1.まえがき 本年10月1日に科学技術庁水戸原子力事務所も開設以来1年を迎えるが、水戸原子力事務所における業務の3本の柱の1つである放射線監視業務のうち、1つの手段として行なっているモニタリングカー(放射線監視車)による原子力施設周辺の放射線の観測の概況を紹介する。 2.観測網 当初、日本原子力研究所の8ヵ所のモニタリング・ステーションとの関係位置、地形、気象条件、人口集密地域等を勘案して、測定地点31地点ではじめられたが、その後地元の要望等もあり、現在では35地点に増え、さらに10月以降は原子力研究所大洗研究所予定地周辺のバックグランド測定地点を増加し、36地点になる予定である。一方施設者側としてもこの間、日本原子力発電(株)のモニタリング・ステーションが3ヵ所設置され、東海地区の放射線観測網は一層充実されつつあるといえよう。
第1図
3.測定種目 当初は、測定種目別として、パルスハイトアナライザー(256チャンネル)の核種判別もふくめ、第1種から第5種までであったが、第1種測定の内容の充実、すなわち、シンチレーション・カウンターによる空間線量率(γ)の測定、ならびに浮遊塵埃の測定の場合の吸引空気量を約2万lに増加したため当初の第1種測定地点を分け、新たに第6種測定を設け、現在では第1種測定が16ヵ所、第6種測定が14ヵ所となっている。運行計画と測定種目別の関係は第1表のとおり。
(第1表) 昭和39年度第3四半期運行計画
4.機器ならびに車両の整備 機器については39年度予算にて、GM式とシンチレーション式のサーベイメーター、各1台増設し、海水処理測定用器、試薬も備える予定になっている。 5.測定結果 現在のところ、測定の対象は イ、空間線量率(γ、β+γ) ロ、塵埃濃度(β) ハ、湖沼、河川水濃度 ニ、施設の排水濃度 ホ、気象観測(気圧、気温、湿度、風) となっているが、ここではこれらについての概略をのべる。 a)空間線量率(γ): 第2図に地域分布を示す。測定時刻は午前11時±1時間の測定値。測定値としては、宇宙線成分を含み、7〜9μr/hr位である。 b)浮遊塵の放射能: c)湖沼・河川水濃度: d)日本原子力研究所、原子燃料公社における排水口の水濃度: e)気象観測: 6.むすび また、水戸原子力事務所としては、39年度において、データ伝送装置が稼働を開始(40年3月からの予定)し、原研モニタリング・ステーションのデータも刻一刻入手できるようになるので、今後はこれらと関連をもった放射線監視を行なうべくモニタリングカーも40年度からは走行中でも空間線量率を測定しうる装置を備えるよう予算要求するなど、整備充実を計画している。 (注)b)、c)、d)、における測定値の処理は、2σ以下の時は検出限界以下としている。
第2図
第3図 月別平均空間線量率 第4図 地表付近における浮遊塵の放射能
第5図 |