原子力局

放射能対策本部の動き

1.最近の放射能降下状況について

 最近における雨水中の放射能は5月下旬に米国の核実験による放射能と推定されるものが2、3観測され平均値が高まったが、その後は次第に減少し、7月には1μμc/cc以下に下り従前と比較してかなり低い値となっている。また全放射能の東京における月間降下量は4月、5月、6月にはそれぞれ182、150、43mc/km2となっており緊急事態の暫定指標の第1段階に比較してはるかに低い値を示している。

 ストロンチウム90の月間降下量はソ連の核実験直後(36年11月)に、36年9月以降における最高値0.60mc/km2を示した。その後は減少し、比較的低い値を示していたが、37年3月には0.58mc/km2となり、11月と同程度の値を示し、さらに4月には0.76mc/km2となり、昨年9月以後における最高値を示した。これは明らかに長寿命核種の春季における増大を示したものと考えることができる。なお37年4月までの総降下積算量は28.6mc/km2となっている。野菜および牛乳中のストロンチウム90の量は最近はほとんど増減を示さず、横這いの状態にある。

2.調査船照洋丸の調査海域における放射能汚染の状況

 調査船照洋丸は8月29日に調査海域における放射能調査を完了した。8月15日から8月29日にわたる同海域の雨水、ちり、海水、プランクトン、まぐろ類の全放射能および空間線量率の測定結果をとりまとめると次のとおりである。


 なお汚染核種については核種分析により明らかにする予定である。

(1)海水中の放射能は日本周辺の海水と比較して同程度かやや高めであるが第1次俊鶻丸、第2次俊鶻丸による測定値と比較するとはるかに低い。

(2)プランクトンの放射能は日本周辺のプランクトンと同程度であるが、第1次、第2次俊鶻丸の測定結果と比較すると、海水と同様にはるかに低い。

(3)まぐろ類を外部から測定した結果によると、放射能は1例を除き全く認められない。

(4)雨水の放射能は最近における内地の全国平均値と比較して、おおむね同程度の値を示している。

(5)ちりの放射能は最近における内地の全国平均値と比較してやや低目である。

(6)空間線量率は国内における測定値と比較してやや低目であると思われる。

調査船照洋丸のコース

3.ソ連の核実験再開に伴う今後の方針について

 放射能対策本部は、昨年10月以来ソ連ならびに米国の核実験の再開に対処し、放射能調査の強化、対策研究の実施および放射能対策の暫定指標の作成ならびにこれに基づく対策を行なってきたが、今回のソ連の核実験の再開に伴う事態になお一層即応するため当面次の措置をとるものとする。

(1)ひきつづき放射能調査を推進し、放射性降下物による汚染の状況を厳重に監視する。(関係各省)

(2)放射性降下物による汚染の状況に対処して、放射能対策暫定指標に基づく適切な措置をとる。(関係各省)

(3)昨年10月27日決定の「放射性降下物に対する一般的留意事項」にあるような措置をとることが望ましい場合には、その都度別に発表する。(関係各省)

(4)新事態における海外の放射能対策に関する情勢を速やかに把握しわが国における放射能対策の参考とする。(外務省)

(5)天水炉過器の可及的速やかな配布の促進をはかる。(厚生省、自治省)

(6)最近における世界の核実験の実施状況にかんがみ、今後一層の放射能対策に必要な調査研究の拡充強化をはかる。(関係各省)

4.放射能日誌

8月3日(金)第24回放射能対策本部幹事会

 調査船照洋丸による調査結果の発表

 要領細則について検討

 照洋丸による調査の週間発表(第1号)公表

8月9日(木)第25回放射能対策本部幹事会

 ソ連の核実験再開について

 放射性降下物および食品中の放射能について(本部発表第10号)

 照洋丸による調査の週間発表(第2号)ならびに調査コース等を検討

 同時にソ連の核実験再開に伴う今後の方針について

 放射性降下物および食品中の放射能について(本部発表第10号)

 照洋丸による調査の週間発表(第2号)を公表

8月17日(金)照洋丸による調査の週間発表(第3号)公表

8月24日(金)照洋丸による調査の週間発表(第4号)公表

8月31日(金)照洋丸による調査の週間発表(第5号)公表