昭和38年度放射線医学総合研究所業務計画


        目次

I 研究
(1)一般研究
(2)プロジェクト研究
II    養成訓練
III    放射能調査
IV    技術部
V     病院部
VI    東海支所
VII    外来研究員
VIII   建設
別記I   一般研究内容
別記II  研究目標別一覧表
別記III  プロジェクト研究内容


はしがき

 本研究所は昨37年度をもって創立5年有余を経過し、新たな展望のもとにその業務を推進すべき段階を迎えた。
 昭和38年度は、予算総額529,091千円、ほかに放射能調査費25,106千円を加え、定員30人増の総計391人となり、ほぼ業務の全般にわたって、前年度に比しさらに充足を期待しうることになった。しかしながら本年度においては、本研究所施設の開放利用、所外との共同研究、放射能調査、医用原子炉、養成訓練棟の施設、アルファ線実験棟の整備と運転等に関し、具体的方針と実施体制の確立をはかり、研究業務の一層の進展とともに早急に解決すべき重要課題を有している。このため、本年度から新たに、プロジェクト研究の着手、および外来研究員制度の確立をはかり、一方、前年度から継続して、基礎研究の一層の強化、放射能調査体制の整備、東海支所の活用、施設の建設および整備等を重点として業務を推進することとし、この方針のもとに本年度業務計画を作成した。

I 研究

 本年度における研究業務は、組織および人員については科学研究官(1人)、および放射能調査に関する研究強化のための研究室(2室)の設置をみ、遺伝第2研究室長、東海支所研究室長等についても定員を確保し、また予算については試験研究費(機器購入費)96,363千円(東海支所を除く)、研究庁費76,655千円を計上し、研究業務全般の遂行にあたりほぼ前年度並みの規模を確保したほか、新たにプロジェクト研究に着手することとなった。

(1)一般研究
 本研究所の研究分野は物理学、化学、生理学、医学等の広範な領域にわたっており、それぞれの領域における問題はもとより、これら諸科学の境界領域における問題を追求することも重要な課題である。このため専門の異なる研究者間の相互理解と協力、情報の交換と技術の交流等を促進することが必要である。
 このような意味で、本研究所では発足以来、関連する研究部門による共同研究を推進する努力を重ねてきたが、37年度から具体的に研究所の研究目標を設定し各課題の相互関連性を明らかにして研究の共同実施を期待した。
 この研究目標は7目標であるが、以下にこれらの目標ごとの本年度における研究の概要を記載する。

I 放射線の測定法および吸収線量の算定法に関する開発
 放射線(能)の測定法、生体の吸収線量の算定法、人体被曝線量の推定とその低減等、基礎と応用の両面にわたって、理論的、実験的に研究する。

II 細胞に対する放射線の影響の基礎的解明
 放射線の人体に対する身体的、遺伝的影響の解明にあたって、その基礎となる重要な分野である。本年度は、細胞および細胞構成物質に対する放射線の一作用に関し、核酸、蛋白質、細胞構造膜等についての生物物理学的研究、および抗体蛋白の産生機構ならびに細胞組織の代謝異常等に関する研究を行なう。

III 放射線による遺伝的影響の解明
 放射線誘発突然変異率を左右する要因に関する基礎的研究、人類培養細胞における染色体異常の細胞学的研究、ならびに人類および生物集団における突然変異遺伝子の時間的消長に関し理論的、実験的研究を行なう。

IV 放射線による身体的影響の解明
 生体の調節作用、内分泌系、身体機能、臓器および全身の放射線感受性、晩発効果、あるいは脂質過酸化物の生化学等、広範な範囲にわたる基礎研究を行ない、併せて放射線障害の機序解明および放射線障害治療薬の基礎的研究等を行なう。

V 放射線による身体的障害の臨床的疫学的解明
 各種の放射線障害者特に本年度はビキニ被災者、原爆被曝者のほか、ラジウムダイアルペインター、トロトラスト投与者を中心としてその臨床的研究行ない、さらに中枢神経、腎循環等の放射線障害に関する病理学的研究および臨床血液学ならびに血液の臨床生化学的研究を行なう。

VI 人体および環境における放射性核種の動向の解明
 放射性核種(ルテニウム−106、ヨード−131)の分析法、人体臓器中の各種成分元素の分析定量および身体負荷量等の研究、および自然放射線ならびに食物連鎖、一般生活環境、職業環境、特殊環境等の放射性汚染に関する研究および放射性汚染の除去に関する研究を行なう。

VII RIおよび放射線による診断法治療法の開発
 RIの利用による疾病の診断に関しヒューマンカウンターの利用を含む各種診断法の開発研究のほか、基礎的研究として新標識化合物を合成し臨床的応用を目的とする実験的研究を行なう。また、放射線治療に関しては、照射時環境の変化による腫瘍等の放射線感受性の変化に関する生物学的研究および線量率、線量分布等に関する技術的研究の両面から検討する。
 以上の研究の実施に際しては、各分野のより一層の緊密な協力を促進するとともに、特にこれらの分野における基礎研究を重視し、本年度においてはその一層の強化をはかることとする。
 この基礎研究の必要については、すでに本研究所設立の当初、日本学術会議により本研究所における「基礎研究の重視」として要望されており、また最近は、国連科学委員会1962年総括報告においても、基礎研究の発展がなければ放射線影響の解明はなしえないことが強調されている。
 研究課題に関しては、常に所全体として課せられた使命に十分留意し、研究の実施に際しては、研究目標との関連を明らかにし、研究者相互の協力を推進する。
 各研究部における研究計画の概要は、別記Iに、研究目標別に区分した課題の一覧表は、別記IIに記載した。

(2)プロジェクト研究
 以上の一般研究のほか、38年度からは内外の要請を勘案し、特に本研究所において行なう必要性を十分考慮して緊急の課題をとりあげ、関連研究部の共同により比較的短期間に一応の成果を収めることを目的として、これをプロジェクト研究として実施することにした。さしあたって、本年度は次の2課題とする。

イ 緊急時対策に関する調査研究
 緊急事故時におけるモニタリング方式および被曝者の個人被曝線量の推定ならびに臨床的処置、特に放射性ヨードの甲状腺摂取の防止法に関する研究を行ない、さらに各種放射線防護剤および治療薬を開発する。

ロ 医用原子炉に関する調査研究
 37年度における文献調査より、本年度はさらに医学生物学利用に関し必要な実験的研究および炉の型式、性能等に関する調査研究を行なう。なお、研究の実施にあたっては、所外の関連研究者をも加えた委員会を設置する。
 これらの課題については、それぞれプロジェクトリーダーをおき、研究の総括を行なうものとする。
 各課題の具体的内容と担当部門は、別記IIのとおりである。

II 養成訓練

 本研究所における養成訓練業務は、現在までに放射線防護課程(8週間、30名)を昭和35年1月開設以来すでに7回実施し、都合210名の放射線防護専門職員を養成した。また、37年1月からはさらに放射線利用医学短期課程(6週間、16名)を開設し、現在までに3回、計48名の医師に放射線利用技術の特殊教育を行なった。またこの間特に36年10月にWHO、IAEAおよび日本政府共催による放射線防護に関する国際コースの開設および第2回放射線利用医学短期課程(37年10月)におけるIAEAのExchange program による外人講師の招聘等により国際的経験を加えることができた。
 本年度は従来の経験にもとづき、各課程の一層の内容充足を期するとともに前年度同様、放射線防護課程を2回放射線利用医学短期課程を2回計4課程を実施する。このため7,012千円の予算を計上する。
 実施期間は下記のとおりである。

