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原研東海研究所原子炉施設の
変更に係る安全性について



 原子力委員会では、内閣総理大臣から日本原子力研究所東海研究所原子炉施設の変更に係る安全性について(JMTRCの変更)について諮問を受けたが審査を行なった結果、次のように安全上支障がない旨答申した。

日本原子力研究所東海研究所原子炉施設の
変更に係る安全性について(JMTRCの変更)(答申)

(昭和41年10月14日付)

 昭和41年7月23日付41原第2742号(9月27日付41原第3717号をもって訂正)をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 日本原子力研究所東海研究所原子炉施設の変更(JMTRCの変更)に係る安全性に関し、同研究所が提出した「JMTRCの変更に係る安全性に関する審査のための書類」(昭和41年7月18日付書類および9月26日付訂正書類)に基づいて審査した結果、別添の原子炉安全専門審査会の安全性に関する報告書のとおり安全上支障がないものと認める。

原子炉安全専門審査会の報告

(41.9.28日付)

 Ⅰ 審査結果
 日本原子力研究所東海研究所原子炉施設の変更(JMTRCの変更)に係る安全性に関し、同研究所が提出した安全審査のための書類(昭和41年7月18日付および昭和41年9月27日付をもって訂正)に基づいて審査した結果、同施設の変更に関する安全性は十分確保しうるものと認める。

 Ⅱ 変更事項
 東海研究所JRR-4 No.2プール内に設置してあったJMTRCを茨城県東茨城郡大洗町のJMTR本体建家内のJMTRC用プールへ移設するため、炉心支持台、ブリッジ、燃料貯蔵施設などの変更を行なう。

 また、この移設に伴なって次の変更を行なう。
1 燃料及び炉心格子の変更
従来 変更後
燃料要素 1本当り
U285279g以下 35本 400g以下
  〃   〃 195g 300g以下
(制御棒フォロア型) 1炉心最大装荷量、燃料要素35本、U2358kg
計装用燃料
格子配列 11行9列 16行14列

2 制御機構の変更
従来 変更後
粗調整棒 1本(約6%△K/K) 最大2本
最小1本
安全棒 4本(約22%△K/K) 最大3本
最小1本
全制御棒の入った状態で実効増倍率<0.9
バックアップスクラム 1式 削除
(0.5%△K/K)

3 超過反応度の変更
 従来 変更後
制御盤から制御しうる可能性をもつ超過反応度  7% 3ドル(約2.5%△K/K)以下
炉を臨界とするため粗調整棒、微調整棒が吸収している最大反応度15%△K/K

 Ⅲ 審査内容
1 燃料及び炉心格子の変更については、最大燃料装荷本数、最大U235装荷量を定めているが、これに関しては、燃料装荷量が多くなった際の余剰の反応度抑制を実験中移動させない固定ポイズンによって行なうこととしている。又炉心領域が大きくなった場合でも超過反応度、ボイド係数を検討した結果、安全上支障ないと認められる。

 なお、JMTR本体の炉心模擬のため1燃料要素当りのU含有量の多い同本体用の燃料を装荷することがあるが、この場合は未使用燃料以外は装荷しないこととしている。

2 制御機構の変更については、従来の安全棒1本を粗調整棒に変更し、最大2本として用いることにより、大型炉心の臨界近接時の安全性を確保しようとするものである。

 粗調整棒を2本としたことによる誤操作をさけるため制御棒2本以上の同時引抜を禁止するインターロックを設ける。

 粗調整棒の連続引抜事故をさけるため粗調整棒は、従来の20ヵ所停止装置に加えて過引抜防止装置をつけ1ドル以上は反応度が投入できないようになっており、又同調整棒によるスクラムも可能である。また、安全棒又は調整棒1本が全引抜状態でスタックしたとしても、他の安全棒又は調整棒で炉を臨界未満にすることができるので安全性は確保できると認められる。

 また運転の実績からみて、本制御棒駆動機構の信頼性は高く、原子炉停止余裕も十分あり、更に炉に加えられる可能性のある超過反応度も小さいので、バックアップ装置を除去することは特に支障ないと認められる。

3 超過反応度の変更については、炉を臨界とするため、粗調整棒、微調整棒が吸収している反応度の最大値を15%△K/Kとするが、実際上は制御盤で制御しうる最大超過反応度としては、過引抜防止装置によって粗調整棒、微調整棒とも各々1ドル以下とされ、可動ポイズンの等価反応度を含めても3ドル以下となっており、安全上支障ないと認められる。

 重大事故については、粗調整棒引抜事故、燃料棒取落事故、模擬ボイド浮上事故などの検討を行なった結果、模擬ボイド浮上により1%△K/Kの反応度が加わる事故を想定する。実測による温度係数、ボイド係数などを用いて事故解析を行なった結果、燃料の熔融などの大きな事故にはいたらない。

 仮想事故としては、炉心燃料の10%に相当する炉心周辺に装荷された試料800g(未照射燃料物質)が熔融すると仮定する。

 事故時に生じたF.Pが希ガスは全量、ハロゲンは1/100が水から出るとし、地上放散、F型、風速2m/secで被ばく線量を計算すると、200m地点で甲状腺1.8mrem、全身約3mremとなり、立地審査指針のめやす線量を十分下まわっている。

 以上、JMTRCの大洗町へ移設するための変更及び移設に伴なう変更事項について検討した結果、変更後も本原子炉の安全性は確保できると認められる。

 Ⅳ 審査経過


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