放射線化学専門部会の答申

 昭和34年9月30日、放射線化学に関する研究開発の推進を図るため、放射線化学懇談会(座長石川一郎原子力委員)が発足し、放射線化学に関する研究開発上の問題点を調査検討することになり、以来5回にわたって審議を行なってきた。この間、特に問題点の焦点を放射線化学の研究方針と放射線化学用線源との2点にしぼって、その調査検討のための研究方針打合せ会(会長千谷利三)、線源打合せ会(会長雨宮綾夫)を設け、それぞれ5〜6回の会合を開催し、その結論を懇談会に提出、中間報告として決定した。

 その後、昭和35年5月9日放射線化学懇談会は正式に放射線化学専門部会(専門部会長田代茂樹)に発展し審議事項は前の懇談会の内容を継続し、以来昭和36年2月まで6回の部会を開催し審議を行なってきた。

 また、その間、放射線化学の開発計画を立案するため、開発計画打合せ会(会長中根孝)を設け、5回の会合をもち、日本原子力産業会議の放射線利用部会から投出された放射線化学の中間報告を中心として調査検討を行なってきたが並行してその間、打合せ会構成員の一部が、日本生産性本部主催で放射線化学の海外調査団(団長千谷利三)に加わり、アメリカに派遣され放射線化学の実情調査を行ない、その結果をも取り入れ、その結論を専門部会に提案し、昭和35年12月1日の第5回専門部会において放射線化学の中央研究機構についての考へ方を取りまとめ、昭和36年2月3日の第6回専門部会において最終的な答申書を決定した次第である。

 なお、その内容は次のとおりである。

昭和36年2月7日

  原子力委員会委員長

池田正之輔殿

放射線化学専門部会

部会長 田代茂樹

放射線化学に関する研究開発上の問題点の調査検討について(答申)

 昭和35年5月16日付をもって諮問のあった標記の件について次のとおり答申いたします。

なお本答申の作成にあたっては先に発展的に解消をした放射線化学懇談会の調査事項をも十分に取り入れてあります。

第I章 緒 言

 本専門部会は昭和34年9月30日放射線化学に関する研究開発の促進を図るため、初め放射線化学懇談会として発足し、放射線化学に関する研究開発上の問題点を調査検討することになり、以来5回にわたって審議を行なってきたが、昭和35年5月9日同懇談会は放射線化学専門部会となり、その後さらに6回に及ぶ会合を開き放射線化学の研究開発の促進について次の結論に達した。

第II章 放射線化学の研究開発計画について

 1.はしがき

  1.1放射線化学開発の状況

 アメリカにおける放射線化学の工業化の現状をみると、ポリエチレンの照射によるワイヤコーティング、熱収縮食品包装用フイルムおよび絶縁テープ、ポリ四弗化エチレンのグラフト重合によるワイヤの絶縁材料、グラフト重合したポリエチレンによるイオン交換膜や外科用縫合糸の殺菌などに利用されており、またこのほかに工業化のための試験段階にあるものも数多く、今後も引き続き新しい製品が現われてくるものと思われる。

 アメリカにおいてはこのような放射線化学の進展に対し、1958年放射線化学に関する開発計画をたて広い範囲にわたって強力な研究開発を進めつつある。

 すなわち、基礎研究はもとより応用研究、放射線工学をはじめ、ラジオアイソトープ、化学用原子炉、使用済燃料、核分裂生成物などの放射線源の研究開発がアメリカ原子力委員会によって促進されつつあり、また一方粒子加速器の新しい高性能の型の開発も、民間会社によって盛んに進められている。

 また、イギリス、ドイツ、フランス、ソ連などの国々においても放射線化学の研究開発が熱心にすすめられており、相当な進歩がみられる。

 ひるがえってわが国における放射線化学開発の状況をみると、大学、国公立研究機関、日本原子力研究所、理化学研究所、日本放射線高分子研究協会、民間会社などにおいてこの方面の研究が進められてきている。

  1.2放射線化学の実用化の見通し

 放射線が化学工業において熱、触媒、圧力と並んで大きなポテンシャルを占めることについては疑う余地はないと考えられるが、放射線化学が化学工業において大きい役割を占める程度までに実用化されるためには、

(1)放射線による収率の高い化学反応および新しい独創的な反応生成物の発見

(2)放射線の照射コストの低下

の二つが重要な要素であって、さらに工業化に必要な技術の開発、すなわち工業化試験や放射線工学の開発が伴うことが必要欠くべからざる条件となっている。

 わが国における放射線化学の実用化の見通しについて考えてみると、放射線重合・架橋および放射線グラフト重合など、たとえばホルムアルデヒドのイオン重合あるいはセルローズ繊維に対するアクリルニトリルやスチレンなどのグラフト重合などがある。その他将来有望と考えられるものとしては、放射線合成たとえばペンゼンやシクロヘキサンの酸化、空中窒素の固定による硝酸の合成、アンモニアからヒドラジンの合成、食品・医薬品の放射線照射による殺菌および保存などをはじめとして、かなりのものが考えられる。またその他の分野においても今後有望な研究が出てくるものと期待される。

