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昭和42年度原子力平和利用研究委託費
および研究費補助金の交付決定


昭和42年6月30日

 昭和42年度原子力平和利用研究委託費および同研究費補助金については、さる3月13日試験研究題目(または課題)および申請書の提出期間について官報に告示し、4月3日申請を締切った。

 その後書類審査、申請書内容聴取、関係機関との意見交換、日本学術会議の推せんによる学識経験者の意見聴取、現地調査等を行い、6月26日の科学技術庁庁議において次のとおり決定し、6月30日付で交付決定を行なった。

昭和42年度
原子力平和利用研究委託費及び補助金総括表

1 委託費

2 補助金

昭和42年度原子力平和利用研究委託費交付一覧


昭和42年度原子力平和利用研究費補助金


昭和42年度 原子力平和利用研究委託費交付概要


1 「原子炉一次冷却系配管の構造設計基準に関する試験研究」
(社)日本溶接協会
(研究目的)
 原子炉圧力容器ならびに一次冷却系配管の構造強度設計に当っては、低サイクル疲労を重要な因子として考える必要がある。

 しかし、世界的にみてまだ十分な研究蓄積がなく、解明されるべき問題点が多い。

 本試験研究は、圧力容器を含む一次冷却系配管の弱点となる部分およびその近傍について考えうる破壊様式のうち、低サイクル疲労について検討を加え、低サイクル疲労破壊防止の面からみた構造設計基準の確立に必要な資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 低サイクル疲労における累積被害法則に関する試験
(1)歪制御両振によるステップ法試験
(2)歪制御両振による2段2重重複法試験
(3)歪制御両振による2段多重重複法試験
(4)荷重制御片振によるステップ法試験
 以上の試験を実施することにより、繰返し変動振幅、さらには実動振幅による試験結果との相関性を確立するために必要な基礎的な課題について検討する。

2 低サイクル疲労における真歪制御、荷重制御および変位制御特性相互間の相関性に関する試験
(1)荷重制御両振による定振幅試験
(2)荷重制御片振による定振幅試験
(3)荷重制御両振による定振幅試験における平均応力の影響の検討
(4)両振曲げによる定振幅試験
(5)片振曲げによる定振幅試験における平均応力の影響の検討
(6)変位制御両振による定振幅試験
 以上の試験を実施することにより、真歪制御、荷重制御および変位制御特性相互間の相関性を明らかにする。

3 歪制御低サイクル疲労強度に及ぼす切欠効果に関する試験
 応力集中部および切欠を有する溶接構造物の低サイクル疲労強度を評価するため、A302B鋼および304鋼を供試材とした円周切欠試験片により、末調査のパラメータについて径方向歪振幅制御による試験を行ない、前年度の研究結果と併せた総合的な解析を行なう。

4 熱歪および機械歪によるラチェット効果に関する試験
 いくつかの基本的なラチェット・モデルを具体化した方法によってラチェット効果を明らかにするため、次の試験を行なう。
(1)高温における平均応力付加軸力制御試験
(2)熱歪サイクルと機械的定常荷重との重畳試験
(3)振幅歪と定常荷重との重畳試験
(4)定常トルクと軸方向荷重振幅との重畳試験

5 低サイクル疲労被害の金属組織学的試験
 累積被害法則あるいはその他上記研究項目の解析に必要な基礎資料を求めるため、疲労過程中の金属組織の変化を追求する。

6 低サイクル疲労亀裂の伝播開始条件ならびに伝播継続条件に関する歪静的試験
 すでに、降伏応力比が0.81のA302B鋼については試験を行なったが、疲労亀裂の発生伝播は降伏応力比により大きく支配されるので、本年度はその比が0.5程度のもの(A302B鋼)について試験を行なう。

7 二軸荷重による低サイクル疲労挙動に関する試験
 疲労強度の基礎資料はほとんど一軸応力下のものであるが実際は二軸応力下にある。本試験により、一軸応力下と二軸応力下の比較を行ない。一軸データの適用性について検討する。

8 低サイクル疲労被害が脆性破壊発生特性に及ぼす影響に関する試験
 疲労亀裂からの脆性破壊発生特性を素材のそれと比較検討し、脆性破壊発生特性におよぼす疲労の影響を求める。

9 総合評価
 上記の各試験結果をとりまとめ、総合的な解析評価を行なう。
2 「原子炉圧力容器用鋼板およびその溶接部の欠陥と非破壊検査像の対応性、ならびにそれらの欠陥が機械的強度に及ぼす影響に関する試験研究」
(社) 日本溶接協会
(研究目的)
 原子炉の安全性を確保する見地から、構造用鋼材およびその溶接部の各種非破壊検査像と、欠陥の種類、位置、大きさ等の対応性を求め、さらにその欠陥を含む突合せ溶接部の脆性破壊に対する強度との関係を求めて、原子炉構造物の非破壊検査規準を確立するために必要な資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 欠陥の実態と非破壊検査像の相関性に関する試験
(1)鋼板
 原子炉構造用鋼板の欠陥を超音波探傷法により探傷し、一方、その試験片を細断して欠陥の実態を調べ、その欠陥量と検査像との関係を求める。
(2)溶接部
 突合せ溶接部に含まれた欠陥を、放射線.超音波、磁気、浸透検査等により探傷し、その検査像と、実際にその試験片を細分して得た欠陥の実態との関係を求める。

2 溶接部の欠陥がその引張強度におよぼす影響に関する試験
 板厚20mm、試験部幅250mmの突合せ溶接部について欠陥のどのような因子が脆性破壊強度に影響するかを低温引張試験により検討する。
3 「原子炉容器および配管等の耐震設計法に関する試験研究」
(社)日本機械学会
(研究目的)
 地震時における動力用原子炉施設の破損を防止するため、圧力容器、配管系からなる一次冷却系および格納容器などの耐震設計法を確立することが必要である。本試験研究では従来行なってきた格納容器および圧力容器の振動解析法を改善し、さらに多自由度機械系の応答計算法を整備して、容器と配管系を総合した機械系の振動解析の手法を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 穀体振動解析プログラムの拡張と適用範囲の検討
 前年度開発した回転対称穀体の振動解析計算プログラムを改良して近似度をあげ、その適用範囲について検討する。

2 回転対称殻体の相似則の検討
 既有の相似則の理論に加えて、膜変形振動と曲げ変形振動の配分を考慮して、回転対称殻体の相似則を求める。

3 模型による振動解析
 円筒から円板にいたる円錐台6種、下端を固定した円筒1種、以上の肉厚をそれぞれ異にした模型および準厚肉の半球1個、合計15個について、振動実験を行ない、共振振動数および振動型を求める。

4 多入力、多自由度系の応答倍率加重法の理論的検討
 多自由度系が2点より異った性質の波により加振されている場合、各入力各自由度ごとに、既に求めてある最大応答倍率表から最大応答倍率を求めて、それをどのように加算するのが最適かを不規則振動応答理論にもとづいて検討する。

