原子力委員会

東芝原子炉施設に関する委員会の答申


38原委第4号

昭和38年2月1日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

東京芝浦電気株式会社原子炉施設の一部変更の安全性について(答申)

 昭和37年11月20日付37原第5244号をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。


 東京芝浦電気株式会社原子炉施設の一部変更の安全性については、標記の原子炉施設の変更許可申請書(昭和37年11月17日付)に基づき審査した結果、別添の原子炉安全専門審査会の安全性に関する報告書のとおり、安全上支障がないものと認める。

昭和38年1月14日

原子力委員会委員長
近藤 鶴代 殿

原子炉安全専門審査会

会長 山崎 文男


東京芝浦電気株式会社原子炉施設の一部変更の安全性について

当審査会は、昭和37年11月22日付37原委第93号をもって審査の報告を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

I 審査結果
 東京芝浦電気株式会社が神奈川県川崎市末広町に設置した、濃縮ウラン・軽水減速型原子炉施設(熱出力連続最大30kW、短時間最大100kW)の一部変更については、同社が提出した「原子炉施設の一部変更の許可申請書」(昭和37年11月17日付)に基づいて審査した結果、この原子炉施設の安全性は変更後も十分確保しうるものと認める。

II 審査内容
 今回の変更は、従来の使用方法のほかに、数値制御方式による研究炉の自動起動に関する試験研究を行なうため、既設の原子炉に実験用の制御棒、中性子計測系、制御系などを増設することができるようにするものである。
 増設される制御棒ほ粗調整棒1本、微調整棒1本であり、その反応度はそれぞれ1.5%以上および約0.6%となっている。この実験期間中は原子炉の超過反応度は0.3%に制限される。
 この変更計画を安全性の見地から検討すれば次のとおりである。

1.既設の計測系、制御系などの安全保護設備には変更はない。

2.この原子炉の超過反応度は設備許可の際には0.7%△K/Kとなっていたが、この実験期間中は0.3%△K/Kに制限することになっている。

3.制御棒引抜きによる反応度付加率の最大は2×10−4△K/K/secであり設置許可の範囲と同じである。

4.この実験の際に安全上特に問題となるのは実験用微調整棒と実験用粗調整棒が固着して同時に引抜かれる可能性があることであるが、同時に引抜かれた場合には、制御棒駆動用ワイヤーの張力を検出して自動的に制御棒の挿入を行なうことになっている。

5.万一2本の制御棒が連続して全部引抜かれたとしても0.3%△K/Kまで反応度が加えられるにとどまり、設置許可の際に0.7%△K/Kのステップ状反応度が印加された場合でも原子炉は安全に保たれるとの解析が行なわれていることからみて、安全上問題はないと考える。

 以上のことから、今回の変更計画は安全上支障を与えることはないと認める。

III 審査経過