原子力局 原子力平和利用推進のための 「原子力平和利用推進のためのアジア・太平洋諸国会議」は、昭和38年3月11日から13日まで日本政府の主催により東京において開催されたが、その概要は次のとおりである。 1 会議参加者 (1)参加国の代表 (2)参加国際機関の代表 (3)オブザーバー 2.議事の概要 (1)3月11日(月)の午前には開会式が行なわれ、国務大臣、科学技術庁長官、原子力委員長近藤鶴代氏があいさつののち開会を宣言し、続いてパキスタン原子力委員長、IAEA理事会議長ウスマニ博士およびIAEA事務局長エクランド博士が演説を行なった。ウスマニ博士は、この演説において、アジアの共通の問題点を指摘し、これらを解決するための構想を述べた。 (2)続いて、第1セッションに入り、議事規則の採択ののち、議長には日本代表の兼重博士、副議長にはパキスタン代表のウスマニ博士が選ばれ、次の議題が採択された。 a 参加各国における原子力平和利用研究開発の現状および直面している問題点の報告 (3)同日午後から、第2セッションに入り、議題aについて、アフガニスタン、オーストラリア、中華民国、インド、イラン、日本、韓国およびフィリッピンの各国代表が報告を行なった。 (4)3月12日午前は第3セッションとして前日に引き続いて、インドネシア、ニュージーランド、パキスタン、タイおよびベトナムの各国代表から報告が行なわれた。 (5)同日午後からの第4セッションでは議題bに入り、参加各国の共通の問題点を明確にするための討議が行なわれた。 その結果、各国の共通の問題点として次のことが指摘された。 a 人員の不足 さらに、これらに対処するため次の点が討議された。 a 共同事業の問題 (6)3月13日午前の第5セッションでは、議題c の討議に入った。参加各国の代表から提起された「アジアトム」または「パシアトム」の構想等に対して、日本代表太田課長は、「これらの構想を高く評価するが、他方、この地域の原子力研究開発の現状にかんがみ、機が熟さないとも考えられるし、さらに、本会議開催の経緯等も考慮し、本会議は、IAEAに対して、この地域に対する地域活動の強化およびこの地域における地域事務所設立の可能性の検討を要請するとともに、IAEAによるこの種の会議の近い将来における開催を希望すべきである」旨発言した。 a この種の会議の開催 (7)同日午後は閉会式を行なった。閉会式においては、上記の議事内容を記したコミュニケ(下記)が満場一致で採択され、アフガニスタン、インド、イラン、フィリッピンおよびパキスタンの各代表から主催国等に対する感謝のあいさつが行なわれたのち、議長が閉会のあいさつを行ない、会議は終了した。 3.日本代表の活動状況 (1)わが国からは、本会議に、原子力委員兼重博士を主席代表として代表5名、顧問3名から成る代表団が出席した。 (2)3月11日の第1セッションにおいて、日本代表兼垂博士は議長に選ばれたが、3日間にわたり副議長パキスタン代表ウスマニ博士とともに、本会議の円滑なる進行に寄与した。 (3)同日午後の第2セッションにおいて、議題a について、日本代表島村局長から報告が行なわれた。 (4)また、3月13日午前の第5セッションにおいてパキスタンおよびフィリッピンの代表から提起された「アジアトム」または「パシアトム」の構想に対して、日本代表太田課長は、「地域機構設立の構想については、これを高く評価するものであるが、他方、この地域の原子力研究開発の現状を考慮すると、このような構想の準備を行なうには、まだ、機が熟さないとの意見もある。 さらに、本会議開催の経緯および本会議がこの種の会議の初めてのものであるということを考慮して、本会議は、IAEAに対して、第1にこの地域に対するIAEAの地域活動を強化すること、第2にIAEAのこの地域における地域事務所の設立の可能性を検討することを、要請すべきである。さらに、本会議は、この種の会議をIAEAが近い将来に開催することを考慮することを希望する」旨発言した。 (5)そのほか、コミュニケの原案の作成等に際しては、日本代表は、会議事務局と協力してこれに当たり、本会議の議事の進行を助けた。 4.視察、見学 会議の終了後3月14日から16日まで、次の各コースによる視察、見学が行なわれた。 (1)Aコース(3月14日) (2)Bコース(3月15日) (3)Cコース(3月15日) (4)Dコース(3月16日) (5)Eコース(3月16日) 記 コミュニケ(仮訳) 1. 原子力平和利用推進のためのアジア・太平洋諸国会議は、日本政府主催により、1963年3月11日から13日まで東京で開催されたが、本会議には、アフガニスタン、オーストラリア、セイロン、中華民国、インド、インドネシア、イラン、日本、大韓民国、ニュージーランド、パキスタン、フィリッピン、タイおよびベトナムの代表および顧問、国際連合、アジア極東経済委員会、国際原子力機関、国際労働機関、国連食糧農業機関および世界保健機関の代表ならびにカナダ、フランス、西独、イタリア、英国および米国のオブザーバー計45名が参加した。 2. 会議の開会式において、国務大臣、科学技術庁長官、原子力委員会委員長近藤鶴代氏、パキスタン代表、国際原子力機関理事会議長ウスマニ博士および国際原子力機関事務局長エクランド博士がそれぞれ主催国政府、参加国政府および国際原子力機関を代表して、演説を行なった。 3. 会議は、万場一致で、日本代表兼重博士を議長に、ウスマニ博士を副議長に選出した。 4. 会議は、(a)参加各国における原子力平和利用研究開発の現状および直面している問題点の報告、(b)共通の行政的および技術的問題点の指摘と討議、(c)国際協力による共通の問題点の解決のための方法と手段についての討議を議題として採択した。 5. 会議は、上記の議題を討議するため、5つのセッションおよび閉会式を開催した。会議の議事要録は、できうるかぎりすみやかに参加者全員に配布される予定である。 6. 会議は、議題の第1項目についての各国代表および各国際機関代表の報告、これに対する意見および発言が行なわれたのち、第2項目の討議に入り、各国共通の問題点を指摘した。共通の問題点として、熟練した職員、材料、器材、設備および情報の不足があげられた。会議は、さらに、これに対処するための各国間の相互協力および地域的機構設立の必要性の問題を討議した。 7. 会議は、原子力平和利用推進のためには、地域的協力を強化することが必要であることに各国代表の意見の一致をみた。また会議は、国際原子力機関は、この地域の諸国の要請にこたえて、その地域的活動を強化すべきであり、この目的のために、国際原子力機関は、地域的事務所の設立の可能性について検討すべきであるという各国代表の共通の要請を記録にとどめた。 8. 会議は、その終了に際し、満場一致で、このコミュニケを採択するに当たり、原子力は、破壊のためではなく、人類の経済的社会的福祉のためにのみ、使用されるべきであるとの各国代表全員の信念を確認した。 |