原子力局

昭和38年度原子力平和利用研究委託費
および研究費補助金の交付決定



 昭和38年度原子力平和利用研究委託費および同研究費補助金については、さる3月1日試験研究題目(または課題)および申請書の提出期間について官報に告示し(本誌第2号参照)、3月30日申請を締め切った。その申請状況については、すでに第4号で紹介したように委託費については申請件数33件、委託費交付申請額365,040,645円、補助金については申請件数50件、補助金交付申請額413,351,846円であった。
 その後、書類審査、申請内容説明聴取、関係機関との意見交換、日本学術会議の推薦する学識経験者からの意見拝聴等の過程をへて、局原案を作成し、原子力委員会の了承をえたのち、現地調査を行ない、6月17日の科学技術庁庁議において次のとおり決定し、6月21日付交付を行なった。
 すなわち委託費については20件、委託費の額157,667,513円、補助金については24件、補助金額151,540,000円である。

 昭和38年度原子力平和利用研究委託費および同研究費補助金交付総括表

  1.委託費


  2.補助金



昭和38年度原子力平和利用研究委託費交付一覧表


昭和38年度原子力平和利用研究費補助金交付一覧表


昭和38年度原子力平和利用研究費託費交付研究の概要

1.「原子炉配管系の耐要設計法に関する試験研究」

(社)日本機械学会

(研究目的)
 昭和37年度原子力平和利用委託研究によって、配管系の固有値、規準関数を求めるプログラムを開発し、機械構造物の地震時の応答の研究を行なったが、さらに原子炉配管系の地震時における震動の推定法を実験の耐震設計する場合のパラメータについて研究を行い、それを基礎とした配管系の動的耐震設計法を進展させる。

(研究内容)

(1)配管系の応答推定計算と実地試験
 適当な火力発電所配管をとりあげ、大型計算機によって固有値、規準関数等の振動性状を求める一方、同一配管の振動実験を行なって確かめ、理論と実験結果と比較検討し、応答推定計算を行なう。

(2)配管系の自己減衰定数の測定
 配管系の振動解析に必要なパラメータとしては自己減衰定数があるが、これは理論的に解明できないので実地試験によって配管系の形状の違いによる自己減衰定数を求め、耐震設計上の資料を得る。

(3)基礎的計算
 地震の波形は耐震設計上重要なパラメータであるが地震記録について地盤特性との関連を解析して標準地震を得るための基礎的計算を行なう。
 また、配管の応答についてデジタル計算機による耐震計算法を研究する。

2.「原子炉用圧力容器冷却管取付部の構造強度に関する試験研究」

(社)日本機械学会

(研究目的)
 原子炉用圧力容器の構造設計基準の確立を計ることや最終目的として、とくに重要とされる冷却管取付部分につき各種応力解析、強度解析を問題として取り上げ、基礎研究から実物、模型試験に至る一連の研究を行なう。

(研究内容)

(1)構造強度に関する理論的解析
 弾塑性的理論解析を行ない、冷却管取付部分の応力分布を推定し得る計算法を作る。また、これによってノズルの形状の設計改良を検討する。

(2)実験的応力解析
 多数ノズルをつけた光弾性模型を作り応力解析をするとともに、金属模型を製作し、内圧、外力および熱負荷による応力、歪みの分布を求める。以上の研究によりノズルの形状と応力分布の関係を理論的に究明し、光弾性応力測定結果と比較して、当該部の強度推定の資料を提供する。

(3)圧力容器模型の内圧に対する実験的強度解析
 冷却管2個を付した約1/4規格の圧力容器模型を用い、それに内圧を加えるとき発生する各部の応力と変形を比較し、冷却管取付部の応力集中および変形の状態を調べる。

(4)高応力疲労に関する研究
 小型鋼製模型に各種形状寸法の冷却管を取り付け、静圧下における応力解析繰り返し内圧疲労試験を行ない、冷却管取付部の塑性変形量、高応力疲労強度、熱疲労強度を推定する。

3.「原子炉構造用鋼溶接部の非破壊検査像とその機械的強度との関連性に関する試験研究」

(社)日本溶接協会

(研究目的)
 前年度の委託研究においては、原子炉構造用鋼溶接部の欠陥検出の最適条件を求めたが、これを基礎として今年度は検出された非破壊検査像とその溶接部の磯城的強度との関連性を求めて非破壊検査判定基準の基礎資料を得る。

(研究内容)

(1)基礎研究
 欠陥形状とその位置による応力集中の解析および格子欠陥が機械的強度に及ぼす影響について研究する。

(2)溶接部欠陥が機械的強度に及ぼす影響に関する研究各種欠陥を含んだA302B鋼板の突合せ溶接試料の非破壊検査結果と機械的性質の相互の関連性を求める。

○常温および高温引張試験
○静的曲げ試験
○衝撃曲げ試験
○脆性亀裂発生試験
○低サイクル疲労試験
○常温および高温疲労試験
○高温クリープ試験

 また、管材突合せ溶接部についてはSTB.39管材を使用し、非破壊検査結果と引張試験との関連性を求める。

4.「軽水型動力炉の安全性確保のためのステンレス鋼の耐食性試験法に関する基礎的試験研究」

(財)日本学術振興会

(研究目的)
 本研究は、昨年度に引き続いたものであるが、本年度としては、ステンレス鋼の応力腐食に及ぼす影響因子のうち、水のpH、溶存酸素量および添加イオン濃度を重点的にとりあげ、前年度に得られた結果と総合して検討し、腐食とその影響因子の関連性を解明する基礎資料を得る。

(研究内容)