 一方放射線の照射コストの低下についても今後10年以内に現在の数分の一以下に低下する見通しにあるものといえよう。

 したがって放射線化学は今後10年以内にかなり実用化されはじめ、その後の10年間において放射線化学の実用化は相当進捗するものと考えられる。

  1.3放射線化学の開発の必要性

 現在放射線化学の研究開発は世界各国において行なわれているが、将来放射線化学が産業界に影響を与える分野は、繊維・ゴム・合成樹脂などをはじめとする化学工業の広範な分野にわたっている。

 一方、わが国の放射線化学の研究開発の状況は応用研究の分野において相当に進んでいるが、基礎研究・工業化に必要な放射線工学などの研究および放射線源の開発においては、欧米に比べて相当に遅れている。

 したがって、今後応用研究のいっそうの促進を図るとともにこれら遅れた分野の研究開発の促進を図るならば、原子力開発の分野において最も早く欧米に並ぶことができるものと期待される。

 2.放射線化学の研究開発の現状と問題点

  2.1あらまし

 日本原子力産業会議の放射線化学部会が昭和35年1月1日現在で行なったアンケートに基づいて、大学、国公立研究機関、民間会社などの研究状況についてまとめると次のとおりである。

 照射設備を所有する研究機関は、大学関係21、国公立関係16、会社関係15、合計52でうち7は35年度中に照射設備を設けることが確定しているものである。なお照射設備は持たないが他機関に照射を依頼して放射線化学の研究を行なっている機関は、大学関係2、国立関係4、民間関係7、合計13である。

 研究テーマは高分子化学関係が最も多く、次いで有機化学・無機および物理化学・線量測定などの順になる。各テーマの内訳は不詳であるが、昭和34年の調査をも勘案すると高分子関係では、高分子に対する放射線効果が最も多く、重合・グラフト共重合がこれに次いでいると考えられる。

なお、研究テーマは、表2.1のとおりである。

表2.1  研究テーマの類別

  2.2基礎研究(pure and basic research)

 基礎研究の重要なことについては論をまたないが、特に放射線化学の研究においては、従来応用研究に重点がおかれ、たとえば、イオン・遊離基・励起分子など1次生成物の寿命の測定および性質の究明、放射線作用メカニズムの究明や放射線の種類・エネルギー・線量率の相違による効果の研究、添加物の作用の研究、温度・圧力・磁場その他外界条件の影響の研究などの基礎研究がなおざりにされていた傾向があるので、最近特にこの点が強調され、諸外国においては基礎研究にも十分な重点をおいて研究されてきている。

 特にアメリカでは大学、国立研究機関において主として基礎研究が行なわれ、アメリカ原子力委員会も強力にこれを援助している。たとえば、ノートルダム大学、ミシガン大学その他の大学、国立研究所、民間会社でも非常に盛んであって、ノートルダム大学では、1960年220万ドルの補助金が国から与えられることになり、新しい施設が設けられることになっている。またミシガン大学では、フォード会社の寄付金などのもとにつくられたフェニックス研究所で広範な基礎研究が教育と並行して行なわれている。

 一方、日本では大学、国立研究機関、日本原子力研究所、理化学研究所、日本放射線高分子研究協会などにおいて基礎研究が行なわれているが、今後さらに強化する必要がある。

  2.3 線 源

   2.3.1ラジオアイソトープ

 原子炉によって生産されるラジオアイソトープのうち放射線源として利用されているものは、大部分60Coで、わが国における昭和35年1月現在の60Co照射施設数は120で、その他建設中のものが30ある。これらはすべて研究用であり、これらの60Coは全部輸入によってまかなわれており、最近数年間が60Coの年間輸入量は表2.2のとおりである。

表2.2 60Co年度輸入実績

 60Coの利用上の問題点は187Csのような分離した核分裂生成物の場合と異ならないが、60Coが工業用の大容量放射線源として用いられるには、そのコストの低下が必要であり、このため一つの方法としてコバルトを原子炉の制御系の一部として用いる生産方法が提案されている。この方法によると60Coの値段が、1キュリーあたり50〜70円まで低下する可能性があると考えられている。

   2.3.2粒子加速器

 粒子加速器をその利用面からみて研究用、医療用、工業用に大別させる。研究用、医療用粒子加速器は現在すでにある程度の技術水準に達しているものといえるが、工業用粒子加速器は、ラジオグラフイー用を除き、利用面の開発不足、機器の信頼性の不足ならびに高照射コストが原因で、いまだ研究段階にあるといえる。

 しかしながら現在世界的に大電流の粒子加速器の研究開発に力がそそがれているので、今後数年間に新器種の開発などによって工業用粒子加速器は大容量(大出力)・低コスト化に進み、その後放射線化学の利用面の開発と相まって相当広範囲に実用化されはじめるであろう。すなわち工業用として一般にはエネルギーが1〜5MeVの範囲で電流が増加する方向に進み、出力は10〜100kWの大型のものが使用され、研究用、医療用としては一般に比較的小電流のものが、プロセス研究用としては数kW程度のものが用いられよう。

