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国際原子力機関(IAEA)9月理事会報告



 1966年IAEA 9月理事会は、9月19日および28日の2日間ウィーンにおいて開催された。以下議題をおってその概念を報告する。

 なお、第10回総会直後の9月28日開催の理事会から第11回総会前までの理事長としてポーランドのW.Billig氏が選出された。

1 新加盟申請審議
 シンガポール(19日)、シェラ・レオーネ(28日)の新加盟を総会に勧告することに決定した。

2 保障措置
(a)二国間協定に関する申請
 本理事会は、オーストラリア-米国の保障措置移管協定および、スペイン-米国の保障措置移管協定を承認した。なお、査察件数の増加による経費の負担につき討議が行われ、我が国は、保障措置の問題については、一般共同社会の関与するところであることから、経費は共同体が負担すべきであることを強調した。

(b)査察員人事
 本問題に関し、事務局長は、1964年9月理事会によって承認された査察員リストを大幅に改訂したい旨要請した。査察員の公正な地域的分布の要求に基づく人事交代、査察件数増加に伴う査察員増員の要求による理由のほかに、合衆国の再処理施設、Nuclear Fuel Service Plantがはじめて査察の対称となり、特殊な要求が生じたためである。

 本来の査察員10名のほかに、必要に応じて査察に携わる要員18名、合計28名について各国の意見の交換が行われた。

3 安全基準
 本機関は、欧州原子力機関(ENEA)と協力し、夜光塗料塗布の時計から発する放射線障害の防止規準の草案を件成してきたので、本理事会においてもENEA代表を加えて討議が行われた。本規準案は、既に7月のOECD理事会において承認されている。本理事会では、その規準案に語彙上の僅少の修正が加えられた。

 事務局長が、同規準を、本機関の、夜光塗料塗布の時計に対する放射線防護規準とし、全加盟国に対し、出来る限り、国内の防護規準を本防護規準に合わせるように勧告し、また適宜必要に応じて改訂を行なうよう手配する権限を事務局長に与えることに、理事国の多数は賛意を示した。

4 核放射線事故時における緊急援助
 アラブ連合共和国から、理事会は本問題の審議を出来るだけ早く、如何なる場合も、1967年の11回総会以前に審議を終了するよう努力すること、従って、本年度総会では審議する必要がないことを、事務局長は総会に通報するよう決議案が提出され、同決議案は承認された。

5 原子炉計画
 理事会は、フィリピン政府が、92%濃縮ウラン約4,538gを確保することに本機関の援助を要請していたPRR-1炉計画を承認した。

6 核物質供給
 理事会は、事務局長が、1966年9月から1967年8月までの間に、保障措置業務に用いる特殊核分裂物質20gまで得ることを、認可した。

7 放射線診断装置計画
 28日の理事会において、メキシコ政府から、メリダのユカタン大学医学部へ放射線診断装置を設置することについて本機関に要請されていた計画を承認し、器材供与に関し、ポーランド政府に、メキシコ政府と協定を締結するよう要請した。

8 経常予算項目間流用
 先ず、事務局長は、ウィーン在住の理事と事前に協議した結果、「理事会の認可なしに、5000ドルの項目間流用を行い得る恒久的権限を与える」ことに財政規則を改訂する趣は一般に受容れられたが、2%の流用に関してはかなり抵抗があったので、上記括弧内のような修正案を提出する旨説明があった。

 国連総会は、国連及びその専門機関の財政検査専門委員会(ad hoc)−仮訳−を組織し、資金の項目間流用の問題を討議しており、次期総会において同問題が取りあげられることになっているので、本機関も同問題については国連総会後に検討すべきであるという意見を述べた国があり、各国代表による討議の結果、1966年度につき、俸給増加とその他の項目の流用について5,000ドルまで認めることとし、第21回国連総会が同問題についてとるであろう措置の決定を考慮し、1967年の2月理事会の仮議題に載せることに同意した。

9 事務局長定時報告
 同報告の50-52項に関し、南アフリカ代表は、最近の国連合同恩給理事会の決定では、恩給基金の準加入の廃止が、1967年1月1日から発効することになったが、その理事会の勧告を総会が承認すれば、本機関としてはどのような影響を受けるかを加盟国に知らせるべきであるという意見を述べた。

 そこで、本機関の合同恩給委員会委員長(カナダ)から、恩給理事会での準加入の問題及びその廃止に致るまでの経緯の説明があった。

 廃止の理由は準加入(短期加入方式)は赤字であること、及び事務繁雑であるが、準加入の多い本機関にとって、準加入から本加入への移行は財政的負担の増加を招くので、本機関としては、準加入方式のあらゆる可能な改善方法を提案したが、趨勢としては、準加入方式の廃止に向っていることが説明された。準加入廃止が決まれば、全職員を「本加入」に移行させるべく追加資金が必要となる。

 その額は、1967年度には、現在より43,000ドル多く、1968年以降の分担率は14%となり、1968年には130,000ドル、1969年には152,000ドルに達することが事務局長によって説明された。

10 今後の理事会の予定
 9月28日の理事会において、次回理事会を、1967年2月21日及び6月13日に開会することに決定した。

11 本機関と政府間機関との関係
 本年2月理事会において、石油輸出国機関(OPEC)により、関係協定の締結の意向が表明されていたことについて各国の討議があり、事務局長は、南アフリカの、「ある機関と関係協定を締結することと、単に総会にオブザーバーとして招聘することでは大きな差がある。

 動力の生産という意味で、石油輸出業者が原子力に関心を持つのは当然であるが、競争者であるかの如き印象を与えるのは好ましくない。従って、招聘には何ら反対しない」という意見を支持し、理事会の大多数も、次期総会に石油輸出国をオブザーバーとして招聘することに同意した。
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