5 多入力多自由度系の応答倍率加重法のアナログ計算機による検討
 アナログ計算機上に一次冷却系で代表される多自由度系を構成し、構築物系を経た各端末の波形とした地震波を2点より加えた場合の応答波形を得て、最大応力値を求める。その結果を、最大応答倍率表による計算結果に各種加重法を適用して得た値と統計的に比較し、加重法の信頼度を検討する。
4 「核原料および核燃料物質取扱施設における個人用ダストサンプラ一に関する試験研究」
(学)早稲田大学
(研究目的)
 核原料物質の採取、核燃料物質の処理に伴い、作業者が摂取する可能性のあるα放射体の摂取量を正確に推定する必要がある。このため、流量が大きく、しかも流量を作業条件に従って変更しうる個人用ダストサンプラーを開発試作し、これによって、現在の作業環境の状況を把握し、今後の作業基準等の改善のための資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 固定流量型個人用ダストサンプラーの試作および特性試験抵抗が水柱約60mmで、約10l/分の採取流量を有する固定流量式個人用ダストサンプラーを開発試作し、試験粉体、ラドン娘元素等により装置の諸特性を測定し、利用範囲および試料の測定法の検討を行なう。

2 可変流量型個人用ダストサンプラーの試作および特性試験抵抗が水柱約60mmまでで、外部指令により採取流量が2.5l/分から10l/分まで連続的に変化する個人用ダストサンプラーを開発試作し、試作した装置について、1項と同様な特性試験を行ない、利用範囲の検討を行なう。

3 個人用ダストサンプラーの実地試験
 上記1項および3項によって試作した個人用ダストサンプラーを実作業の環境下で、作業者に装備させ、使用時の装置の特性、作業者の個人差の有無および作業に与える影響について検討を行なう。
5 「使用済燃料輸送容器の熱除去に関する試験研究」
(社)日本機械学会
(研究目的)
 使用済燃料を安全に輸送するという見地から使用済燃料輸送容器(以下キャスクという)の事故および安全上必要な評価試験を行なう必要があるが、そのうち、崩壊熱除去に関する平常時および事故時の試験を行ない、キャスクの安全設計基準の作成および安全評価に必要な資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 試験用キャスクおよび模擬燃料アセンブリの製作
 軽水型動力炉用の使用済燃料のキャスクの模型として、内径約500mmφ、高さ約1,200mm、内容積約200l、重量約8tの試験用キャスクを製作する。

 模擬燃料アセンブリは、軽水型動力炉用燃料アセンブリを模擬した構造とし、発熱量は動力用軽水炉の使用済燃料の崩壊熱と同程度のオーダとするため、最大発熱量が1組当り1.5kwになるようなヒータを内蔵するものとする。

2 定常時の各部温度分布測定
 試験用キャスクに4組の模擬燃料アセンブリを挿入し、定常時のキャスク各部、燃料体および冷却水の温度分布を測定する。模擬燃料アセンブリの発熱量は、使用済燃料の燃焼度、冷却期間の違いを考慮して、0.2〜1.5kw/組の間で模擬させる。

3 冷却機喪失時の温度変化測定
 冷却機が半分になった場合および全くない場合について、燃料の表面温度を重点に温度上昇を測定する。

4 解析
 実験結果を解析し、熱除去に関する設計評価に必要な実験式を得る。
6 「原子炉パルス運転による反応度事故現象に関する試験研究」
(株)日立製作所
(研究目的)
 反応度事故に関する現象を実験的、理論的に解析するため、前年度は即発臨界点以下の反応度を投入したパルス運転による研究を日立教育棟用原子炉(HTR)で行なった。本年度はさらにそれらの経験をもとに即発臨界以上の現象に関する研究を行ない、軽水動力炉炉心の安全性評価の資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 1.2%△K/Kまでのパルス運転
 HTRによって炉心の超過反応度が0.8%△K/Kから1.2%△K/Kにいたるまでの種々の反応度を内蔵する炉心を形成し、約0.1秒間パルス用制御棒を引抜いてパルス運転を行なう。

2 炉心状態の測定
 上記のパルス運転時における炉出力推移、炉出力のピーク値、炉周期および出力積分値を測定する。

 また、燃料ペレット中心温度、被覆表面温度、冷却水温度、燃料棒および構成材の歪応力の変化を測定する。さらに、パルス運転により蓄積したFP量をパルス運転を行なわない場合のものと比較検討する。

3 炉スクラム系の機能試験
 急激な出力変動に対するスクラム系の信頼性を確認する。

4 理論解析
 実験結果を理論計算結果と比較検討し、反応度フィードバックによる炉の自己停止性、燃料体の損傷の状況を検討する。

 また、炉心が大型になると、パルス現象に対する空間依存性が重要な問題となるのでこの影響について理論解析を行なう。
7 「軽水型動力炉における有機ヨウ素の生成機構に関する試験研究」
(財)原子力安全研究協会
(研究目的)
 動力炉の安全解析を行なうには核分裂生成物の放出率を精度よく推定することが必要であるが、核分裂生成物の挙動については末解決の問題が多い。

 本試験研究では有機ヨウ素の問題に重点をおいた研究を行ない、安全解析上必要な資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 ヨウ化メチルの気液反応および分配に関する試験
(1)微量の有機物を含む高温高圧水に放射性ヨウ素ガスを通し、水中において生成されるヨウ化メチル量を測定する。

(2)ヨウ化メチル溶液を高圧下で沸騰させ、液相から気相に移行するヨウ化メチルおよびこれらの熱分解生成物であるヨウ素の定量を行う。

2 UO2中でのCの挙動に関する試験
 軽水動力炉用UO2ペレットに運常含まれている量の炭素(4,000ppm以下)を含有する焼結べレットを、モリブデンキャプセル中にH2・Heのガスとともに封入し、燃料の使用時における中心温度に近似した温度(1,600°C以上)で加熱したのち、炭素の化合物が放出されたかどうかを調べる。

3 有機物と核分裂生成ヨウ素の反応によるヨウ化メチルの生成条件に関する試験
 ウラン化合物と有機化合物との混合物を原子炉で照射し、生成される核分裂生成ヨウ素を分析する。

4 格納容器内における有機ヨウ素生成に関する試験
 模擬格納容器を使用し、原子炉の重大事故時に予想される温度、圧力下におけるヨウ素と格納容器内構成物質あるいは雰囲気との反応による有機ヨウ素の生成を調べる。

5 ヨウ素と煙霧体との相互作用に関する試験
 有機物質による種々の煙霧体を作り、ヨウ素ガスに対する反応、吸着の実験を行なう。
8 「重水減速型発電用原子炉の解析評価に関する研究」
川崎重工業(株)
(研究目的)
 天燃ウランまたはプルトニウム添加天燃ウランを使用する重水減速型発電炉が実用化するであろう時期を想定し、その頃までに達成可能な技術的改良を考慮したこの型式の発電炉の技術的問題点を明らかにし、わが国における新型転換炉の開発の推進に必要な資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 沸騰軽水冷却型発電炉
(1)炉心部構造概略設計
 原子炉炉心部について、天燃ウラン、およびプルトニウム添加天燃ウランを使用する炉心の基本的な設計を行ない、概念をまとめる。