(1)試験用材料の確性試験(予備試験)
 通常の材料試験(分析、強さ、耐食性)および応力腐食試験

(2)応力腐食発生の条件環境因子および材質と応力腐食発生との関連を調べるとともにステンレス以外の金属についても並行して行ない、比較検討する。

(3)応力腐食試験法
 割れ計測法の改善および試験用水中の溶存酸素測定法などの検討を行なう。

(4)高温純水腐食の基礎研究
 高温純水による応力腐食発生機構の検討を行なう。

5.「軽水型原子炉の炉心スプレーに関する基礎的試験研究」

日本原子力事業(株)

(研究目的)
 軽水型原子炉の冷却材喪失事故時における炉心スプレーの効果を確かめるためスプレーノズルの形状配置、スプレー流水に対する熱伝達、冷却材放出現象等を検討して事故解析の基礎資料を得る。

(研究内容)

1.基礎実験
(イ)スプレーノズルの形状配置の研究
 分布の燃料棒冷却に及ぼす最適な形状配置をえらぶための実験を行なう。

(ロ)加熱棒のスプレー熱伝達の研究
 単一加熱棒または加熱棒群に対しスプレーを行なった場合の管壁温度の時間的変化、被覆管と燃料体との間の熱抵抗等の計算に必要な数値を実験的に求める。

2.基礎的解析
 非定常2次元の燃料棒温度、容器内の圧力変化およびその水位等の計算法を検討し、最終的にそれらを組み合わせた総合的な事故解析を行なう。

6.「軽水型原子炉の冷却材喪失事故にともなう炉心および格納容器内の冷却に関する基礎的試験研究」

(株)日立製作所

(研究目的)
 軽水型原子炉内冷却材喪失事故時における諸現象スプレーの炉および格納容器内非常冷却に関する現象ならびに有効性を把握確認し、関係因子の効果を明らかにし、現象の理論解析を行なう。これにより事故解析のための基礎的総合資料を得る。

(研究内容)

1.非凝縮気体混在時の熱伝達
 蒸発器から絶えず一定量蒸気を凝縮伝達試験部に送り試験部において定常的に蒸気を凝縮させ非凝縮気体が混在する場合の混合体の組成と熱伝達係数の関係、圧力の効果を実験的に求める。

2.炉心スプレー効果の基礎的研究
 常圧下において燃料を模擬した単一加熱棒群についてスプレー熱伝達特性を求める。

3.小規模模型による冷却材放出現象把握
 1/5モデルの圧力容器、1/10モデルの格納容器を放出管で連結し、1次冷却系破損時のエネルギー放出過程の現象を把握するとともに炉心スプレー、格納容器スプレーの効果を求め、あわせて理論解析を行なう。

4.総合解析
 以上のような実験結果に基づいて、総合的な解析を行なう。

7.「原子炉格納容器の機能に関する基礎的試験研究」

三菱原子力工業(株)

(研究目的)
 軽水型原子炉冷却材喪失事故時における格納容器内のスプレーによる水洗効果、貫通部の機密性の効果、スプレーによる圧力減少効果等の検討により、格納容器の機能に関し事故解析のための基礎的資料を得る。

(研究内容)

1.格納容器スプレー効果の基本事項の確認
 試験容器内に冷水をスプレーするモデル試験を行ない、沃素水洗に対するスプレー効果を検討する。

2.電気ケーブルの格納容器貫通部における漏洩に関する基礎研究貫通部模型を試作し、温度、圧力を変化してその漏洩量を確認する。また高温サイクルを与えて劣化状況についても検討する。

3.基礎的解析
 事故時の格納容器内の現象、スプレー動作時の圧力減少、沃素水洗効果等について理論解析を行なう。

8.「原子炉から放出される放射性物質の拡散沈着に関する試験研究」

(財)気象協会

(研究目的)
 原子力施設の事故の場合に、施設構内およびその周辺の地域において、放射線障害を防止し、環境の安全の確保に資するため、原子力施設から放散される放射性物質の大規模の拡散および地物への沈着を、わが国の気象条件との関連において解析し、事故時における気象条件から放射性物質の拡散と沈着を実際的に求める。

(研究内容)

(1)沃素131などの放出物の沈着速度の解析
 平面な土地における沃素131などの放出物の沈着速度の実験データを収集し、これを用いて沈着速度と風速、地面粗度、摩擦速度、大気安定度などの気象条件をパラメータとして統計学的方式に従って各気象条件と沈着速度の相関解析を行なう。

(2)英国気象法に沈着を加えた実用法の開発
 (1)で求めた沈着速度を英国気象局の大気拡散推定法に組み入れ一般的な方程式を作る。この方程式を電気計算機で典型的ないくつかの気象条件について解き図表化する。

(3)外国の大規模実験の結果の解析
 米国において行なわれた大規模な拡散実験と(1)(2)によって開発した計算方法で求めた結果を比較検討し、その計算方法の有効性を明らかにする。

9.「核物理理論による微視的断面積の数値解析に関する試験研究」

(社)日本原子力学会

(研究目的)
 原子炉の臨界計算、安全性の検討さらには動力炉の経済性に関連して要求される燃焼度計算等の炉設計ならびに炉物理解析の基礎となる核定数の最も確からしい値を求めるため断面積の数値解析を行なう。

(研究内容)

(1)高速中性子エネルギー領域
 重要な核種をカバーし得る程度のケースにおいてDiffused Boundary optical potential を形成するものとし、中性子エネルギー約20MeV以下における中性子の形状、弾性散乱断面積、非弾性散乱断面積、複合核生成確率、複合核生成断面積および複合核のα崩壊および複合核のP崩壊の断面積を求める。

(2)共鳴エネルギー領域
 炉物理に対する重要度に従って核種ごとに整理し、利用者の便宜に供するとともに、共鳴パラメータ利用上の問題点を指摘し、将来の研究のための方向づけを行なう。