   放射線防護課程
昭和38年5月中旬〜7月中旬(第8回)
昭和38年10月下旬〜12月中旬(第9回)

   放射線利用医学短期課程
昭和38年9月上旬〜10月中旬(第4回)
昭和39年2月上旬〜3月中旬(第5回)

 なお、本年度は養成訓練棟の建設に着手するとともに、その完成をまって次年度以降に予定される放射線防護(長期)課程および放射線利用医学(長期)課程等の実施計画を策定する。

III 放射能調査

 本年度の放射能調査費は25,106千円を計上し、従来行なってきた環境、食品、人体の放射能レベルのみならず、放射線の線量−効果関係の解明に必要な線量調査をも実施する。
 本業務の実施にあたっては、本年度2研究室を増設した環境衛生研究部、技術部放射能検査課および新設のデータセンター係等、関連する諸部門の緊密な協力体制のもとにこれを推進する。
 次に調査項目を示す。

1. 放射能レベル調査
(1)人骨、人体臓器(肺、筋、甲状腺、生殖腺)の分析人骨については90Sr、137Cs、14Cおよびα核種、人体臓器については137Cs、14Cおよびγ核種の分析を行なう。
(2)人尿の分析
 37年度にひきつづき、4地方衛生研究所から送付された人尿につき、137Cs、α核種の分析を行なう。
 なお、各種食品の汚染について、その食品が放射能の日々の摂取量にどの程度寄与しているかを調査し、また、本研究所内において空気を採取し、α核種、γ核種、14C等について分析を行なう。

2. 放射能線量調査
(1)内部被曝線量調査
 飲料水、食品、排せつ物等の分析結果を用い腸管の被曝線量を算出する。動物を用いたモデル実験による線量測定を行ない、腸管線量の算出法をも検討する。
(2)外部被曝線量調査
 フォールアウトによる外部被曝線量に関し、各地の表土の線量を計算し、また干潟や河川泥による被曝線量および自然放射能による被曝線量を調査する。
(3)建造物による遮蔽効果の調査
 各種材料による各種様式の建造物について、地表、屋根および壁からの線量を実測する。
(4)医療用X線による被曝線量の調査
 医療用X線の使用方法の全国調査表にもとづき白血病発生に最も関係が深いと思われる骨随有意線量を推定する。
(5)ラジオアイソトープによる国民線量の調査
 全国から適当なRI使用施設を抽出して実測を行ない、RIにより、日本人が受ける国民被曝線量を推定する。

 なお、昭和37年度特別研究促進調整費により、「上層大気中の14Cに関する研究」を行なったが、本年度も継続して実施する。

IV 技術部

 技術部は、本研究所の研究業務の円滑な遂行をはかることを目的とし、共用実験施設の運用、管理、研究用物品の工作修理、実験用動植物の飼育栽培を担当し、所内の放射線安全管理、職員の放射線に対する健康管理ならびに放射性廃棄物の処理等の業務を行なっている。
 また、放射能調査に関し放射能試料の分析検査を担当している。
 放射能検査に関しては、すでに放射能調査の項において、別に述べたので、以下に技術および放射線安全業務に関し、本年度における重点を示す。
 なお本年度は、技術部における運営経費として19,191千円、ほかに廃棄物処理のため6,651千円の予算をそれぞれ計上した。

1. 核磁気共鳴吸収装置(NMR)の整備、運用をはかるとともに、ヒューマンカウンター、バンデグラフ(3MeV)、ベータトロン(31MeV)および医療用リニアック(6MeV)の適切な運用体制を整え、各種の実験研究、および医療に即応しうるよう人員の充足、機器の調整に努める。

2. 前年度に引続き、実験動植物の十分な管理を期するため、実験動植物関係施設の整備に努め、併せて管理技術の向上をはかる。

3. 放射線安全管理業務に関しては、放射線施設における安全管理をはかる一方、従来の外部被曝線量の測定のほか、体内汚染を考慮してヒューマンカウンターによる体内被曝線量の測定を実施し、個人被曝の管理に努める。

V 病院部

 病院は本研究所の研究目的にそって、1)放射線障害者の診断、治療2)RIの利用による診断、治療3)高エネルギー放射線による治療等に適合する患者を対象とするものであり、このため、一般病院、診療所等とは異なり、その管理運用ならびに診療看護にあたっては特別な体制が必要である。

 本年度は37年から原爆被曝者の指定医療機関として指定されたことも考慮し、研究業務と関連して、特に次のような患者の収容診療に重点をおく。

1. 原爆被曝者、ビキニ被曝者のほか、ラジウムダイアルペインターおよびトロトラストによる放射線障害者

2. ヒューマンカウンターを使用して諸疾病を診断する患者

3. RI利用による内分泌、循環器疾患の診断患者

4. 高エネルギー放射線によって治療を行なう感性新生物の患者以上について、入院患者は1日平均85名、外来患者は1日平均的30名を予定する。
 なお、本年度は医療用リニアック(6MeV)の整備を早急に完了し、運転照射を開始し、治療の向上をはかる。このため特に、診療と研究業務の一元化に留意しさらに、診療補助業務、すなわち看護および検査業務に一層の整備を促進し、円滑な運営を期する。
 また、病院部門運営費として本年度は31,514千円の予算を計上している。

VII 東海支所

 東海支所は、本年度から研究室長ほか1人の定員を確保し、同支所における研究業務は一応その基盤を確立することとなった。同支所は原子炉施設等を利用する医学、生物学研究を実施することを目的として設置したものであるが、本年度は医用原子炉に関し、炉内中性子線の測定に関する実験的研究をはじめ、関連する諸研究に着手するため、その整備を促進し、さらに活用をはかる方針である。このため、本年度はその運営に4,238千円(うち3,357千円は試験研究費)の予算を計上した。
 同支所においては、本年度はプロジェクト研究のほか下記の分野における研究を実施する。

1. 短寿命RIの生物学的利用に関する研究(新規)

2. 被照射動物の細胞組織における代謝型の変化(継続)

3. 混合被曝による身体的影響の評価に関する基礎的調査研究(新規)

4. 環境および人体中の放射性核種およびそれの安定同位体の化学的研究(継続)

5. RIによる診断法の実験的研究(継続)

 また、東海支所については、かねてから原子炉利用による生物実験を行なう所外の、大学、試験研究機関等の研究者に対し、共同の利用に提供する方針を明らかにしてきたが、本年度においては、支所の整備状況を公開し、使用手続等を明確にして周知徹底をはかり活発な利用を促進する。

VII 外来研究員

 本研究所における研究に関しては、関連諸科学の基礎的研究分野およびその境界領域について、本研究所の研究部門のみでは解決しえない問題が重要な意義をもつ場合があり、所外の研究者の協力を必要とすることがある。このため、本研究所では現在国立大学等において実施している流動研究員制度にならい、所外から関連部門の専門研究者を招いて共同研究を実施することとし、本年度から1,132千円の予算を計上し、外来研究員制度を確立する。なお、実施の細目については、公募を原則とし、所外からの参加を得て選考することとし、別途計画を策定する。

VII 建設

 本年度における施設の建設および整備については、建物としては養成訓練棟、特高変電所および職員宿舎の増設等、また設備としては電話交換器がある。
 その他雑工事として主なものは、道路整備、境界鉄柵、放射線管理区域鉄柵柵工事および第2ガンマ線照射棟遮蔽壁増設等がある。
 以上の実施計画は次表のとおりである。

