原子力委員会

原研の原子炉施設の変更に関する委員会の答申

 原子力委員会では、昭和36年11月28日付で諮問を受けた、日本原子力研究所の動力試験炉および軽水臨界実験装置の一部変更についての安全性の審議を行なっていたが、結論を得たので、昭和37年2月21日付で内閣総理大臣あてそれぞれ次のような答申を行なった。

37原委第5号

昭和37年2月21日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

日本原子力研究所原子炉施設(軽水臨界実験装置)の一部変更の安全性について(答申)

 昭和36年11月28日付36原第3806号をもって諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。


 日本原子力研究所原子炉施設(軽水臨界実験装置)の一部変更の安全性については、日本原子力研究所の提出した「軽水臨界実験装置設置計画変更説明書「(昭和36年11月22日付)に基づいて審査した結果、別添の原子炉安全専門審査会の安全性に関する報告書のとおり、安全上支障がないものと認める。

昭和37年1月22日

原子力委員会委員長

   三木 武夫殿

原子炉安全専門審査会会長

矢木 栄

日本原子力研究所原子炉施設(軽水臨界実験装置)の一部変更の安全性について

 当専門審査会は、昭和36年12月1日付36原委第103号をもって審査の結果を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

日本原子力研究所原子炉施設(軽水臨界実験装置)の一部変更の安全性について

 日本原子力研究所が設置する軽水臨界実験装置の一部変更の安全性について同研究所が提出した軽水臨界実験装置設置計画変更説明書(昭和36年11月22日付)に基づいて審査した結果、この原子炉施設の安全性は変更後も十分確保し得るものと認める。

審査内容

1.燃料要素
 今回の変更申請においては、燃料棒720本のうち320本については、燃料棒の製作工程をスエージング加工によるものに変更する趣旨のものである。

 この新しい製作工程による燃料棒は、すでに研究開発が進められている米国では一部試用の段階にある。

 これを安全性の見地から検討すると、

(1)この燃料の被覆管の外径および内厚は、ペレット型の燃料と同一で、単位長さ当りの両者のもつ酸化ウランの量はほぼ等しく、ウラン−235燃料の幾何的配置は同一であり、

(2)燃料棒の熱的特性についても、多くの炉内試験でもペレット型燃料と変らないことが確められており、

(3)被覆管の強度についてもペレット型燃料のそれとさしたる差が認められず、

(4)この種の燃料は、米国のGE,ORNL,HanfordおよびカナダのAECLなどで炉内照射試験が行なわれ、とくにHanfordのPRTRの燃料としてこの方式のものを規格として採用されており、

(5)この燃料の製作に当っては原材料の選択および製作工程と検査についても十分な管理が行なわれることになっている。

 以上のことから、この製作工程による燃料の使用は、十分安全性が確保されると考える。

2.障害対策および事故時の安全対策
 上述の変更は、原子炉の熱出力および動特性にほとんど影響を与えないから、障害対策、および事故時の安全対策には変更を及ぼさないものと考える。

37原委第6号

昭和37年2月21日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

日本原子力研究所原子炉施設(動力試験炉)の一部変更の安全性について(答申)

 昭和36年11月28日付36原第3807号をもって諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。


 日本原子力研究所原子炉施設(動力試験炉)の一部変更の安全性については、日本原子力研究所の提出した「動力試験炉設置計画変更説明書」(昭和36年11月22日付)に基づき審査した結果、別添の原子炉安全専門審査会の安全性に関する報告書のとおり、安全上支障がないものと認める。

昭和37年1月22日

原子力委員会委員長

   三木 武夫殿

原子炉安全専門審査会会長

矢木 栄

日本原子力研究所原子炉施設(動力試験炉)の一部変更の安全性について

 当専門審査会は、昭和36年12月1日付36原委第104号をもって審査の結果を求められた標記の件にいて、結論を得たので報告します。

日本原子力研究所原子炉施設(動力試験炉)の一部変更の安全性について

I 審査結果

 日本原子力研究所が設置する自然循環沸騰水型動力試験炉(熱出力46.7MW)の一部変更の安全性について、同研究所の提出した動力試験炉設置計画変更説明書(昭和36年11月22日付)に基づき審査した結果、この原子炉施設の安全性は、変更後も十分確保し得るものと認める。

II 審査内容

1.燃料要素
 今回の変更は燃料アセンブリー79個のうち3個について、燃料棒の製作工程をスエージング加工によるものに変更しようとするものである。

 この新しい製作工程による燃料棒は、研究開発の進んでいる米国ではすでに一部試用の段階にある。

 これを安全性の見地から検討すると次のとおりである。

(1)この燃料の被覆管の外径および肉厚は、ペレット型の燃料と同一で、単位長さ当りの両者のもつ酸化ウランの量はほぼ等しく、ウラン−235燃料の幾何的配置は同一であり、

(2)燃料棒の熱的特性についても、多くの炉内試験でペレット型燃料と変らないことが認められており、

(3)被覆管の強度についてもペレット型燃料のそれと、さしたる差が認められず、

(4)この種の燃料は、米国のGE,ORNL,Han−fordおよびカナダのAECLなどで炉内照射試験が行なわれ、とくにHanfordのPRTRの燃料としてこの方式のものを規格として採用されており、

(5)この燃料の製作に当っては原材料の選択および製作工程と検査について十分な管理が行なわれることになっている。

 以上のことから、この製作工程による燃料棒の使用は、十分安全なものであると認める。

2.燃料燃焼補償用毒物板
 当初の計画では、燃料要素集合体の不銹鋼製のチャネルボックスを随時ジルカロイ製のものに置きかえる方法をとっていた。

 今回の変更計画では、チャネルボックスはすべてジルカロイ製とし、初期炉心では不銹鋼と等価な制御能力を有するボロン鋼の毒物板を、燃料要素集合体の間に挿入することになっている。

 これを安全性の見地から検討すると次のとおりである。

(1)この毒物板は構造的に上部グリッド板に確実に取付られていて、作動中の脱落の心配はなく、

(2)材料力学的、振動学的に見て運転のあらゆる条件の下で被損のおそれがなく、

(3)また、熱的な不均一性があまりあらわれないような設計をすることになっている。かつ、その取扱いは、核特性を十分確認してから実施されることになっているので安全なものと認める。

 なお、この毒物板の詳細設計に当っては、上記3項目が達成されていることを、実際に近い状態での模型試験を行なうなどによって、確認することが望ましい。

3.制御棒
 当初の計画では、4枚のボロン鋼からなる一体型十字型断面の制御棒を使用する予定であったが、今回の変更計画ではボロンカーバイト粉末と不銹鋼球とを交互につめた不銹鋼管集合体を不銹鋼の十字型断面のケースの中に収めたものを制御棒として用いることになっている。

 これを安全性の見地から検討すると次のとおりである。

(1)両者の外型、等価反応度は全く同一であり、

(2)在来の設計におけるボンロ不銹鋼の熔接という難点を除去している機械設計である。

 以上のことから、この制御棒を使用することは十分安全なものと認める。

4.障害対策および事故時の安全対策
 上述の3項目にわたる変更は、原子炉の熱出力および動特性にほとんど影響を与えないから、障害対策、および事故時の安全対策には変更を及ぼさないものと考える。