(3)熱中性子エネルギー領域
 Diffused Boundary optical potential を形成するものとし、約1eV以下の微分散乱断面積および散乱則を計算し、実験値との比較を行ない模型改良の基礎とする。更に微分散乱断面積のルジャンドル展開および中性子源分布の計算を行なう。

10.「中性子束合成法に関する試験研究」

(株)日立製作所

(研究目的)
 制御棒駆動、燃料取換、その他の安全運転のための諸計画立案、さらには結合炉あるいは多領域の原子炉の研究へと進む際、2次元または3次元拡散の問題をとくため実験、理論の両面から経済的かつ精度の高い合成法を研究する。

(研究内容)

(1)変分法による合成法のコード化
 近似度は試行関数ならびにその係数の選び方に大きく依存するので、試行関数および各種の係数をいくつか選んで、その近似度をチェックし、最適な試行関係、係数を求め本格的な合成コードに組み入れる。また収斂加速により清算時間が問題となるのでその収斂法を検討し、簡単なモデルによってチェックする。

(2)合成法コードの作成
 本格的なコードを作成するに必要な1次元、2次元拡散コード(37年度委託費で開発した)を利用し、3次元中性子束合成コードを作成する。

(3)合成法の精度のチェック
 作成した合成コードのチェックのため、種々原子炉形状を変えて合成法の演算を行ない、この合成法の精度を2次元拡散コードによりチェックした後、この合成コードにより中性子床分布を計算する。

11.「高温プラズマの加熱に関する試験研究」

(株)日立製作所

(研究目的)
 ミラー型直流磁場の外部からイオンを入射して、これをサイクロトロン共鳴でエネルギーを与え、高温プラズマを発生させ、そのエネルギーおよび密度を測定することによってこの方式によるプラズマ発生および加熱の機構を明らかにする。

(研究内容)

1.イオンエネルギーの測定
 ファラデーカップにRetarding potential をかけて、イオンのエネルギーの方向成分のスペクトルを測定し、また高エネルギーイオンが残留中性原子を励起して発生するそのスペクトルおよびイオン荷電交換衝突による中性原子化した励起原子のスペクトルのドップラシフトを測定することによって、エネルギーの輻射損失量を求め、またこの時間的変化を求める。

2.プラズマの密度測定
 プラズマの密度をファラデーカップを用いて測定する。

3.プラズマの安定性および加熱の研究
 上記の測定を行ない、プラズマの安定性の理論的研究を行なう。さらに高周波電界によりイオンサイロクトロンレゾナンス方式によるプラズマ加熱方法の有効性を研究する。

12.「核融合を目的とした超高温プラズマに関する試験研究」

三菱原子力工業(株)

(研究目的)
 昭和36年度の委託研究において、改造小型環状放電装置の実験結果から、安定磁界反転およびmagnetic compression がプラズマの加熱および安定化に対して予想以上の効果があることが明らかとなったので、安定磁界反転および magnetic compression とプラズマの相互作用を究明する。

(研究内容)
 magnetic probe を用いてプラズマ内磁界分布の測定放電内部の各所の磁界分布を測定するためmagnetic compression と安定磁界反転を環状放電管全体にわたって総合実験を定量的に実施しプラズマのふるまいを解明する。

13.「高温プラズマの加熱機構の解析に関する試験研究」

(学)日本大学

(研究目的)
 本研究は高温プラズマ加熱機構の解析にとくに問題となる制動幅射による連続光の強度測定と不純物元素による線スペクトルの強度測定を行ない真空紫外域の分光測定法の確立を目的とする。

(研究内容)

(1)測定方法の検討
 絶対強度測定の較正方法として紫外標準光源と熱電対を水素のLαの線を使用して較正を行なう。また光源エネルギーの波長分布のわかった電子シンクロトロン輻射を利用して較正を行なう。

(2)測定
 以上の測定方法の検討が完了してから真空紫外域の連続光および線スペクトルの強度測定と分光分析を行なう。

(3)総合解析
 不純物元素による輻射損失、総輻射損失および注入エネルギーに対する損失の割合を求め、また電子およびプラズマ密度、イオン温度のデータを求め、連続光の波長分布の解析から電子温度を求める方法を検討する。

14.「トーラス形プラズマ発生装置におけるプラズマ現象の測定に関する試験研究」

東京芝浦電気(株)

(研究目的)
 本試験研究をScallopsタイプのトーラス型プラズマ発生装置のプラズマの安定性にかかわるエネルギー損失ならびに不純物の発生の機構を明らかにする。

(研究内容)上記の目的を達成するため、

(1)放射スペクトル線の測定
 放射管に封入したヘリウムガスならびに窒素、酸素等の不純物から放射されるスペクトル線の時間的経過を高性能の回折格子形分光器と光電装置とにより測定する。

(2)イオン温度の測定
 ヘリウムイオンの放射線のドップラ幅の時間的経過を干渉分光器と光電装置とにより測定し、これによってイオン温度を算出する。

(3)電子温度
 ヘリウムの各種放射線から電子温度を求める。

(4)実験結果の検討
 上記の測定結果からプラズマの発生、加熱および閉込めのみならず不純物発生の諸過程を究明する。

15.「放射性不活性気体の捕捉に関する試験研究」

日本原子力事業(株)

(研究目的)
 原子力施設から放出されるガス状放射性廃棄物、とくに不活性ガスの捕捉処理方法を開発する。37年度からの継続研究として実用化のための基礎的研究を主として行なう。

(研究内容)
 放射性不活性ガス分子をヒドロキノンとの包接化合物の生成によって捕捉する方法につき、37年度の研究にひきつづいて研究を実施する。とくに37年度の研究によって得られた試験管内における包接化合物の生成条件、定性定量法および物性諸定数の決定等の研究をもとにして実用化に必要な基礎的な研究として