昭和38年度放射線医学総合研究所営繕実施計画

〈別記I〉

一般研究内容

物理研究部

物理第1研究室

〔研究題目〕

 人体内放射能の測定法の研究(継続)

〔研究内容〕

 阻止X線検出器を使用してβ線の体内測定に関する基礎的調査研究を行なう。またヒューマンカウンター用シンチレーションカウンターの特性改善に関する基礎的研究を行ない、40K、22Na、24Na、137Cs、Ra、Th等の放射性物質に対する較正法について基礎研究を行なう。

物理第1、2研究室、医用原子炉研究室

〔研究題目〕
 速中性子に伴う生体内の中性子および2次荷電粒子のエネルギー分布の測定法に関する研究(継続)

〔研究内容〕
 バンデグラフ加速器を用いて中性子を発生させ、タイム・オブ・フライト法による中性子エネルギーの測定法および半導体検出器による反跳陽子測定の基礎的研究を行なう。

物理第1、3研究室

〔研究題目〕
 微量放射能の測定方法の研究   (継続)

〔研究内容〕
 同時計数型β線スペクトロメーターの低エネルギーβ線用として適する検出器を試作して上記の研究を行なう。

物理第2研究室

〔研究題目〕
 高エネルギーX線、電子線による生体内線量分布ならびに吸収線量に関する研究(継続)

〔研究内容〕
 高エネルギーX線、電子線を生体に照射した時の吸収線量を各種の方法(電離箱による電離、熱量計による方法、フィルム等)で求める。
 これを理論的計算と比較検討し、生体と等価な実用測定法を開発する。なお、一次放射線のエネルギースペクトルを大型のNaIによって測定する実験も併せて実施する。

〔研究題目〕
 X線照射に伴う2次電子の分布ならびに電子の阻止能に関する研究(継続)

〔研究内容〕
 各種エネルギーの連続X線を生体ならびに生体等価物質に額射した時発生する2次電子のエネルギースペクトルおよび角度分布などをβ線スペクトロメーターを用いて測定する。また、各種エネルギーの電子線の生体等価物質内のエネルギー損失を同様の方法で測定し、阻止能、LETの基礎資料を集成する。

〔研究題目〕
 中性子線による吸収線量に関する基礎研究(新規)

〔研究内容〕
 生体等価な壁および電離ガスからなる電離箱を試作し、生体等価な実用測定法を開発する。また、γ−insensitive、n−insensitiveな電離箱、比例計数管などを試作し、n−成分およびγ−成分を別個に測定する。

物理第3研究室

〔研究題目〕
 人体臓器の被曝線量に関する研究(継続)

〔研究内容〕
(1)昨年は医療用の放射線治療の調査を行なったが、今回はこの調査をもとにして、各種治療方法に対する骨髄線量を算定し、国民有意骨髄線量を算出する。
(2)RI使用の全国調査がすんでいるので、これにもとづいて実測調査を行ない、各グループの線量を推定し、RIの国民線量への寄与を算出する。

〔研究題目〕
 高エネルギーX,β線および中性子線の遮蔽方式の基礎的研究(継続)

〔研究内容〕
 ベータトロンおよびバンデグラフから出る各種の高エネルギー放射線を測定し、また、いろいろな物質との相互作用による放射線の測定を行ない、その遮蔽効果について研究する。

物理第3、1研究室、化学第3研究室

〔研究題目〕
 広島、長崎の原爆による被曝線量の推定(継続)

〔研究内容〕
(1)屋外にある照射を受けた鉄中59Coの量と放射化された60Coの量の比からslow neutron のfluxを求める
(2)コンクリート中の鉄を使って同様にしてfast neutron のfluxを求める。
(3)被曝して火災にあっていない瓦の螢光線量からγ線量を推定する。

化学研究部

化学第1、2研究室

〔研究題目〕
 核酸および蛋白質を含む系に対しての放射線作用の強さを支配する因子の研究(新規)

〔研究内容〕
 本年度はDNAの型転換作用あるいは酵素反応を目安にして主として蛋白質の影響をしらべる。すなわちDNAの溶液に蛋白質を同時に溶かし、溶液の化学的な状態とDNAおよび蛋白質の構造ならびに両者の相互作用と放射線による感受性との関係、放射線のエネルギーがどのようにしてDNAに及ぶかを考察する。

化学第2、1研究室

〔研究題目〕
 細菌の型転換およびバクテリオファージの突然変異現象を目安としたDNAの構造の変化(継続)

〔研究内容〕
(1)亜硝酸、ヒドロキシルアミンなど塩基成分のみをこわす試剤、Sonic による主鎖の開裂を主
とした処理などによる活性の低下とX線作用の比較
(2)X線照射により生成したバクテリオファージの突然変異株が上記のような試剤で逆変異をおこす様子から、DNAの塩基成分の変化と突然変異発生との関係をしらべる。
(3)DNAに対する放射線作用を生物的なレベルで理解するために、型転換作用の機構をさらに研究する。特に遺伝形質の発現機構と遺伝的組かえの機構が重要視される。

〔研究題目〕
 抗体蛋白質の生産機構の解析(継続)

〔研究内容〕
(1)生体に取り入れられた抗原の情報がどのようにして抗体を生産する細胞(脾臓のプラズマ細胞)に伝えられるかを研究するため、一つの可能性として、マクロファージの関与の有無を確かめ、マクロファージに抗体がとりこまれる機構とその運命を研究する。抗原としては、大腸菌のバクテリオファージを使用する予定である。
(2)抗体蛋白質が、一般の酵素蛋白質の合成機構にしたがって合成されるかどうかを確認し、かつ抗体の生産細胞には、抗体蛋白に対応する情報RNAが生産されるかどうかを確認することとその性質を無細胞系を用いてしらべる。

化学第3研究室

〔研究題目〕
 クロマトグラフィーによる分離の研究(新規)

〔研究内容〕
 主として薄層クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィーについて研究する。前者はおもに核種のペーパークロマトグラフィーによるデータを基礎として分離の条件を定める。後者は溶媒抽出系における有機相および水相2相間の物質の分配に対して第3相であるイオン交換樹脂を加えて、各相の分配の影響をしらべた結果をもととして、カラム法による分離の基礎データとする。

〔研究題目〕
 放射性核種の分析法の研究 (継続)

〔研究内容〕
(1)カラムに充てんした鉄形の樹脂に、試料を流し106Ru、103Ruをクロマト的に捕集する。この、方法により大量の試料を容易に取扱うことができる。
(2)種々の核種が、混在している試料のなかから適当な分離条件を検討しつつ131Iを分離する。このとき106Ruを硫化物として除去したのち131Iを分離する。

〔研究題目〕
 放射性核種の身体負荷量の推定に関する研究 (新規)

〔研究内容〕
 排泄物の分析、ヒューマンカウンターによる測定、およびそれらの相関関係をしらべ、身体負荷量の推定の方法を比較検討する。

〔研究題目〕
 人体臓器中の微量元素の定量に関する研究(継続)

〔研究内容〕
 約50検体について、体内臓器約10種類を選び、総計500試料について約30種の元素の定量を、主としてDC Arc法による発光分析法によって行なうほか AC Spark法、骨中ストロンチウムの分析に関してはX線螢光分析法など(環境衛生研究部第4研究室と共同)についても検討する。

生物研究部

生物第1研究室

〔研究題目〕
 放射線障害の発現、回復における中枢神経−内分泌器官系の役割(新規)

