原子力船に搭載する原子炉の型式について



 最近における海外諸国、特に米国における舶用炉の開発状況にかんがみ、原子力委員会は、去る6月兼重、武田両委員を米国に派遣し、その状況を調査せしめた。
 同委員会は、両委員の報告に基づいて検討を行なった結果、7月22日原子力第一船に搭載する原子炉の型式について以下のような決定を行なった。

1.原子力委員会は、さきに策定した原子力開発利用長期計画において、原子力船はおそくとも昭和50年頃までには、その経済性が在来船に匹敵しうることを期待し、同計画のいわゆる前期10年間(昭和45年頃まで)において後期の発展に備え、原子力船建造技術の確立、運航技術の習熟、技術者および乗組員の養成訓練等に資するため、原子力船一隻を建造し、運航せしめることとした。

2.当委員会は、この線に沿い昭和38年7月に決定した原子力第一船開発基本計画において、原子力第一船の設計と建造は、搭載する原子炉も含めて可能なかぎり国内技術によって行なうこと、その安全性の確保については慎重に検討し万全を期するものとすること、また、搭載する原子炉は軽水冷却型とすること等を定めた。

3.最近における海外諸国、特に米国における舶用炉の開発状況にかんがみ、当委員会は去る6月兼重、武田両委員を米国に派遣し、その状況を調査せしめた。両委員の報告によれば、

(1)現在新型舶用炉として注目をひいている米国GE社のガス冷却型630A炉は、将来すぐれた舶用炉となる可能性を有していると認めるが、なお安全性の検討および運転経験の蓄積を図るため、現在同炉の陸上原型炉の建設が計画されている段階にある。

(2)その製作に関して、わが国の国内技術を活用する程度については、現在なお見通しが得られない。

(3)同炉の使用燃料は濃縮度90%を超える高濃縮ウランであるが、その入手およびその使用済燃料の再処理について現在明確な方針をたてることが困難である。

4.当委員会は、将来における舶用炉として630A炉等の新型炉を考えるにしても原子力第一船の開発の基本的考え方からみて、この際従来の方針を変更する必要はないものと考える。