(1)希薄雰囲気下における捕捉生成物の生成条件の検討

(2)X線および中性子線の利用による捕捉生成物分析法の研究等の問題をとりあげる。

16.「放射性廃棄物の海洋投棄用容器に関する試験研究」

(社)土木学会

(研究目的)
 放射性廃棄物の海洋投棄用の容器としてはコンクリート容器が最適と考えられ、その構造、材質および水密性確保に必要な各種条件を明らかにし、耐久性、安全性のすぐれた容器の設計基準を得る。(研究内容)

(1)容器の形状、寸法、配筋、弁装置等の基本構造の性能テストおよび歪測定による解析を行なう。廃棄物の密封方法としては、廃液をコンクリート材と混和し固化する方法および容器中に固型物を漬め込む方法をあわせ検討する。

(2)廃棄物を混和したコンクリート体の品質変化、耐久性をしらべる。

(3)漬め込み方式についても、その填充性強度試験を行なう。

(4)海水中におけるコンクリート材料の耐食性を検討するためのデータを得る。

17.「放射性廃棄物の活性炭による吸着処理に関する試験研究」

武田薬品工業(株)

(研究目的)
 中小規模のRI使用施設から放出される液状またはガスの設計を行なう。

(研究内容)
 ガス状または液状放射性廃棄物の実用的な吸着除去装置を設計するため

(1)高性能活性炭の製造ならびに吸着能、核種選択性の検討

(2)中間規模(濃度数μc/cc以下)の吸着処理装置の設計、試作

(3)操作条件の検討

(4)放射線照射による吸着能の変化の究明等の諸点につき研究を行なう。

18.「放射線障害防護薬剤に関する試験研究」

第一化学薬品(株)

(研究目的)
 外部被曝による障害防護物質の合成方法、生化学的性質の検討ならびに動物検定法の確立を行なう。また体内の放射性核種の除去法として新しいキレート剤の応用をはかる。

(研究内容)
 外部照射防護薬剤として、アルキルチオ尿素系の薬剤4種をとり上げ、その合成法を検討する。またこれらの物質は一般に不安定であるため、水溶液中または体液中における変化を追跡し、安定に依存するための諸条件を確立する。
 動物実験の方法については従来規準的な方法がないので、毒性試験、性能試験をあわせて規準の確立をはかる。
 体内からの放射性核種の除去については無害なキレート剤を選択し、除去方法を検討する。

19.「個人被曝線量の測定に関する試験研究」

(社)日本放射性同位元素協会

(研究目的)
 γ線用およびX線用に共通に使用しうるフィルムバッジおよびポケット線量計を開発するため、とくにフィルターの改良をはかる。

(研究内容)
 各種金属、合成樹脂等を用いて約2mm程度までの厚さのフィルターを作り、その適当な組み合わせによって放射線のエネルギー線量に応じてフイルムに最適黒化度を得るための条件を決定する。

20.「放射線遮蔽窓ガラスの破損防止に関する試験研究」

東京都

(研究目的)
 遮蔽用窓ガラスの破損防止の根本的対策をたてるため基礎的な諸データを得る。

(研究内容)
 37年度において実施したガラスに対する放射線効果とくに電気的性質に関する研究にひきつづき、主として窓の構造と破損との関係を明らかにするため

(1)鉛ウールなどのガラス支持材による接地条件と破損の検討

(2)鉛ウール硬化用のプラスチック材等の絶縁抵抗の変化

(3)窓枠の構造ボルトのしめ方等の条件と照射効果の相互関係を明らかにする。

 等の項目につき、セリウムグラスを対象とし、遮蔵窓模型を使って研究を行なう。


昭和38年度原子力平和利用研究費補助金交付課題概要

1.「主循環ポンプおよびガス圧送機の軸封機構に関する試験研究」

(株)荏原製作所

(研究目的)
 本研究の目的は、35年度原子力平和利用研究費補助金によって研究を行なった原子炉用循環ポンプの漏洩防止(メカニカルシール)に関する研究の成果を基礎として、さらに大型の軸封機構-150mmφ-(ガス圧送機および主循環ポンプの軸封部)についての問題点を解明するため、各型式のシールの漏洩特性を検討し、漏洩量を極小ならしめる機構および製作上の問題を究明することにある。

(研究内容)
 上記の目的を達成するため、次のような研究を行なう。
 軸径150mmφのDonble Roter,Direct Mecbanical Seal,Flonting Ring 型式の軸封機構について、①圧力(ガス圧20kg/cm2、水圧~200kg/cm2、軸封部温度60℃)回転数(1,450~4,500rpm)による漏洩量の変化②シール型式の漏洩量比較検討③各運転条件(圧力温度)の摩耗量測定④メカニカル面圧、フローテング間隙等の理論的検討⑤加工および組立精度についての検討⑥シール液の種類が漏洩量に及ぼす影響を解明し、漏洩量を最小とする条件、方法について検討する。

2.「軽水炉用ラッチ式磁気ジャック型制御棒駆動装置の材料および加工法ならびに動作特性に関する試験研究」

三菱電機(株)

(研究目的)
 軽水型動力炉に使用されるラッチ式磁気ジャック型制御棒駆動装置の材料および製作技術上の諸問題ならびに動作特性を実測し、ラッチ式磁気ジャック型制御棒駆動装置の国産化に資するための技術的資料を得る。

(研究内容)
 上記の目的を達成するため次の研究を行なう。

(1)磁気系統
 動作の確実性にかかわる有効磁束の増加および漏洩磁束の減少を計り、また磁気余効および残留磁気の駆動特性およびスクラム時の解放時間への影響などについて試験研究を行なう。