 照射コストは昭和40年ごろまではMrad-kgあたり1〜5円、昭和50年ごろまでには0.1〜1円程度に低下するものと思われる。

(1)問題点

 従来の粒子加速器の性能の向上および安定化、使用者の需要に応ずる新型粒子加速器の開発のため使用者および製作者の両者が協力して解決すべき問題が多い。そのおもなものを列記すれば次のとおりである。

 (a)照射費低減のための稼働率の向上
 (b)長時間運転に対する信頼性の向上
 (c)設備費の低減
 (d)維持費の低減
 (e)大電流高出力方式の開発
 (f)それぞれの製作者の特徴をいかした新型粒子加速器の試作
 (g)線量測定法の確立
 (h)障害防止関係の基礎資料の完備

   2.3.3化学用原子炉

 放射線化学の工業化において、これに適する経済的な線源の開発が重要な要素であり、これに関係者の深い関心が向けられている。この観点から原子炉を直接化学反応プロセスに応用する問題について、最近世界各国とも関心を持ち、基礎研究をすすめてその利用の可能性および問題点を検討しつつある。

 日本においても同様に、この問題は特に化学工業界の注目をあつめ、原子力産業会議が中心となって化学用原子炉の調査、検討が行なわれてきた。

 その調査によると化学用原子炉とは、「原子炉において発生する放射線および熱エネルギーを直接化学反応プロセスに必要なエネルギーとして使用することを目的とする炉であって、化学反応プロセスに用いる設備が原子炉と不可分であるもの」と定義されている。

(1)化学用原子炉の利用

利用の仕方から分類すれば次のように考えられる。

 (a)放射線利用
  (イ)原子炉による直接照射
  (ロ)原子炉による間接照射

(i)気体分裂生成物による照射
(ii)放射化しやすい物質の循環による照射
(iii)液体燃料の循環による照射

 (b)核分裂片の運動エネルギーの利用
 (c)熱利用(低温、高温用に分類される)

  (イ)直接法(反応器が炉心部にあるもの
  (ロ)間接法(熱媒体により熱を炉外に取り出して用いるもの)
  (ハ)中間法(原料の一部を炉心におき加熱するもの)

 また、化学用原子炉を利用して開発される可能性のある化学反応の例としては次のものが考えられる。

 (a)原子炉の直接照射による利用
  (イ)石油の精製過程における放射線の利用
  (ロ)天然ガスのクラッキング

 (b)原子炉の間接照射による利用
  (イ)パラフィンから脂肪酸の合成
  (ロ)ベンゼンからフェノールの合成
  (ハ)重合・架橋・改質
  (ニ)食品・医薬品などの照射(滅菌・殺菌・発芽防止など)

 (c)核分裂片の運動エネルギーの利用
  (イ)硝酸の合成
  (ロ)メタノールからエチレングリコールの製造

(2)問題点

 前述したように、化学用原子炉が放射線化学の工業化の一つの隘路である放射線エネルギーのコスト高を打開し、工業化に導く重要な道程として注目を集めているにもかかわらず、なお化学用原子炉が紙上計画としてのみ論議され、実現の構想が少なくともわが国において樹立されていない現状から、その問題点を考察してみる必要がある。これらの理由としては

 (a)放射線利用および熱源としての利用が、原子力発電のように普遍的性格にとぼしく、利用対象ごとに個々に特殊な検討を要すること、またそのための前提となるべき原子炉技術自体が必ずしも確立されていないこと。

 (b)放射線化学反応の基礎資料、特に流動系の資料が不足していること。

 (c)放射線化学工学として、装置、材料、安全防護などの工学的な検討の不足していること。

 (d)化学用原子炉として、特に核分裂片の利用における燃料の開発が遅れていること。

 (e)反応生成物の除染に問題があること。

などがそのおもなものであろう。

 かかる面の具体的検討を行ない、化学用原子炉を開発することは主として化学工業に従う者のつとめであろうが、原子炉開発研究のほとんどが発電炉に片寄りその化学反応プロセスへの利用が看過されている現状を是正し、化学用原子炉に対する一般の関心を喚起して国家的な施策のもとにこの方面の開発に努力することが最も必要と考えられる。

   2.3.4使用済燃料および核分裂生成物

(1)使用済燃料の再処理について

 JRR-3から放出される使用済焼料に対しては、1tU/年容量のPurex試験プラントが日本原子力研究所に設置され、昭和37年度から試験を開始し、昭和38年度に一応の成果が得られることになっている。また、コールダーホール改良型発電炉から放出される使用済燃料に対しては、前記原子力研究所の試験プラントの結果を基礎として、前期10年の後半において、天然または低濃縮ウラン燃料を処理しうる方式による再処理パイロットプラントを原子燃料公社に設置することになっている。