〔研究内容〕
 キンギョの脳下垂体、副腎、脾、腎、生殖腺などを剔出し、手術された動物と対照とにX線、γ線の全身または部分照射をして、症候の発現と回復を形態学的、生理学的に比較する。とくに表皮、造血器、脂肪体内の脂質と血中のACTHレベルの変化に注目する。またコルチコイドなどホルモンを投与した場合、障害の発現がどのように変化するかを観察、いろいろな神経遮断剤を用い中枢神経−内分泌器系の機能的相関を異なったレベルでたち切った場合の障害発現の変化を見る。このような結果を総合し、個体としての障害発現、回復過程における中枢一内分泌系の役割を考察する。一方では切り出した魚類の神経−ホルモン−色素細胞系を用いて、in vitro でこの系に対する放射線の影響を研究する。

生物第2研究室

〔研究題目〕
 動物胚に対するDNPの放射線保護効果(継続)

〔研究内容〕
 ウニ胚、蛙卵を用いて、放射線による奇型の発生率、分裂異常その他がDNP処理によりどのように変化するかを追及し、DNPによる呼吸上昇を抑える作用のあるAzideとを組合わせて実験を行なう。さらにできうれば、02、N2条件下でこのような作用がどういう行動をとるかについて明らかにする。また線量による差の実験については」一部東海支所において中性子線による実験を行なう。

〔研究題目〕
 照射による細胞構造膜の物理化学的変化と機能障害との関係 (継続、一部新規)

〔研究内容〕

 哺乳類の組織細胞(腸上皮等)などを材料として、照射後の物理的性状の変化を検出し、これと透過性を主とする機能変化との関係を追求する。方法としては、電気生理学トレーサー技術等を、併用する。

遺伝研究部

遺伝第1研究室

〔研究題目〕
 人類培養細胞における放射線誘発染色体異常の細胞学的研究(新規、一部継続)

〔研究内容〕
 人類の培養細胞に、放射線を照射し、染色体の切断、融着、転座、染色体橋の形成等の出現頻度、発生機構、異常染色体の内部構造の変化等を低張液処理による染色体観察法等により研究する。人類の増養細胞に及ぼす放射線の影響の基礎的資料を得るために、研究に適した他の動物の細胞に及ぼす放射線の影響を調べ、人類の培養細胞のそれを比較研究する。さらに、細胞が大きく染色体数が少なく分析に容易な昆虫の生殖細胞を用い、紫外線の局部照射を行ない、放射線誘発異常染色体の細胞分裂における行動を16ミリ映画に微速度撮影して、染色体異常の発生機構を分析研究する。

〔研究題目〕
 放射線による前突然変異の誘発とその機構の解析し(継続、一部新規)

〔研究内容〕
 Photosensitizing agent を用いて可視嶺域の光線により突然変異が誘発されることを見出したので、これを用いてUV、X線などの異なる波長域の突然変異の発生を比較しその機構の分析を計る。
 このため、大腸菌およびファ−ジを用い、遺伝子微細構造のレベルでの突然変異誘発のスペクトルを比較測定し、またこれらmutagen の相互作用についても解析する。以上の研究に電子冷凍装置などを有効に使用し、前突然変異の条件を精密に制御して実験する。

〔研究題目〕
 親の年令、精子のStorage 雌雄その他による放射線突然変異率の変化とその機構の研究(継続、一部新規)

〔研究内容〕
 ショウジョウバエ、蚕を用い年令、精子のStorage 合成培地による栄養の変化等がどのように致死または可視突然変異率に影響するかをみるとともに、放射線による突然変異のうちwhole mutationとfrac−tional mutation の線量に対する関係から突然変異発生機構を明らかにする。また比較のためradiomimetic substance およびUV等の作用と併せて検討する。

遺伝第2研究室

〔研究題目〕
 人類集団における遺伝病患者数の時間的推移に関する理論的研究(新規、一部継続)

〔研究内容〕
 人類集団においては、いろいろな年令層の人が存在し、また社会機構の変化により近親婚や遺伝病に対する陶汰圧が変化しつつある。このような人類集団に人工放射線が一定期間与えられた場合、時間の経過とともに遺伝病が、どのように増減するかを数学的に検討する。
 この際の数式は極めて複雑になるので電子計算機を用い今までに得られたデータをもとにして数値計算を行なう。

〔研究題目〕
 生物集団における突然変異遺伝子の時間的消長に関する実験的研究(継続、一部新規)

〔研究内容〕
(1)遺伝的に不均一な集団の量的形質におよぼす放射線の影響を調べるために、数系統のショウジョウバエの人工集団を作り、これにX線を照射して腹部剛毛数を調べ、分散分析によってX線照射の効果を遺伝的に推定するとともに、人為撰抜をおこなって集団内の変異を分析する。
(2)放射線誘発突然変異のうち有害遺伝子誘発のパターンを調べるために、単細胞生物(ゾウリムシ)を用いて、配偶核形成期の生殖核に対する電離放射線の遺伝的影響(有害度)を量的に測定し、分散分析によってそのパターンを明らかにする。

生理病理研究部

生理学研究室

〔研究題目〕
 副腎皮質におけるCoenzyme IおよびII生合成に及ぼす放射線の影響(継続)〔研究内容〕
(1)放射線としては主としてX線を用い、全身照射後一定時間毎に副腎皮質におけるCoenzyme IおよびIIを定量する。
(2)同様にそれぞれの時間毎に摘出した副腎をin vitroでincubationic coenzyme IおよびIIの生合成能を測定する。このためこ32P摂取速度も実験する。
(3)臓器内での環元型Coenzyme IおよびIIの生成速度を測定する。この目的のためには、副腎皮質内における糖代謝機能を併せて測定せねばならないために、phosphorylase 活性解糖系五炭糖リン酸回路のレベルにつき検討する。
(4)以上の諸点につき、37年度中に開始するが、本年度において広く発展させる。

生理学研究室、病理第1研究室

〔研究題目〕
 放射線卵巣腫瘍の発生に関する内分泌的背景の病理学的研究(継続)

〔研究内容〕
 各種放射線を使用し全身照射及び各内分泌臓器の単一照射を行ない。
(1)卵巣の腫瘍化の発現頻度および
(2)腫瘍化に対応する内分泌臓器、特に下垂体−副腎−卵巣の機能と形態的変化の関連性につき考察する。

病理第1研究室

〔研究題目〕
 放射線による中枢神経急性障害の病理学的研究 (継続)

〔研究内容〕
 本研究はX線照射(300−12,000r)によって血液−脳柵(Blood−Brain−Barrier)の破壊を来たし、脳浮腫を惹起する事実を把み且脳毛細管壁の構造変化を電子顕微鏡的に究明する。

〔研究題目〕
 照射時腎循環動態の病理学的研究(継続)

〔研究内容〕
 55Fe化合物並びに32Pラベル赤血球を用いて腎循環を行ない、その変化をGM管及びScintilation tubeを用いて継続的に測定しつつ乏血部、充血部の病理組織並びに電子顕微鏡的検索を遂行する。照射はX線およびγ線を全身部分および腎露出して与える。

〔研究題目〕
 照射による組織培養細胞の代謝攪乱の病理学的研究(新規)

〔研究内容〕
 組織培養細胞(L株細胞、Hela細胞、吉田肉腫細胞)に各種放射線を照射し、その感受性を細胞レベルで検討する。
 病理組織学的な従来の方法と更にオートラジオグラフおよび組織化学的方法の電子顕微鏡的応用とにより、RIを指標とする代謝攪乱の動態とそれにみあう形態的変化特に細胞内小器官との関連につき考察する。

病理第1、2研究室

〔研究題目〕
 放射線白血病発生に対する脾の干渉作用の病理学的研究(継続)

