放射能対策本部の動き


I 最近における環境および食品等の放射能汚染について

 雨水の全放射能は、昨年10月の中共の核実験後一時的に増加したが、11月、12月には従前の値に戻った。本年に入り、1月15日のソ連の地下核実験後、再び一時的に増加し、その月間降下量は最高477mc/km2(輪島)に達したが、全国平均では55mc/km2であった。これらの値は放射能対策本部でとりきめた緊急事態の第一段階(2,500mc/km2以上)と比較してはるかに低い値である。

 ストロンチウム−90の東京における月間降下量は昨年春以降漸次減少を示したが、10月にはやや増加し、その後は再び減少を示している。また昨年1年間における降下積算量は8.6mc/km2てあり、1昨年1年間の値19.1mc/km2と比較すると、半分以下になっている。なお、昨年12月までの総降下積算量は62.6mc/km2である。

 牛乳中のストロンチウム−90濃度は、昨年後半は大体横這いの状態を示したが、前半と比較すると減少している。

 日常食からのストロンチウム−90摂取量の全国平均値は昨年5〜6月に過去における最高値を示したが7〜8月にはやや減少している。水道水中のストロンチウム−90は従来どおり横這いの状態にある。これら食品中のストロンチウム−90は昨年後半から全体的にやや減少の傾向を示しているが、なお、全国的に環境および食品の放射能水準の調査を継続することとする。

放射能対策日誌

○4月28日
 第41回放射能対策本部幹事会
 環境および食品等の放射能汚染について(本部発表第23号)を検討、同日発表

〇5月15日
 第42回放射能対策本部幹事会
 中共の第2回核実験に対する放射能調査体制を強化した。

II 中共核実験に伴う放射能調査結果

 中共は、5月14日午前11時(日本時間)頃、中共西方地区上空で第2回目の原爆実験を行なった。これに対処し、放射能対策本部は、わが国民の放射線障害防止の立場から放射能観測に万全を期すこととし、防衛庁、気象庁および科学技術庁における放射能調査を強化した。放射能調査の結果は雨水については第1表、地表の浮遊塵については第2表に示す通りであり、5月20日頃一時高い値を示したが下旬後半にはほぼ平常の値に戻った。また、高空における浮遊塵も5月16日に八戸上空で、また18日には岐阜および福岡県上空で高い値を観測したが、24日頃から平常の値にもどった。これら放射能の降下状況は放射能対策本部の作成した暫定指数と比較しても放射能対策上問題となるものではなかった。

第1表 中共核実験に伴う雨水中の放射能測定結果(単位:mc/km2

第2表 中共核実験に伴う浮遊塵の放射能測定結果(単位:μμc/m3