 さらに昭和45年以降においては使用済燃料の量は飛躍的に増大することになるので、これらの再処理は将来経済的にもまた外貨節約上の見地からも国内において行なわれることが望ましいといわれている。

 なお、この再処理パイロットプラントでは廃棄物処理を容易にするために、核分裂生成物中から半減期の長い90Srおよび187Csを分離する問題については、90Sr、137Csだけでなく、さらに廃棄物処理を容易にすると同時に特徴のある線源としで44Ce、95Zr、106Ru、85Krなどの分離が望ましいと考える。

(2)使用済燃料、高レベル廃液および核分裂生成物の利用の現状および将来性

 (a)利用の現状
 使用済燃料および高レベル廃液は、原子炉あるいは再処理プラントの近くで利用されるべきものであるのと、現在わが国ではこれらの供給面の未開発により放射線としては全く利用されていない。

 また、核分裂生成物は現在粒子加速器や60Co線源に比較してもまだ放射線のコストがかなり高いので、放射線化学および食品・医療品などの殺菌・保存用の線源としてほとんど利用されていない。

 (b)将来性
 使用済燃料・高レベル廃液および核分裂生成物の利用は、これらの供給面および利用面の未開発により放射線源としては最も立ち遅れているものである。将来においても、使用済燃料および高レベル廃液の利用は、臨界性のような特殊な安全性の問題、速い減衰による照射量の不均一および頻繁な取替え、利用の場所の制限、β線の自己吸収による発熱の除去などの利用上の制約、それらによる放射線のコスト高ならびに混合放射線による均一照射、線量測定その他の技術的困難などのために、研究用としても工業用としても他の線源に比較して優位に立つことは困難と予想される。

 しかし使用済燃料の場合には特に大容量のエネルギーが得られるという点において、また高レベル廃液では流体線源という新規なものが得られるという点で、今後の研究によっては必ずしも悲観的なものとは考えられない。

 分離した核分裂生成物は、昭和45年以降大量に生産されるようになり、そのコストも他の線源に匹敵しうるようになれば、たとえばガス状線源としての85Krや純粋のβ線としての90Srのように特徴のある線源として利用されるであろう。

(3)使用済燃料・高レベル廃液および核分裂生成物などの利用における技術的な問題点

 使用者の立場から技術的な問題点を列挙すると次のとおりである。

 (a)使用済燃料利用における臨界性、使用済燃料および高レベル廃液利用における放射能汚染、遮蔽などの安全性に関する基礎資料の完備

 (b)使用済燃料、高レベル廃液および混合核分裂生成物利用において、特に大容量線源の場合、混合放射線および速い減衰に対する均一照射のための線源工学的基礎資料の完備および線量測定技術の確立

 (c)β線の自己吸収による発熱除去の技術の確立

 (d)核分裂生成物のコスト低下のための分離方法の確立

 (e)放射線源として使用済燃料を使用するための燃料の燃焼率および燃料の型式など工学的基礎資料の確立

 (f)適正用途の開発

2.4応用研究

 応用研究については大学、国立研究機関、理化学研究所、日本放射線高分子研究協会、民間会社などで行なわれており、欧米に並びうる程度にまで進められているものと思われるが、今後いっそう強力に促進しなければならない。

 なお今後研究すべきものとしては次のものが重要であると思われる。

(1)放射線化学反応プロセス

 (a)有機高分子反応
  (イ)イオン重合
  たとえば
    フォルムアルデヒドの重合
    アクリロニトリルの重合
  など

  (ロ)ラジカル重合
  たとえば
    塩化ビニールの重合
    酢酸ビニールの重合
  など

  (ハ)グラフト重合
  たとえば
    ポリプロピレンにアクリルアミドなどのグラフト重合
    セルローズ繊姓にスチレンなどのグラフト重合
  など

  (ニ)架橋反応
  たとえば
    ゴムの架橋
    ポリエチレンの架橋
    ポリエステルの架橋
    有機半導体の架橋
  など

 (b)有機低分子反応

  (イ)分解反応
  たとえば
    石油系炭化水素の分解
  など

  (ロ)酸化反応
  たとえば
    パラフィン系炭化水素の酸化による有機酸の製造
    パラフィン系炭化水素のスルフォオキシデェイション
    ベンゼンからフェノールの製造
  など

  (ハ)ハロゲン化反応
  たとえば
    ポリプロピレンの塩素化
    ポリ塩化ビニールの塩素化
  など

  (ニ)その他
  たとえば
    メタノールからエチレングリコールの製造
    メタンからアセチレソの製造
  など

 (c)無機反応

  (イ)触媒の活性化
  たとえば
    アンモニア合成触媒の活性化
    メタノール合成触媒の活性化
  など

  (ロ)空中窒素の固定
  たとえば
    硝酸の合成
  など

 (d)食品・医薬品に対する放射線利用

  (イ)食品に対する放射線の利用
  食品の殺菌(Sterilization)および滅菌(Pasteurization)による食品貯蔵、発芽制御による食品貯蔵

  (ロ)医薬品に対する放射線利用
  注射薬・医薬品などの滅菌

  2.5放射線工学

 放射線工学の開発は放射線化学が工業化されるに欠くことのできないものであって、わが国においてはこの方面の研究開発はたいへん遅れているのでこの開発を急速に行なう必要があるものと考えられる。