(2)核特性解析
 天燃ウラン使用時のボイド係数および燃焼度特性等を解明し、さらにプルトニウム添加天燃ウラン自立サイクルに至る核特性について検討する。

(3)熱特性解析
 核的に満足する天燃ウラン使用炉心について、熱流力的検討を行なう。

2 炭酸ガス冷却型発電炉
 昨年度の調査研究の結果摘出されたさらに詳細検討を必要とする項目について詳細解析を行なうとともに、新たに動特性、安全性に関する検討を行ない、重水減速炭酸ガス冷却型発電炉に関する技術的評価の研究を完結せしめる。
(1)核特性解析
 燃焼度計算および燃料交換特性の検討を行なう。

(2)熱および構造特性解析
 チャンネル内熱流力計算、圧力サーベイ計算等を行なうとともに、燃料アセンブリ構造、カランドリヤタンク構造、熱応力、冷却材流量配分機構等について検討する。

(3)安全特性解析
 制御動特性、反応度事故特性、遮蔽特性等について解析する。
9 「液体金属ナトリウム中間熱交換器に関する試験研究」
三菱原子力工業(株)
(研究目的)
 国の高速炉開発プロジェクトの一環として建設が予定されている実験炉には、金属ナトリウム中間熱交換器を必要とするが、これに関する試験研究は従来何も行なわれていないので、早急に研究に着手し、金属ナトリウム中間熱交換器の設計に関する基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 熱交換器の設計及び製作
 V型に屈曲したチューブアンドシェル型熱交換器を設計、製作する。

 主な仕様としては、1次側(チューブ)入口温度約550℃、出口温度約400℃、2次側(シェル)入口温度約370℃、出口温度約520℃、交換熱量約600kw、シェル外径216mm、チューブ直径10mm、チューブ有効長約3m、チューブ本数56本とする。

2 試験ループの製作
 配管は2BS chlO SUS32を使用し、主ヒータの電気入力は150kw、流量は約250l/mimで電磁ポンプで駆動する。

 強制空冷式の冷却器を取り付け、その除熱量は約150kwとする。ループ中のナトリウムの純度低下を防止するため、補助系としてコールドトラップによるナトリウム浄化系を主ループに付属させる。

3 性能試験
 熱交換器の性能試験は、それを試験ループにエコノマイザ方式により組込んで行なう。

 前記仕様値の範囲内で流量および温度をパラメータとして数点変化させ、特性を調べ、設計に使用した伝熱管の外面、内面の熱伝達率およびこれらを含む熱貫流率の値と、実験結果より得たこれらの値を比較検討する。

 また熱交換器内に於けるナトリウムの圧力損失に関する測定を行ない、設計値と実験結果との比較検討により同形の熱交換器設計時に使用する損失係数についての妥当な値を求める。
10 「原子力発電計画における炉型と燃料サイクルに関する研究」
住友原子力工業(株)
(研究目的)
 燃料サイクルからみたわが国における動力炉の型式の組合せおよびその特性などの諸要因を検討し、これらの炉型式の組合せによる動力炉の運転に必要なウラン需要量、成生されるプルトニウム量等を求め、わが国における原子力発電計画の立案に必要な資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 計算式の作成
 炉型式と使用燃料の組合せとして、
(1)FBRにプルトニウム・ウラン、ATRにウラン
(2)FBRにプルトニウム、ATRにウラン・プルトニウムの2発電系を考え、発電出力、ウラン関係所要量、プルトニウム関係諸量、および燃料費を求める計算式を作成する。

2 計算式のコード化および計算
 1項で作成した計算式をコード化し、計算する。この場合、インプットとして考慮する要素は次のとおりとする。
(1)発電計画
(2)構成する炉の特性
(3)炉の寿命
(4)発電負荷率
(5)燃料サイクル期間および歩留り
(6)高速炉導入時期
(7)燃料体制造の各工程の費用

3 評価
 計算の結果から、燃料サイクルの面よりみた動力炉各炉型の組合せの評価を行なう。
11 「軽水舶用炉用内装貫流式蒸気発生器に関する試験研究」
(社)日本造船研究協会
(研究目的)
 現段階で最も有望とみられている改良加圧水型船用炉の解析評価の一環として、貫流型蒸気発生器の沸騰伝熱特性、水力学的特性を模型実験により解明し、この型の舶用炉の評価に資することを目的とする。

(研究内容)
1 実験装置の製作
 装置は、軽水舶用炉に内装する貫流蒸気発生器を模擬した試験装置本体、一次および二次循環系、制御計装装置および付属装置から成る。装置の主な仕様は次のとおりである。
一次系 二次系
圧力(試験部入口)
約60kg/cm2G 15〜21kg/cm2G
温度( 〃 )
約260℃ lOO〜217℃
流量
30〜100t/h 40〜330kg/h
蒸気重量率(試験部入口)
0〜100%

2 実験
 実験装置の試験管部における2次側入口圧力を、21kg/cm2Gおよび15kg/cm2Gとし、それぞれ入口気液比を蒸気重量率0〜80%の間で変化させ、2次側流量をパラメータとした組合せ40ケースについて、管壁温度、バルク温度、圧力等を必要な個所で計測する。

3 解析
 管内外の局部的熱伝達率、熱通過率および圧力損失を求め、気液化および流速の変化に対する管内例の熱伝達特性を解析する。
12 「放射性廃棄物の海洋放出に関する生物学的化学的試験研究」
(財)原子力安全研究協会
(研究目的)
 原子力施設から海水中に放出される廃棄物中の放射性物質としては、ルテニウム-106、ジルコニウム-95、ニオブ-95、セリウム-144、ストロンチウム-90、セシウム-137、ヨウ素-129等が予想される。

 これらの核種が海産食品を通じて摂取された場合の安全性を検討するためには、海水から水産生物への濃縮についての正確な知識が必要であるが、その実験例は少なく、その値の信頼性も薄い、したがって、本研究により海産魚介類への放射性核種の濃縮率を実験的に究明することを目的とする。

 さらに、海洋に放出された核種と海中の浮遊物との化学的相互作用が希釈、核散の大きな要因になることがあるため、問題となる核種の海水中における化学的挙動を解明し、さらに迅速かつ簡易な分析法を確立するための基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 チダイおよびチアユの生魚を予備飼育し、本実験の水槽飼育に適応した状態にする。