(2)材料ならびに加工法
 内圧容器およびシール溶接部等の溶接方法、残留応力の除去法および熱処理によるひずみ、材料特性に及ぼす影響などについて研究する。
 内部構造(ラッチとかみ合う駆動軸の部分等)の精密加工法について研究を行なう。
 特殊材料(バネ材料およびラッチ部の衝撃力のかかる部分)の機械的性質、加工法について研究する。

(3)駆動性装置の動作特性
 (1)および(2)による結果を基礎として駆動装置を設計製作し、高温、高圧下における動作特性を測定し、実用化への基礎資料を得る。

3.「沸騰水型発電用原子炉の水圧制御板駆動装置の材料および加工法に関する試験研究」

東京芝浦電気(株)

(研究目的)
 沸騰水型発電用の制御板駆動機構の製作に加工上の問題ならびに動作特性を実測し、水圧式制御板駆動機構国産化に資する技術資料を得る。

(研究内容)

(1)水圧滑動管の加工後の熱処理後の変形、摩耗の程度、ロックの爪の耐衝撃性、シャトルバルブの摩耗、制御板と駆動機構との連結部の熱処理方法と耐衝撃性、摺動部の耐摩耗性等の問題点を解明するため熱処理、溶接方法、加工法を検討する。

(2)水圧滑動管の材料、熱処理、加工精度および組立て精度について検討する。

(3)最後に(1)、(2)によって研究を行なった結果を総合的に試験し、高圧下における動作特性を明らかにして、動作上の問題点を究明し、実用化の基礎資料を得る。

4.「軽水型動力用原子炉の一次冷却系主弁の試作およびその機能に関する試験研究」

岡野バルブ製造(株)

(研究目的)
 実用大規模軽水原子炉の一次冷却系の弁の機能の信頼性、耐久性および漏洩防止の向上のため、諸因子を明らかにし、実用に供しうる大口径ケート弁の国産化のための技術的資料を得る。

(研究内容)

(1)弁の試作
 動力用BWRまたはPWR使用可能な口径24Bの弁を試作する。弁開閉時間の効果を調べるため弁棒は2種とする。

(2)作動試験
 試作弁を常温、高温下で加工し、開閉試験による各部の摩耗状態、弁座、バックシート部の漏洩試験および弁体各部の温度分布を究明する。これと並行して縮尺弁による流体の抵抗係数の変化、およびグランドパッキングの充填法について調査する。

(3)実用化試験
 常温および高温作動試験終了後、飽和蒸気を使用し作動試験、各部の漏洩試験を行ない、各部の機能および耐久性等、実用状態と近似した条件でその機能を確かめる。

5.「ジルコニウム合金製燃料被覆管の品質向上に関する試験研究」

(株)神戸製鋼所

(研究目的)
 水冷却型動力炉製造技術が確立してくるに伴って燃料被覆管に対する要求も明確になってきたので、諸外国の同種管仕様の検討および輸入被覆管との比較試験等から得た情報に基づいて、薄肉細径の実用被覆管製造技術の基礎を確立するための試験研究を実施する。

(研究内容)
 内径13mm以下、肉厚0.8mm以下、および長さ800mm以上の高品質ジルカロイ被覆管を試作するのを目標に次の試験研究を行なう。

(1)消耗電極式真空アーク溶解法で溶製したジルカロイ-2ビレットを用いて熱間押し出しによる継目なし素管を製造する際の最適熱処理条件および押し出し諸条件を究明する。

(2)小型パイプレデューサーを用いる工程改善により、冷間抽伸時の表面欠陥の防除をはかり、結晶粒度調整条件を求め、また冷間抽伸管の研削、研磨の試験研究を行なう。

(3)加工の完了した被覆管について、品質検査、諸性能試験を行なう。

6.「原子炉のプレストレスト・コンクリート圧力容器の設計および施工法に関する基礎的試験研究」

清水建設(株)

(研究目的)
 本研究は、近年大型化しつつある原子力発電所用原子炉の耐高圧、大容量圧力容器をプレストレスト・コンクリート工法により建設するに要する設計および工事施工法の開発を目的とする。

(研究内容)

(1)環状試験体の作製
 プレストレスト・コンクリート圧力容器円筒部の部分模型としてバットレス(緊張材定着用張出し部)を付けた外径25~30m、壁厚3~3.5m、高さ0.6m(上下に各0.5mの補助壁を設ける)の環状試験体を設計施工する。

(2)プレストレス施工法の研究
 (1)において施工した環状試験体を用いて、想定内圧による円周方向張力に相応した緊兼力を加えることを目標にして緊張材の集合方法、定着装置、緊未装置の配置および脱着法、支持サドルの配置方法等につき研究する。

(3)試験体緊張時の構造強度に関する研究
 (2)の試験と並行して、緊張方法の最適設計の基礎資料を得るため、コンクリート環状体、緊張材、バットレス各部の応力変形の測定および、緊張作業終了後のコンクリートおよび緊張材の挙動測定、支持サドルの機能上の測定等を行なう。

(4)基礎的研究
 上記研究の基礎となる、サドルおよび分離板、特別強コンクリートにつき研究する。

7.「二酸化ウラン燃料の照射に関する試験研究」

三菱原子力工業(株)

(研究目的)
 軽水動力炉用UO2燃料の国産化技術確立のため、焼結型UO2燃料の照射による確性試験と振動充填型燃料の特性試験を実施し、従来から行なわれてきた研究の評価に資するとともに、今後の国産化の効果的推進を目的とする。

(研究内容)
 本試験研究は日本原子力研究所、原子燃料公社の協力を得て民間5社が共同研究の形で実施する。

(1)燃料棒試料の製作と照射前試験
 2~5%の濃縮度のUO2を用いた焼結体燃料および天燃ウランUO2を用いた振動充填型燃料を作り、寸法、重量、密度、%、組織等を測定し、ヘリウムリークテスト、X線透過試験、オートクレープ試験を行なう。

