第6回原子力年報の発表

 原子力委員会は7月25日の定例会議で、昭和36年度原子力年報を決定し、27日の閣議の了承の後発表した。

 原子力委員会は昭和31年に発足して以来、毎年わが国の原子力平和利用の進展のあとをかえりみて年報を公けにしてきた。ここに公表するのは昭和36年度を中心とした第6回原子力年報である。内容は、10章からなり、第1章総論においては、この期間における国の内外の原子力の開発利用の動向をのべている。すなわち、過去1年間における世界の動きとして、注目されるのは、実用規模の原子力発電所が米英などで運転経験を次第に蓄積し、エネルギーコストの高い地域では近い将来において原子力発電が在来火力発電と競合しうることを実証しつつあることであり、つぎに目だつ動きは、各国の燃料政策に大きな変化がもたらされたことである。

 国内の動きとしては、昭和35年度までに稼動した原子炉は日本原子力研究所の2基のみであったが、36年度には民間および大学の原子炉も稼動し、その数は6基となり、建設中および設置許可申請中のもの7基を加えると計13基になり、世界で6番目の原子炉保有国となる。また、放射線化学中央研究所の構想も36年度中に具体化し、この面の研究開発に大きな期待が寄せられている。これ等原子炉の建設および研究開発と併行して、36年度中には災害補償り立法をはじめ、法制面も整備され、今後の発展の基礎をかためることとなった。

 第2章以下は各論であり、それぞれの項目について具体的な事実に即して述べたものである。すなわち、第1章総論につづいて第2章機構、法制、予算、第3章は原子炉および臨界実験装置の運転、建設状況、第4章は核燃料の需給、管理および開発状況、第5章は放射線の利用状況についてのべ、第6章は放射能対策として、核爆発実験の影響とその対策について、放射能対策本部を中心とする活動状況を明らかにし、第7章は、主として原子炉の規制やラジオ・アイソトープによる障害の防止をめぐる諸方策についてふれ、第8章においては、原子力船、核融合、直接発電等の研究開発状況を、第9章は国際協力について、そして第10章では科学技術者の養成についてのべている。