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第5回中共核爆発実験後の環境放射能について



 12月29日未明、中共政府は第5回目の核爆発実験を実施した旨発表した。放射能対策本部は、直ちに幹事会を関催して放射能の調査体制を強化し、環境放射能水準の推移を厳重に監視することとした。

 さらに30日の放射能の降下状況にかんがみ、放射能対策本部は31日に再び幹事会を関催し、天水等の飲用者は、いつでもろ過器を使用しうるよう準備しておくことが望ましい旨発表した。

 その後、放射能の降下量は急速に減少したので、6日さらに幹事会を開催し、さきに決定した天水ろ過器の使用準備についてはその必要がなくなったものと確認して発表するとともに、7日以降は放射能調査を平常体制で行なうこととした。

 12月30日には早朝から東京、千葉、福岡をはじめ全国各地で放射性粒子が多数発見され、その数が1平方メートル当り100ヶ以上に達した所もあった。

 また今回の放射能の降下量、高空および地表の浮遊塵の放射能は、過去4回の中共核実験の例に比べて著しく多く12月31日から1月1日にかけて最高値に達し、これらは過去のそれをそれぞれ1桁程度上回った。

 すなわち、一部地域では、降下量が放射能対策本部が定めた放射能対策暫定指標の第1段階を1日で越えるほどであったが、暫定指標に対応する1ヶ月間の降下量でみれば何等かの対策を必要とする第2段階には達しなかった。

 しかしながら、中共が今後とも実験を継続し、その規模、頻度が増加した場合、国民を放射能から保護するために適切な措置を必要とすることも考えられるので、放射能対策本部は1月17日に幹事会を、1月18日に本部会議を関催し、今後の放射能調査の充実と放射能対策の具体的運用等について検討を行なうため作業グループを作る、ことを決定した。

 今回の中共核爆発実験後の放射能対策本部の動きと環境放射能の調査結果は次の通りである。

放射能対策日誌

41.12.28 中共西部地区(ロブノアール湖付近と推定)で、第5回核爆発実験を実施-29日2時30分(日本時間)の北京放送による。
41.12.29 第52回放射能対策本部幹事会第5回中共核爆発実験に対処して放射能調査体制を強化することを協議決定。
41.12.30 早朝から各地において放射性粒子を検出
41.12.31 第53回放射能対策本部幹事会環境放射能水準の状況を検討し、天水等の飲用者に対し、濾過器の準備が望ましい旨発表
42. 1. 1 米子で雨水から全β放射能降下量3,700ミリキューリ/平方キロ、鹿児島で同じく770ミリキューリ/平方キロを測定
42. 1. 6 閣議で二階堂本部長が放射能対策実施状況を説明するとともに今後の対処方針について発言し了承を得た。
第54回放射能対策本部幹事会
さきに発表した事項について、その必要性がなくなった事を確認
42. 1.17 第55回放射能対策本部幹事会
42. 1.18 第12回放射能対策本部会
放射能調査の充実及び放射能対策について協議し、これを具体的に検討するため作業グループ(仮称)を設けることとした。

(Ⅰ)雨水による全β放射能降下量


(Ⅱ)地表浮遊塵の全β放射能



(Ⅲ)高空浮遊塵の放射能
(Ⅳ)雨水落下塵等についての機器分析結果
1 放射線医学総合研究所
 同研究所構内において、12月29日9時から1月5日9時までの間に水盤法により採取した雨水・落下塵について機器分析を行なった結果次の核種を検出した。
 核種;Np239、Mo99、Tc99m、Ce141、Ba140、La140、Zr97、Nb97

2 大阪府立放射線中央研究所
 同研究所構内において採集した放射性粒子について機器分析を行なった結果、次の核種を検出した。
 核種;Np239、Mo99、Te132、Ru97、Zr95、I131、Ba140、La140
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