原子力局

原子炉等規制法の一部改正要綱について


 政府は、第48国会に標記原子炉等規制法の一部を改する法律案を提出し、現在(3月19日)衆議院において審議中であるが、以下、その内容を要綱に即して述べることとする。

1.原子炉を設置した船舶で日本の国籍を有する者および日本の法令により設立された法人その他の団体以外の者が所有するものを本邦の水域に立ち入らせようとする者は、当該外国原子力船の立入りに伴い原子炉を本邦内において保持することについて、内閣総理大臣の許可を受けなければならないこと。

〔解説〕従来、わが国において原子炉を設置しようとする者は、第23条第1項により内閣総理大臣の許可を受けなければならないものとされているが、外国において、外国人等が設置した原子炉をわが国に持ち込むことの規制が本法上規定されているかどうかについては、解釈上明らかでなかった。したがって、この場合についても、内閣総理大臣が設置の許可の場合と同様に規制することを明らかにしたものである。

2.前項の許可を受けようとする者は、船舶の名称等一定の事項を記載した申請書を内閣総理大臣に提出しなければならないものとすること。

〔解説〕原子炉の設置の許可の場合にも、ほぼ同様の記載事項の申請書を提出することとなっているが、本改正で特に要求される事項は、原子力損害を賠償するための措置および船舶の名称に係るものである。

3.内閣総理大臣は、第1項の許可の申請があった場合においては、その申請が原子力損害を賠償するに足りる措置が国際約束により講ぜられていること等一定の基準に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならないものとすること。

〔解説〕外国原子力船の寄港であっても、それが本邦内における原子力利用である以上、平和目的に適合していること等のほか、前項でも述べたように、原子力損害を賠償するに足りる措置が私的にではなく国際約束により講ぜられていること等を一定の基準として規定したものである。

4.外国原子力船運航者は、申請書記載事項を本邦内において変更しようとするときもしくは本邦外において変更した後、外国原子力船を本邦の水域に立ち入らせようとするときは、その変更について、内閣総理大臣の許可を受けまたは内閣総理大臣に届け出なければならないものとすること。

〔解説〕現行法第26条に平仄を合わせたものであるが、同条と異なるのは、外国原子力船が一旦本邦外に出た後、記載事項を変更した場合には、事前ではなく、再度本邦を訪れようとするときに変更の許可等を要するものとした。ちなみに、第1項の許可は、継続的な効果をもつものである。

5.内閣総理大臣は、原子炉設置者または外国原子力船運航者が本法または港則法による内閣総理大臣、運輸大臣等の処分に違反したとき等においては、原子炉の設置の許可または外国原子力船に設置した原子炉に係る許可を取り消すことができるものとすること。

〔解説〕内閣総理大臣が原子炉設置者に対し、第23条第1項の許可を取り消し得る等の場合に、新たに港則法違反の場合を加えるとともに、外国原子力船運航者に対し、第23条の2第1項の許可を取り消し得る場合を新たに規定したものである。

6.原子炉設置者および外国原子力船運航者は原子力船を本邦の港に立ち入らせようとするときは、あらかじめ内閣総理大臣に届け出なければならないものとし、内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、運輸大臣に対し原子炉設置者または外国原子力船運航者が核燃料物質、核燃料物質によって汚染された物または原子炉による災害を防止するために講ずべき措置に係る事項を通知するものとすること。

〔解説〕第1項で述べたとおり、外国原子力船運航者は、外国原子力船を本邦水域に立ち入らせる際に、その保持する原子炉について内閣総理大臣の許可を受けなければならないが、本邦の港に立ち入らせようとする場合には、さらに内閣総理大臣に届け出なければならないものとした。第1項の許可は、原子炉の安全性等について言わば一般的、抽象的に与えられるものであるが、原子力船の災害の評価は、個別の港ごとに具体的に行なわれるものであり、災害を防止するために必要な具体的措置も個別港ごとに定められるものである。したがって、本項により、国内原子力船も含め、初めて港における原子力船に対して講じさせる措置が明らかになりうるものであり、内閣総理大臣は、その措置に係る事項を運輸大臣に通知することとしたものである。

7.運輸大臣は、前項の通知があった場合においては、原子炉設置者または外国原子力船運航者に対し、災害を防止するために必要な措置を講ずべきことを命ずるとともに、前項の届出に係る港の港長等に対し、海上保安庁長官を通じ、当該原子力船の航行に関し必要な規制をすべきことを指示するものとすること。

〔解説〕運輸大臣は、必要があると認める場合には、直接に原子炉設置者または外国原子力船運航者にタグボートの用意、炉の出力制限、強制水先等について命令するほか、間接に海上保安庁長官を通じ港長等に原子力船の停泊場所、航路、航法等について必要な規制をすべきことを指示することとしたものである。

8.以上のほか、附則において港別法の一部を改正し、港長等は運輸大臣の指示があったときまたは災害を防止するために必要があると認めるときは、港内または港の境界付近にある原子力船に対し、所要の措置を講ぜしめること。

〔解説〕現行港則法は、船舶の入出港、航路、航法等について規定しているが、原子力船について規制内容を通常の船舶より拡充するとともに、その規制を特定港以外の港に及ぼしたものである。