農林省放射線育種場の開場について

 品種改良の研究のために放射線照射を利用する方法は諸外国においても活発に研究されているが、わが国でも大量照射の可能な照射施設の整備が望まれるようになり、昭和34年、原子力委員会ではガンマフィールドの創設を決定、設置場所について農林省とも種々協議した結果、茨城県常陸大宮におくこととし、三ヵ年の建設計画の第一年度分として46,530千円の予算を計上した。その後35年度55,642千円、36年度79,583千円、合計181,755千円の建設費を投じて建設工事は遂行され、36年6月照射ほ場を完成し線源を設置して試験照射を開始したが、同月台風によって一部防護用土塁が決壊するという災害にみまわれたため災害復旧工事に着手し、ようやく37年4月に至り復旧工事の終了とともに標準ほ場、試験ほ場の完成をみるにいたった。

 かくて37年6月2日照射ほ場において開場式が挙行され、木原委員が委員長代理として出席した。

 この施設は、茨城県常陸大宮の那珂川と久慈川にはさまれた標高70~100mの丘陵地帯にあり、その特色としては、狭い土地を高度に活用し、散乱線の影響範囲を最少限にするため、日本独特の設計による照射設備を備え、約3.14haの照射ほ場が高さ8mの土塁でかこまれている。

1.業務内容

 業務としては①関係試験研究機関の要請により、水稲、麦類、その他の雑穀類、甘しよ、馬鈴薯、そ菜類花卉、花木類、牧草、緑肥作物、各種特用作物、果樹類、林木、桑、茶等についてガンマ線のほ場照射を行なう。②照射ほ場における生体の照射方法に関する研究を行なう。③照射ほ場に貸与ほ場を設け、各種植物について大学、都道府県および民間等の試験研究機関などの依頼を受けたものについて照射を行なうこととなっている。

2.施 設

 主な施設としては照射ほ場3.14ha(半径100m円形ほ場)、準備ほ場1.0ha、標準ほ場2.0ha、試験ほ場2.6ha、庁舎敷地2.0ha、立入禁止区域約5.0ha、居住禁止区域約3.0haを有し、コバルト60、2071.3キューリーを放射線源とし、これを照射ほ場の中央、鉄製やぐら上の鉛容器内に格納し、照射時には防護土塁上の遠隔操作室からの操作により、地上2.6mのところまで線源を押し下げるようになっている。照射は毎日20時間行ない、4時間は照射を休止し、照射ほ場内の調査、管理等を行なう。

 現在は果樹、林木、桑等永年作物を主体にして照射が行なわれているが、付属施設その他の整備が行なわれるにつれて、種々の植物について照射を行ない、他の育種関係試験研究機関、大学等とも緊密な連けいをとりつつ、数々の優良品種の育成を行なうことが期待されている。