2 チダイ、チアユおよびハマグリを対象として、Srの濃縮率を求める。

3 チダイおよびハマグリを対象として、Ruの濃縮率を求める。

4 海底に沈積した希土類の迅速、かつ、効果的な捕集法および分離法について検討する。

5 海水、底質および海産生物中のPuの迅速、かつ、簡易な分析法を検討する。

6 海水中のZr-Nbの定量法および化学的挙動を検討する。

7 海水中のRuの化学的挙動を検討する。

8 海水中のγ放射体の分析法を検討する。

9 上記の方法により得られる結果を総合的に検討し食鎖連環等による最終的な人体の被曝線量を検討する。
13 「放射性スラッジの固形化に関する試験研究」
(株)荏原製作所
(研究目的)
 放射性液体廃棄物の処理の結果生ずる放射性スラッジを、アスファルトに混合して固定する方法はスラッジ中の水分を減少させることができ、混合された物からの放射能漏出量も少ない。

 本研究は、前年度のバッチ式の加熱混合槽による実験結果に基づき、さらに伝熱の改善、混合物の攪拌状況の改善、アスファルト混合装置の安全性の向上、連続処理等について検討を行ない、放射性スラッジのアスファルト固化の実用化に関する基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 連続処理が可能な装置の開発

2 放射性物質の水中への滲出試験

3 中放射性廃液とアスファルトの直接混合試験

4 蒸発処理の濃縮液使用済フィルタースラッジおよびイオン交換樹脂と、アスファルトとの混合固定化試験

について行なう。
14 「沿岸における放射性物質の挙動に関する試験研究」
(学)近畿大学
(研究目的)
 原子力施設から低レベル放射性廃液を沿岸へ放出処分する際の環境に対する放射線の影響の適正な評価は、廃棄物処理に伴う障害防止上極めて重要である。このような見地から自然水圏中における放射性物質の挙動を調査研究し、沿岸汽水領域における放射性物質の挙動および分布に関する基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
 従来の沿岸水域における放射能調査は、ある場所である時点に採取した海水試料について行なわれている。

 しかし実際の海洋放射能の挙動と分布は、潮汐その他の海象条件によって変動することが考えられるので、この挙動および分布について検討する必要がある。

 この見地から、前年度は大阪湾神戸市深江海岸を中心に放射性降下物と混同するおそれのないトリウムがこの地方の河川上流から微量流入してくる現象を利用して河口附近のトリウムの動向分布を調べた。

 その結果、河川水が海水と混合する河口附近の汽水領域では、河川上流あるいは海洋中に比べて放射性物質が汽水の物理的あるいは化学的原因により、相当変動すると考えられるので、本年度は実験室内でこれらの要因例えば塩素量、pHなどの諸条件を変えて、水中の放射性物質、即ちF.P(gross)144Ce+144Pr、および91Yの沈積状況をトリウムを媒体として調査し、それらの汽水領域での挙動を推定する。

15 「重汚染区域内作業用加圧型防護服に関する試験研究」
(財)原子力安全研究協会
(研究目的)
 重汚染区域内の作業用として、現時点において最も使用され、開発が急がれている加圧型防護服について、人間工学的見地からの安全性の検討を行ない、その安全使用限界、至適使用条件を考察し、製造のための設計資料および国家規格の作成に必要な資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 加圧型防護服の人間工学的検討
 ワンピース型およびツーピース型の加圧型防護服を装着して行なう実地の作業について観察検討し、その分析を行ない、その結果を基にして上記防護服を試作し、荷重試験、至適送風量の決定および着用試験を行なう。

2 試作品の確認試験
 上記1の検討の結果修正された仕様に基づき、防護服を試作し、放射性浸漬試験、ダスト浸入試験および着用試験を行ない、その性能を確認する。
16 「透過型ベータ線厚み計の安全性に関する試験研究」
(社)日本電気計測器工業会
(研究目的)
 ラジオアイソトープ応用計測器のうち、普及度の高い透過型ベータ線厚み計について、放射線障害防止の観点から、その安全性の解明に関する試験研究を行ない、線源および線源容器の安全性に関する技術基準を作成するための資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 線源および線源容器の安全性に関する技術基準案の作成
 線源および線源容器がそなえなければならない耐振性、耐衝撃性および耐熱性についての技術基準の原案を作成する。

2 技術基準案にしたがった線源容器モデルの試作
 上記1項において作成された技術基準案にしたがい、線源容器のモデルを試作する。

3 線源を装備した試作線源容器に対する安全性確認試験
 上記2項により試作された線源容器に、5種類の線源を装備し、機械的振動試験、機械的衝撃試験および耐熱試験を行ない、安全性を確認する。

4 安全性に関する技術基準の確認
 上記3項の試験結果を基にして、技術基準の原案に検討を加え、その確認を行なう。
17 「馬鈴薯、玉ねぎおよび米の化学的、生化学的および微生物学的分野における照射効果に関する試験研究」
(社)日本放射性同位元素協会
(研究目的)
 馬鈴薯、玉ねぎの発芽防止および米の殺虫、殺菌を目的とする放射線照射法の実用化には、その照射効果を広汎に検討する必要がある。

 本試験研究は、これら食品に対する照射効果を化学的、生化学的および微生物学的立場から究明し、わが国におけるこれら食品の放射線照射の実用化を推進するための基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
 馬鈴薯、玉ねぎおよび米について、ビタミンC、糖、アミノ酸、微生物および呼吸量の消長、ならびに酵素作用および、香気成分の変化を調べることにより、これら食品に起る照射による化学的、生化学的および微生物学的諸問題を解明する。

昭和42年度
原子力平和利用研究費補助金交付概要

1 制御板等価反応度のパルス法による測定および解析に関する試験研究
日本原子力事業(株)
(研究目的)
 1/V吸収及び共鳴吸収をもつ硼素およびAg-In-Cd合金制板の軽水格子中の等価反応度をパルス中性子法によって測定し、その結果を現在設計計算に使用されている計算法と比較検討してその信頼度適用限界を解明し、軽水炉の設計技術の向上に資することを目的とする。

(研究内容)
1 制御板の等価反応度の測定実験
 軽水型臨界実験装置(NCA)炉心に模擬制御板を挿入して未臨界系を作る。

 模擬制御板としてはB4Cの微粒子をポリエチレンに懸濁させて固化した1/u吸収特性を持つ模擬制御板及び実際の動力炉で用いられているAg-In-Cd合金と同組成の熱外で共鳴吸収特性を持つ模擬制御板を用いる。

 この未臨界系にパルス中性子を入射し、その減衰定数から制御板の等価反応度を求める。

2 制御板等価反応度計算法の研究
 実験結果を解析し、境界条件の取扱い方、中性子スペクトル硬化の影響の取扱い方の妥当性及び適法限界を検討する。

 また1/V吸収特性および共鳴吸収特性の解折上の取扱いについて計算方式を検討する。
2 改良型ガス冷却炉の安全性に関する試験研究
富士電機製造(株)
(研究目的)
 改良型ガス冷却炉は高温化による熱効率の向上が見こまれ、近い将来、おおむね軽水炉と同程度の経済性が得られるものと予想されているので、わが国においても多面的に検討しておく必要がある。特に安全性についてはさらに詳細な検討の必要がある。