〔研究内容〕
 実験動物としては主としてマウスを用い、X線全身照射群、脾防護群、剔脾群、脾Extra 注射群等の各実験群につき、X線白血病の発生率を比較し、かつ造血臓器を中心として病理組織学的検索を加える。

病理第2研究室

〔研究題目〕
 骨沈着90Srの除染に関する研究〔新規〕

〔研究内容〕
 前年度研究により副甲状腺ホルモンが85Srの除染に有効な事が明らかとなった。本年度は副甲状腺ホルモンにキレート剤、利尿剤等を併用する事により、より完全な除染を試みる。実験方法としてはラッテ腹腔内に90Srを注入後、上記薬剤を種々の割合で投与し90Srの尿中排泄量および骨沈着量を計測し、かつ、骨、腎、その他臓器の形態学的観察を行ない、最も有効かつ副作用の少ない薬用量および薬剤の組合わせを研究する。

障害基礎研究部

障害基礎第1研究室

〔研究題目〕
 脂質過酸化物の動物ならびに培養細胞、セルフリーシステムに及ぼす影響に関する研究〔継続〕

〔研究内容〕
 脂質過酸化物の放射線障害発現に於て果たす役割および障害に関する生物学的指標としての適否を知るため、まず脂質過酸化物そのものが生体に及ぼす影響を検討する。すなわち、主としてin vitroで調製した脂質過酸化物のほか、放射線照射後in vivoで産生される脂質過酸化物を用い、動物については致死作用培養細胞、については増殖抑制、セルフリーシステムに対しては諸酵素活性の阻害現象についてみようとするものである。

障害基礎第2研究室

〔研究題目〕
 混合被曝における各被曝臓器の放射線障害からみた相互関連性に関する調査研究(継続)

〔研究内容〕
 単純な混合被曝の一例として2種以上の臓器の外部同時被曝の場合について

(1)個々の臓器の被曝の全身的影響への寄与
(2)障害面からみた臓器相互の関連性に関し実用的見地からみた「障害の模型化」の可能性を検討するため、

(a)全身的影響の評価の対象となる共通の尺度の選択
(b)個々の臓器の障害面からみた相互比較の定量化と加算評価の方法について考察し、他方(a)単純被曝における種々の臓器、特に内部臓器に対する特定の生物学的効果の線量および線量率依存性、(b)回復過程に及ぼす線量および線量率の影響につき検討し、上記の考え方に対する生物学的意義につき考察する。

障害基礎第3研究室

〔研究題目〕
 放射線感受性と生理学的性質の差異に関する研究 (継続)

〔研究内容〕
 放射線感受性の異なるマウスの甲状腺機能ならびに羊臓器の酸素代謝などを測定し、それぞれの相関について検討する。

〔研究題目〕
 神経系に及ぼす放射線の影響に関する研究(継続)

〔研究内容〕
 家兎の脳に記録および刺戟電極を挿入したのち、放射線を照射し、脳波に対する直接的影響ならびに刺戟に対する反応への影響を検索する。

障害基礎第4研究室

〔研究題目〕
 内部放射線の被曝による全身的影響に関する実験的研究(継続)

〔研究内容〕
(1)実験動物における内部被曝線量(とくに90Sr)の連続的測定を、新しく開発した方法によるWholebody計測法により行なう。
(2)親和性臓器への影響が全身的機能に及ぼす寄与という形でとらえるために必要な生物学指標のうち同一個体で連続測定の出来るようなものを検索する。

〔研究題目〕
 放射線比較実験動物学に関する調査研究(動物実験から人類への外挿法に関する研究)(継続)

〔研究内容〕
 前年度までにすでに動物学Stageとの対応代謝測度等の時間的因子の検討を行ない、外挿方式に関して一応の試案を得たので、本年度はその後得られたデータとの照合により補正発展せしめること、さらに放射線の影響の動物差の解明を目的として、比較生理学的検討を主として、臓器の構成成分の相違の検討という角度から実施する。

薬学研究部

薬学第1研究室

〔研究題目〕
 金属キレート化合物の放射線医学領域における基礎的研究(継続)

〔研究内容〕
 生体構成物質としてアミノ酸ペプチドを選び、その金属キレート(主として銅)生成反応について電位差法、分光光度法その他によって熱力学的に検討する。このキレートの触媒作用を、同時に、検圧法化学分析法、電位差法などによって動力学的に研究し両者の関係について解明を試みる。さらにこの関連性を細部にわたって検索するために赤外分光法、磁気測定法などによって活性にかかわる銅の電子状態の研究を行ない、これらを総合して金属酵素の活性と構造の関連性について推論を試みる。

薬学第1、2研究室

〔研究題目〕
 新RIの診断薬の合成とその生体内分布に関する基礎研究(新規)

〔研究内容〕
(1)放射性金属とキレート化合物の合成および分析
(2)同上のキレート化合物の生体内分布と代謝
(3)放射性金属をふくむ有機化合物の合成
(4)放射性有機化合物の合成
(5)放射性化学を利用したRI有機化合物の合成と分析
(6)以上のRI化合物の分布にもとづく診断薬治療薬としての検討薬学第2研究室

〔研究題目〕
 ホルモン生合成に関する基礎的研究(継続)
〔研究内容〕
 ステロイドホルモン生合成に関しては、とくに放射線に対して鋭敏に影響をうける睾丸、卵巣、副腎皮質等に放射性のステロイド(前駆物質)を投与し in vitro で生合成を行なわしめ、各段階における速度、また中間代謝物の定性定量的分析を行ない、生合成の過程を確立し量的な根拠のもとに障害研究の基礎とする。
 蛋白質ホルモンについては、生合成の過程を放射性アミノ酸のとりこみを指標とし、in vitro で放射性のあるホルモン物質の生合成を行ない、その間の生合成に関与する物質の量的関係を確立し、その放射性ホルモンについて化学的、物理化学的、生物学的に分析を行ない、次の目標である電子線による障害の基礎とする。

〔研究題目〕
 生殖線に関する放射線障害の生化学的研究(継続)

〔研究内容〕
 放射線照射後酵素含量の変化を酵素化学的方法により研究する。放射性化合物摂取、代謝速度その他により障害を考察する。組織化学的方法により構成細胞群の変化をそれぞれ分析し、でき得れば定量化を行なう。他方、脳下垂体一生殖線系の反応を内分泌学的に考察し、放射線によるこの系の障害を生化学的に研究する。

〔研究題目〕

 放射線にもとづく白血球の減少症に対する治療薬の研究(継続)

〔研究内容〕

 牌臓および肝臓から白血球増加成分を抽出、分離する。白血球増加成分ロイコポエチンの純化およびその化学的研究ロイコポエチンの作用機序の生化学的ならびに薬理学的研究、放射線照射に基づく白血球減少症に対するロイコポエチンの治寮作用を研究する。照射動物(ウサギ、ラット、マウス)に各種の白血球増加性化合物を投与し、白血球回復効果および致死率低下効果を測定し、治療効力を判定する。

環境衛生研究部

環境衛生第1研究室

〔研究題目〕
 人骨中のα放射能の測定(新規)

〔研究内容〕
 化学分析により骨中のα放射体を分離測定する。38年度においては主としてRa−226の測定を行なう。

〔研究題目〕
 放射性ヨウ素のAerosol粒子に対する付着実験 (継続)

