昭和37年度原子力年報について


 原子力委員会は、昭和31年に発足して以来、毎年1回、原子力委員会の活動を中心に、わが国の原子力平和利用の進展の跡を顧み、また今後の飛躍に備えるため、年報を公けにしてきた。ここに公表するのは、昭和37年度を中心とした第7回原子力年報であって、その期間の内外の原子力に関する動向を述べる第1章総論以下9章からなる。その概要は下記のとおりである。


1.海外の動向

 昭和37年度の世界の動きとしては、

(1)とくに欧州における数年来のスローダウンが終り、昨年の夏から各国の原子力発電所の建設が活発となってきたことが挙げられる。

(2)また、米国においても、米国原子力委員会が昨年大統領に提出した答申には、同国の原子力開発の将来にとって、明るい見通しと希望が盛られており、さらにニューヨークの市内に設ける100万キロワットの原子力発電所の計画が登場したことは、米国における原子力発電の積極化を物語っている。

(3)そのほか、2、3の低開発国でも原子力発電所の建設が具体化し、世界的に、原子力の開発が新たな活動期あるいは開発の第2期とも呼ぶべき新時代を迎えつつあるとみられるのが、この1962年の特徴ということができる。

(4)つぎに、新型式動力炉の開発については、原子燃料の有効利用の立場から、将来の開発目標として高速増殖炉が強調され、また高速増殖炉の実用化までの過渡的期間を埋め、さらに、その後においても発展を期待しうる転換炉が重視された。

2.国内の動向

 昭和37年度の国内の動きとしては、

(1)まず第一に多年にわたって関係諸機関が協力して建設してきた日本原子力研究所の国産一号炉が完成し、

(2)また、原子力船、放射線化学等の開発の基礎が築かれ、国産動力炉の開発についても検討が進められた。

(3)原子力発電については、日本原子力発電(株)が、東海発電所に続く第2号発電所を福井県に建設することを決定した。また、これと相前後して、3電力会社が各々30万キロワット前後の原子力発電所を建設する計画を明らかにし、原子力委員会が45年までの原子力発電の目標としている100万キロワットの実現に、明るい見通しを与えた。

(4)一方、国際協力の面においては、米国、英国、フランスとの協力が推進されるとともに、アジア太平洋原子力会議が、わが国の主催の下に開催され、アジア太平洋地域における国際協力のきっかけを作ることができた意義は高く評価されている。

3.各論

 以下、第2章においては、動力利用の題のもとに、原子力発電、原子力船にふれ、第3章は研究炉、第4章は、核燃料、材料および機器、第5章は放射線の利用について述べ、第6章では、放射線安全として、原子炉の設置、運転ならびに核燃料物質、アイソトープの取扱にともなう安全性について述べ、第7章では、核実験に伴う放射能調査と対策について述べている。第8章では、国際協力について、第9章では、科学技術者の養成および原子力知識普及活動について述べている。