昭和38年度原子燃料公社事業計画


       目次

(I)総論
1. 核原料物質の探鉱
2. 核原料物質の採鉱および選鉱
3. 山元製錬試験
4. 核燃料の生産および検査
5. 核燃料の再処理
6. 放射線管理および鉱山保安
7. 核燃料の貸与および譲渡
8. その他

(II)各論
1. 核原料物質の探鉱
2. 核原料物質の採鉱および選鉱
3. 山元製錬試験
4. 核燃料の生産および検査
5. 核燃料の再処理
6. 東海製錬所におけるその他の事項
7. 核燃料物質の貸与および譲渡

(I)総論

1.核原料物質の探鉱
 探鉱業務については、34年度以来たい積型鉱床に重点をおき、東郷鉱山、人形峠鉱山を主として行なってきた。38年度も引き続き、両鉱山に主力をおくが、坑道探鉱による鉱量の確認よりも、試すい等による既知鉱床の広がりの追求、新規鉱床の発見につとめる。またこれら以外の地区で、発展の期待される小国(山形、新潟)、宮津(京都)等の地区においては、地表調査、試すい等による探鉱を積極的に行なう。これらの探鉱に要する経費の総額は約257百万円(経費約220百万円、施設費約37百万円)とし、東郷鉱山、人形峠鉱山、小国およびその他地区の経費の割合は、それぞれ約50%、32%、7%および11%とする。

2.核原料物質の採鉱および選鉱
 採鉱および選鉱業務については、人形峠鉱山において次の試験を行なう。

(1)採鉱試験
 採鉱試験については、37年度をもって厚層部分に対する長壁式2段採掘切羽試験を一応終了したので、38年度は人形峠鉱山峠地区に試験切羽を設定し、たい積型ウラン鉱床の水力採掘および水力輸送の現場適用試験に着手する。

(2)中間規模洗鉱試験
 37年度人形峠鉱山峠地区に設置した中間規模洗鉱試験施設により、引き続き試験を実施する。

3.山元製錬試験
 低品位ウラン鉱石の処理技術確立を目的として、東海製錬所で研究を重ねた結果、公社独自の一貫製錬法を開発し、37年度には工程設計を行なった。この製錬法の技術的安定性、経済性を確認するため、39年9月試験開始を目標に、人形峠鉱山峠地区で中間規模の山元製錬試験施設の建設に着手する。

4.核燃料の生産および検査

(1)精製錬工業化試験は、37年度をもって一応パイロットプラントによる各種工業化試験を終了し、ほぼ所期の目的を達した。
 38年度には国内諸機関の需要に応じ、地金約18トンを生産する。

(2)プルトニウム燃料技術の開発については、さし当り、熱中性子炉への再循環を目的とし日本原子力研究所と協力して推進する。37年度に海外から入手した研究施設建家の設計資料を基礎とし、40年未完工を目標として、プルトニウム燃料研究施設の建設に着手する。なお当面は、プルトニウム取扱技術の習熟につとめるとともに、ウランによる各種模擬実験を行なう。

(3)遠心分離法によるウラン濃縮の研究については、理化学研究に設置してある遠心分離機の東海製錬所への移設およびこれによる機械的性能試験を行なうとともに、高速回転機構の研究、回転胴の試作研究、遠心分離機に供給するための六ふっ化ウランの精製の研究を社外に委託する。

(4)ウラン燃料の検査については、金属板状燃料、セラミック型燃料の検査技術の開発を引き続き行ない、検出限界の向上をはかるとともに、金属棒状燃料については、判定基準の設定につとめるなお、外部機関との研究協力を積極的にはかるとともに、受託試験、検査も実施する。

5.核燃料の再処理
 使用済燃料の再処理のため、0.7〜1t/日処理規模の再処理工場の建設を目途として、38年度にその予備設計を海外から購入するとともに詳細設計の契約を行なう。この工場操業のための中核的要員は、日本原子力研究所ホットケーブの施設による同研究所との共同研究で養成する。
 またミキサーセトラ一装置を日本原子力研究所構内しに設置し、同研究所と共同して再処理工程の試験を行なう。

