原子力委員会

動力炉開発懇談会の開催


原子力委員会は、39年10月7日の第32回定例委員会において、別記「動力炉開発計画の再検討について」の趣旨の下に、総合的見地からわが国の動力炉開発計画を再検討し、国情に適した基本方針の策定に資するため、下記の通り動力炉開発懇談会を開催し、学識経験者の意見を求めることを決定した。
 なお、本懇談会の構成員については、10月21日第34回定例委員会において決定した。


動力炉開発懇談会について

1.開催の目的
 わが国の動力炉開発については、「原子力開発利用長期計画」にその方向が示されているが、総合エネルギー政策の立場から、原子力発電の開発がますますその重要性を増しつつある事情にかんがみ、最近の世界各国における動力炉開発の成果と見通しを適切に反映させつつ、総合的な見地から在来型導入炉、国産動力炉、高速増殖炉等の開発推進方策を再検討し、今後の基本的方針の策定に資することとする。

2.審議の内容
 上記の目的を達成するため、核燃料事情を含め、最近の諸情勢を考慮して、在来型導入炉から高速増殖炉にいたる各種動力炉の研究開発計画の基本的な構想の検討を行なう。検討にあたっては、政府および民間の役割、財政負担、技術者の確保、国際協力等について考慮し、また、開発の体制、規模、速度等の面で各計画相互の関連についても配慮する。

注1.動力炉開発専門部会および高速増殖炉懇談会の今後の運営については、本懇談会の結論をまつこととする。

注2.本懇談会の審議終了時期については、40年4月を目途とする。

3.懇談会の構成

(1)担当委員

兼重委員
武田委員

(2)懇談会構成員

荒川  康夫   電力中央研究所理事
石原  武夫   電気事業連合会副会長
一本松 珠き   日本原子力発電(株)社長
今井  美材   原子燃料公社理事長
大堀  弘    電源開発(株)副総裁
大山  彰    東京大学教授
瀬藤  象二   日本原子力事業(株)社長
田中  直治郎  東京電力(株)常務取締役
丹羽  周夫   日本原子力研究所理事長
松根  宗一   日本原子力産業会議副会長
宮本  淳    通商産業省公益事業局長
向坊  隆    東京大学教授
山田  太三郎  工業技術院電気試験所電力部長
和田  恒輔   富士電機製造(株)会長

(別記)

動力炉開発計画の再検討について

1.従来からの経緯
 わが国の動力炉の研究関発は、原子力委員会が36年2月に策定した「原子力開発利用長期計画」(以下「長期計画」という。)の研究開発計画の方針に沿って進められてきた。すなわち、長期計画の前期10年間に導入される在来型炉の改良および国産化については、主として民間の研究開発および技術導入によって行なうこととしている。後期10年の半ば頃に実用化の見込みの高い新型炉の開発については、主として国が中心となって行なうこととし、37年8月以降、動力炉開発専門部会においてその具体的な計画の検討を行ない、38年6月原子力委員会は、「国産動力炉の開発の進め方」を決定した。国産動力炉の開発は、国内技術を基盤とし将来性の期待できる型式の動力炉を自らの手で設計から建設まで一貫して開発することを目的とし、あわせてわが国の技術水準の向上をはかることとし、核燃料の有効利用と供給の安定化を重視する見地から重水減速炉の開発を進めることとした。この決定に基づき、目下、日本原子力研究所において開発すべき炉型の選定のための作業を進めている。高速増殖炉の研究開発については、日本原子力研究所において炉物理等基礎研究を進めてきたが、今後における高速増殖炉の研究開発の基本方針の策定のために39年2月以降高速増殖炉懇談会においてその予備的検討が行なわれてきた。
 また、動力炉の開発計画と表裏の関係にあるプルトニウム燃料の研究開発については、後期10年の前半において熱中性子炉への実用化を、後期10年の後半において高速中性子増殖炉への実用化を目標として、日本原子力研究所および原子燃料公社において、プルトニウム研究施設の整備を図ってきたが、将来におけるプルトニウムの核燃料への利用に関する具体的な計画の策定については、38年4月以降、プルトニウム専門部会において検討を進めてきた。

2.内外の状況
 原子力発電の開発については、長期計画に示された前期10年を発展段階とし、その推進を図るという基本的考え方に沿って着実に進められているが、通商産業省産業構造調査会総合エネルギー部会においても、38年12月の報告において、原子力が近い将来においてエネルギー供給源の有力な担い手となるべきであるという認識に立って、着実、かつ、積極的に原子力発電の開発を進める必要性が強調され、エネルギー事情よりみた動力炉の開発の方向についての考え方が明確にされた。
 一方、先進諸国における動力炉開発については、従来よりそれぞれの国情に基づき開発が進められているがその状況と方向は、高速増殖炉の開発が、その実用化にかなりの時間を要する見通しにあること、およびその開発の方向が大型希釈炉心の形式に発展される見通しにあること等から、今後実用化される見込みの高い新型転換炉の開発は高速増殖炉の開発に並行して、強力に推進されていることが最近開催されたジュネーブ会議の報告等からこれまで以上に明らかにされた。また、核燃料事情についても、米国における特殊核物質民有化法の成立により濃縮ウランの入手は一層容易になる見通しになってきている。

3.動力炉開発計画の再検討
 動力炉開発の基本方針を示した長期計画は、策定後約4年を経過し、その間に諸外国におけ開発の情勢が従来にもまして明らかになり、また、動力炉開発の国内体制の確立の必要性が高まりつつある。したがってこの時点においてわが国の在来型炉から高速増殖炉にいたる各種動力炉の開発推進方策を再検討することが必要であると考える。このため、動力炉開発懇談会を開催して、学識経験者の意見を求めることは、新しい情勢に対応した動力炉開発に関する基本的構想の確立を図る上から極めて有効であると考える。
 検討にあたっては、政府および民間の役割、財政負担、技術者の確保、国際協力等について配慮し、また開発の体制、規模、速度等の面で各計画相互の関連についても十分配慮する必要があると考える。