日本原子力研究所の原子炉施設(廃棄物処理場)の
変更の安全性について


 昭和36年11月25日付で廃棄物処理場(原子炉施設)の変更に関する資料の提出があり、これを原子力委員会限りで、審査し、昭和36年12月27日には、次の答申が行なわれた。

日本原子力研究所東海研究所原子炉施設(廃棄物処理場)の変更の安全性

36原委第105号

内閣総理大臣殿

昭和36年12月27日
原子力委員会委員長

原子炉施設(廃棄物処理場)の変更の安全性について

 昭和36年11月29日付36原第3821号をもって諮問のあった標記の件について、下記の通り答申する。


 日本原子力研究所から東海研究所の原子炉施設の変更に関して提出があった原子炉施設(廃棄物処理場)の変更に関する書類(昭和36年11月25日付)に基づき廃棄物処理場の安全性を審査した結果、その安全性は変更後も十分に確保しうるものと認める。

審査内容

1.この変更後の廃棄物処理場は、推定される廃棄物排出量に対して十分な処理能力を有するものと認める。
2.予想される従事者の被ばく線量は許容量を十分下まわるようになっているので安全であると認める。
3.廃棄物処理場は変更後も放射性廃棄物の取扱に際して周辺が汚染されるおそれがないようになっているので安全であると試める。

変更の理由
 従来の廃棄物処理施設は、低レベル廃棄物処理関係が主で、高・中レベルの廃棄物は少量なので、あまり考えていなかったが、原子炉および各種の研究施設も充実され、研究活動も活発化するにつれ、それに対応して、低レベル廃棄物の増加は言うに及ばず、高・中レベルの廃棄物も激増する傾向にある。これに対処して廃棄物処理場としての受入体制に万全を期さなければならなくなった。この様な理由で廃棄物処理場の増新設の計画が立案されたのである。

低レベル廃液関係
 従来の廃棄物処理場の施設は、低レベル廃液処理関係ではイオン交換樹脂装置、蒸発装置および貯槽3基であった。しかしながら、処理能力としては、一年に2,040m3程度であり廃液の性質を考えずに蒸発装置をフル運転すれば4,000m3程度の処理能力があるが、経済性の上からして、よろしくないので、処理能力は、一年間に2,040m3とみるのがよいと考えられる。このような処理能力では、37年度には処理不可能となるおそれがあるので、廃液貯槽2基、凝集沈澱施設2基(Decontamination factor 100)の増設を行なって、処理能力を約6,840〜9,240m3/yearに増大せしめる計画である。計画にあたっては、入れる廃液のレベルからして、汚染の危険がないように計画されており、さらに万一、汚染する事故であっても、汚染の拡大防止および汚染除去等の細かな点まで考慮されている。

 フロキュレーションによって分離した廃液は、一般排水と混じて放出許容濃度以下にして海に放流することは言をまたない。

低レベル固体廃棄物関係
 低レベル固体廃棄物は、不燃性と可燃性のものに大別され、可燃性のものは従来焼却することによって、その容積が極度に小さくなるので、焼却装置をもって処理している。しかし不燃性のものは、従来はそのまま容器に入れて、貯蔵廃棄していたが、今後大量に出ると考えられるので、新たに圧搾施設をもって圧搾し容量を小さくすることによって、処理可能量を多くするものであり、計画にあたっては、障害防止上問題となる点は汚染であるので、汚染およびその拡大防止に、フードおよび除染装置等が考慮されている。

中レベル廃液用の地下貯槽
 従来、この関係施設は特になかったが、新たに作ろうと計画されたもので、中レベル廃棄物関係で、障害防止上問題となると考えられるのは、外部被曝および汚染の二つの点である。そこで汚染の危険およびその拡大防止には、地下にコンクリート製の貯蔵室が作られ、この一室ごとに、貯槽一つずつ入れられ、この貯槽はアルカリ性、酸性、有機溶媒等の廃液の性状によって廃液を分類して貯蔵を行なうようになっている。そこで万一タンクが破れても、ピットがもうけられており、これによって、貯蔵室内に廃液が、たまることはない。又温度変化にともなう、タンク内の圧力の上昇は、常時モニターされている。

 また外部被曝に関する考慮は、最大の放射化学的濃度を設定し、これ以上のものは、高レベル廃棄物として取り扱い、遮蔽計算は点状線源、単色で1MeVのγ線エミッターが最大の放射化学的濃度で満杯である状態を考えて行なわれており、これによれば、外部被ばくの人体への影響は無視できる程度のものである。

 将来において、この中レベル廃液は蒸発法によって処理する計画のもようである。

 また、中レベル廃液の運搬車、廃樹脂搬出装置等についても前とほぼ同じ様な考慮がはらわれている。

高レベル廃棄物格納施設
 高レベル廃棄物格納施設は、従来この様な施設はなく、新設するのであるが、高レベル廃棄物の中でも、比較的低いキュリー単位のものは中レベルと称し、それ以上のものを高レベルと称している。これらの廃棄物の格納施設は、地表に垂直な鉄製の円筒形のもので高レベル級のものは、蓋は鉛製であり、中レベル級のものは、コンクリート製となっている。勿論この格納施設は水密かつ、堅牢な構造をなしているので、地下水を汚染することはないが、さらに、まわりに試験孔をもうけて、地下水の汚染をモニターし、汚染のおそれがある場合は速みやかに貯蔵物を引き上げ安全な場所に移動し、適当な処置を行なうことになっている。

 またこの設置予定場所は、人跡少ない所内の隔離された地域に設けられ、周辺の地下水位も低く、高潮の被害のおそれもないところである。

 貯蔵能力(キュリー数)は、高レベル級のものでは500c、中レベル級のものは5cを考えているが、鉛の蓋の厚さおよび貯蔵方法等を考慮すれば、相当の量を入れることが可能であると考えられる。

 廃棄物はポリエチレン製の瓶に入れられ、液体のものは、その内に固化剤を、あらかじめ入れておくことによって固化するようになっている。

 遮蔽計算はこのポリエチレン製の瓶の中心に1MeVの単色のγ線源があるとし、この貯蔵瓶の積み重ねた状態を考えて地表面上の最大線量率の場所を考慮し、この場所において安全率をかけた作業時間における人体の被ばく線量が、安全率をかけた最大許容被ばく線量より小さくなるような、点状線源の強さを求めることによって、内部に入れ得るキュリー数を求めれば、はるかに500c以上入れられることが考えられる。

 この他にキュリー数は少ないと考えられるが、焼却処理に難点のあるケンブリッジフィルター等を貯蔵廃棄する貯蔵孔(コンクリート製)が同所にもうけられている。

 この高レベル廃棄物格納施設は、勿論立入出来ぬようにされている。

 また高レベル廃棄物の運搬には、特別に遮蔽を考えたキャスクを用いて、鉛板(鉛ガラス)で運転員を遮蔽した車で安全に運ぶことになっている。

 このように常にシビア・サイドでとっても安全であるよう一貫した考え方に基づいて計画が行なわれているので安全であると考えられる。