 アメリカにおいては放射線工学の研究開発は主としてブルックヘブン国立研究所やオークリッジ国立研究所で急速に行なわれようとしている。

 ブルックヘブン国立研究所では100万キュリーの80Co線渡を初めとする各種γ線源合計200万キュリーをおき、工業規模におけるγ線に関するハンドブックをつくる目的で、たとえば遮蔽・線量分布・安全取扱い・線量測定・コロージョン・放射線損傷・均一照射などの問題を研究することになっており、60Co線源をのぞき予算160万ドルである。また将来はβ線源についても同様に放射線工学の研究開発を進めていく考えをもっている。

 また、オークリッジ国立研究所では主として線源技術(Source Tecbnology)の研究開発を目的としてラジオアイソトープ十数万キュリーをもって研究所を設けるため予算150万ドルで建設中である。このように主として放射線化学の工業化にそなえて放射線工学の開発がアメリカの原子力委員会によって着々と実施されつつある。

 なお、放射線化学で問題になる線量は、1010radにも及ぶ大線量領域であり、同様に線量率も104〜109rad/hr粒子加速器の場合には、ピークで約1011rad/secという大きなものである。

 この問題について現在の電気試験所で60Co 3,000キュリーによって、104rad程度の線量の標準測定が始められようとしている。

 このような大線量領域における線量測定には、物理的測定法と化学的測定法があり、多くの2次測定法の研究がなされている。

 さらに放射線化学が工業化されるためには、線量測定が自動化され、工程管理の重要な分野として利用されるまで発達させねばならないことは明らかである。

 3.放射線化学の開発の促進対策

  3.1開発計画

   3.1.1基礎研究(pure and basic research)

 基礎研究を強力に促進することはきわめて重要であって、放射線化学反応の解明のため次の事項について研究を進める必要がある。

(1)イオン、遊離基、励起分子など1次生成物の挙動の究明

(a)寿命の測定
(b)性質の究明
(c)トレーサーテクニックによる放射線作用メカニズムの究明

(2)放射線の種類・エネルギー・線量率の相違による効果の研究

(3)添加物の作用の研究

(4)温度・圧力、磁場その他外界条件の影響の研究

(5)その他必要な基礎研究

   3.1.2線源

 一粒子加速器とその他の線源ラジオアイソトープ使用済燃料・化学用原子炉などとの関係を考えると、一般的にはそれぞれの特色に従って利用されていくものと思われるが、最初は粒子加速器が使用される場合が多く、その後は使用済燃料や化学用原子炉などが、粒子加速器やラジオアイソトープとともにそれぞれの特色に従って利用されるようになるであろう。

(1)ラジオアイソトープ

 80Coについては、キュリーあたり50〜70円を目標とした大量生産方法の基礎研究を行ない、昭和50年ごろまでにはメガキュリー量の60Coの開発が行なわれることが望まれる。

 また核分裂生成物や使用済燃料と同様、60Coについても、有効な照射を行なうため、線源ジオメトリーなどの放射線工学的開発が同時に進められ、その他137Cs、85Kr、90Srなどの線源についても合わせてその利用技術が開発されることが望ましい。

(2)粒子加速器

 照射コストが安くかつ高性能であるなど、放射線化学の工業化に適した粒子加速器の開発を進める必要がある。

 このためには、適当な新しい粒子加速器などの輸入をはかるとともにわが国においてもたとえば大容量の粒子加速器など適当な粒子加速器の開発を進める必要がある。

(3)化学用原子炉

 化学用原子炉の利用の仕方から次のような開発が望ましい。

 (a)放射線利用

  (イ)原子炉による直接照射

 原子炉内での直接照射による化学反応の工業的開発においては、有望な化学反応としてたとえば石油精製過程における各種放射線による炭化水素の分解、改質の問題などが考えられよう。

 研究の対象としては

(i)原子炉内直接照射に関する基礎研究(封管内における静的基礎実験)
(ii)高温、高圧、連続系での原子炉内直接照射に関する研究
(iv)被照射生成物の放射能除染に関する研究
(iii)化学用原子炉の構造材料に関する研究
(v)化学用原子炉の設計研究

  (ロ)原子炉による間接照射

 γ線を利用する場合は特に特殊な反応は考えられず一般の放線化学のγ線照射と同様である。したがって化学用原子炉においてはたとえば放射化されやすい物質の循還などによって、いかにコストの安いγ線源が得られるかどうかに重点をおきγ線源の核種の選定、照射設備の設計および経済性などの検討が必要である。