6.放射線管理および鉱山保安
 本計画業務の遂行につれてますます重要となる放射線管理ならびに鉱山保安の対策については、施設の充実、健康管理に万全を期し、ラドン対策等のための措置を講ずる。

7.核燃料の貸与および譲渡
 東海製錬所において生産するウラン地金約18トンは、国内需要者に原則として貸与する。

8.その他
 以上の事業を遂行するため、38年度中21名の人員を充足し、38年度末役職員は581名とする。

 この計画遂行に要する予算総額は現金約1,668百万、債務負担行為限度額約1,506百万円(内現金約124百万円)とする。

(II)各論

1.核原料物質の探鉱

(1)倉吉出張所管内
 38年度に引き続き、神ノ倉地区に重点を置き、坑道探鉱により第2鉱体の実態を明らかにし、第3鉱体の解明に着手するとともに、試すい探鉱によりこれら鉱体の広がりの追求ならびに新鉱体の発見に努力する。また、神ノ倉鉱体の西方鉛山地区および東方菅ヶ谷地区の試すい探鉱を実施し、潜頭鉱床の発見につとめる。

(イ)神ノ倉地区(鳥取)
 神ノ倉地区の坑道探鉱については、37年度において第1鉱体の沿層坑道による探鉱が終了し、第2鉱体の概ぼうを解明するために本格的探鉱に着手した。これに引き続き38年度は約1,700mの探鉱坑道を掘進し、第2鉱体の解明につとめるとともに、第3鉱体の探鉱に着手する。(付図I参照)


〔付図I〕38年度東郷鉱山神ノ倉地区坑道探鉱計画図

 また試すい探鉱については、とくに鉛山鉱体との連続状況ならびに人形峠鉱山十二川鉱体との関連性を探究する。

(ロ)飯盛山地区(鳥取)
 本地区では試すい等の探鉱の結果、鉱床賦存の可能性があるので、38年度は37年度に引き続き、地震探鉱、電気探鉱による地下構造の解明と試すい探鉱による潜頭鉱床の発見につとめる。

(ハ)白石、桑原地区(鳥取)
 37年度において、新規に異常の認められた仙津山西方地点(白石地区)および八乗寺(桑原地区)付近を中心として、地表調査、試すい探鉱を実施してきたが、38年度はこれら地域の地表調査、試すい探鉱を継続し、鉱床の賦存状態の解明とその範囲の拡大につとめる。

(ニ)その他地区(鳥取)
 羽衣石、鹿野、千代川西部、吉原等の各地区においても、37年度に引き続き、地表調査および試すい探鉱を実施し、鉱体の賦存状態の解明と新規鉱体の発見につとめる。

(2)人形峠出張所管内
 38年度は、中津河南部鉱体と長者鉱体の坑道探鉱を実施し、また地表調査、試すい探鉱により長者鉱体、十二川鉱体の広がりを追求するとともに、県境地帯における新鉱体の発見につとめる。

(イ)中津河地区(岡山)
 33年度に大切坑の開坑に着手して以来、37年度までに本鉱体および南部鉱休の坑道探鉱を実施し、既知鉱体の鉱況の大勢を把握し、探鉱をほゞ終了したが、38年度は南部鉱体の富鉱部を約300mの坑道掘進により解明して、中津河地区の坑道探鉱を完了する。(付図II参照)

〔付図 II〕38年度人形峠鉱山中津河地区坑道深鉱計画図

(ロ)長者地区(岡山)
 37年度から坑道探鉱を開始し、鉱床の賦存状況を解明するとともに、試すい探鉱により鉱体の北〜北西方向の延びを探査中であるが、38年度は引き続き約200mの坑道探鉱および試すい探鉱を実施し、この鉱床の広がりの追跡につとめる。

