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放射性同位元素等による放射線障害の
防止に関する法律施行令、同施行規則等の改正について



 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令は昭和41年4月1日に施行され、つづいて同法施行規則の一部を改正する総理府令は同年5月12日から施行された。また、昭和35年科学技術庁告示第22号(放射線を放出する同位元素の数量等を定める件)の一部も改正され同年5月12日から通用されている。

 この一部改正については、昭和40年11月5日付けで科学技術庁長官から放射線審議会々長あてに「放射線障害の防止に関する技術的基準の改正について」諮問し、第19回放射線審議会(昭和40年11月10日開催)においてその審議がアイソトープ部会に付託された。

アイソトープ部会は前後9回に亘って審議を重ね、その結果第20回放射線審議会(昭和41年3月2日開催)で答申を決定し、同日付けで放射線審議会々長から科学技術庁長官あて答申があった。
 以下これらの改正の理由及び改正内容の概要を述べる。

1. 改正の理由
 昭和33年4月、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律が施行されて以来、すでに8年の年月を経ている。

 その間、同法は、法施行後の経験と1958年のICRP勧告等を考慮し、法施行2年後の昭和35年にその施行令及び施行規則について大巾な改正が加えられたが、その後、更に5年の歳月を経るに及んで、法の規制と放射性同位元素等の利用の実態との問に若干の相違が生じてきたので、1962年ICRP勧告を受け入れる機会に、法の規制の運用をより合理的にするため、同法の施行令及び施行規則の改正を行なった。

2. 改正の内容
 改正の内容の概要は、次のとおりである。

(1)放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令
イ 自発光性塗料に関する規制
 自発光性の塗料については、工業標準化法第19条第1項に規定する日本工業規格に該当するものであることを示す特別の表示を附された鉱工業品又は放射線障害の防止に関してこれと同等に安全と認められる鉱工業品であって、科学技術庁長官が指定するものに用いられている自発光性の塗料を、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下「法」という。)の適用を受ける放射性同位元素の範囲から除くこととした。

ロ 使用の場所の一時的変更の届出
 許可使用者が届出により放射性同位元素の使用の場所を変更しうる場合に関する規定について、物の密度又は質量の調査で科学技術庁長官が指定するものを加えるなどの改正を行なうこととした。

ハ 使用施設の基準
 使用施設の位置、構造および設備の技術上の基準を、その主要構造部等を耐火構造とし、又は不燃材料で造るのは当該施設が建築物又は居室である場合に限ることとし、人の被ばく線量を許容線量以下とする手段として所要の距離が設けられている場合にはしゃへい壁その他のしゃへい物を設けなくてもよいこととし、一定数量をこえる密封された放射性同位元素又は放射線発生装置を使用する室の人が通常出入りする出入口には使用中である旨を自動的に表示する装置及びインターロックを設けさせることとするなど放射性同位元素等の使用の実態に即して所要の改正を行なうこととした。

ニ 手数料の改正
 法第49条の規定により納付すべき手数料の金額を実情に即して引き上げることとした。
(2)放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則
イ 定義の改正
 定義規定を次のように改めた。
1 「放射線作業従事者」放射性同位元素、放射線発生装置又は放射性同位元素によって汚染された物の取扱い管理又はこれに附随する業務に従事する者であって、管理区域に常時立ち入るもの。
(注)1 従来は、取扱い又は管理の従事者のみを対象としていたが、これらに附随する業務に従事する者まで対象範囲を拡大することとした。

(注)2 従来は、放射線施設又は管理区域に立ち入る者を対象としていたが、これを管理区域に立ち入る者に限定することが実態に適合しているので、放射線施設に立ち入る者を除外した。
2 「管理区域随時立入者」管理区域に業務上立ち入る者(一時的に立ち入る者を除く。)であって、放射線作業従業者以外のもの。
(注)上記1の注2に同じ。
ロ 使用の基準
 使用の技術上の基準として、新たに次のものを加えることとした。
1 インターロックを設けた室内で放射性同位元素等を使用する場合には、室内に閉じ込められた者が速やかに脱出することができるような措置及びその室の搬入口、非常口等を閉鎖をする措置をとらせること。

2 密封された放射性同位元素を移動させて使用した後には、これについて点検し、異常があったときには必要な措置をとらせること。
ハ 保管の基準
 保管の技術上の基準として、新たに次のものを加えることとした。
 放射性同位元素を貯蔵箱等に入れて保管する場合にはこれをみだりに待ち運ぶことができないようにするための措置を講じさせること。

ニ 場所の測定
 放射線量率、粒子束密度及び放射性同位元素による汚染の状況の測定回数について、従来の一律的な規定を、密封されていない放射性同位元素、密封された放射性同位元素、放射線発生装置又は放射性同位元素によって汚染された物に区分し、それぞれの取扱いに応じて測定を行なうように改めた。

ホ 被曝線量の測定
 放射線施設に立ち入った者が受けた放射線量等の測定に関し、測定人体部位を、原則として胸部又は腹部とし、女子については腹部を必ず測定するよう改めた。
(注)従来は、まず原則として最も大量に被曝するおそれのある人体部位について測定することとしていたが、全身被曝を測定するのに最も通した部位である腹部又は胸部について測定することを原則とした。
ヘ 様式の改正
 使用施設等の技術上の基準、手数料等が改められたことに伴い、使用、販売業及び廃棄業の許可申請書等の様式を改めた。
(2)昭和35年科学技術庁告示第22号(放射線を放出する同位元素の数量等を定める件)の一部の改正
イ 放射性同位元素の定義
 自然に賦存する同位元素及びその化合物並びにこれらの含有物で固体状のものについては、放射性同位元素の定義に係る放射線を放出する同位元素の濃度に関しては、0.01マイクロキュリー毎グラムをこえるものとした。

ロ 自動表示装置及びインターロックの設置に係る放射性同位元素の数量
 放射性同位元素が使用中である旨を自動的に表示する装置を設けるべき密封された放射性同位元素の数量は10キュリーをこえるもの、インターロックを設けるべき密封された放射性同位元素の数量は3,000キュリーをこえるものとした。

ハ 女子の腹部に係る許容被曝線量
 放射線作業従事者である女子(妊娠可能年齢でない女子及び妊娠不能と診断された女子を除く。)の腹部に対する被曝の許容限度は、3月につき1.3レムとした。また、妊娠と診断された女子の腹部に対する被曝の許容限度は、妊娠と診断されたときから出産までの問につき1レムとした。

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