 (b)核分裂片の運動エネルギーの利用

  核分裂片利用における開発計画は以下のものを考えるのが必要であると思われる。

 このうち反応の研究としてたとえば硝酸の製造を核分裂片利用の開発の一つの手段として取り上げることも考えられる。

  (イ)反応自体の研究

 たとえば硝酸の合成反応の研究

  (ロ)燃料体の研究

 反応系へのエネルギー吸収率が高く、熱放射線、化学試薬に強く、除染、再処理などに好適な燃料の開発

  (ハ)除染に関する研究

  (ニ)構造材料に関する研究

  (ホ)粉体工学の研究

  (ヘ)化学用原子炉の設計研究

 (c)熱源利用

 熱源利用として原子炉の使用の可否は、経済性によって決定される問題である。したがって代表的な蒸気条件・負荷率・需要などを広範に調査し、具体的な化学用原子炉の設計研究を行ない、経済性を検討する。また、放射線利用プロセス熱利用の多目的原子炉も考えられるので、その開発研究および経済性の検討も行なう。

 以上の開発計画を進めるためには、昭和40年までに封管試験およびループ試験を終了し、化学用原子炉の原型炉の設計のための資料を集め、さらに昭和50年までに直接照射利用、間接照射利用および核分裂片の運動エネルギー利用の化学用原子炉の原型炉1MW3基を設置運転し、将来工業的化学用原子炉の建設のための資料を得ることを目標とする。

(4)使用済燃料および核分裂生成物

 核分裂生成物などの開発計画は原子力発電、核燃料および使用済燃料の再処理計画と関連して策定すべきものであり、原子力委員会核燃料再処理専門部会の中間報告および原子力発電の見通しに準拠して核分裂生成物の開発について考えて見るとその基本的な考え方は次のとおりである。

 まず最初は準備的な開発段階で基礎的な技術問題の解決を行ない、次いでパイロットプラント的な開発段階で、工学的基礎資料の確立を行なう。さらに経済ベースにおける開発を図るため、大容量線源に対する工学的問題の解決および大容量線源の開発を行なう。

   3.1.3応用研究

 放射線化学の応用研究については

(1)放射線合成
 たとえば硝酸の合成

(2)放射線分解
 たとえば石油のクラッキング

(3)放射線重合および架橋
 たとえば、ホルムアルデヒドの重合やゴムの架橋

(4)放射線グラフト重合
 たとえば、ポリエチレンにスチレンのグラフト重合

(5)食品、医薬品に対する放射線利用
 たとえば、食品の殺菌

 などいろいろの種類があるが、(1)、(2)の研究については特に国の強力な援助が必要であると思われる。

 なお、(3)、(4)についても新しい有利なプロセスの発見についての国の助成が必要と考えられる。

   3.1.4放射線化学の工業化のための技術の開発

(1)放射線工学的研究

a)線源ジオメトリー
b)装置材料
c)反応装置の構造および操作
d)線量測定およびその制徹
e)放射線管理

 などの研究を行なうために、60Co300,000キュリー程度の照射設備を設置することが必要である。また60Coや137Csなどラジオアイソトープの線源工学の開発を進める必要がある。次に線量測定については10MeV程度の粒子加速器などによって105-106rad程度の線量の標準測定を電気試験所において行なうことが必要と思われる。また、そののち107-108rad程度の標準測定を進める必要があり、合わせて国際的な放射線量の比較統一という点で密接な国際協力が必要である。

 なお放射線量の自動計測化の研究を進めるとともに国家的検定器を実用化する必要がある。

(2)工業化試験
 工業化試験を行なうために必要な技術の開発を中核とするが、工業化の見通しがあると思われるものについては中間的規模における工業化試験を行なう必要がある。

  3.2開発体制

 放射線化学の開発を進めるためには、開発体制の整備を図ることが最も肝要である。

 従来わが国の放射線化学の研究については、名古屋工業技術試験所において3MeVのバン・デ・グラーフ型加速器、6MeVの線型加速器および3,000キュリーの60Coの放射線照射室を設け、また、同時に一般に開放するための放射線化学用研究室をも付置し主として高分子重合方面の研究を行なっており、東京工業試験所には、この試験所が高圧の化学技術に深い経験を持っているので、1,500キュリーおよび400キュリー60Co線源を置いて高圧における放射線重合の研究を行なっている。

 日本の原子力研究所においては昭和33年夏、10,000キュリーの60Co放射線照射重を建設し放射線化学の研究を行なうとともに、この施設を関係各方面にも開放している。

 また、理化学研究所においても2MeVのバン・デ・グラーフ型粒子加速器および1,000キュリーの60Co放射線照射室を設け、高分子および低分子に関する研究を行なっており、他方民間においてもそれぞれ独自な研究を行なっているが、特に民間産業界によって設けられた日本放射線高分子研究協会においては東京、大阪にそれぞれ研究所を設け、前者には3MeVのバン・デ・グラーフ型粒子加速器、1,200キュリーの60Co放射線照射量、後者には2MeVのバン・デ・グラーフ型粒子加速器、1,000キュリーが60Co放射線照射室を設け、主として高分子関係の研究を行なっている。