(ハ)十二川地区(岡山)
 十二川鉱体は37年度までの探鉱の結果、かなり優勢な鉱体であることが明らかとなったので、38年度は、さらにその北方に向けて鉱体の広がりを探るため、地表調査、試すい探鉱等を継続し、あわせて倉吉管内の神ノ倉鉱床との関連性を探究する。

(ニ)倉見・黒岩(岡山)、佐治谷(鳥取)地区
 これらの地区においては、37年度までに、地表調査および試すい探鉱を実施して来たが、38年度もこれらの探鉱継続をする。とくに倉見、黒岩地区については、電気探鉱を実施して地質構造の解明につとめる。

(ホ)その他地区(岡山)
 高清水、赤和瀬、恩原、辰巳峠の各地区においても、それぞれ地表調査、試すい探鉱を実施し、鉱床の賦存範囲の追求および新鉱体の発見につとめてきたが、38年度も引き続きこれらの探鉱を実施する。

(3)小国駐在員事務所管内

(イ)中東地区(新潟)
 本地区は37年度において、東部に重点をおき、地表調査、試すい探鉱を実施した結果、鉱体がかなりの連続性をもつことが判明し、期待されるにいたったので、38年度は、北部および北西部に、地表調査、簡易電気探鉱、試すい等の探鉱を積極的に行ない、鉱床の拡大につとめる。

(ロ)南小国、北小国地区(山形、新潟)
 37年度においては、金丸北部、南部、南小国、北小国等の各地区において地表および試すい探鉱を実施した。そのうち、金丸地区の探鉱についてはほぼ終了したので、38年度は主として南小国、北小国両地区において、東部、西部および北部の周辺部の鉱床の広がりと、新鉱体を探るため試すい探鉱、地表調査を実施する。

(4)その他地区

(イ)鉱床精査
 37年度は、花巻(岩手)、車峠(福島)、五頭山、赤谷(新潟)、宮津(京都)、石見大田(島根)および重水(鹿児島)等の各地区において、地表調査を始めとし、化学探鉱、Uスコープ調査、試すい探鉱等を実施し新規放射能異常露頭の発見および既知鉱体の賦存状況ならびに周辺の地質状況を明らかにするなど、かなりの成果を挙げたので、38年度は、さらに積極的にこれらの地区で次の探鉱を行なう。すなわち、地表調査はすべての地区で、化学探鉱は宮津、石見大田地区、Uスコープ調査は、赤谷、宮津、垂水地区で、試すい探鉱は、宮津、石見大田、垂水地区でそれぞれ実施する。
 とくに宮津地区は37年度高品位な露頭(最高21%U3O8%)が発見されて、これらの地区のうち最も有望な地区であるので、本年度は、試すい探鉱に重点をおき、優先的に探鉱を実施する。
 また、赤谷地区では38年度は新しく赤谷炭鉱の旧坑取明を行ない、その含ウラン層の規模、分布状態および品位の確認につとめる。

(ロ)鉱区調査
 鉱床の賦存の可能性がある地区については、鉱区の出願または探鉱契約を結び探鉱を行なう。公社保有鉱区(探鉱契約鉱区を含む)は37年12月末現在出願鉱区359、登録鉱区226、計585鉱区を有しているが、これらの鉱区のうち、とくに北上、浜坂、蒜山原地区において登録鉱区を優先的に取り上げ、計画的探査および鉱区整理を行なう。

(5)探鉱に関する基礎的試験研究

(イ)川東海製錬所原子燃料試験所においては、38年度は、東郷、人形峠両鉱山、宮津および中東地区の鉱石の鉱物に関する研究を継続するほか、新規に東都、人形峠両鉱山の鉱床の母岩および基盤の変質に関する研究を行なう。

(ロ)岡山大学温泉研究所に人形峠、倉吉両出張所管内の鉱床被覆層の火山層序学的調査、ウラン鉱床中の硫化物および初生ウラン鉱物の酸化に関する研究、鉱床の基盤花こう岩の粘土化に関する調査を37年度に引き続き委託するほか、本年度新しく山陰地域の潜頭鉱床の探査の基礎的研究等を委託する。

