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放射線審議会の動き



 Ⅰ 放射線審議会に対する諮問

 放射線障害の防止に関する技術的基準について、人事院事務総長から放射線審議会会長あて下記のとおり諮問がなされた。

職厚-119   
昭和41年2月22日

 放射線審議会会長 殿

人事院事務総長

放射線障害防止の技術的基準について

 職員の放射線障害の防止について、別紙基準により人事院規則等を改正いたしたいので、放射線障害防止の技術的基準に関する法律(昭和33年5月21日法律第162号)第6条の規定に基づき諮問いたします。

職員の放射線障害防止に関する技術的基準

1 職員の被ばく線量の限度
(1)被ばく線量の限度は管理区域内で放射線業務に従事する職員に対する被ばく線量の限度とする。

(2)女子(妊娠可能年令でない女子及び妊娠不能と診断された女子を除く。以下同じ。)の腹に受ける線量の限度は3月に1.3レムとする。

(3)妊娠と診断された女子の腹に出産までの期間において受ける線量の限度は1レムとする。
2 被ばく線量の測定
(1)管理区域内での被ばく線量を測定することとする。

(2)女子については腹の被ばく測定を行なうこととする。
3 健康診断
(1)管理区域内で放射線業務に従事する職員に対して健康診断を行なうこととする。

(2)人事院規則10-4(職員の保健及び安全保持)(以下「規則10-4」という。)の改正に伴う字句の修正を加える。
4 放射線障害防止管理規程
 規則10-4の改正に伴う字句の修正を加える。

以 上

 Ⅱ 第20回放射線審議会総会

 第20回放射線審議会総会は、昭和41年3月2日、国立教育会館中会議室において開催されたが、議題および議事概要は次のとおりである。

1 議題
(1)アイソトープ部会の報告について
(2)放射線障害の防止に関する技術的基準の改正について(答申)
(3)放射線障害の防止に関する技術的基準について(人事院)
(4)放射性廃棄物の処分に関する検討打合せ会の報告について
(5)放射性廃棄物の海洋への処分に関する考え方について(具申)
(6)その他
2 議事概要
(1)アイソトープ部会の報告について
 昭和40年11月5日付40原第3891号をもって科学技術庁長官から諮問があった「放射線障害の防止に関する技術的基準の改正について」に関する審議結果が山崎部会長から報告された。

 同部会は、諮問の内容とともに現行政令規則および告示についても検討し、必要と思われる点について意見を述べることとした旨同部会長から報告があった。

(2)放射線障害の防止に関する技術的基準の改正について(答申)
 アイソトープ部会の報告に基づき、審議した結果を別項に示すとおり科学技術庁長官あて答申することが決定された。

(3)放射線障害の防止に関する技術的基準について(人事院)
 人事院は、1962年ICRP勧告等に伴い、人事院規則10-5(職員の放射線障害の防止)の一部を改正することとなり、上記Ⅰのとおり同事務総長から放射線審議会会長あて諮問してきた。

 同総会において、審議の結果、人事院の諮問案で適当であるとの結論を得たので、別項に示すとおり人事院事務総長に答申する旨決定された。

(4)放射性廃棄物の処分に関する打合せ会の報告について
 放射性廃棄物の海洋への処分について檜山委員から報告があった。

 Ⅲ 放射線障害の防止に関する技術的基準の改正について(答申)

41政審議第8号
昭和41年3月2日

 科学技術庁長官 上原 正吉殿

放射線審議会会長 木村健二郎

放射線障害の防止に関する技術的基準の改正について(答申)

 昭和40年11月5日付け40原第3891号をもって諮問のあった標記については、本審議会アイソトープ部会において昭和40年11月18日から昭和41年2月24日まで9回にわたって審議を重ねてきたが、昭和41年3月2日に開催された第20回総会において下記のとおり結論を得たので、答申する。

 おおむね、諮問案とおりで適当であるが、なお、次の点について考慮されたい。
1 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令改正案要綱について
(1)使用施設の主要な部分の耐火性について
 使用施設の主要な部分の構造については、耐火構造とし、又は不燃材料で造るよう表現を改めるべきであると考える。

(2)インターロックの配置について
 人が常時出入りする出入口にインターロックを設ける必要があるのは、3,000キュリーをこえる密封された放射性同位元素及び放射線発生装置を使用する室とすべきである。

 さらに、密封された放射性同位元素については、放射性同位元素の量が、上記の値以下であってもインターロックを設けることが望ましい場合には、その設置について行政指導を強化すべきである。

 ただし、十分しゃへいされた装置で使用する場合等、放射線障害の防止上インターロックを設ける必要がないと認められる場合には、その設置の義務を免除する必要があると考える。

 また、密封された放射性同位元素、放射線発生装置の使用中これらの使用室に人をみだりに立ち入らせないようにするための措置及びこれらの使用室に閉じ込められた者が速やかに脱出できるようにするための措置についても行為基準として規定すべきである。

(3)使用施設の出入口について
 使用施設の人が出入りする出入口を一箇所とする旨法文上規定することは、使用の実態に適合しないので、適当でない。

 なお、貯蔵施設及び廃棄施設の出入口についても、使用施設に準じて考えるものとする。

(4)空気を汚染するおそれのある放射性同位元素等の保管について
 空気を汚染するおそれのある放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された物を保管する室には、排気設備を設けさせることとするのが適当である。