 ところが、これらの諸研究機関における放射線化学の研究開発はまだ日が浅く、前述の放射線化学の開発の現状にもあるとおり、主として応用研究と若干の基礎研究が行なわれている程度であり、それらの多くは比較的小規模の設備にとどまり、研究資金も十分ではなかった。今後放射線化学の研究開発には、さらにこれらの諸研究機関の努力に期待するところが大なるものがあり、今後ますますこれら諸研究機関の基礎および応用研究の充実育成を図る必要がある。

 しかしながら、放射線化学の開発を効果的に推進させるためには、まず国が重要と目される研究課題を選定し、工業的技術の開発、すなわち重要研究課題の中間規模試験、放射線工学の開発および線源の開発などを中心とすることが肝要であり、特にこの分野はわが国において開拓のきわめて不十分な領域であるので、今後特に力を入れなければならない。

 もちろん以上の領域を通じて、将来放射線化学の企業化については、民間企業の努力で行なうべき問題は多いが、基礎から応用研究、中間試験を経て企業化に至る道は長く、放射線化学の特質上関発研究を行なう上に莫大な設備と、これに伴う多額の資金投資を必要とする。特に化学用原子炉については、現在のところまだ特定の放射線化学反応について、経済性を議論する段階でなく、化学用原子炉の開発という大きい命題は個々の企業努力ではとうてい達しうるものでもない。

 以上の諸点から徴して、より効果的に放射線化学の開発を図るため、主として重要と考えられる放射線化学に関する課題の中間規模試験、放射線工学の研究、線源の開発を中心とする中央研究機構の設備がきわめて必要であると考えられる。

 中央研究機構の業務としては次のことを行なうことが必要であると考える。

(1)放射線化学反応に関する研究
 放射線分解、放射線重合および架橋・放射線グラフト重合、食品および医薬品に対する放射線利用などの放射線化学反応に関する中間規模試験であって指定されたものを主として行なうが、合わせて自主的研究も行なう。

 また、中間規模試験に必要な基礎研究ならびに当研究所の施設などによって行なうことが適当であると考えられる基礎研究も行なう。

 なお、中間規模試験のうち適当と考えられるものの中間規模における工業化試験も行なう。

(2)放射線工学の開発
 反応装置、照射技術、耐放射線材料、線量測定およびこれらに関連ある化学工学その他必要と思われるものについての開発を行なう。

(3)放射線化学用線源の開発
 放射線化学用線源として、ラジオアイソトープ、粒子加速器、化学用原子炉、使用済燃料および核分裂生成物の開発を行なう。

 (a)ラジオアイソトープ

 放射線化学の工業化に適するラジオアイソトープ線源、たとえば安価で大容量の80Co、187Csを初めとするγ線源、85Kr、90Srなどのβ線源の開発を行なう。

 (b)粒子加速器

 放射線化学の工業化に適する粒子加速器、たとえば照射コストガ安く、信頼度が高く、かつ利用効率がよいなど高性能の大容量粒子加速器利用の開発を行なう。

 (c)化学用原子炉

 放射線、熱および核分裂片の運動エネルギーの有効利用を図ることにより、放射線エネルギーのコストの低廉で安全など放射線化学の工業化に適する化学用原子炉の開発を行なう。

 (d)使用済燃料および核分裂生成物

 使用済燃料および核分裂生成物を放射線化学用の線源に使用するための研究、たとえば照射設備・遮蔽・安全性などに関する技術の開発を行なう。

(4)共同研究・委託研究・照射サービス
 公共的性格を十分発揮するため、大学その他諸研究機関などとの共同研究・受託研究および照射サービスならびに必要に応じて研究の委託を行なう。

(5)放射線化学に関する養成訓練
 放射線化学に関する研究者・技術者の基礎から工業化にわたる広い範囲の養成訓練を行なう。

(6)放射線化学に関する調査および技術指導
 放射線化学に関する内外のデータの調査分析を行なう。

 また大学・諸研究機関など関連ある機関との連絡を密にして研究の促進を図るとともに依頼に応じて放射線化学に関する技術指導を行う。

 なお当面3ヵ年間の業務計画としては次のことを行なう必要があると考える。

(1)放射線化学反応に関する研究
 放射線合成・放射線分解・放射線重合および架橋・放射線グ、ラフト重合・食品およが医薬品に対する放射線利用などの放射線化学反応に関する中間規模試験であって指定されたものを主として行なうが、合わせて自主的研究も行なう。