2.核原料物質の採鉱および選鉱

(1)水力採鉱試験
 水力採鉱法については高圧噴射水による洗れきふるい分け効果と、水力による採掘および輸送の高能率とあいまって採掘コストの低減をはかる見通しが得られたので、たい積型ウラン鉱床の水力採鉱技術開発を目的として、38年度から人形峠鉱山峠地区において現場通用試験に着手する。
 38年度は、試験切羽を設定してたい横型ウラン鉱床採掘切羽の仕様の検討と、採掘実収率、切羽における洗れき効果の測定、水力輸送における粒度および濃度の影響についての試験を行なう。
 採掘鉱石は中間規模洗鉱試験施設の処理原料にあてる。

(2)中間規模洗鉱試験
 湿式ふるい分け基礎試験の結果、不変帯鉱床については洗鉱ふるい分けの多大の効果があることが確かめられたので、37年度に人形峠鉱山峠地区2号坑々口付近に設置した中間規模の試験施設により、操業規模における実収率および品位上昇効果を調べコストの見通しをたて試験の完了を期する。なお、処理原鉱としては、峠地区に設定する両翼長壁式切羽および下期から実施予定の水力採鉱試験切羽からの出鉱をあてる。

(3)鉱山保安

(イ)鉱山の一般保安については、前述の業務に既応して施設の整備、安全作業の確立および保安教育の徹底をはかる。

(ロ)鉱山における放射線保安については、37年度に引き続きラドン対策および坑内粉じん対策に重点をおくが、とくにラドン対策については、通気系統の改善および通気管理の徹底によってラドン濃度の低下をはかる。
 なお、活性炭によるラドン吸着の現場適用試験、ラドンとその壊変生成物ならびに放射性粉じんの挙動のはあく、およびこれらの人体に及ぼす影響等の調査は、関係試験研究機関との緊密な協力の下に実施する。

(ハ)鉱害の防止については、中間規模洗鉱試験および水力採鉱の現場適用試験にあたり、捨石のたい積、廃水処理、坑廃水の管理に万全を期する。
 また、山元製錬試験施設が操業に入った場合の廃水管理問題をも考慮して、鉱山に適した排水モニターの開発を37年度に引き続き実施する。
 以上のほか、坑廃水調査を実施するとともに、関係河川水の水質総合調査を37年度に引き続き、鳥取、岡山両県に委託する。

3.山元製錬試験

(1)山元製錬試験施設の建設
 東海製錬所で、34年度以降低品位ウラン鉱石の処理技術の開発を行なった結果、硫酸浸出液をイオン交換法で精製し、さらに溶媒抽出法により精製と同時に変換を行なう一貫製錬法の技術を確立した。
 この製錬法の経済性を明らかにし、技術的安定性を確認するため、人形峠鉱山峠地区に製錬試験施設を建設する。試験開始は39年9月を目標とし、本年度は建家の建設を完了させ、各工程機器の発注を行なう。

(2)関連基礎試験
 東海製錬所では、上記の試験に関連して次の研究を行なう。

(イ)ウラン鉱の浸出およびろ過に関する研究
(ロ)固液分離に関する研究

4.核燃料の生産および検査

(1)精製錬
(イ)ウラン地金の生産
 37年度をもって工業化試験が一応完了したので38年度は国内諸機関の需要に応じ、地金18トンの生産を行なう。
 これに要する原料は、輸入イエローケーク18トン、37年度からの繰越しイエローケーク7トン、中間物および社外からの返還屑でまかなう。
(ロ)工業化試験の補完
 スラグ回収装置が完成したのでその試験を実施し、また電解還元、ふっ化沈殿工程の自動制御化の試験を行なう。

