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放射能対策本部の動き



〔1〕第6回中共核実験後の環境放射能について
 6月18日の北京放送によれば「中共政府は17日西部地区上空において水爆実験に成功した。」と報道した。これに対処し、放射能対策本部は18日直ちに幹事会を開催し、厳重に環境放射能水準を監視することとした。

 他方、放射能対策本部は、今回の核爆発実験の規模が数メガトンと報ぜられている事、および第5回中共核実験の影響の大きかった事等を勘案し、6月20日、第11回放射能対策本部長顧門会議を開催調査体制の強化について意見を聴取し、続いて、同日午後幹事会を開催し、今回の核実験に伴なう、環境放射能水準、および本年4月末に作業グループが作成した中間報告について討議した。

 ついで、6月21日には第13回放射能対策本部会議を開催し、放射能調査および対策の強化について作業グループの中間報告を中心に協議し、放射能調査体制の強化方策、ならびに放射能対策の基準について、基本的に了承し、今後対策本部において各省庁間で協議しつつ、具体化を進めることに意見の一致をみた。

 ひきつづき、6月26日放射能対策本部は幹事会を開催し、これまであつめた放射能調査結果について検討し、影響のないことを確認し、環境放射能調査体制を平常に戻すことを決定した。

 今回の核爆発実験は、規模も2~7メガトンと言われながら、わが国の環境放射能水準への影響は殆んど現われず、6月18日九州(西部)上空において捕集された高空浮遊塵の580Pci/m3を除き、調査結果の数値は平常値と変らなかったが、19日~20日の雨水および落下塵中に始めて今回の核実験による核分裂生成分と目されるものが見出された。

 特に、今回の核実験のわが国への影響の少なかった理由として、規模が大きいため、殆んどが成層圏に打ち上げられた事、ジェット気流がわが国の上空を逸れたものと推定されている。調査結果(6月末現在)を示すと次のとおりである。

放射能対策日誌

6月17日 午前9時20分(日本時間)中共西部地区上空において水爆と目される核爆発実験を実施(内閣調査室)
6月18日 午後1時より第57回放射能対策本部幹事会を開催、放射能対策について協議(科学技術庁第2会議室)
6月20日 正午より第11回放射能対策本部長顧門会議を開催、放射能対策および調査体制の強化等について意見を聴取(東京プリンスホテル)
6月20日 午後4時より第58回放射能対策本部幹事会を開催、放射能対策および調査グループの中間報告について討議(科学技術庁第2会議室)
6月21日 午前10時より第13回放射能対策本部会を開催、第6回中共核実験およびワーキング・グループの報告について協議。
6月26日 午後2時30分より、第59回放射能対策本部幹事会を開催、明日から放射能調査体制を平常に戻すことを決定した。なお、気象庁及び防衛庁から、第5回中共核実験に関する調査結果の訂正があった。

(Ⅰ)雨水による全国放射能隆下量(気象庁)

(Ⅱ)地表浮遊塵の放射能(気象庁)

(Ⅲ)高空浮遊塵の放射能(防衛庁平均値)

(Ⅳ)雨水落下塵の放射能(放医研)

(Ⅴ)雨水落下塵等の機器分析結果
1 大阪府立放射線中央研究所
 同研究所は、屋上に10m2のビニールシートを張り、放射性降下状況を監視していたが、20日午後3時に採取した塵の中に次の通り今回の核実験に由来する短半減期放射性核種を検出した。
  Te-132,Mo-99,Np-239,U-237
 なお、本日午前10時に採取した塵にも、同様な核種の存在が確認されている。

2 放射線医学総合研究所
 同研究所は、19日朝採取した水盤法による試料を機器分析し、次の通り含有核種を検出した。
  Np-239,Ce-141,143,Mo-99,Tc99m

3 立教大学原子力研究所
 同研究所は、20日夕刻の雨水を採取し、ゲルマニューム検出器を用いて、次の通り今回の核実験に由来する短半減期放射性核種を確認した。
  Np-239,U-237,Mo-99,Ce-143
 なお、To-132についても含有されるものと推定される。

〔2〕第5回中共核実験に関するデータの一部訂正について
 第5回中共核実験後の環境放射能については、本月報1月号(Vol.12,No.1 p7)に掲載したが、6月26日第59回放射能対策本部幹事会の席上、気象庁及び防衛庁より、その後の精密測定を実施した結果に基き、既報のデータの一部を下記のとおり訂正するとの報告があった。

1 雨水による全β放射能降下量(1月号8頁)
 1966年12月30日 輪島
降下量(me/km2/day) 5,600.0 480.0
      濃 度(pc/ml) 910.0 79.0

2 高空浮遊塵の放射能(1月号10頁)
 1966年12月30日 中部
   濃 度(pe/m3 9,963.0 7,850.0

 この結果、わが国における全β降下量の最高観測
値は5,600mc/km2/day(輪島)となる。
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