原子力委員会

動力試験炉の発電成功

原子力委員会委員長談話を発表
10月26日


 日本原子力研究所の動力試験炉(JPDR熱出力45,000kW、電気出力12,500kW)は、8月22日臨界に達し去る10月11日から出力上昇試験を続けてきたが、25日夕刻から発電試験を開始した。
 同試験の作業は、順調に進み、26日午後4時59分熱出力10,000kWにおいて発電を開始し、5時12分には、電気出力2,000kWに到達し、発電試験は成功した。
 本試験炉の発電開始に際して、原子力委員会委員長から次のような談話が発表された。
 なお、今後は漸次出力を上昇させ、12月中には定格出力において100時間の連続試験運転を行ない日本側に引き渡される予定である。

 原子力委員会委員長談話
 本日午後4時59分、わが国ではじめての原子力による発電が日本原子力研究所東海研究所で開始されました。去る8月22日12時41分臨界実験に成功した同研究所の発電用試験炉が、その後いくつかの試験を終えて本日ここに歴史的な輝かしい灯をともし、原子力の平和利用を実証したわけであります。
 わが国が原子力の研究、開発およびその利用に着手して以来未だ10年に満たず、当初は欧米先進諸国にくらべはるかに遅れておりましたが、爾来政府民間が一致協力し努力してまいった結果、急速な進展を遂げ、その成果がさきに完成した国産技術による国産1号炉となり、また本日の歴史的な原子力発電の実現となって実を結んだ次第でありまして、わが国の原子力開発史上その意義はきわめて大きく、まことに喜びにたえないところであります。
 この原子炉は、米国から購入したものでありますが、その建設は日本原子力研究所をはじめ民間産業界の協力の下に行なわれたものでありまして、今後わが国の原子力開発の上に大きな役割を果すこととなると思います。
 この発電用試験炉に続きまして、昭和40年の春には現在茨城県東海村に建設中の日本原子力発電株式会社の発電1号炉によります商業発電が開始される予定であり、引続き同社および関西電力、東京電力、中部電力における発電計画が具体化されつつあり、昭和45年度までには百万キロワットを上回る原子力発電が開始される見通しとなっております。
 原子エネルギー利用の大きな柱は、原子力発電と原子力船であるといわれておりますが、原子力船につきましては、わが国はすでにその具体的な開発に着手いたしました。原子力発電につきましても、本日を契機といたしまして今後なお一層の努力を払い、関係各位のご協力のもとに、この2つの柱を中心にわが国の原子力の研究、開発およびその利用をますます発展させ、ひろく人類の福祉につながる原子力の開発に貢献いたしたいと念願するものであります。

    昭和38年10月26日

原子力委員会委員長

佐藤栄作