(2)プルトニウム燃料の研究開発
(イ)プルトニウム燃料研究施設の建設と要員の養成37年度は、プルトニウム燃料研究施設の建家設計資料を米国のニュウクレア マテリヤルズ アンド エクイップメント コオポレイションから導入するとともに、技術者を同社に派遣してプルトニウムの取扱い技術の習得にあたらせた。
 38年度においては、40年末からこの施設の利用を開始することを目標に、建家および関連施設の建設に着手するとともに、内装機器および設備の詳細設計、据付ならびに試運転指導などに関する技術導入について契約する。
 またプルトニウム燃料研究に必要な要員は、日本原子力研究所のプルトニウム特別研究室および海外の研究機関に派遣して養成につとめる。
(ロ)プルトニウム燃料の研究
 プルトニウム燃料研究施設が完成するまでは現有設備で可能な限り、ウランを用いて次の模擬試験を行なう。

(i)高燃焼率の得られるプルトニウム燃料体の製造を目的として、ゾルーゲル法、溶融法等による高密度二酸化ウラン粒体の製造に関する研究および二酸化ウランの高温における挙動に関する研究を行なう。

(ii)成型加工に関する研究としては、二酸化ウランを用いての振動充てん法に重点を置くが、アルミニウム−ウラン等を用いた合金分散型燃料の研究も行なう。

(3)ウラン濃縮の研究
 理化学研究所は34年度および36年度の原子力平和利用研究委託費をうけ、ウラン濃縮用遠心分離機1号機の試作改良を行ない、分離性能試験を実施し、また35年度の原子力平和利用研究委託費により、2号機を試作し、機械的性能試験を実施した。公社は、37年度にこれらの研究を理化学研究所から引き継ぐため、改造のための部品の製作に着手するとともに、東海製錬所にウラン濃縮研究室の建設に着手した。また理化学研究所における分離機と違った回転機構についての基経的研究を(財)工業振興会に委託し、その成果に基づき小型遠心分離機を試作した。
 六ふっ化ウランの精製に関する研究については、理化学研究所に委託するため試験装置の試作に着手した。

 38年度は、次の研究を行なう。
(イ)理化学研究所に設置してある1号機および2号機を東海製錬所に移設し、改造部品取付後の機械的性能試験を実施する。
(ロ)小型遠心分離機によるジッペ方式の高速回転機構に関する研究を37年度に引き続き(財)工業振興会に委託する。
(ハ)37年度の原子力平和利用研究委託費により、東京芝浦電気(株)がグローテ方式による高速回転体の限界試験を実施したが、38年度以降は公社がこの試験を引き継ぐこととするので、同社の試験結果を検討の上、下記の試験を社外に要する。
 (i)軸封等の構造ならびに材料に関する試験
 (ii)ガラス繊維強化樹脂による回胴転の試作および被壊試験日六ふっ化ウランの精製に関する試験は、37年度製作に着手した試験装置の完成をまって理化学研究所に委託する。

(4)ウラン燃料の検査
 37年度には金属棒状燃料の検査の標準化につとめるとともに、金属板状型、セラミック型燃料の検査技術の開発をはかるため、試料調整室を建設した。
 38年度には次の業務を行なう。

(イ)検査技術の開発
(i)検出限界の向上のために金属板状燃料、セラミック型燃料については、端栓溶接部の微少欠陥と気密性との関係を究明し、また被覆管および燃料要素については、渦流探傷法による検出法の研究を行なう。
(ii)金属棒状燃料の検査基準を確立する目的で、検出された欠陥と原子炉内での燃料挙動との相関性を、超音波探傷法による結晶粒度や異方性の測定、クリープ試験、腐蝕試験、式張試験等のコールド試験により探究する。
(iii)検査基準の確立のため、37年度に引き続き、燃料検査によって得られる詳細な情報および原子炉内の燃料挙動についての情報を外部からの協力を得て整理、記録する。

(ロ)外部機関との研究協力
 外部からの協力を得て検査技術の開発を推進するため、検査専門委員会を開催し、また下記の事項について積極的に協力する。
(i)日本学術振興会の金属ウラン共同研究会が行なう金属ウランのスエリングの機構に関する研究
(ii)原子力産業会議燃料安全委員会が行なうジルカロイ被覆管の高温高圧試験
(iii)日本原子力研究所が行なう金属ウランのカプセル照射試験

