アジア地域ラジオ・アイソトープ訓練センターの日本設置について

(1)経緯
 わが国は原子力平和利用、とくにラジオアイソトープ利用の分野において1958年以来、年1回その進んだ知識、技術を利用し、ラジオ・アイソトープ取扱技術についての国際コースを開催し、主としてアジア諸国からの研修生に対し、基礎的および専門的研修を実施してきた。

 しかしそれらの研修は、本来日本人研修生のための施設を利用して遂行されていたものであった。

 一方国際原子力機関(IAEA)は発足以来その事業活動の重要施策として、後進国に対し原子力平和利用の分野の技術援助、とくに技術者の養成に力を注いで来ており、わが国も前述の研修生の受け入れには、IAEAの技術援助計画にそって協力してきた。最近IAEAはこれらの援助をより効果的にするため、各地域に常設の地域訓練センターを設置することについて大きな関心を示している。

 これらの情勢を勘案して、わが国としてはIAEAの技術援助の趣旨に沿って、IAEAの協力を得てアジア地域を対象とするラジオ・アイソトープ利用技術の研修のための地域センターを日本に設置し,運営することが必要かつ適切であると考え、過般のIAEA第5回総会(昭和36年9月ウィーンで開催)の一般討論演説において三木日本政府代表は、アジアおよび極東諸国のための国際アイソトープ訓練センターをわが国に設置する用意がある旨言明した。その後、この構想について非公式にIAEA事務局の意見をも徴し、種々検討を重ねた結果、概要次記のごとき案を得るに至った。

 又本構想実現のために、IAEAに対し本訓練センターの設立および運営のために必要な援助、協力を要請する措置をとることに対してその閣議了解も昭和37年1月30日得られたので、本閣議了解にもとづき、今度IAEAに対して本訓練センターの設立および運営のために必要な援助、協力を要請することとなったものである。

(2)センター設立計画の概要
(i)センターの目的
 主としてアジアおよび極東地域各国からの研修生を対象として、ラジオ・アイソトープおよび放射線利用について、科学者および技術者の訓練を実施することを目的とする。

(ii)研修の内容
 研修の期間は合計10ヶ月とし、前期3ヶ月はラジオ・アイソトープおよび放射線取扱いの基礎的技術についての講議および実習、後期7ヶ月を理工学、医学および農学の3部門に分けてそれぞれ専門研修を行なう。研修人員はIAEAおよび日本側の供与するフェローシップによるものならびに関係アジア各国から直接派遣されるもの等を含め各部門につき約15名、合計45名以内とする。

(iii)センターの運営および機構
 センターの運営および機構については、IAEAと協議の上決定されるが日本側の構想としては、所長のもとに研修部門および管理部門を設け、運営はIAEAと共同して行なうことを考慮している。

(4)経費負担
 経費の負担は、IAEAとの協議の結果に従ってセンターの設立および運営を賄なうに必要な措置をとるものとするが、目下のところ日本側は土地、施設、設備および研修生等の宿舎を提供するほか毎年運営費(講師、職員等の人件費を含む。但し,後述IAEA側で負担する分を除く。)および研修生のフェローシップ若干を負担する計画である。IAEA側に対してはフェローシップ、派遣講師,その他若干の派遣職員の経費の負担を要請する。

(5)センターの開設時期
 センターは、昭和38年秋開設を目標とする。