(5)廃棄施設の耐火性について
 廃棄施設については、建築物であるもののみ耐火構造とし、又は不燃材料で造る旨規定するのが適当である。
2 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則改正案要綱について
(1)作業室から退出する際の汚染検査について
 作業室から退出する場合、人体、作業衣等の表面の放射性同位元素による汚染を検査し、除去する場所は、法文上、特に指定しないのが適切である。

(2)立入制限の措置について
 科学技術庁長官が定める線量率をこえる場所に人が立ち入ることを制限する旨の規定を設けることは、管理区域と競合する機能を持った区域を別に設けることとなるので望ましくないと考える。

(3)測定について
 密封されていない放射性同位元素の使用施設等の放射線量率及び粒子束密度の測定は、従来どおりとするのが適当である。なお、密封された放射性同位元素については、法文に定められている測定のほか、適宜、放射性同位元素の漏えいの有無等について点検するよう指導する必要がある。

 また、放射線施設に立ち入った者の受ける放射線量及び粒子束密度の時間積分量の測定は、まず体幹について行なうこととし、最も大量に被曝するおそれのある人体部位が体幹以外にある場合には、体幹のほか、その部位について行なうよう改めるべきである。

(4)健康診断について
 健康診断に関する規定のうち、問診の項目が改正されているが、健康診断について全般的に検討し、その検討結果により改正するのが適切であるので、今回は従来のままとしておくのが妥当である。
3 放射線を放出する同位元素の数量等を定める件改正案要綱について
 別表第1第3欄中の「許容濃度」は、「濃度」と改めるのが適切である。

 Ⅳ 放射線障害の防止に関する技術的基準について(答申)

41政審議第6号
昭和41年3月2日

 人事院事務総長 藤井貞夫殿

放射線審議会会長 木村健二郎

放射線障害防止の技術的基準について(答申)

 昭和41年2月22日付け職厚-119をもって諮問があった標記については、昭和41年3月2日に開催された第20回総会において審議したところ、貴案のとおりで適当であるとの結論を得たので、その旨答申する。

 Ⅴ 放射性廃棄物の海洋への処分に関する考え方について(具申)

41政審議第7号
昭和41年3月2日

 科学技術庁長官  上原正吉殿
 農 林 大 臣  坂田英一殿
 厚 生 大 臣  鈴木善幸殿
 運 輸 大 臣  中村寅太殿

放射線審議会会長 木村健二郎

放射性廃棄物の海洋への処分に関する考え方について(具申)

 本審議会は、放射線障害の防止に関する技術的基準に関連し、放射性廃棄物の処分、特にその海洋への処分の問題について深い関心を有している。

 本審議会においては、この問題に関する考え方について審議を行ない、下記のとおり意見をまとめたので、貴省(庁)においては、この趣旨を十分に考慮されるよう具申する。

 放射性廃棄物を海洋に処分する場合の基本的な考え方はこの場合においても、他の場合と同様に最大許容線量をこえないように国民を保護するとともに、原子力開発の健全な発展および水産資源の適正な保護を図ることである。

 放射性廃棄物を海洋に処分する場合にあっては、放射性廃棄物に含まれる放射性物質は、海水、水産物を経て人に摂取されうるものであり、放射性廃棄物の処分量、海水中の放射性物質の濃度、水産物中の放射性物質の濃度および水産物を摂取することによる人の被曝線量の間には、相互に密接な関係を有しているので、それらが、海水、水産物を経て人に摂取されるとき、それらによる障害を防ぐには、飲料水の最大許容濃度をそのまま海洋に処分する場合の許容される濃度としてあてはめるのは適当ではないと思われる場合がある。

 従って、このような場合には、放射性廃棄物に含まれる放射性物質の核種および性質、海水および水産物中の放射性物質の濃度、処分される放射性物質の数量ならびに放射性廃棄物の処分される地点について総合的に考慮を払い、最大許容線量をこえないようにすれば海洋処分による放射線障害から国民を保護することができる。

 これは原則的な考え方であるので、海洋処分に関する調査研究を十分に行なうことが必要であり、関係省庁は、行政的見地から所要の措置を講ずる必要があると思われる。

 Ⅵ 放射線審議会部会の議事概要

総括部会
第 2 回

〔日 時〕昭和41年3月2日(水)13:00~14:00

〔議 題〕
 1 「放射線障害の防止に関する技術的基準の改正について(人事院)」の取扱いについて
 2 測定部会の構成について
 3 その他

〔議事概要〕
 1 「放射線障害の防止に関する技術的基準の改正について人事院」の取扱いについて
 人事院は、1962年ICRP勧告等に伴い、人事院規則10-5(職員の放射線障害の防止)の一部を改正することとなり、改正案について放射線審議会会長あて諮問してきたが、その取り扱いについて検討した結果、医師である委員の意見を特に尊重する必要があるので、この旨会長に申し添えて、総会で審議することとした。

 2 測定部会の構成について
 測定部会は、これまでストロンチウム及びセシウムの分析法並びに放射能測定法について検討してきたが、ヨード分析法に関して構成について検討し、総会に諮ることとなった。

放射能測定部会
第 3 回

〔日 時〕昭和41年3月15日 14.00~17.00

〔議 題〕
 1 「放射性ヨウ素分析法」について
 2 その他

〔議事概要〕
 放射能測定部会は「セシウム-137分析法」を作成して以来、「放射性ヨウ素分析法についても、専門委員会にて検討(37回)を続け、その成案が本部会に提出されたので慎重審議の結果、次のとおり決定した。

 1 本「放射性ヨウ素分析法」は放射性降下物が主目的であることを、はしがきに明記する。
 2 本「放射性ヨウ素分析法」を5月開催予定の第21回放射線審議会総会に提出する。
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