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日本原子力研究所大洗研究所原子炉
施設に係る安全性について(答申)


昭和42年5月30日

42原委第134号
昭和42年5月30日

 内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

日本原子力研究所大洗研究所原子炉施設の変更に係る安全性について
(材料試験炉に対するインパイルループOWL-1の設置)(答申)

 昭和42年3月16日付け42原第850号をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 日本原子力研究所大洗研究所原子炉施設の変更(材料試験炉に対するインパイルループOWL-1の設置)に係る安全性に関し、同研究所が提出した「OWL-1設置に関する書類」(昭和42年2月23日付け)に基づき審査した結果、別添の原子炉安全専門審査会の安全性に関する報告書のとおり安全上支障がないものと認める。

昭和42年5月23日

 原子力委員会
  委員長 二階堂 進殿

原子炉安全専門委員会
会長 向坊 隆

日本原子力研究所大洗研究所原子炉施設の変更に係る安全性について
(材料試験炉に対するインパイルループOWL-1の設置)

 当審査会は、昭和42年3月16日付け42原委第66号をもって審査の結果を求められた標記の件について、結論を得たので報告します。

Ⅰ 審査結果
 日本原子力研究所が設置する原子炉施設の変更に係る安全性について、同研究所が提出した安全性に関する審査のための書類(昭和42年2月23日付け42原研05第6号)に基づき、審査した結果、本インパイルループの設置に伴なう原子炉施設の変更に関する安全性は十分確保されるものと認める。

Ⅱ 変更内容
 材料試験炉にOWL-1(大洗水ループ1号)を設置する。

Ⅲ 審査内容
(1)装置の概要
 本装置は、材料試験炉の反射体領域のD-7位置に設置される水冷却型インパイルループである。

 炉内照射部分は、ステンレス鋼製の3重管で、外側から外とう管、耐圧管および流路仕切管となっている。

 外とう管と耐圧管の間は、真空の断熱層とし、耐圧管と流路仕切管の間には冷却材が流れ、流路仕切管の先端で折返して仕切管内の試料を冷却して流れる構造となっている。

 炉外部分には、一次冷却系、二次冷却系、給水系、補助系などがあり、一次冷却系は循環ポンプ、熱交換器、コンデンサー、サージタンク、ボイラーなどを備えておく、沸騰水型炉および加圧水型炉の双方を模擬した冷却条件において運転ができる。

 冷却材としては、水を用い、炉内照射部分においてその圧力は150kg/cm2G以下、温度は320℃以下である。

 照射試料は、核燃料物質(ウラン)および水型動力炉用材料であり、ウランの最大装荷量は、熱出力200kwに相当する量である。

 また本装置を安全に運転するため警報、ループクールダウン、炉セットバック、炉スクラムなどの安全信号系が設けられる。

(2)材料試験炉本体への核的、熱的影響
 ループ炉内部分および照射試料の挿入による反応度効果は非常に小さく、また、核燃料物質の装荷に伴う反応度外乱は、炉本体の事故解析での最大の反応度外乱と較べても十分小さい。

 また、照射試料の核分裂生成熱200kwは十分な熱除去能力をもった本装置専用の冷却系で除去される。

 従って炉本体への核的、熱的影響は無視できると認められる。

(3)安全設計および障害対策
 本装置の耐震設計は、材料試験炉の設計基準に準じて設計震度をとり、建物と装置との共振をさけるための動的検討にもとづいて共振点の変更、振動防止などの対策をとることとしている。

 遮蔽設計は、運転中に人が立ち入る場所10mrem/h以下となるように設計することとし、照射済試料はカナルの部分をとおして、また必要ある場合は取出容器を用いホットラボに移送される。

 本装置では、通常の燃料照射実験のほか、限界熱流束実験、破損燃料照射実験などfpの放出を伴なう可能性のある実験も行なうこととしており、この場合には、あらかじめ実験内容を検討し、周辺公衆に対しては勿論、従事者に対しても放射線被ばくが十分許容値以下になる範囲内で行なうこととしている。

 fp放出実験時など従事者に対する線量率が上記遮蔽設計値より一時的に高くなる場所が生ずる時は、線重率が一定値を越えない範囲内で実験を行なうこととし、この場合立入制限区域を設けて管理を十分行なうこととしている。

 照射済試料は、ホットラボへ輸送し各種検査、研究のため使用されたのち廃棄される。

 廃棄物のうち固体は、廃棄物処理場へ輸送したのち廃棄される。

 液体は、排水タンクへ貯留後材料試験炉第2排水貯蔵タンクに貯留される。

 気体は、チャコールフィルタなどを備えた材料試験炉第2排気系をとおして80mの排気筒から大気中に放出される。

(4)事故評価
 材料試験炉設置時に行なわれた安全解析の際の各種事故のうち、本装置に影響をもたらすと考えられるのは、定格運転時の制御棒引抜事故であるが、この事故を考えた時、最悪の場合でも本装置に大きな損傷を起すことはないと認められる。

 本装置に発生すると想定される事故としては、照射試料の破損、冷却材停止、冷却材喪失などが考えられるが、重大事故としては、照射中の試料燃料棒6本のうち3本が破損し、その時一次冷却系が破損して冷却材が喪失する事故が重なった場合を想定する。

 また仮想事故としては、試料燃料棒6本全部が破損した時、冷却材喪失事故が重なった場合を想定する。

 これら重大事故、仮想事故の場合、敷地周辺の一般公衆に対する被ばく線量を計算すると線量が最大となるのは炉から約400mの地点で内部被ばく線量は、重大事故で6.9rem(小児)、仮想事故で3.5rem(成人)となり、いずれの場合も、立地審査指針のめやす線量と比較して十分小さい値となっている。

 また、外部被ばく線量も、いずれの場合においても十分小さい値となっている。

(5)技術的能力
 本装置を設置、運転する日本原子力研究所は、JRR-1 JRR-2 JRR-3 JRR-4などの原子炉,TLW-1 TLG-1 fpガス拡散ループなどのループの設計、運転の経験を有し、さらに本装置の模擬ループOWL-0において設計、建設、運転の経験を経ているので技術的能力は十分であると認められる。

Ⅳ 審査経過

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