 このため、本試験研究では安全上の問題点である炉心の耐震性の検討および原子炉モデルによる模擬事故実験を主とした安全性の検討を行ない、設計に必要な基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 炉心の耐震設計に関する基礎的試験研究
 黒鉛ブロックの集合体から成る炉心を黒鉛ブロック相互間の隙間も考慮に入れて非線型性をもたせた多質点系モデルで近似して炉心内地震荷重の解析を行なうとともに、実物大黒鉛ブロックを用いて実際の地震荷重状態下での強度試験を行なう。

2 模擬事故実験による炉心の安全性に関する基礎的試験研究
 形状及び流体回路網構成を実用規模の改良型ガス冷却炉に類似させた模型を製作し、常温加圧ガスを充填した状態で、冷却ガス圧喪失、それに伴う空気の炉内侵入、送風機部分運転による冷却ガス流量低下などの模擬事故を発生させて実験を行なう。

 また事故解析のための理論モデルを作成し、模擬事故と比較検討する。さらに、こうして得られた解析法を用いて想定された実用規模の改良型ガス冷却炉について事故解析を行なう。
3 臨界未満実験装置によるバーナプルポイズンの反応度効果に関する試験研究
三菱原子力工業(株)
(研究目的)
 バーナブルポイズンを使用することにより、原子炉炉心内出力分布の平坦化を図り、燃料の燃焼度を向上し制御棒のワンロッド・スタック、温度係数等の条件を緩和して安全性の向上に資することが期待される。

 このための本試験研究ではセパレート型のバーナブルポイズン炉心の設計計算方法について研究を行ない、バーナブルポイズンの実用化に資することを目的とする。

(研究内容)
1 バーナブルポイズン棒の等価反応度の測定及び解析
 臨界未満実験装置を用い、パルス中性子源法により、炉心構成を変えてバーナブルポイズンの反応度効果を測定し、計算値と比較検討することにより、バーナブルポイズン炉心に関する設計計算方法の確認を行なう。

 燃料には、ステンレス鋼被覆、2.7%又は3.2%濃縮UO2棒を用い、炉心の水対ウラン体積比は、1.405又は1.905とする。バーナブルポイズン棒は燃焼の進んだ各段階での状態を模擬するため6種類のボロン(B4C)の濃度のちがったものを用い、B4C粒子の自子の自己遮蔽効果を知るため、粒子の大きさを4通りとする。

 バーナブルポイズン棒の配列は(1)炉心中心に1本挿入したもの(2)炉心の中央部に1列に配列したもの(3)炉心に一様に分散したもの(4)実際の炉に類似したものの4通りとする。

2 理論解析
 ポイズンの自己遮蔽因子を求めるのに、熱中性子組を多組理論で取扱い、ポイズンとその他の領域のスペクトル差異を数値的に検討し、現在用いられている熱中性子1組理論との比較検討を行なう。

 また、ポイズン粒子が多少lumpを形成する可能性も考えられるのでlumpを形成した場合を衝突確率法の拡張適用により数値的に検討する。
4 原子炉用圧力容器の特殊調質加工技術に関する試験研究
三菱重工業(株)
(研究目的)
 原子炉用圧力容器の従来の調質処理方法では母材溶金面あるいは厚板の内外面における調質効果の不均一に起因する衝撃値の不均一をまねく欠点があった。

 このため、本試験研究ではこれらの欠点を除くと同時に従来に比し簡易経済的な設備で調質できる新規特殊な回転式連続繰返し調質方法について研究し、圧力容器の調質技術の確立に資することを目的とする。

(研究内容)
1 繰返し焼入れ条件に関する研究
 A 302 B鋼溶接部および母材部に対する操準繰返し焼入れ条件を検討するため、適切な加熱回数、最終焼入れ前の繰返し焼入れ熱サイクル条件及び最終焼入れ条件の検討を行なう。

2 調質要領に関する研究
 板厚140mm、250mm、300mmの3種のものについて前項で選定した基本的な繰返し焼入れ条件によって繰返し調質法と繰返し重畳調質法により試験を行ない厚肉鋼板の繰返し調質要領とそのマクロ組織、ミクロ組織などの冶金的性質、衝撃値、硬度などの機械的性質との関係を求める。

3 加熱要領に関する研究
 低周波(60Hz)ならびに高周波(1000Hz)電磁誘導加熱処理に関する実験を行ない効率的な加熱要領について検討する。

4 モデル実験
 A 302 B鋼大きさ約120(T)×1,800(ID)×2,900(L)mmのドラムをモデル材として、回転式連続繰返調質熱処理試験を行ない、加熱冷却装置、制御方法、寸法形状の変化、機械的、冶金的性質について検討する。
5 燃料被覆管用ベリリウム合金の開発に関する試験研究
日本碍子(株)
(研究目的)
 ベリリウムは燃料被覆材として期待されているが中性子照射によるヘリウムの生成にもとづくスエリング等が問題となる。

 このため本試験研究では、ベリリウムに耐スエリング性を賦与すると考えられる元素を選定しベリリウムとの合金を試作し、その機械的性質および集合組織に及ぼす合金元素の効果を検討し、焼料被覆管用ベリリウム合金の開発に資することを目的とする。

(研究内容)
1 ベリリウム合金の溶製に関する研究
 銅、鉄、カルシウム等ベリリウムの耐スエリング性賦与に有効と考えられる元素とベリリウムとの合金を溶製し、溶製条件と合金の均質性、健全性との関係について化学分析、X線透過試験により検討する。

2 合金インゴットの加工に関する研究
 合金インゴットを熱間押出し、圧延により合金板とある過程において塑性加工性に及ぼす合金元素の影響を検討する。

3 合金板の機械的性質に関する研究
 合金板につき各種熱処理を行ない、顕微鏡組織、集合組織、高温引張強度の測定を行ない、機械的性質に及ぼす熱処理の影響、集合組織に及ぼす合金元素と熱処理の影響および顕微鏡組織と機械的性質及び熱処理との関係について検討する。

4 合金管の機械的性質に関する研究
 3で得られた結果にもとづきき添加元素のうちから1〜2種を選定し、合金管を作り、その管周方向伸びと板の関係等を検討する。また、管周方向伸びと管長方向伸びに及ぼす集合組織、熱処理の影響を検討する。
6 金属バナジウムの製造に関する試験研究
日本碍子(株)
(研究目的)
 バナジウムは将来の高速炉用燃料被覆材として期待されているが、わが国ではまだその開発に着手されていない。
 このため本試験研究では酸化バナジウムから金属バナジウムへの製造技術を開発し、バナジウム被覆管の実用化に資することを目的とする。

(研究内容)
1 酸化バナジウムより塩化バナジウムの製造研究
 酸化バナジウムの塩素化に際し、目的とする四塩化バナジウム(VCl4)の他にオキシ塩化バナジウム(VOCl3)が多量に生成するが、分離が困難であるためVOCl3の生成を抑える塩素化条件、塩化効率を検討する。また、VOCl3とVCl4の分離方法を検討する。

