原子力発電所における放射線障害の防止に関する技術的基準の制定について
電気事業法(昭和39年法律第170号)に基づき、原子力設備に関する技術基準を定める省令を別紙実のとおり制定したいので、同省令案中放射線障害防止に関する技術的基準について放射線障害防止の技術的基準に関する法律(昭和33年法律第162号)第6条の規定に基づき諮問します。
〔別添〕
原子力設備に関する技術基準を定める省令(内容省略)
外部放射線量等を定める告示(内容省略)
II 第16回放射線審議会
第16回放射線審議会は、昭和40年3月17日、国立教育会館において開催されたが、議題および議事概要は下記のとおりである。
1.議題
(1)原子力船特殊規則特別部会報告について
(2)原子力船における放射線障害の防止に関する技術的基準の制定について(答申)
(3)原子力発電所における放射線障害の防止に関する技術的基準の制定について(諮問)
(4)その他
2.議事概要
(1)原子力船特殊規則特別部会報告について
運輸省から諮問のあった「原子力船における放射線障害の防止に関する技術的基準の制定について」につき審議を行なった結果が矢木部会長から報告された。
同報告において、原子力船の放射性廃棄物の廃棄施設の基準について審議した際、現行の廃棄物の規制は、核種および濃度によって行なっているが、さらに数量や廃棄の場所等についても考慮すべきであるという意見があり、この問題は原子力船だけでなく、全般的な問題であるので、放射線審議会においてその取り扱いについて検討してほしい旨要望があった。
これについて審議の結果「放射性廃棄物処分に関する検討打合せ会」を設け、本問題について検討を行なうこととなった。なお、同打合せ会の構成は、次のとおりである。
放射性廃棄物の処分に関する検討打合せ会の構成
○山崎文男 理化学研究所主任研究員
○嵯峨根遼吉 日本原子力発電(株)常務取締役
○檜山義夫 東京大学教授
○田島英三 立教大学教授
○西脇 安 東京工業大学教授
西掘栄三郎 日本原子力船開発事業団理事
三宅泰雄 東京教育大学教授
伊沢正実 科学技術庁放射線医学総合研究所化学研究部長
大山 彰 東京大学教授
田島弥太郎 文部省国立遺伝学研究所形式遺伝部長
左合正雄 東京都立大学教授
高島洋一 東京工業大学教授
丸山正偏 原子燃料公社再処理準備室課長待遇
吉沢康男 東京大学助教授
佐伯誠道 科学技術庁放射線医学総合研究所環境汚染研究部第一研究室長
坂岸昇吉 日本原子力研究所保健物理安全管理部次長
(注)○印は放射線審議会委員である。
(2)原子力船における放射線障害の防止に関する技術的基準の制定について(答申)
原子力船特殊規則特別部会の報告について審議が行なわれ、放射線作業に直接従事する者が常時作業する場所の放射線防護基準の規定の仕方に関して修正がなされ、別項のとおり運輸大臣に対する答申がまとまった。
(3)原子力発電所における放射線障害の防止に関する技術的基準の制定について(諮問)
昭和40年2月15日付40公第1180号でもって、通商産業大臣から放射線審議会会長あて、「原子力発電所における放射線障害の防止に関する技術的基準の制定について」の諮問があった。
これは、通商産業省において、電気事業法に基づき原子力設備に関する技術基準を定める省令を制定するにあたり、同省令中の放射線障害防止に関する技術的基準について審議会に諮問を行なったものである。審議会としては、原子力発電基準特別部会を設置して審議を付託することが決定された。なお、原子力発電基準特別部会の構成は、次のとおりである。
原子力発電基準特別部会の構成
委員
矢木 栄 東京大学教授
田島英三 立教大学教授
島 史朗 (株)日立製作所中央研究所王弾寺支所長
江藤秀雄 科学技術庁放射線医学総合研究所障害基礎研究部長
嵯峨根遼吉 日本原子力発電(株)常務取締役
牧野直文 日本原子力研究所保健物理安全管理部長
檜山義夫 東京大学教授
専門委員
佐伯誠道 科学技術庁放射線医学総合研究所環境汚染研究部第一研究室長
山田太三郎 工業技術院電気試験所電力部長
村主 進 日本原子力研究所東海研究所動力試験炉管理部第4課長
浅田忠一 日本原子力発電(株)技術部次長
都甲泰正 東京大学助教授
飯田正美 関西電力(株)原子力部長
三島良績 東京大学教授
川崎正之 日本原子力研究所動力炉開発計画部長
久田俊彦 建設省建築研究所第三研究部長
III 原子力船特殊規則の制定について(答申)
原子力船における放射線障害の防止に関する技術的基準の制定について(答申)
昭和39年9月26日付舶原第88号をもって当審議会に諮問のあった標記については、原子力船特殊規則特別部会を設け、昭和39年11月12日から昭和40年2月24日まで7回にわたって審議を重ねてきたが、昭和40年3月17日に開催された第16回総会において下記のとおりその結論を得たので、答申する。
おおむね貴案のとおりで適当であると考えるが、なお、次の点について考慮するのが適当である。
1.本規則の適用範囲について
推進機関に軽水減速軽水冷却型原子炉を使用する船舶に対してのみ適用することを明確に規定すること。
2.船舶の一般的安全について
海上で船舶が受ける動揺、傾斜、衝撃、振動等によって原子炉施設が破損し、またはその機能を果たすことができなくなることがないようにすることを原子炉施設全般に適用させるような規定を加えること。
3.放射性廃棄物の定義について
誘導放射能による汚染も含まれるような定義とすること。
4.事故状態における連鎖反応について
原子炉装置は、事故状態においても無制御の連鎖反応を生じないものであることを規定すること。
5.制御装置の誤操作について
制御装置の故障の場合だけでなく、誤操作の場合もあわせ規定すること。
6.事故時の操作について
原子炉装置の事故の発生前だけでなく、発生後もあわせ規定すること。
7.格納容器を貫通する管の弁について
格納容器を貫通する管の弁は、格納容器の貫通場所で格納容器から外に漏洩しないものであることを規定すること。
8.放射線障害防止のための設備について
放射線障害防止のための設備については、次のように規定すること。
(1)放射線作業に直接従事する者が常時作業する場所は、そこで作業する者が許容される値をこえて被曝しないように施設すること。
(注)常時作業する場所とは、労働時間の大部分にわたって作業する場所をいい、従事者の被曝量を許容される値以下になるように設けられるものである。
(2)管理区域の設定を考慮して、諸施設を配置すること。
(3)前各号の場合にあっては、外部線量、内部線量を複合して計算すること。