(ハ)受託検査外部の依頼により核燃料要素、燃料集合体等に関する各種試験、検査を行なう。

5.核燃料の再処理

(1)再処理工場建設計画
 37年度には、予備設計の設計理念等について海外の関係各社に照会を行ない、また予定敷地の気象、海流、地下水調査を行なった。38年度は、予備設計を海外から購入するとともに詳細設計の契約を行なう。
 また、37年度に引き続き予定数地の気象、地質調査を実施し敷地調査を完了する。
 地質調査については、揚水試験による地下水の流動調査と地耐力調査を行なう。

(2)再処理に関する試験研究
 37年度には、日本原子力研究所と共同して同所の再処理試験装置のホットケーブへの移設、ミキサーセトラー試験装置の設計、製作ならびに管理分析法の研究を行なったが、38年度においても日本原子力研究所と共同して次の試験研究を行なう。

(イ)前年度までに開発した分析法をインライン分析に遠用するための研究
(ロ)ミキサーセトラー試験装置のコールド試験による動的特性解明および工程改良のための研究
(ハ)JRR−3模擬燃料を使用してホットケーブ施設のコールド試験。

6.東海製錬所におけるその他の事項

(1)放射線管理
 東海製錬所における放射線管理については、38年度も血液検査、尿検査等を実施するが、さらに健康管理のための設備を充実する。再処理工場ならびにプルトニウム燃料研究施設の予定敷地およびその周辺の環境調査は37年度に引き続き実施し、これら施設の設置に備え放射線管理技術者の養成訓練を行なう。
 また、鉱山と製錬所とに共通する問題として、ガラス線量計の高湿度環境における適用の可否を研究する。

(2)分析関係
 ウラン地金生産のための日常分析および各種試験研究のための分析、精鉱の受け入れ分析等を行なう。
 分析に関する研究としては、燃料被覆材とくにジルカロイの分析法、分光分析によるU235の定量法、六ふっ化ウランの分析などを研究する。

(3)建設関係
 プルトニウム燃料研究室として延約3,500m2の建家の建設、道路、給水および送電施設の建設に着手する。
 また、体育館約970m2を日本原子力研究所と共同で建設する。

7.核燃料物質の貸与および譲渡

(1)核燃料物質の貸与
 37年度末までに貸与し、38年度当初において引き続き貸与予定の天燃ウラン金属の量は約20トンに達するが、その主なものは、日本原子力研究所のJRR−3燃料用地金8.5トン(第1次装荷分3.8トン、第2次装荷分4.7トン)、高速炉未臨界実験装置用ブランケット棒5トン、軽水未臨界実験装置用燃料2.5トン、東京工業大学の未臨界実験装置用燃料2.5トンである。
 38年度に新たに貸与する見込みの天然ウラン金属は、日本原子力研究所のJRR−3第2次装荷燃料用地金12.6トンのほか国内の各種試験研究用を含め18トンである。
 上記12.6トンの天然ウラン金属は毎月分割して引き渡す見込みであり、加工完了とともに逐次スクラップが返還されるが、38年度中の返還量は約10トン(37年度貸与の第2次装荷用地金の返還屑を含む)になるので、38年度末の貸与量は約27トンに達する。
 以上の貸与によって約1,600万円の貸与料収入が見込まれる。また、貸与に際して需要者の要求により加工して引き渡すものは加工料を、返還の際スクラップの形で返還されるものは再生料をそれぞれ徴収するので、この加工料および再生料の合計額は約2,300万円が見込まれる。

(2)核燃料物質の譲渡
 国内の試験研究用として天然ウラン金属を譲渡する量は37年度で約200キログラムであるが、38年度においてもこれとほぼ同量の譲渡が見込める。
 したがって譲渡金として約200万円が見込まれる。