2 塩化バナジウムよりバナジウムの製造研究
 塩素化により生成したVCl4を電解還元及び金属還元し金属バナジウムを得る場合について溶融塩組成、電解条件、電解効果等を検討する。

3 金属バナジウムインゴットの試作及び特性解析
 電解還元及び金属還元により得られたバナジウムを電子ビームで溶解し、インゴットを作製し、これについて不純物と加工性の関係を検討する。
7 ジルカロイ薄肉燃料被覆管の製造とその諸性質改善に関する試験研究
(株)神戸製鋼所
(研究目的)
 軽水炉用燃料被覆管としてはジルカロイ薄肉管が期待されているがその製造技術には問題が残されている。

 このため本試験研究では、金属組織的立場よりグルカロイ被覆管製造工程を検討し耐圧強度、耐食性のすぐれた薄肉被覆管の製造条件を求め、その製造技術を確立することを目的とする。

(研究内容)
1 加工試験
 ジルカロイ-2及びジルカロイ-4の熱間押出素管の圧延加工、スエージ加工、抽伸などにより薄肉管を製造する。

 この場合欠陥発生の少ない加工方法および加工条件を選定する。

2 金属組織試験
 各加工工程における中間製品ならびに試作品について、極点図形記録装置により結晶集合組織を測定し、加工方法、加工条件と結晶集合組織との関係およびこれと耐圧強度、水素化物方向性との関係を求める。

3 検査および性能試験
 試作品について、寸法精度、起音波探傷、機械的性質、腐食試験液の耐食強度等の試験を行ない総合的な性能を確認する。

 また、金属組織試験および性能試験により最適の加工方法、加工条件を決定する。
8 薄肉燃料被覆管端栓の抵抗溶接法に関する試験研究
古河電気工業(株)
(研究目的)
 燃料の被覆管は中性子経済の改善等のため今後さらに薄肉化の傾向にある。二つの場合、健全な端栓溶接を行なうことが重要な問題となる。

 このため、本試験研究では、抵抗溶接法による薄肉燃料被覆管端栓の溶接条件について検討し、薄肉燃料棒の製造術技の確立に資することを目的とする。

(研究内容)
1 溶接試験
 内径約10.3mm、肉厚約0.38mmのステンレス鋼およびジルカロイ-2薄肉被覆管を対象とし、電流、サイクリング時間、電極回転速度等の溶接条件を検討する。

 また、ヘリウムリーク試験および内圧破壊試験を行ない、最適溶接条件を決定する。

2 オートクレーブ試験
 最適溶接条件で試作した模擬燃料ピンについて、ヘリウムリーク試験および内圧破壊試験を行なうとともに、オートクレーブ試験を行ない溶接部の健全性を検討する。
9 ジルカロイグリッドアセンブリー製作に関する試験研究
古河電気工業(株)
(研究目的)
 ジルカロイグリッドアセンブリーは中性子吸収の少ないこと、ジルカロイ燃料被覆管との電気化学的腐食の問題が少ないことなどのために軽水冷却炉用燃料集合体のグリッドアセンブリーとして期待されている。

 このため本試験研究では、グリッドアセンブリーをジルカロイで製作する場合の諸条件を検討し、その製造技術の確立に資することを目的とする。

(研究内容)
1 グリッド素子のロウ付け試験
 約0.7mm厚板材を曲げ加工し、アーク溶接して規定寸法に切断し、形状を矯正した後、外表面をNiメッキして素子を製作する。

 この素子を組合せて締め付け、加熱して接着する。このロウ付けに関し諸条件を検討する。

2 ロウ付け部およびグリッドアセンブリーの評価
 ロウ付け部の機械的性質およびこれと接合部の金属組織との関連について検討を行なう。

 また、実用状態を模擬した高温高圧水中で腐食試験を行なう。

 また、グリッドアセンブリーに組上げたものについて寸法精度の測定および圧縮、引張試験等による変形抵抗を測定する。
10 ジルカロイ部材の加工に関する試験研究
住友電気工業(株)
(研究目的)
 ジルカロイは燃料被覆管を始め、炉心構造部材として、広範囲に使用されると共にその構造もしだいに複雑となり、また、高精度の部品が要求されるようになっている。

 このため、本試験研究では、ジルカロイとジルカロイおよび異種金属との接合技術の開発を行ない、ジルカロイ部材の製造技術の確立に資することを目的とする。

(研究内容)
1 薄肉燃料被覆管端栓の電子ビーム溶接の研究
 ジルカロイ薄肉管とジルカロイおよびステンレス鋼端栓を、加速電圧、ビーム電流、溶接速度等を変えて電子ビーム溶接する。

 この溶接部について、引張強度、硬度、伸び、耐圧性などの機械的性質、結晶粒度、方位性、水素化物の状況などの冶金学的性質および耐食性を測定し、最適溶接条件を検討する。

2 タイプレート及びベースの摩擦接着による組立法の研究
 燃料集合体のタイプレート及びベースの組立に際し、ボス(ジルカロイ)と格子構造板(ジルカロイ)とを、接着圧力、摩擦時間、回転速度等を変えて摩擦接着する。この接着部について引張強度、硬度等の機械的性質、結晶粒度、方位性、水素化物の状況等の冶金学的性質及び耐食性を測定し、最適接着条件を検討する。
11 液体金属ナトリウム冷却型高速炉制御棒駆動装置、燃料交換装置の機構部品に関する試験研究
富士電機製造(株)
(研究目的)
 液体金属ナトリウム冷却型高速炉の制御棒駆動装置燃料交換装置などのナトリウム中での可動部分を持つ機器については、まだ製造技術が確立されていない現状である。

 このため、本試験研究ではこのような可動部分に用いられる機構部品について、高温の液体金属ナトリウム液中またはその蒸気を含む雰囲気中において作動試験を行ない。制御棒駆動装置、燃料交換装置などの設計製造技術の確立に資することを目的とする。

(研究内容)
1 機構部品の製作
 下記の実物大(納114mmφ)機構部品を設計製作する。
(1)上下方向摺動部及び回転部にパッキングを設け、機械的な軸封構造と組合せた上、不活性ガスをシールガスとして供給する軸封部1組

(2)送りネジ及びナットにより駆動され、ポールを利用した掛金機構を含む金属摺動部1組

(3)送りネジ及びナットにより駆動され、つめ、ピンを利用した掛金機構を含む金属摺動部1組
2 作動試験
 上記の機構部品を試験容器に入れ、軸封部は金属ナトリウム蒸気中で、金属摺動部は液体金属ナトリウム中で300℃〜600℃の温度範囲において作動試験を行ない、最適な構造、隙間の取り方を検討する。
12 液体金属ナトリウム用平板型誘導電磁ポンプに関する試験研究
東京芝浦電気(株)
(研究目的)
 電磁ポンプは液体金属ナトリウム冷却型高速増殖炉の浄化系の循環ポンプとして適していると考えられる。