〔研究内容〕
 まずAerosol発生装置によって発生させた粒子につき実験を行なう。前年までで、非放射性ヨウ素に対する溶解度の高い物質粒子の実験は終わり、溶解度の低い物質に主力を注ぐ。粒子に付着したヨウ素は化学的に分析される。後半は、現実に空中に浮遊している粒子に対する実験を行なう予定である。α棟の整備、準備進行とともに放射性ガスを用いた実験に着手する予定である。

〔研究題目〕
 各種建造物中における人体被曝線量の算出に関する研究(新規)

〔研究内容〕
 土、砂、木、コンクリートその他の環境物質、住宅構造物質の各種放射線の吸収を調べ、建造物中の放射線量を算出し実測値と比較考察する。

環境衛生第2研究室

〔研究題目〕
 農作物の放射能汚染の研究(継続)

〔研究内容〕
(1)葉菜類の直接汚染を実験的に測定する。
(2)日本人食中大豆およびその製品の*Sr、*Csの寄与を測定する。

〔研究題目〕
 水生生物の放射能汚染の研究(継続)

〔研究内容〕
 本年度は主として魚類のSr、Ca差別および原子力船からの廃棄物によくみられる*Taなどの魚への濃縮について実験的に研究する。

〔研究題目〕
 哺乳動物の放射能汚染の研究(継続)

〔研究内容〕
(1)SrとCaの差別について、主に腸管吸収時にこれに関与する食物成分の影響を日本人食に重点をおいて研究する。
(2)人体の*Sr、*Cs排出および体内残留率を研究する。

〔研究題目〕
 幼若者の放射能汚染の特徴に関する研究(新規)

〔研究内容〕
(1)Sr、Csなどの年令別代謝様相の比較を動物実験にて行なう。
(2)幼若人体中*Sr、*Cs量の推移を食物中のそれと関連して解析する。

環境衛生第3研究室

〔研究題目〕
 大気中の放射性dustの採取、測定に関する研究(継続)

〔研究内容〕
 物理的な方法を主とする。フィルターに広く散開させて捕集したdustを測定し、核種の決定と簡単な定量を行なう。このような測定における自己吸収等の効果がどのようにあらわれるか、種々の測定方法と比較しながらしらべ、捕集上の技術で最も効果的な過程を見出す。また粒度分布と放射能との関係をしらべる予定である。

〔研究題目〕
 放射性Aerosolおよび放射性気体の環境中における動向に関する研究とその試作(継続)

〔研究内容〕
 動物の大きさ等によって要求される粒子の粒径と濃度は種々であるが、そのおのおのに適した方法はすでに検討がはじめられている。本年度は35年度からの検討結果にもとづき、ダストならびにミスト発生の装置を試作する。試作された装置はその性能を調べ使用上の条件を明確にする予定である。

環境衛生第4研究室

〔研究題目〕
 14C、3H測定法の開発研究(継続)

〔研究内容〕
(1)液体シンチレーションカウンティングについては、本年度入手予定のフローシステム付属装置による測定法を新たに検討する。
(2)前年度に購入したイオンチェンバー、バイブレイティングリードカウンティングのケリー34、エアモニークーおよびニュークリアシカゴのダイナコン6,000について、絶対測定、チェンバーの除染法、測定限界などを研究(3)プロポーショナルカウンティングの試料調整法の研究なかんづくCH4法(メタン法)の検討

〔研究題目〕
 14Cの分布調査(継続)

〔研究内容〕
(1)核爆発実験再開以来、炭酸捕集装置を用いて連続採取してきた。これをM.B.L.Eプロポーショナルカウンターにて測定するため、前年度種々検討した試料調整法によってroutine的に実験を行なう。

(2)35年来のチモール、37年来のメントールを材料にし、液体シンチレーションカウンティングによる年代別14Cの濃度変化の測定を、続行する。

〔研究題目〕
 植物の14CO2摂取研究(継続)

〔研究内容〕
 36年度に設計した植物栽培フードは、昨年ほぼ基本データを得たので、本年度から本格的実験を開始する。実験植物としては、前記分布調査の試料たる「やまじそ」「はくか」および昨年夏厚生省国立衛生試験所伊豆薬用植物栽培試験場から移植した「レモングラス」を使用し、14CO2気流中で栽培し、その成分について系統的分解分析を行なって14Cの植物摂取機構を解明する。

環境衛生第5研究室

〔研究題目〕
 人骨中の放射性および安定ストロンチウムの定量(継続)

〔研究内容〕
 人骨中の放射性および安定ストロンチウムについては現在ほぼ方法が確立されているが、操作の煩雑さという難点があるので、イオン交換樹脂法等につき検討する。また安定同位元素については、37年度に開発に着手したX線蛍光分析法、その他につき検討する。このため人骨試料、標準試料につき各種方法(担体沈澱法、イオン交換樹脂法、X線螢光法等)により分析を行ない、精度、再現生、操作の煩雑度、多数試料処理の可否等につき検討する。

〔研究題目〕
 河川、海洋セディメントによる放射能浄化作用の研究(継続)

〔研究内容〕
 本年度は下記3項目につき実験を進めるが、主として(1)について行なう。
(1)各種の海洋、河川の浮遊物による重要放射性核種の吸着度の差異を比較検討する。
(2)各種の海洋、河川浮遊中の微量元素を安定し、無機微量元素の行動を考察する。
(3)水棲バクテリアによる重要性核種吸着の機構を調べる。

〔研究題目〕
 上水浄化場、下水処理場における放射性物質の動向(継続)

〔研究内容〕
 本年度は次の2点につき調査研究を行なう。
(1)上水浄化場の炉化槽、下水処理場の沈澱池、活性汚泥処理池等の放射性核種含有水除染の程度をRIを用いた実験により明らかにする。
(2)上記各処理池におけるスラッジの放射性核種を安量しフォールアウト中の放射性核種の実際における行動を実測する。

〔研究題目〕
 液体食品からの重要放射性核種の除去に関する研究(継続)

〔研究内容〕
 イオン交換樹脂法、沈澱法、抽出法、透析法につき重要放射性核種(90Sr、131I、137Cs等)の除染度と蛋白質、脂質、ビタミン類の含量変化とにつき実験を行ない、栄養成分の変動が少なく除染度の高い方法を考察する。

環境衛生第6研究室

〔研究題目〕
 川口付近、干潟における放射性物質(137Cs、95Zr、95Nb等)の濃縮とそれによる被曝線量の研(新規)

〔研究内容〕
 干潟地、中州等から持帰った土砂につきγ線スペクトロメーターにより含有核種の測定を行なうとともにチェンバー、プラスチックシンチレークー、γ線サーベイメーターを用いての実地測定を行なう。

臨床研究部

臨床第1研究室

〔研究題目〕
 原爆被曝者、ビキニ、被災者放射線取扱者、Radium dial painter、トロトラスト被投与者、事故による被爆者、放射線治療患者の臨床的研究(継続)

〔研究内容〕
 上記被曝者についてでき得る限り入院させ、臨床諸検査、必要に応じてHuman Counterの使用、あるいは排泄物の測定を行ない、被曝様式、被曝線量と障害の関係を研究する。

〔研究題目〕
 放射線による各種血球染色体の変化に関する研究(継続)

〔研究内容〕
 各種被曝者および白血病患者の末梢白血球を培養して染色体を観察し、両者を比較する。このため、培養中に3H−thymidineを加え、染色体中への入り方等をみる。

臨床第2研究室

〔研究題目〕
 放射線の赤血球諸酵素に及ぼす影響(継続)