 また中間規模試験に必要な基礎研究ならびに当研究所の施設などによって行なうことが適当であると考えられる基礎研究も行なう。

 さしあたって有望と考えられる化学反応には次のようなものがある。

 (a)放射線合成

  たとえば

(i)パラフィンの酸化による脂肪酸の合成
(ii)ベンゼンからフェノールの合成
(iii)メタノールからエチレングリコールの合成
(iv)硝酸の合成

  など

 (b)放射線分解

  たとえば

(i)石油のクラッキング
(ii)天然ガスのクラッキング

  など

 (c)放射線重合および架橋榔放射線グラフト重合

 (e)食品・医薬品に対する放射線利用

(2)放射線工学の開発

 放射線工学の開発を図るため80Co、300,000キュリーおよび大出力粒子加速器などの照射施設を設置し、次の諸点について研究を行なう。

 (a)反応装置

 (b)照射技術

 (c)耐放射線装置材料

 (d)線量測定

 (e)関連ある化学工学

 (f)その他必要と思われるもの

(3)放射線化学用線源の開発

 (a)ラジオアイソトープ

 各種ラジオアイソトープの線源を設け、ラジオアイソトープ線源の開発の基礎的実験を行なう。

 (b)粒子加速器

 エネルギー範囲が1.5〜3MeVで出力・型式の異なる新しい2〜3の大出力粒子加速器を設け、放射線化学の照射線源としての比較検討を行ない、粒子加速器利用の開発を図る。

 (c)化学用原子炉

  (イ)放射線利用

(i)原子炉内直接照線による反応に関する基礎研究を行なう。(封管内における静的な基礎実験を行なう。)
(ii)高温・高圧・連続系での原子炉内直接照射による反応に関する研究を行なう。
(iii)原子炉を利用した間接照射による反応に関する基礎研究を行なう。

  (ロ)核分裂片の運動エネルギーの利用

 原子炉内直接照射による封管実験ならびにループ実験を行なう。

  (ハ)熱源利用

 熱源利用についての蒸気条件・負荷率・需要の調査ならびにこれに適した化学用原子炉の調査を行なう。

 (d)使用済燃料・核分裂生成物の利用

 さしあたっては原研に設けられるJRR-2などから出る使用済燃料の照射施設を利用して必要な実験を行ない、合わせて核分裂生成物の利用に関する技術的・経済的調査を行ない、必要に応じて基礎実験を行なう。

(4)共同研究・委託および受託研究・照射サービス

 大学・民間研究機関などとの共同研究・受託研究および照射サービスならびに必要に応じて、研究の委託を行なう。

(5)放射線化学に関する研究者、技術者の養成訓練

 放射線化学に関する研究者、技術者の養成訓練を行なうための準備をする。

(6)放射線化学に関する調査

 研究部門と独立した調査部門を設けることなどにより、調査業務を充実し、放射線化学に関する内外のデータの調査分析を行なって、放射線化学に関する研究の促進をはかる。

 また、大学その他諸研究機関など、放射線化学の研究に関連ある機関との連絡を密にして業務を効果的に行なわしめるようにする。

  3.3養成訓練、その他

   3.3.1所要人員および養成訓練計画

 放射線化学の諸開発計画を実施するために必要とする研究者・技術者および補助者などの人員は昭和45年までにおいておよそ表3.1の規模のものと推定される。

 所要人員の算出にあたっては、日本原子力産業会議の放射線化学部会が昭和34年1月1日現在で行なったアンケートによれば大学・国公立研究機関・民間会社を総合して放射線化学の研究に従事している研究者・技術者および補助者の紙数はおよそ700名と推定されるので、昭和36年における人員を900名(研究者・技術者400名、補助者500名)と推定し、以後の年増加率を12%とした。

表3.1  所要人員


 これら研究者・技術者の養成については、早急に放射線化学関係の講座12(1大学1.5講座として8大学)を設ける必要がある。これによれば、昭和45年度末において約500名の新規の専門研究者・技術者が得られる。

 なお上記講座の新増設と並行し、専門コース、新卒以外の一般研究者・技術者に対しては日本原子力研究所に設けられる放射線化学中央研究機構、日本放射線高分子研究協会、国内諸大学(大学院を含む)および外国機関への留学などによる養成訓練が実施されることが望ましい。

 なお補助者は工業高校卒業者を適宜養成訓練する必要がある。

   3.3.2調査について

 放射線化学の開発の促進のためには今後調査の強化を図ることが必要である。たとえばアメリカ原子力委員会においては放射線化学の工業的利用、化学用原子炉や核分裂生成物の線源としての開発について、民間会社や国立研究機関に依頼し十分な調査を行なっている。

   3.3.3補助金・委託費などの強化

 今後ますます盛んになるものと予想される民間の放射線化学に関する研究開発の助成を十分強化することを希望する。

   3.3.4情報サービスの強化

 今後、日本科学技術情報センターのこの方面での活動を強化し民間機関との密接な協力によっで情報サービスを強化することが肝要である。

   3.3.5特許について

 情報サービスの強化と相まってわが国の有望な研究成果の外国に対する特許を申請するために必要な補助金をさらに増加することが望ましい。

   3.3.6国際協力

 専門家の招へい、研究員の海外派遣、国際会議への参加を盛んにするとともに化学用原子炉などについて必要があれは技術の援助などをうけることが望ましい。