(2)照射カプセルの設計製作と試験
 フラックス・モニターをとりつけた、カプセルを設計製作し、X線透過試験またはオートクレープ試験を行なって安全を確認する。

(3)照射試験
 外国の材料試験炉で照射を行なう。この際焼結型燃料体では5,000~15,000MWD/T-UO2程度、また振動充填型燃料体では約1,500MWD/T-UO2の燃焼度を得ることを目標とする。

(4)照射後試験
 照射後試験として外観検査、外形寸法の測定、重量測定、中性子モニターの分析、分裂生成ガスの放出量、断面組織の観察、被覆管の検査、同位元素の分析等を行なう。

8.「庶子炉圧力容器用ASTMA 302B鋼の中性子・照射に関する就験研究」

(社)日本鉄鋼協会

(研究目的)
 軽水型動力炉の圧力容圧に使用されるASTM規格A302B鋼材につき照射確性試験を行なうとともにその改良進歩に資する基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)

(1)中性子照射試験
 国内において製造した、ASTM A302B 鋼から採取した試験片の炉内照射を行ない、衝撃、引張、硬さ、検鏡等の試験によって機械的性質とくに衝撃遷移温度および引張性質の変化に及ぼす中性子照射の影響を調査し、同時に合金学的諸条件(製造方法、化学組成、板厚等)および試験片サイズが照射効果にどのように影響するかを調査研究する。

(2)炉外試験
 (1)項と同一の試料につき炉外の各種試験を行ない、中性子照射試験に対応する炉外試験法の開発を検討する。

(3)基礎的照射研究
 カプセルの一部に実験室において溶製した、鉄および合金鋼の試片を挿入して同時に照射し、照射による鋼材の金属組織学的および金属物理学的変化について研究し、その機構を解明する資料を得る。

9.「炉特性に及ぼす領域効果に関する試験研究」

(株)日立製作所

(研究目的)
 外領域炉を設計するために問題となる領域間の不連続面が中性子束等に及ぼす影響を明らかにし、多領域炉の設計のため技術的資料を得る。

(研究内容)
 領域境界に現われると考えられる中性子束分布、中性子エネルギー分布を測定し、理論計算と測定値間の不一致の原因を明らかにするとともに熱外核分裂、捕獲パラメータを測定し、従来のエネルギースペクトルの計算法の妥当性を再検討し、一方各領域ごとに反応度係数を測定し、領域相互の効果を求める等して、理論計算上の問題点を明らかにする。

10.「Single Fuel Element Methed による格予定数の決定に関する試験研究」

住友電気工業(株)

(研究目的)
 格予定数を定めるため従来用いられた未臨界実験装置を使うことなく簡単に決定できるSingle Fuel Element Method を開発し、動力用原子炉ならびに多領域炉心の設計のための技術的資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
 単一燃料クラスターを用いて多数の燃料クラスターを有する炉心の4因子を決定し、無限大系に対する倍率kを求める方法を開発し、また反応度の温度依存性ならびに熱遮蔽体の核特性に及ぼす影響を調べる。

11.「炉物理量精密測定機器の試作に関する試験研究」

松下電器産業(株)

(研究目的)
 原子炉物理および炉設計の上の大きな問題点の一つとして炉物理量の測定の問題があり、中性子の拡散過程、老成過程、反応度変化および拡散係数、一括断面積、フエルミ年令等の炉物理量の測定に関して精密な測定がなされておらず、炉物理、炉設計の研究のやく路となっている。そこで、これらの測定精度を向上するための測定装置を開発するための基礎的資料を得る。

(研究内容)

(1)中性子エネルギースペクトラムの測定部の研究
 記憶不感時間を約0.5μsecに短縮し、またクロックパルスの時間遅れを防ぐための分周回路を研究する。

(2)速中性子のSlowing down time の測定部の研究
 記憶不感時間を理論的に零にする方式の研究を行ない、また中性子入力信号を高分解能で計数するための高速計数回路の研究を行なう。

(3)上記の研究を実施したのち炉物理精密測定機器を試作し、所定の性能の確認および信頼性を検討し総合調整を行なった後、原子炉ならびに未臨界実験装置により中性子束スペクトルならびにSlowing down timeを測定する。これによって測定上の諸問題を解決する。

12.「振動充填用粒状二酸化ウランの製造に関する試験研究」

三菱金属鉱業(株)

(研究目的)
 振動充填用の大粒度で高密度粒状UO2は従来溶融UO2の粉砕で得ていたが、この方法では歩留りが悪く経済的でないので、UO3粉末から出発して経済的に振動充填用粒状UO2を製造する基礎条件を得るため本研究を行なう。

(研究内容)
 UO3粉末を原料とし、これに水を結合剤として加えてよく練り合わせて混和し、次に所要の粒度の粒体に成型したのち水素還元を行ない、更に高温処理によりほぼ球状となるよう形状を整え、-6+8メッシュの振動充填用粒状UO2に仕上げる。
 試験研究の内容は次のとおりである。

(1)成型試験
 原料の粒度、原料と結合剤との比率、練合、製粒、乾燥の条件を検討する。

(2)球状化試験
 水素還元して得た粒状UO2をプラズマフレームにより高温処理し球状に仕上げるための方式と条件を検討する。

(3)物理試験および検定
 原料から仕上り粒状UO2までの各過程における中間生成物の化学的変化と性状変化との関連をしらべる。

13.「窒化ウラン燃料の製造に関する基礎的試験研究」

住友電気工業(株)

(研究目的)
 窒化ウランは燃料としてすぐれた条件を備えており、将来の燃料として有望と思われるが、製法および性質について不明な点が多く残っているので、製造法に関する基礎技術を修得するとともに得られた窒化ウランについてその性質を測定し、燃料としての適応性を検討する。

