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原子力開発利用長期計画の決定について



 昭和42年4月13日

原子力委員会決定

1 原子力開発利用長期計画策定の経緯
 原子力委員会は、昭和36年2月に「原子力開発利用長期計画」を策定し、これにもとづき、わが国の原子力開発利用の推進をはかってきたが、最近における原子力発電の急速な進展、わが国に適した核燃料政策の確立、新しい動力炉の開発、あるいは、原子力船の開発等、原子力開発利用における重要問題を早急に解決し、その計画的かつ効率的推進をはかるべき事情にあることにかんがみ、長期計画の改訂を行なうこととした。

 このため、原子力委員会は、昭和41年9月12日、「原子力開発利用長期計画改訂の基本方針」を決定し、さらに、この改訂に関する事項の調査、審議を行なうため、長期計画専門部会を設置することとした。

2 長期計画専門部会の審議経過
 長期計画専門部会は、関係省庁および各界の学識経験者132名(実人員93人)をもって構成され、昭和41年10月3日、第1回専門部会を開催し、部会長として兼重寛九郎東京大学名誉教授を互選した。

 同専門部会は、その後、総合、原子力発電、原子力船、核燃料、放射線利用、基礎研究、人材養成、核融合、安全対策の8分科会に分れ、上記の改訂の基本方針にしたがって、昭和41年12月中旬までに終了を目途として、それぞれ審議をすすめた。

 なお、動力炉の開発に関しては、原子力委員会がさきに内定した動力炉開発の基本方針(昭和41年5月18日)にもとづいた計画を長期計画の動力炉開発計画とすることとし、また、放射線利用における食品照射に関しては食品照射専門部会(昭和40年11月18日設置決定)の審議によることとされた。

 以上の各分科会のうち、総合分科会を除く各分科会の審議は、その分野が広汎多岐にわたり、重要事項も山積していたので、当初の予定をこえ、おおむね昭和42年1月までに終了し、それぞれ分科会報告書をとりまとめたが、これらにもとづき、総合分科会において「原子力開発利用長期計画」の総論および各論についての審議が行なわれ、昭和42年3月8日、第8回総合分科会において原案についておおむね了承が得られた。

 以下の経過ののち、長期計画専門部会は、昭和42年3月22日、第2回専門部会を開催し、「原子力関発利用長期計画」を審議し、これを原子力委員長あて報告した。

 原子力委員会は、この報告の趣旨を十分に尊重して、昭和42年4月13日「原子力開発利用長期計画」を正式に決定した。

3 新長期計画の構成等
 新長期計画は、総論において長期計画改訂の背景および原子力関発利用の基本的な考え方を述べ、次に、原子力関発利用のすすめ方、研究開発の一般方針、原子力産業の育成等について基本的な考え方と施策の大綱を示した。

 各論は、原子力発電、動力炉開発、核燃料、原子力船、放射線利用、核融合、安全対策、基礎研究、人材養成および科学技術情報の交流の10項目をもって構成し、それぞれの解決すべき主要な問題点と具体的な施策の方向を示した。

 なお、本長期計画は、昭和60年度までに及ぶ約20年間を展望しつつ、昭和50年度までの約10年間をその対象としている。

4 計画の概要
(1)基本的考え方
 開発利用の基本的考え方として、今日、わが国の原子力開発利用が産業化、実用化への移行段階にあることにかんがみ、次の4点を示した。
イ 平和利用の維持
ロ 自主性の確保
ハ 長期的計画的推進
ニ 国民全体の利益の重視
(2)本長期計画における主要事項
イ 原子力発電については、昭和50年度における規模を600万キロワット、昭和60年度における規模を3,000万ないし4,000万キロワットと見こんだ。

ロ わが国エネルギー政策、科学技術水準の向上等の観点から、在来型導入炉の国産化をすすめるとともに、新しい動力炉の開発を国のプロジェクトとして強力に推進する。この中核として、動力炉・核燃料開発事業団を設立する。

ハ 核燃料については、昭和60年度までに約9万トンの天然ウランの所要量が見こまれるが、その安定かつ低廉な供給を確保するよう適切な措置を講ずる。

ニ 原子力船については、第1船の建造を推進するとともに、その成果を生かし、舶用炉の改良研究をすすめ、昭和40年代後半を目途に実用化をめざす。

ホ 放射線利用については、研究開発をすすめるとともに、その利用の一層の普及をはかる。

ヘ 核融合については、従来の基礎研究の初期的段階からさらにすすんで、核融合を明確な目的とする研究開発を推進する。

ト 安全対策については、さらに実証的な研究をすすめ、より具体的、合理的な安全基準の改善、整備をはかる等、原子力の実用化に対応した安全対策の確立をはかる。

チ 研究関発のすすめ方としては、とくに重要な研究関発課題につき、原子力特定総合研究あるいは原子力特別研究開発計画(国のプロジェクト)として、関係各界の密接な協力のもとに推進するものとする。

リ 人材養成については、今後10年間に、さらに約17,000ないし19,000人の科学技術者が新たに必要であると見こまれており、このため、大学の一層の充実が期待されている。

原子力開発利用長期計画の決定に際して

(原子力委員会委員長談話)

 原子力委員会は、さきに行なわれた長期計画専門部会の報告の趣旨を十分に尊重し、原子力開発利用長期計画を正式に決定した。

 これにともない、直ちにこれを内閣総理大臣に報告するとともに、閣議において報告し、関係各省庁の施策に本長期計画を反映させる所存である。

 長期計画は、今後約10年間について、原子力発電、核燃料、動力炉開発、原子力船、放射線利用、核融合、安全対策等の各般にわたる基本的な考え方とその施策の方向を明らかにしたものである。

 原子力開発利用は、今日、わが国において、実用化、産業化への重大な移行段階にあり、国民経済の進展と国民福祉の向上に測り知れない寄与が期待されている。

 したがって、今後におけるわが国の原子力開発利用は、新長期計画を根幹として、強力にその推進をはかるべきであると考える。

 このため、新長期計画の具体化にあたっては、政府の施策と相まって、関係各界が一層の努力を傾注されることを強く期待するものである。

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