 このため、本試験研究では電磁ポンプのなかで有望と考えられる平板型誘導電磁ポンプを試作し、電気および熱設計に必要な資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
1 装置の設計試作
 ポンプ能力が最大流量10l/sec以上、最大圧力4kg/cm2以上で流路構造材にSUS27を用いた平板型誘導電磁ポンプを設計試作する。制御は電圧調整器で行なう。

2 予備試験
(1)電気的試験
 磁気回路部分のみ組立てた状態で、入力と磁束分布を測定し、端部の特性を把握する。次に、ナトリウムと類似の電気的性質を持つ試験片をダクト部に挿入し、損失電力を測定する。また、張力試験装置によりポンプの吸引力を測定する。

(2)熱的試験
 試験片の誘導加熱を利用してループに組入れた場合と同様の温度条件を作り、コイル、ダクトの温度分布、冷却ファンの効果を測定する。また、予熱、待機の場合の入力及び冷却条件を検討する。

(3)作動試験
 ポンプをナトリウムループに組入れ、2種類のダクトについて、入力、流量、圧力の関係を検討する。
13 板状燃料の粉末冶金製造法に関する試験研究
古河電気工業(株)
(研究目的)
 板状燃料の寿命を長くするためにはウラン含有量を高めることおよびウラン含有量を高めるとともに、バーナブルポイズンを加えることなどが必要となる。しかし、この場合従来の合金法による製造には技術的な問題がある。

 このため、本試験研究では新たに粉末冶金法による板状燃料の製造研究を行ない寿命の長い板状燃料の製造技術を確立することを目的とする。

(研究内容)
1 UAl3粉末の製造実験
 できるだけ多くのUAl3を含むようなU-Al化合物インゴットを作るためウラン配合割合、熱処理条件について検討する。

2 燃料芯の製造実験
 UAl3-Al系およびUAl3-B4C-Al系の燃料芯について、粉末系件とUあるいはB分布の均一性および焼結性について検討する。

3 燃料板の試作実験
 上記で得られた最適製造条件で燃料板を試作し、UあるいはB分布、分散粒子の大きさ、機械的性質等を測定する。
14 加圧水炉用改良型燃料集合体の製造に関する試験研究
三菱原子力工業(株)
(研究目的)
 最近の加圧水炉用改良型燃科集合体には乾式法によるペレット、ジルカロイ-4被覆管、インコネルばね格子等が用いられている。

 このため本試験研究ではこれらの問題を研究し加圧水炉用改良型燃料集合体の製造技術の確立に資することを目的とする。

 (研究内容)
1 乾式法におけるUO2ペレットの製造研究
 乾式法における造粒条件等を検討し、燃料集合体1体分のペレットを天然ウランで製造する。

2 ジルカロイ-4被覆燃料棒の製造研究
 端栓のTIG溶接の溶接時間、電流等の溶接条件を検討し、燃料棒を製造し、その健全性の評価を行なう。なお、UO2ペレットの吸着水分を除去するための乾燥条件について検討する。

3 時効硬化型インコネルばね格子の製造研究
 インコネルばね格子板を打抜、成型加工、組立てて時効硬化性を与えるための熱処理を行ない、ばね格子とする。この場合の加工条件および組立てについて、ばね格子のNiメッキ条件、ろう付け条件、熱処理条件等について検討する。

4 燃料集合体の製造試験
 インコネルばね格子と側板とを抵抗スポット溶接法により接合し燃料棒を挿入し燃料集合体を製造する。

5 燃料集合体の炉外評価試験
 燃料集合体の評価として集合体外形寸法、燃料棒間隙の検討および剛性試験を行なう。
15 高密度安定化−炭化ウラン燃料の製造及び炉外評価に関する試験研究
三菱原子力工業(株)
(研究目的)
 一炭化ウラン燃料は、高速炉用燃料として有望視されているが、まだその実用化には研究を要する問題が多い。

 このため本試験研究では、高圧衝撃加工法により高温、高照射下においても安全性の高い一炭化ウランペレットを試作した高速炉用燃料の製造技術の確立に資することを目的とする。

(研究内容)
1 高圧衝撃加工法によるUC固結体の製造試験
 UC粉末に衝撃圧力を加え固結する場合の最適の高圧衝撃加工条件を検討する。

 また、UC組成安定化剤の選定を行ない、最適加工条件によりUCおよび安定化UCの固結体を製造する。

2 UCおよび安定化UCの高圧衝撃によるペレットの製造研究
 振動充填および冷間スウエージ加工により密度約90%のUC棒を製造し、これを切断してペレット状としたものをガラス粉末で包み、ガラス溶融させた後高圧衝撃を行ない高密度のペレットを製造する場合の製造条件を検討する。

3 焼結法による安定化UCペレットの製造試験
 安定化剤を加えた場合の焼結法について検討し、さらに高圧衝撃法によるペレットとの特性比較を行なう。

4 UCおよび安定化UCの炉外評価試験
 1、2、3、で得られたペレットのうち、有望と思われるものについて、組織観察、中心加熱試験、熱伝導率測定、電気伝導率測定高温安定性および揮発性ガスの放出量測定などの評価試験を行なう。
16 U(N.C)系核燃料物質と被層材料との反応性に関する試験研究
三菱金属鉱業(株)
(研究目的)
 U(N.C)系燃料は、高速炉用燃料として有望視されているが、またその実用化には研究を要する問題が多い。

 このため、本試験研究ではU(N.C)系核燃料物質について被覆材としての適合性を有すると考えられる各種金属材料とこれら核燃料物質との高温における反応性を追求し、燃料、被覆材の適正な組合せと限界条件に関する知見を求めることにより、U(N.C)系核燃料の実用化に資することを目的とする。

(研究内容)
1 試料の製造
 各種組成のU(N.C)および金属試料を製造し、組成、組織を確認する。

2 拡散反応試験
 拡散反応用加熱装置により各種組成のU(N.C)と金属試料片を各種条件で接触反応させ、燃料と金属の境界部分を中心として組成、組織変化を測定し、燃料・金属の安定な組合せと限界条件に関する資料を得る。

3 高温重量変化追跡試験
 成分の減少を伴なう反応について高温重量変化追跡装置により揮発開始温度と進行業相を追跡し、拡散反応試験の結果と合せ限界条件を検討する。
17 炭化ウラン燃料の性能評価に関する基礎的試験研究
住友電気工業(株)
(研究目的)
 炭化ウラン燃料は高速炉用燃料として有望視されているが、まだ研究を要する問題が多い。

 このため本試験研究では、炭化ウラン燃料の組成と性能との関係を検討し、今後の動力炉用燃料の開発に資することを目的とする。

(研究内容)
1 炭化ウラン焼結体の製造試験
 金属ウランおよび酸化ウランから組成として炭化ウランより炭素含有量のやや多いものおよびやや少ないものの炭化ウランを製造し、粉末冶金法により焼結体を製造し、密度、気孔度、結晶組織等を測定する。