(研究内容)
 金属ウランとN2(またはNH3)との反応により窒化ウランを製造する。このほか二酸化ウランからの製造法についても検討し、これを用いて窒化ウラン焼結体の製造ならびに性質の試験測定を次の項目について行なう。

(1)窒化ウランの製造に関する研究
 UO2粉末と黒鉛の混合体または炭化ウランをN2(またはNH3)中1,200℃以上で加熱する方法および水素化ウランの熱分解で得られる金属ウラン紛末とN2を300~800℃で加熱する方法の二つにつき条件を検討し、窒化ウラン製造のための最適条件を求める。

(2)窒化ウランの焼結体の試作
 最適条件で作った窒化ウランを粉末冶金法で焼結し、理論密度の90%くらいを目標として化学理論値に近い焼結体の試作研究を実施する。

(3)窒化ウランの性質の試験測定
 窒化ウラン焼結体の組成、密度、気孔度、結晶組織強度、硬度等につき検討を行ない、製造法と焼結体の関係を検討するとともに、窒化ウラン燃料体の将来性、有用性につき評価を行なう。

14.「プレッシャライジング法による高密度二酸化ウラン燃料体の製造法に関する試験研究」

古河電気工業(株)

(研究目的)
 振動充填による燃料体にさらに高温高圧プレッシャライジング法を適用し、良好な燃料被覆管の接着を得ると同時にUO2燃料体を高密度化する製造技術の確立をはかることを目的とする。

(研究内容)
 溶融UO2とセラミック級UO2粉末を原料に使いステンレス鋼管中に注入して振動充填を行ない、両端を溶接して内部を排気する。次いでプレッシャライジング装置中で高温高圧アルゴンでプレッシャライジングを行ない、次の2項目について検討する。

(1)UO2粉末条件と最終密度
 溶融UO2とセラミック級UO2粉末を使い振動充填後の密度とプレッシャライジング後の最終密度との関係について検討し高密度燃料体を得るための原料粉末条件を求める。

(2)被覆ステンレス鋼管の変形
 プレッシャライジングによる密度変化とステンレス鋼管の変形について検討し、被覆管を欠陥なく均一に変形させる条件を求める。

15.「振動充填法によるUO2燃料体の炉外評価に関する試験研究」

三菱原子力工業(株)

(研究目的)
 振動充填UO2燃料の炉中における各特性を炉外評価試験により定性的に推定し、実際の炉中照射試験におけるデータと関連させ振動充填燃料の照射特性を求め、性能を効果的に評価することを目的とする。

(研究内容)
 振動充填UO2燃料の炉外評価として次の試験研究を行なう。

(1)試料の作成
 試料として、原料UO2を変えた試験ならびにPneumatic Vibrator および電磁振動機による充填試料の特性の相違を調べる。また密度と燃料体の特性との関係を調べる。

(2)加熱による燃料固結と組織変化
 加熱による燃料固結と組織変化の関係をしらべるため高温固結試料について顕微鏡観察および密度測定を行なう。

(3)加熱による固結と分裂ガス放出との関係
 種々の条件で加熱した振動充填型燃料について表面積の変化を測定し、この条件を生ずるための原子炉条件、燃料濃縮度等を計算し、比表面積と対比させる。また拡散係数については比表面の変化に対応する焼結燃料中の値の変化を既発表データから選び、炉中における放出率の変化を推定する。

(4)内圧に寄与するスペースの測定
 被覆管をつけた燃料棒に既知圧力のガスを封入し、加熱後被覆管を破裂してガスを放出させ、内に寄与するスペースの変化を測定する。

(5)熱伝達率の測定
 振動充填燃料では加熱によるクラック発生、組織変化により熱伝導特性が変わるので炉外加熱により種々の条件を作って熱伝達率の推定を行なう。

16.「トリチウム標識抗生物質の生合成に関する試験研究」

(財)結核予防会

(研究目的)
 生合成法によって抗生物質を効率的にトリチウム標識化する方法を確立する。

(研究内容)
 接触法等の方法によっては分解、副産物の生成等の原因によって標識化の困難なストレプトマインンを使い、トリチウム培地で培養する方法を用いて標識化しその比放射能を高める方法について検討する。

17.「トリチウムを利用した自発光体に関する試験研究」

大日本シンロイヒ(株)

(研究目的)
 トリチウムのβ線を励起源として用いた放射線障害の少ない夜光塗料の開発を行なう。

(研究内容)

(1)脂肪酸をトリチウム化したものを螢光体に被覆しさらにその上を適当な樹脂でコーティングする。

(2)螢光体をポリスチレンでコーティングし、曝露法によりトリチウム化ポリスチレンとする。この2つの方法によって発光体を試作し、発光体の比放射能の減衰ができるだけ少ない、また、輝度の減衰のないものを得るよう努める。
 試作品の試験としては、輝度、比放射能の経時変化の測定、水溶媒等によって洗浄した後のトリチウムの定着度試験、塗装、成形等の実用試験を行なう。

18.「湿式セメントキルン内における原料の挙動に関する試験研究」

宇部興産(株)

(研究目的)
 湿式セメントキルンにおいては、大量のダストが発生し、これが焼成効率の低下とダスト系統の大容量化を招いており、その改善が必要とされている。そこで湿式セメントキルン内に送り込まれた原料のキルン内における移動とダストの発生状況をRIトレーサーを用いて調査しキルンの焼成効率向上のためのデータを得、キルンの設計改善の資料とする。

