原研のJRR−4および日立研究炉に関する委員会の答申

 原子力委員会では、日本原子力研究所の原子炉施設JRR−4の一部変更の安全性、および株式会社東京原子力産業研究所が株式会社日立製作所から原子炉を譲り受けることについて審議を行なっていたが、結論を得たのでJRR−4の一部変更の安全性については8月10日付で、東京原子力産業研究所の原子炉施設の譲受については8月23日付でそれぞれ次のとおり内閣総理大臣あて答申を行なった。

37原委第64号

昭和37年8月10日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

日本原子力研究所原子炉施設(JRR−4)の一部変更の安全性について(答申)

 昭和37年6月22日付37原第2831号をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。


 日本原子力研究所原子炉施設(JRR−4)の一部変更の安全性については、日本原子力研究所の提出した「JRR−4の一部変更に関する書類」(昭和37年6月20日付)に基づいて審査した結果、別添の原子炉安全専門審査会の安全性に関する報告書のとおり、安全上支障がないものと認める。

昭和37年7月30日

原子力委員会

   委員長 近藤鶴代殿

原子炉安全専門審査会

会長 矢木  栄

日本原子力研究所原子炉施設(JRR−4)の一部変更の安全性について

 当審査会は、昭和37年6月25日付37原委第51号をもって審査の結果の報告を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

 I 審査結果

 日本原子力研究所が東海研究所に設置しようとするJRR−4(濃縮ウラン軽水減速冷却型、連続最大熱出力1,000kW、短時間最大熱出力3,000kW)の一部変更の安全性について同研究所が提出した「JRR−4の一部変更に関する書類」(昭和37年6月20日付)に基づいて審査した結果、この原子炉の安全性は変更後も十分確保しうるものと認める。

 II 審査内容

 今回の変更は、従来フレーム型であった炉心の支持機構をタンク型(直径約1.5m、高さ約11mのアルミニウム製)に変更し、この炉心タンク上部に深さ約1.5mの温水層を設けその遮蔽効果によってプール上面での放射線量率を下げようとするものである。

 この変更計画を安全性の見地から検討すれば次のとおりである。

1 温水層により放射線遮蔽効果が増大する。

2 炉心タンクを設けることにより燃料取扱が若干不便となるが、このために原子炉の安全性に影響を与えることはない。

3 炉心の冷却は、一次冷却水の強制循環によって行なわれ、主ポンプのほかに非常用ポンプをもっている。

 主ポンプの故障により炉がスクラムした場合には、非常用ポンプによる強制循環を行ない、非常用ポンプが起動しない場合でも手動により自然循環弁を開いて自然循環によって熱の除去を行なうことが出来るので、熱除去上の問題はない。

4 炉心タンクを設けることにより、一次冷却系の被損などにより、冷却水喪失事故を起こすか否かが問題であるが、今回の変更計画では

(1)炉心タンク内の水位が低下すれば炉はスクラムされる。
(2)炉心タンクに設けられたプールと炉心タンクの水圧の差によって作動する自動液面調節弁2個によってプール内の水が炉心タンク内に流入することになっている。
(3)炉心タンクおよびプールの液面がある限度をこえて低下しないよう、サイフォンブレーカーを設けていることは前回の計画と同様である。など、水位の大幅な低下を防止するに十分な対策が施されており、安全上支障がないものと認める。

37原委第68号

昭和37年8月23日

内閣総理大臣  殿

原子力委員会委員長

原子炉施設の譲受について(答申)

 昭和37年8月21日付37原第3605号をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。


 株式会社東京原子力産業研究所が、研究及び教育訓練の目的をもって、株式会社日立製作所から、日立製作所が神奈川県川崎市王禅寺に設置した濃縮ウラン軽水減速冷却型、熱出力100kWの原子炉1基を譲り受けることに関する許可申請については、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第39条第3項において準用する同法第24条第1項の各号に規定する許可の基準に適合しているものと認める。

 なお、各号の基準の適用に関する意見は別紙のとおりである。

(別紙)

 ○核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第39条第3項において準用する同法第24条第1項各号に規定する許可基準の適用に関する意見

(平和利用)

1.この原子炉は、株式会社東京原子力産業研究所が研究及び教育訓練の目的をもって使用するものであって、平和の目的以外に利用されるおそれがないものと認める。

(計画的開発利用)

2.この原子炉は、株式会社東京原子力産業研究所が研究及び教育訓練の目的をもって使用するものであって、この原子炉の譲受はわが国における原子力の開発及び利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれがないものと認める。

(経理的基礎)

3.原子炉の譲受に要する資金は、原子炉購入費1億4千万円、その他3億1千万円、合計4億5千万円であり、それは払込資本金によりまかなわれることとされている。また、年間経常費は4千万円でありそれは研究受託による収入によってまかなわれることとされている。これらの調達計画の内容からみて譲受申請者は原子炉を譲り受け、これを運転するために必要な経理的基礎があるものと認める。

(技術的能力)

4.原子炉の運転管理は、業務部長以下10名、保健管理関係者4名によって行なわれる。
 このうち原子炉主任技術者を含む主要な運転要員はこの原子炉の譲受にともない日立製作所より移籍し、引続き運転を行なうこととなっており、技術的能力は譲受前と差がないものと認められる。また、安全を期するための原子炉安全委員会等の組織も譲受前と変更はない。いたがって、この原子炉を適確に運転するに足りる技術的能力があるものと認める。

(災害防止)

5.この原子炉の位置、構造及び設備は、原子炉の譲受前と何ら変更はなく、当委員会が当該原子炉の設置の際に行なった昭和35年4月27日付35原委第41号の答申のとおり、核原料物質、核燃料物質によって汚染された物又は原子炉による災害の防止上支障がないものと認める。