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原研東海研究所原子炉施設の変更に係る安全性について



 原子力委員会は、内閣総理大臣から日本原子力研究所原子炉施設の変更(JRR-3に低温化学照射装置を設置)に係る安全性について41年3月11日付けをもって諮問を受け、審査を行なったところ、以下のように、安全上支障がない旨答申した。

日本原子力研究所東海研究所原子炉施設の変更に係る安全性について
(JRR-3に対する低温化学照射装置の設置)(答申)

(昭和41年5月26日付)

 日本原子力研究所東海研究所原子炉施設の変更(JRR-3に低温化学照射装置を設置)に係る安全性に関し、同研究所が提出した安全性に関する審査のための書類(昭和41年3月5日付けおよび5月18日付け書類)に基づいて審査した結果、別添の原子炉安全専門審査会の安全性に関する報告書のとおり安全上支障がないものと認める。

〔別添〕

原子炉安全専門審査会の報告

(昭和41年5月20日付)

Ⅰ 審査結果
 日本原子力研究所が設置する原子炉施設の変更に係る安全性について、同研究所が提出した安全性に関する審査のための書類(昭和41年3月5日付け41原研05第4号及び昭和41年5月18日付け41原研05第7号をもって一部訂正)に基づき審査した結果、本低温化学照射装置の設置に伴う原子炉施設の変更に関する安全性は十分確保されるものと認める。

Ⅱ 変更内容
 JRR-3に低温化学照射装置を設置する。

Ⅲ 審査内容
(1)装置の概要
 本装置はJRR-3の水平実験孔H・2に設置される冷却系を有するカプセル炉内照射装置である。照射筒はステンレス鋼製の3重管で、真空断熱用2重管と、カプセルを入れ、冷却材を送入する試料管からなる。

 冷却材にはヘリウムを用い、その圧力は1.5kg/cm2G以下で、試料の照射温度は-196℃~20℃である。照射試料は化学反応物質と核燃料物質または、化学反応物質と触媒物質で、ステンレス鋼製の2重カプセル(試料カプセル及び保護カプセル)に入れて照射される。

 気体の場合の試料圧力は最高20kg/cm2Gである。

 本装置の安全運転のため、インターロック系警報回路、炉スクラム信号系等が設けられている。

(2)JRR-3本体に対する核的、熱的影響
 カプセルおよび照射試料による核的反応度効果は非常に小さく、また照射試料の反応による発生熱は本装置専用の冷却系で除去されるので、炉本体に対する核的、熱的影響は無視できるものと認められる。

(3)障害対策
 本装置は運転中2mrem/hr以下となるよう遮蔽が施される。照射試料は十分に遮蔽を施された移送容器に入れ、運搬される。試料、カプセルなどは実験後廃棄物処理場に送られる。

(4)事故評価
 JRR-3設置時に作成された原研資料「JRR-3の概要とその安全対策」に記載されている炉本体の各種事故のうち、本装置に影響を与えうると考えられる最大のものは、1.5%△k/kの反応度が階段状に印加される場合である。この事故によっても本装置の破損はないものと認められる。

 本装置に発生すると想定される事故としては、冷却用ヘリウムの停止および流出、オゾン爆発、試料爆発等があり、重大事故としては、照射中の試料の爆発事故をとる。仮定としては試料カプセル中で2gの酸水素混合ガスの爆発を考える。

 この場合、試料カプセル、保護カプセル、試料管および真空断熱用内管まで破損する可能性があるが、真空断熱用外管は破損しないので、核分裂生成物が炉室内に放散されることはない。

 仮想事故としては、上記重大事故と配管等の破損が重なった場合を想定する。これらの破損部分から放射性気体が炉室中に分散する。

 この全量が通常の炉室排気系から放散されるとしても、一般公衆への影響は無視できるものと認められる。
Ⅳ 審査経過

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