(研究内容)
 予備実験として、まず酸化コバルトを原料と混合して、キルンに送入し、キルンから出てくるクリンカーをサンプリングして、放射化分析を行ない、コバルト含有量の変化を調べて、セメント移動のおおよその模様を知る。
 つづいて140Laを原料に混合してキルンに送入し、キルン内におけるダストの発生場所、発生状況、原料のキルン内の滞溜時間、ダストチャンバーおよびキルンの各部における原料の移動等を多数の箇所に配置したシンチレーションカウンターを使用して追跡、測定する。

19.「中性子吸収線量測定に関する試験研究」

神戸工業(株)

(研究目的)
 広範囲のエネルギー分布をもつ中性子線の吸収線量(rad)を高能率で測定しうる中性子線量計を開発する。

(研究内容)
 中性子線の吸収線量、とくに速中性子線量の測定は従来BF3カウンターの利用によるfluxの計数が行なわれていたにすぎず、正確なrad線量を測定することは困難であった。本研究ではポリエチレン壁を有する比例計数管を試作し、速中性子照射によって生成される反跳陽子を測定する原理によって速中性子線量計を開発することとし、その計数管の構造、組立方法を検討し、充填ガスの種類、圧について最適条件を選定する。またα線源を内蔵させ、吸収線量を較正するとともにガス圧変化、温度変化による吸収線量の変化を究明する。
 さらに計数管から得られるパルスから混入するγ線パルスは選別除去し、中性子によるパルスは、計数率(n/cm2・sec)とパルス高さの乗算回路を試作し、積算吸収線量を測定しうる回路を構成する。

20.「液状有機化合物の電気抵抗変化を利用した大線量率計の開発に関する試験研究」

(株)日本無線医理学研究所

(研究目的)
 103~106r/hまたはそれ以上の広範囲の大線量率を簡単に直結することができ、確実な再現性をもち、応答速度の速い大線量率計を研究試作する。

(研究内容)
 強力な60Coγ線源による照射(103~106r/h、総線量108r)下において高絶縁物の不飽和脂肪酸エステルおよび一、二の有機液体化合物の電気抵抗と線量率の間にほぼ逆二乗比例関係の成立する現象をさらに理論的に究明する。また、その抵抗特性の照射量、温度湿度による影響を試験し、また、大線量率検出に適した有機物質を選択するため、照射による性質の変化、分解物の分析等を行なう。
 また検出器の構造、電極、温度補償装置等を検討して実用的な装置を試作する。

21.「大出力電子線加速器の発生する電子線の測定法に関する試験研究」

大阪府(府立放射線中央研究所)

(研究目的)
 電子線加速器の放出する電子線の電流、エネルギーその他の諸特性を、照射作業に防害を与えないで測定しうる実用的な測定器は現在まだ開発されていない。
 本研究では、加速管窓のAl箔による2次電子放出現象を利用した電子線電流の測定法を開発する。

(研究内容)
 すでに特許をえた無妨害型電子電流モニターを実用化するため次の各項目につき研究を行なう。

(1)Al箔による2次電子放出効率に及ぼす時間経過、収集電圧、箔の種類、表面状態、収集電極の形等、諸因子を検討し、動作特性のすぐれたモニターを試作する。

(2)2次電子の電流波形による一次電子のパルスの監視方法を研究する。

(3)電子線の後方散乱のエネルギー依存性を利用して窓のAl箔から放出された2次電子を磁石分析器に導き、2次電子のエネルギー分析と照射電子のエネルギー分布の相関関係を明らかにし、電子線エネルギー測定法開発のための基礎データを得る。

(4)2次電子放出を利用して、電子線束の位置、監視方法についての研究もあわせ行なう。

22.「放射線重合によるアクリル系合成樹脂発泡体に関する試験研究」

積水化学工業(株)

(研究目的)
 アクリル系化合物単量体を主成分とした原料に放射線照射することにより性質のすぐれた、とくに熱的性質、機械的強度のすぐれた合成樹脂発泡体を製造する方法を開発する。

(研究内容)
 基礎実験によって得られたデータを基礎にして、アクリルアミド、アクリル酸、アクリロニトリル等の放射線重合体から発泡体を製造する工程につき、工学試験のスケールで、連続照射時の線源工学上の諸問題、放射線重合装置、雰囲気、離型、加熱成型発泡装置等を検討し、量産化に適した放射線重合プラントに関する基礎技術の確立のために必要なデータを収集する。

23.「原子炉利用(n.γ混合放射線)によるエチレンの水素添加反応に関する試験研究」

(株)東京原子力産業研究所

(研究目的)
 原子炉中においてn.γ混合放射線を直接利用し、有機物質を合成する方法を開発する。

(研究内容)
 日立炉(出力100kW)の水平照射孔に、常温、常圧用のガスループを組み込み、これに固体触媒を充填、外部からエチレンと水素ガスを送入して、原子炉n.γ.混合放射線の下で接触水素添加反応を行なわせ、非照射時との比較から放射線の効果、ループの構造、反応生成物の種類と、生成量、放射線の触媒活性に及ぼす影響、固体触媒の活性変化、ガス組成による影響等をしらべ、原子炉利用による放射線化学反応の基経的データを得る。

24.「アクリロニトリル等の般用ゴムラテックスへの放射線グラフト重合に関する試験研究」

大阪府(府立放射線中央研究所)

(研究目的)
 般用ゴムラテックスに、アクリロニトリル、アクリル酸等のビニルモノマーを放射線によってグラフト重合し、品質改良をはかる。

(研究内容)
 天然ゴム、SBRにアクリロニトリルやアクリル酸モノマーを放射線グラフトさせる際のラテックスのゴム濃度、モノマー濃度、乳化剤の影響、放射線の種類(γ線および電子線)と量の効果等を検討する。
 製品は、ニトリルゴムに比較して、耐油性を保持つつ、とくに加工性のすぐれたものであることが期待されている。
 また、実際に加硫ゴムを製造して製品の耐油性、耐熱性、耐老化性の諸性質をテストする。