術庁、事業団、その他関係者)による合同会議にはかり各関係者の了承を得た。

2. 地元からの要望
 事業団は9月5日、青森県知事ならびにむつ市長に対し、むつ市下北埠頭先端部約1万坪を原子力船の定係港として使用したい旨の申入れを行なった。

 これにより青森県ならびにむつ市では、原子力第1船の安全性、定係港の軍事利用の可能性、定係港設置に伴う地元への経済効果等について政府、事業団等に対し照会する等慎重に検討を重ね、11月14日に至り政府および事業団に対し定係港をむつ市下北埠頭に設置することに同意する旨回答を寄せた。

 下記に示すように青森県知事からの回答には、安全確保等に関する10項目の要望が付されていたが、この要望に対し11月24日科学技術庁長官により青森県知事あて下記のような回答を行なった。

 なお、これに先だって、本年4月より原子力委員会の原子炉安全専門審査会において審議されてきた原子力第1船の安全性について、11月16日原子力委員会委員長より内閣総理大臣あて、法律に定める許可の基準に適合している旨答申がなされ、11月21日原子力第1船の原子炉の設置について内閣総理大臣の許可がおりるに至った。    (原子力局 監理官室)

原子力船定係港の設置について

青開発第58号
昭和42年11月14日

 科学技術庁長官 二階堂 進殿

青森県知事 竹内俊吉

原子力船定係港の設置について

 このことについては政府および日本原子力船開発事業団より去る9月5日協力方ご依頼があり、むつ市とも協議し検討してまいったところ、県は定係港をむつ市下北埠頭に設置することに同意いたします。

 同意に際し、次の諸点を政府並びに事業団に要請します。

1 安全確保に遺憾なきを期するため、陸上および海域の放射能測定施設ならびにその関連施設については地元要請を重視し、かつ事業団において、これら施設の責任を負うこと。

2 災害対策基本法による県、市町村の放射能防災施設については、政府および事業団は、地方公共団体の財政負担を軽減するため、特別の措置を講ずること。

3 原子力第一船の船籍をむつ市におくこと。

4 原子力船の第二船、第三船が建造される場合にも、下北埠頭がその定係港として指定されることを政府および事業団の方針として明らかにすること。

5 定係港としての港湾施設については、事業団から県に提出される許可申請書に基づいて県の意向を明らかにするが、事業団の負担において代替バースを築造する等の地元要請を重視されたい。

6 政府は、地方港湾である大湊港を重要港湾に格上げされたい。

7 定係港に通ずる道路については、県およびむつ市と協議の上整備すること。

8 非居住地帯は事業団用地として買収すること。

 その他の隣接地域を事業団が買収する際には、同地域開発上必要につき、事前に県、市と協議すること。

9 放射性同位元素の地元産業への利用のため、放射線研究機関を設置せられたい。

10 定係港敷地内に設置される原子力の科学知識普及展示館の規模、内容を拡大充実して、原子力を中心とする総合科学館とされたい。

 なお、むつ市民を始めひろく県民は、閣議了解事項に基づく下北開発事業の促進を熱望している実情にかんがみ、政府は下北開発にかかわる諸懸案事項の早期実現をはかるよう強く要請する。

原子力船定係港の設置に関する要請について

42原第5410号
昭和42年11月24日

 青森県知事 竹内 俊吉 殿

科学技術庁長官 二階堂 進

原子力船定係港の設置に関する要請について

 昭和42年11月14日付青開発第58号をもって要請のあった標記の件については、関連事項について運輸大臣とも協議した上、今後の対処方針を下記のとおりとしたので回答します。

 なお、下北開発の促進に関する要望については、関係省庁とも協議して、その促進について努力する所存であります。

1 放射能測定施設の件については、貴県からの照会に応じ、昭和42年10月19日日本原子力船開発事業団(以下「事業団」という。)からまた同月20日当庁から回答した見解のとおりである。

 なお、これに基づく放射能測定施設については、事業団が地元の要請を考慮し、責任をもって設置するように指導したい。

2 災害対策基本法に基づく地域防災計画は、科学技術庁防災業務計画において示されているように防災組織、放射能水準調査、連絡組織、環境条件の把握その他について規定することとなっている。

 これらのうち、重点になると思われる環境における放射能の常時監視体制と関係諸機関との連絡組織を作る場合には、事業団が可能な限り協力するようにさせるとともに地方財政負担の軽減をはかりたい。

3 原子力第1船の船籍港については、事業団はこれをむつ市に置くことにしている。

4 原子力第2船、第3船の建造に関しては、原子力委員会が策定した原子力開発利用長期計画において明らかにしているように、これらが将来建造される場合には原子力第1船の定係港の有効活用が図られるように措置する方針である。

5 定係港を建設するにあたって、事業団が直接代替バースを築造することは困難であるが、しゅんせつ等により定係港建設に伴う不便を回避するよう指導したい。

 なお、当地域開発に必要な大湊港湾施設の整備については、運輸省では港湾管理者の意向を尊重し、代替パース等の問題を含めできる限り協力する方針である。

6 大湊港については、現段階においては重要港湾の選定基準に該当しないが、運輸省では今後下北開発計画の進展、港湾施設整備の進捗等に即して重要港湾に昇格するよう措置する方針である。

7 定係港に通ずる道路の整備に関しては、事業団が直接受益者となる道路については貴県およびむつ市と十分協議のうえ措置するようにさせたい。

8 非居住区域については、人が常時居住しないように適当な方法を講ずべきであるのが原子力委員会の方針であり、必ずしも買収による必要がないが、本件については今後具体的に検討していきたい。

 また、その他の隣接地域の買収を行なう必要がある場合には、貴県およびむつ市と事前に協議するようにしたい。

9 放射線研究機関の件については、放射性同位元素の利用促進の観点から、当面貴県の既設研究機関の活用充実等によりその促進が図れるようできる限り努力したい。

10 原子力科学知織普及展示館については、事業団は定係港敷地内に展示室を設置することを予定しているが、これを原子力を中心とした総合科学館とすることについては、(社)日本原子力産業会議等関係諸機関とも十分協議し、貴意に沿う方向で努力したい。
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