2 炭化ウランと被覆材との両立性に関する研究
 ステンレス鋼被覆管に各種炭化ウラン焼結体を封入し、高温でのNa、He、介在下における両立性について検討する。

3 炭化ウランの熱伝導度の測定
 熱拡散率より炭化ウランの熱伝導度を測定し、炭化ウランの組成が熱伝導度に及ぼす影響を検討する。
18 軽水炉用燃料集合体の高温高圧沸騰水ループによる流水実験に関する試験研究
住友電気工業(株)
(研究目的)
 燃料集合体の実用化のためには、各種の炉外試験による性能限界の保証、設計条件の確認が必要である。

 このため本試験研究では炉外試験として高温高圧沸騰水ループにより燃料集合体の性能試験を実施し、実用条件下における性能の確認を行ない燃料集合体製造技術の確立に資することを目的とする。

(研究内容)
1 ジルカロイ-2管テストピースのフレッティング腐食試験
 ジルカロイ-2管テストピースを沸騰水中においてスペーサーと上下に摺動させ、フレッティング腐食について検討する。

2 ジルカロイ-2模擬燃料集合体の腐食試験
 実用燃料集合体の使用条件を考慮し模擬集合体の高温高圧沸騰水中における腐食試験を行なう。
19 放射線利用による体内臓器の塵埃沈着状態解明に関する試験研究
(財)結核予防会
(研究目的)
 41年度の研究に引続き、健康人肺中に沈着する塵埃の元素分析を検査例数を増して実施し、排気ガス煤煙による都会型公害と、砂塵と共に近年とみに問題になってきた散布農薬による農村型公害の実態を、肺内に沈着した塵埃の面から解明し、さらに動物実験からその生物的影響を観察することを目的とする。

(研究内容)
1 肺内塵埃の分析
 検体として健康人肺を都市型と農村型とに分けて選択し、その中に含まれている塵埃粒子を超遠心分離機により分離、精製した後、マススペタトロメータで元素分析し、さらに微量元素については試料の一部を原子炉により放射化することにより、元素の定量定性分析を行なう。

2 塵埃及びその中に含まれる化学物質、細菌等の生体内挙動と生体の反応の観察
 放射性の炭粉、ヨード、発癌剤及び結核菌を単独或は塵埃成分と共にマウス或はモルモットに投与し、臓器への沈着状況、血中放射能の変動を観察し、大喰細胞を指標として細胞と塵埃の関係を検討する。
20 放射線ラジカル重合速度の線量率依存性に対する酸素の影響に関する試験研究
大阪府
(研究の目的)
 ゴムラテックスおよび溶液中におけるγ線重合において、溶存する酸素の作用機構を明らかにすることにより、実用化における諸条件、特に酸素の含有状態において、線量率の重合速度及び生成ポリマーの分子量に及ぼす酸素の影響を明らかにすることを目的とする。

(研究の内容)
1 重合速度の線量率依存性に対する酸素の影響に関する研究
 γ線エマルジョン重合について、ゴムの不存在下における重合用モノマーを単独で用いた場合に得られる結果を、天然ゴム又はSBRと上記モノマーを用いたエマルジョンにより得られている結果と比較する。

2 生成ポリマーの分子量の線量率依存性に関する研究
 1において生成したポリマーの平均分子量の線量率依存性を分子量測定によって調べる。
21 パルス状放射線の測定及び利用に関する試験研究
大阪府
(研究目的)
 近年わが国で利用され、開発されつつある加速器は強力なパルス状放射線を出すものが多く、そのような放射線の測定利用は重要な問題である。

 このため、本試験研究ではパルス状放射線の測定の基礎になる諸問題の解明、パルス状放射線が測定器に及ぼす影響の解明及びパルス状放射線の利用法の開発を行なうことを目的とする。

(研究内容)
1 パルス状放射線測定の基礎になる現象の研究
(1)絶縁材料のパルス状放射線による放射線損傷に起因する過渡的な抵抗変化及び誘導電流現象の原因を明らかにする。

(2)各種金属板にパルス電子線を照射して、出てくる2次電子を観測し、異常放出現象の原因を明らかにする。

(3)水和電子の存在機構を、アルカリ氷、普通氷の温度を変化させ、光吸収の変化、電媒質常数の変化を測定して明らかにする。

2 パルス状放射線の測定器に及ぼす影響の研究
 集積回路およびBF3カウンターに対するパルス状放射線の影響を検討する。

3 パルス状放射線の利用の研究
 パルス状放射線を、メタメチルアタリレート、ニトロエチレン等に照射して放射縮重合反応の初期過程の研究を行なう。
22 カラーラジオフィールドグラフィーに関する試験研究
大阪府
(研究目的)
 物体内の放射線量分布の測定には、従来種々の方法が用いられているが、即知できるものは少なく、即知できても、等線量分布を一目で肉眼で判定できるものはない。

 このため本試験研究では、この点を解決するため、線量分布を色の変化で表示し、即知できるフィルム及び立体感光体を開発し、放射線照射の適正化をはかることを目的とする。

(研究内容)
1 多彩放射線感光体の開発
 寒天、ゼラチン、ポリ塩化ビニール等に、放射線に対する感受性の異なる種々の染料を混合含有させ、放射線強度に従って多彩な色相変化を示すフィルム及び立体放射線感光体を製造する。

2 照射野像の観察
 この感光体を使用して、電子線、X線、およびγ線の照射野像を、静的に、或は照射中継続して動的に撮影し、観察して、色相と被曝線量との関係を解明する。
23 生体等価熱螢光線量計に関する試験研究
松下電気産業(株)
(研究目的)
 放射線を測定する場合、固体の熱螢光現像を利用すると、感度、精度がすぐれ、測定が簡便であるのみならず、生体等価の線量測定が可能である。

 このため本試験研究では、ガンマ線およびエックス線を対象として実効原子番号9以下の熱螢光性化合物からなる測定用素子およびその熱螢光線量測定装置を試作し、これを組み合わせて、感度もよく、放射線エネルギーの保持性の高い生体等価熱螢光線量計を試作することを目的とする。

(研究内容)
1 熱螢光材料および素子の製作
 沸化リチウム、硼酸リチウム、酸化ベリリウムについて、結晶製作方法、不純物添加方法、添加不純物の種類、熱螢光強度を検討し、熱螢光性のよい螢光体を選定し、熱螢光材料を製作するとともに、熱螢光の機構面の検討を行なう。

 以上により得られた熱螢光材料を成型して素子とする。

2 生体等価熱螢光線量測定装置の試作
 被曝素子を加熱して、螢光を発生させ、これを光電子増倍管で受光し、線量として表示する方式をとる。全系の設計を行ない、装置を試作する。

3 総合特性試験
 素子と装置を組み合わせて、測定範囲5mγ〜1,000γで放射線エネルギーの保持性の高い生体等価測定の可能な線量計を作製し、感度、測定誤差、測定範囲等諸特性について総合試験を行ない、検討する。
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