放射線防護条約および同勧告について

 国際労働機構(ILO)は、1957年(昭和33年)以来「電離放射線からの労働者の防護に関する条約および勧告」の草案を作成、加盟各国の意見をも取り入れて検討していたが、これらを1959年6月および翌1960年6月のILO総会に上程し、1960年6月の総会において条約(案)は賛成253票、反対1票、棄権2票をもって、勧告(案)は全会一致をもってそれぞれ採択された。

 日本国政府は、国際労働機関憲章第19条の規定に基づき、本年5月末日これら条約および勧告に関する報告書を国会に提出した。(ただし、この報告書の提出は、条約批準の前提となる国会の承認を求めるためのものではなく、また国会の承認は少なくとも次期国会以降となろう。)

 電離放射線からの労働者の防護に関する条約(以下「条約」という。)は、ILOが採択した第115番目の条約であって労働者の健康および安全を電離放射線による障害から防護するための根本原則について規定したものであり、一方電離放射線からの労働者の防護に関する勧告(以下「勧告」という。)は、ILOが採択した第114番目の勧告であって、主として条約の実施方法ないし細則について規定している。

 わが国においては、この条約の諸規定は、労働基準法、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律その他の国内法令により大体においてすでに実施されているが、なお、細部については検討する必要があり、また、勧告の趣旨についても国内法令と矛盾するところはないと思われるが、今後は、広く各事業における労働者の電離放射線からの防護のより完全な実現化に向かって努力することが緊要と思われる。