〔研究内容〕
 今回は解糖系酵素中からピルビン酸キナーゼ、五炭糖燐酸サイクルの酵素からグルコース6燐酸脱水素酸素、また別にコリンエステラーゼを選び、赤血球中のこれら3酵素活性の変動を、臨床的には白血病、再生不良性貧血ないし放射線治療を行なう症例、動物実験的には、全身照射をうけた動物で検討する。

〔研究題目〕
 放射線尿中アミノ酸に及ぼす影響(継続)

〔研究内容〕
 まず正常日本人での尿中アミノ酸のパターンを求め、ついで悪性腫瘍、白血病等で放射線治療ないし抗腫瘍剤投与を受ける症例につき、治療前後でのパターンの変動と線量、薬剤量との関係を検討する。またこれと併行して、動物を用いて全身照射を行ない、線量と尿中アミノ酸パターンの変動との関係を追究する。

臨床第3研究室

〔研究題目〕
 生体内放射能測定による診断(含ヒューマン全身計数法)(継続)

〔研究内容〕
 ヒューマンカウンターによる天然カリウム定量、超微量トレーサーによる全身計測、各種新標識化合物によるトレーサー診断、面スキャニング、ポジトロンスキャニング、線スキャニング、シンチレーションカメラ、アームカウンター、液体シンチレーションカウンター等による新診断法の開発および排泄物、血液試料分析による診断を行なう。

〔研究題目〕
 新標識化合物によるトレーサー実験(継続)

〔研究内容〕
(1)3H−核酸前駆物質、3H−アミノ酸、59Feを利用し造血機構を解明する。
(2)3Hおよび14Cステロイドを利用し副腎機構を診断する。
(3)3Hおよび14Cアミノ酸を利用し脳内代謝機構を追究する。
(4)14Cノールアドレナリンの体内代謝を分析する。
(5)3H−DFPを利用し白血球崩壊機序を明らかにする。
 手段としては主としてミクロオートラジオグラフィーおよび液体シンチレーションカウンターを利用する。

臨床第4研究室

〔研究題目〕
 環境の変化による放射線感受性の影響(継続)

〔研究内容〕
(1)酸素(窒素、炭酸ガスの混合も含めて)加圧変化による腫瘍感受性について動物癌を用いて実験する。
(2)加圧された状態の動物の生理学的検査を行ない臨床的使用可能範囲を検討する。
(3)センシタイザー(薬物)、低体温照射を併用して強調効果をはかる。
(4)動物実験により効果を確認した上で臨床癌治療に応用する。

〔研究題目〕
 線量率の変化が生体に及ぼす影響(継続)

〔研究内容〕X線、γ線、高エネルギーX線、および電子線について、健康動物、さらに癌細胞の線量率の影響を求める。

〔研究題目〕
 適正線量分布の研究(継続)

〔研究内容〕
 総ての照射条件について適正な線量分布を得るため全治療装置について測定し、物理的性能の特性を求める。特殊顔射法(廻転振子、照射野分割法)の研究を行なうとともにウェッジフィルター篩板の特性を研究し理想的照射法を求める。

東海支所

〔研究題目〕
 被照射動物組織における助酵素量およびミトコンドリアの変化および24Na、42K利用によるトレーサー実験(継続、一部新規)

〔研究内容〕
 主に哺乳動物を用い被照射動物の組織(主として肝)からミトコンドリアを取り出し、その呼吸酵素系への影響およびその系で作られるエネルギーにより維持されるミトコンドリアの形態に対する影響をミクロオートグラフを用いて研究する。また短寿命の24Na、42Kを用いて透過性に対する放射線の作用を解明する。

〈別記II〉

研究目標別一覧表

1. 放射線の測定法および吸収線量の算定法

1)人体内放射能の測定法の研究(物1)(継続)

2)速中性子に伴う生体内の中性子および2次荷電粒子のエネルギー分布の測定法に関する研究(物1、2医用原子炉研)(継続)

3)微量放射能の測定方法の研究(物1、3)(継続)

4)高エネルギーX線、電子線による生体内線量分布ならびに吸収線量に関する研究(物2)(継続)

5)中性子線による吸収線量に関する基礎研究(物2)(継続)

6)X線照射に伴う2次電子の分布ならびに電子の阻止能に関する研究(物2)(継続)

7)人体臓器の被曝有意線量に関する研究(物3)(継続)

8)高エネルギーX、βおよび中性子線の遮蔽方式の基礎的研究(物3)(継続)

9)広島、長崎の原爆による被曝線量の推定(物1、3、化1)(継続)

2.細胞に対する放射線の影響の基礎的解明

1)細菌の型転換およびバクテリオファージの突然変異現象を目安としたDNAの構造の変化(化1、2)(継続)

2)核酸および蛋白質を含む系に対しての放射線作用の強さを支配する因子の研究(化1、2)(継続)

3)抗体蛋白質の産生機構の解析(化1)(継続)

4)動物胚に対するDNPの放射線保護効果(生2)(継続)

5)照射による細胞構造膜の物理化学的変化と機能障害との関係(生2)(継続、一部新規)

6)人類培養細胞における放射線誘発染色体異常の細胞学的研究(遺1)(新規、一部継続)

7)照射による組織培養細胞の代謝攪乱の病理学的研究(病1)(新規)

8)被照射動物組織における助酵素量およびミトコンドリアの変化および24Na、32K利用によるトレーサー実験(東海)(継続、一部新規)

3. 放射線による遺伝的影響の解明

1)放射線による前突然変異の誘発とその機構の解析(遺1)(継続、一部新規)

2)親の年令、精子のStorage雌雄その他による放射線突然変異率の変化とその機構の研究(遺1)(継続、一部新規)

3)人類集団における遺伝病患者数の時間的推移に関する理論的研究(遺2)(新規、一部継続)

4)生物集団における突然変異遺伝子の時間消長に関する実験的研究(遺2)(継続、一部新規)

4.放射線による身体的影響の解明

1)放射線障害の発現、回復における中枢神経一内分泌器官系の役割(生1)(継続)

2)副腎皮質におけるCoenzyme IおよびII生合成におよぼす放射線の影響(生理)(継続)

3)脂質過酸化物の動物ならびに培養細胞、セルフリーシステムに及ぼす影響に関する研究(障1)(継続)

4)混合被曝における各被曝臓器の放射線障害面からみた相互関連性に関する調査研究(障2)(継続)

5)放射線感受性と生理学的性質の差異に関する研究(障3)(継続)

6)神経系におよぼす放射線の影響に関する研究(障3)(継続)

7)内部放射線の被曝による全身的影響に関する実験的研究(障4)(継続)

8)放射線比較実験動物学に関する調査研究(動実験から人類への外挿法に関する研究)(障4)(継続)

9)ホルモン生合成に関する基礎的研究(薬2)(継続)

10)生殖腺に関する放射線障害の生化学的研究(薬2)(継続)

11)放射線に基づく白血球の減少症に対する治療薬の研究(薬2)(継続)

5.放射線による身体的障害の臨床的疫学的解明

1)放射線卵巣腫瘍の発生に関する内分泌的背景の病理学的研究(病1)(継続)

2)放射線による中枢神経、急性障害の病理学的研究(病1)(継続)

3)照射時腎循環態の病理学的研究(病1)(継続)

4)骨沈着90Srの除染に関する研究(病2)(新規)

5)放射線白血病発生に対する脾の干渉作用の病理学的研究(病1、2)(継続)

6)原爆被曝者、ビキニ被災者、放射線取扱者Radium dial Painter トロトラスト被投与者、事故による被曝者、放射線治療患者の臨床的研究(臨1)(継続)

7)放射線による各種血球染色体の変化に関する研究(臨1)(継続)

8)放射線の赤血球諸酵素におよぼす影響(臨2)(継続)

9)放射線の尿中アミノ酸におよぼす影響(臨2)(継続)

6.人体および環境における放射性核種の動向の解明

1)クロマトグラフィによる分離の研究(化3)(新規)

2)放射性核種の分析法の研究(化3)(継続)

3)放射性核種の身体負荷量の推定に関する研究(化3)(新規)

4)人体臓器中の微量元素の定量に関する研究(化3)(継続)

5)人骨中のα放射能の測定(環1)(新規)

6)放射性ヨウ素のAerosol粒子に対する付着実験(環1)(継続)

7)各種建造物中における人体被曝線量の算出に関する研究(環1)(継続)

8)農作物の放射能汚染の研究(環2)(継続)

9)水生生物の放射能汚染の研究(環2)(継続)

10)哺乳動物の放射能汚染の研究(環2)(継続)

11)幼若者の放射能汚染の特徴に関する研究(環2)(継続)

12)大気中のα放射性dustの採取、測定に関する研究(環3)(継続)

13)放射性Aerosolの発生法と発生装置に関する研究とその試作(環3)(継続)

14)C−14、H−3測定法の開発研究(環4)(継続)

15)C−14の分布調査(環4)(継続)

16)植物の14CO2摂取研究(環4)(継続)

17)人骨中の放射性および安定ストロンチウムの定量(環5)(継続)

18)河川、海岸セデイメントによる放射能浄化作用の研究(環5)(継続)

19)上水浄化場、下水処理場における放射性物質の動向(環5)(継続)

20)液体食品からの重要放射性核種の除去に関する研究(環5)(継続)

21)川口付近、干潟における放射性物質(137Cs、95Zr-Nbなど)の濃縮とそれによる被曝線量の研究(環6)(新規)

7.RIおよび放射線による診断法、治療法の開発

1)金属キレート化合物の放射線医学領域における基礎的研究(薬1)(継続)

2)RI診断薬の合成とその生体内分布に関する基礎研究(薬1、2)(継続)

3)生体内放射能測定による診断(ヒューマンカウンター全身計数法を含む)(臨3)(継続)

4)新標識化合物によるトレーサー実験(臨3)(継続)

5)環境の変化による放射線感受性の影響 (臨4)(継続)

6)線量率の変化が生体に及ぼす影響(臨4)(継続)

7)適正線量分布の研究 (臨4)(継続)

〈別記III〉

プロジェクト研究内容

I 緊急時対策に関する研究

1.急性放射線障害の治療に関する研究

〔研究題目〕
 放射性ヨードの甲状腺摂取に及ぼす無機ヨード、甲状腺剤の影響

〔担当研究部〕
 臨床、障害基礎、物理研究部〔研究内容〕庶子炉等の事故に際し、発生する放射性ヨードによる甲状腺および全身被曝線量を可及的少量に止めるために、無機ヨード、抗甲状腺剤等を投与し、最適の量投与の時期およびそれによる被曝線量を求める。

〔研究題目〕
 甲状腺に摂取された放射性ヨードに対する諸種薬物の影響

〔担当研究部〕
 臨床研究部

〔研究内容〕
 原子炉等の事故に際し、放射性ヨードの人体内移行が問題となるが、一旦甲状腺に摂取された放射性ヨードを排除することは困難である。そこで甲状腺刺激ホルモン等の薬物を用い、速やかな排泄の方法を研究する。

〔研究題目〕
 放射線障害予防薬に関する合成および薬理学的研究

〔担当研究部〕
 薬学研究部

〔研究内容〕
 放射線障害予防薬として実験的に放果の知られているAETについては副作用および用量に関し、なお、多くの薬理学的検討を必要とする。よってAETを中心とした各種関連化合物を合成し、薬理作用と代謝を検討し、新しい予防薬開発の基礎と合成方針を示すに足る化学構造と作用の関連性を確立する。AETその他の1)代謝に関する研究、2)中枢に対する作用および、3)循環系に対する作用等の研究、4)特に肝臓、腎臓における酸化還元電位に関係した研究、5)その致死作用についての研究を行なう。

2.放射線被曝線量推定のための検査に関する研究

〔研究題目〕
 金属その他所持品、着衣等の誘導放射能の測定と中性子線の被曝分布

〔担当研究部〕
 物理研究部

〔研究内容〕
 中性子による被曝線量分布を求めるため、着衣の14C(全身)、時計(腕)、バックル(生殖腺)、フィルムバッヂケース(胸部)等の誘導放射能を測定する。このため種々の中性子線源のエネルギースペクトルを測定し次にこれらのスペクトルをもった中性子線に対する身体周辺に所持または付着している物質の断面積を求め被曝分布を知る。

〔研究題目〕
 ヒューマンカウンターによる内部被曝線量の推定に関する研究

〔担当研究部〕
 臨床、物理研究部

〔研究内容〕
 中性子線による体内の誘導放射能および体内に摂取された放射性物質(特にγ線放出核種)により、被曝線量率の測定と、治療および処置による内部被曝線量率の低減効果の観察、長期間にわたる内部被曝の積算線量を求める。特に甲状腺における放射性ヨードと誘導放射能からの線量を求める。

〔研究題目〕
 尿中に排泄される放射性核種分析による内部被曝線量の推定に関する研究

〔担当研究部〕
 化学研究部

〔研究内容〕
 上記の研究課題に関連して放射性降下物に由来する核種、特にヨード−131、セシウム−137、誘導放射能によるナトリウム−24等の身体負荷量を尿分析から推定する。

〔研究題目〕
 血液成分の誘導放射能からの中性子線量の推定

〔担当研究部〕
 臨床、化学、環境衛生研究部

〔研究内容〕
 放射線被曝者の治療処置を行なう場合、被曝線量を正確に知っておかなければならない。特に、中性子線による身体への影響は大であるが、中性子線の被曝線量の算定は困難である。この算定方法として、血中の誘導放射能から線量を求めんとするものである。

〔研究題目〕
 事故時のモニタリング方式の研究

〔担当研究部〕
 環境衛生研究部

〔研究内容〕
 事故時に飛散した放射性物質による汚染区域と、その汚染度の迅速な把握を目的とし、計測機器によるモニタリングと、生物、化学的調査の検討を行なう。

II 医用原子炉に関する調査研究

〔研究題目〕
 炉内大量中性子線の生物、医学的利用に関する実験研究

〔担当研究部〕
 物理研究部

〔研究内容〕
 炉内中性子線の生物および医学的利用に関し、中性子線の取出し方法および各種物質による減速に伴う線質、線量の変化等に着目し、適切な利用の方法を研究開発する。すなわち東海地区の原子炉施設を利用し、中性子分布、エネルギー分布、ガンマ線の分離測定について、生物実験および医学利用に適した方法を研究する。

〔研究題目〕
 炉内中性子線および短寿命アイソトープの生物学および医学への利用に関する調査

〔担当研究部〕
 各研究部、病院部、(委員会)

〔研究内容〕
 中性子線および短寿命アイソトープの生物学ならびに医学への利用の研究分野の調査を行なうことを目的とする。所外の関連研究者を加えた委員会により調査を進める。

〔研究題目〕
 医用原子炉の仕様、運転および安全管理に関する調査〔担当研究部〕物理研究部、技術部、(委員会)

〔研究内容〕
 文献により、医用原子炉および関連施設の仕様、運転のほか、安全管理に関する調査を行なう。所外の関連研究者を加えた委員会により調査を進める。